世界を越えたい   作:厨二王子

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我、目覚めるは

 俺たちは目の前にいるシュドナイ、そして佐藤を人質にしているベルペオルと向かい合う。

 さらに、この間のサブラクがいたことから、あいつが隠れている可能性がある。なので俺はそちらの警戒も緩めなかった。

 

 しかし、取引ね。要求は……聞くまでもないか。

 

「佐藤くんを離しなさい!」

 

「ちっ、うかつに動けないわね……」

 

『こりゃ、やられたな』

 

 俺は皆の反応を伺い、前に踏み出した。

 

「俺がお前たちについてけば佐藤は解放するか?」

 

「そうだねぇ。さぁ、ここまで来な」

 

「……くっ」

 

 俺はベルペオルが指示したところまで足を進める。途中、シュドナイの顔を見るとこちらを睨んでいた。キアラたちは状況を見定めているというところか。

 そして指示した場所に行った瞬間、彼女が仕掛けた自在法が発動する。

 

『相棒』

 

 予定通りに頼むぞ。こちらから呼び掛ける。ダメだったらそっちから頼むぜ。

 

『了解した……』

 

 俺は最後にアルビオンに呼び掛けると意識を失った。

 

 

 

 

「悠二!」

 

「とりあえず、第一段階は成功のようだね。……おっと」

 

 私は悠二が石化した瞬間を見計らい加速して、佐藤くんを助け、そのまま悠二の元に向かう。しかし、佐藤くんは確保出来たが、悠二に手を触れようとすると鎖で弾かれてしまった。

 

「そう簡単にはいきませんか……」

 

「ふふ、こちらでの用は済んだんで引かせて貰うよ、将軍!」

 

「ふん……」

 

 シュドナイはこちらに向けて衝撃波を放つ。シャナとマージョリーが炎で防ぐが、目の前から二人は姿を消していた。

 

「ちっ、逃げたわね!」

 

「気配はまだ消えていません。いえ、これは……」

 

「上よ!」

 

 突如、空の色が変わり、大きな城が上空に姿を現す。その名を星黎殿。仮想舞踏会の本拠地だった。

 

「皆さん、ひとまず悠二の家へ戻りましょう」

 

 皆、私の声を聞き頷く。人質は解放したものの肝心の零時迷子が奪われるという最悪の事態。こういう時こそ落ち着かなくては。

 

 悠二、どうか無事で。

 

 私もシャナたちに続き、悠二の家に向かった。

 

 

 

 

 

「零時迷子を早急に破壊するのであります」

 

 悠二の家に戻ると、ヴィルヘルミナが最初にそう口にした。直ぐにシャナが反論する。

 

「ちょっと、ヴィルヘルミナ。前に協力するって言ってたじゃない!」

 

「こうなった以上、ことが悪くなる前に破壊するのが一番であります」

 

「二人とも落ち着いてください」

 

 二人の話しがヒートアップしない間に二人に声を掛けて落ち着かせる。

 

「現状、向こうの状況が分からない以上まだ救出可能な状態である可能性があります。それに彼は……悠二は共に徒と戦ってきた大事な仲間です。考え直して貰えませんか、ヴィルヘルミナさん」

 

「ですが……」

 

 ここでここまで一言も話さなかったマージョリーが口を開く。

 

「元はといえばうちのところのミス、それに個人的にまだ彼が殺れたら困るのよねぇ。あの炎のこともあるし」

 

『ははは、正直じゃないねぇ。我が麗しきマージョリー・ドウ』

 

「うるさいわね。ばかマルコ!」

 

 マージョリーは自身のマルコに向かって拳をぶつける。ヴィルヘルミナはそれを見て溜め息を吐く。

 

「……そうですね。ここであなたたちを敵に回す訳にもいかないであります。いいでしょう、ここは引いておきましょう。しかし、万が一の時は……」

 

「その時は任せます。シャナは聞くまでもないですね」

 

「絶対に悠二を助けるわ!」

 

 シャナ大きな声で宣言する。そして次第にあの

 上空の星黎殿から存在の力が溢れていくのを感じる。

 

「とにかく、時間がありません。直ぐにあそこに行って悠二を助けに行きましょう!」

 

 こうして私たちは悠二の救出に向けて動き出した。

 

 

 

 

 

 

「おや、計画が順調に進んでいるというのに浮かない顔をしているね、将軍」

 

「問題ない。しかし、うまく行き過ぎてる気がしてな」

 

 あのミステスである坂井悠二の実力はおれ自身がよく知っている。あの男であればうまく俺たち二人を弱体化させ人質を救出できたのではないかと。

 まるで……そう、自ら向かったような。

 

「どうしたんだい?」

 

「……何でもない。すまないがこれからの器合わせに不安がある。フレイムヘイズの迎撃は他に任せてくれ」

 

「分かったよ。まぁ、今回はサブラクはいないが足止めにフェコルーを連れて来たからね。それに教授もなにかいつも以上に張り切っているようだし」

 

「……頼む」

 

 ベルペオルは姿を消してフレイムヘイズを向かい討つべく所定の場所に向かう。

 そして、俺は後ろの扉を眺める。やがて、器合わせが始まった。

 

「俺の愛するヘカテ……っ!」

 

 ヘカテーの器合わせが始まり暫くすると、扉の向こうからとてつもなく大きな力が溢れだす。存在の力でもない、全く異質な力。しかし、俺はこの力に覚えがある。それはあのミステスである……坂井悠二、いや。白龍皇である奴の力だ。

 

 くっ、俺としたことが!

 

 俺は舌打ちをすると、扉をこじ開け中に駆け足で向かった。

 

 

 

 

 

「くっ、ここは……」

 

 俺は目を覚ますと、まるで水の中のような空間にいた。目の前には白い帽子を被る水色の髪の少女。名を三柱臣の一人、頂の座ヘカテー。

 

「よっす!」

 

「……」

 

 とりあえず、挨拶してみたんだが無視されてしまった……悲しい。この状況と体内の存在の力の量からするに器合わせの最中に原作通り目覚めたようだ。

 しかし、この空間は心地よく思わず眠りそうになるな、危ない危ない。俺はなんとか意識を覚醒させて、アルビオンに話し掛けようとする。

 その瞬間、ヘカテーが話し掛けてきた。

 

「あなたの中にもう一つ……いや、二つ別の気配を感じる。特に一つはとても大きな存在。あなたは何者?」

 

 ヘカテーが驚き俺に問いかけてくる。そんなこと決まってる。

 

「俺は零時迷子を持つミステスであり、白龍皇でもある坂井悠二だよ」

 

『目を覚ましたようだな、相棒』

 

 アルビオンが俺に話し掛けてくる。

 この様子では外で存在の力が溢れて三崎市は大変なことになってるだろう。原作ではアラストールの顕現でなんとかなったが、今回シャナが無事でいられるという確証もないし、そんな危険な真似は出来ない。

 しかし、俺の翼ならなんとか出来る。幸い、制御するためのもんは大量に溢れてるしな。

 

『こっちの準備は出来ているぞ』

 

 よし、なら始めよう。

 

 ヘカテーは俺の体からとてつもない力を感じ、俺から離れていく。

 俺は目を閉じてあの呪いの言葉を紡いでいった。

 

 

 

 

 

 

 我、目覚めるはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、この異界の地で白き覇龍が君臨する。


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