俺は今新幹線に乗って、修学旅行の目的地である長崎に向かっていた。
……とういうか久しぶりに乗ったよ、新幹線。
『なにやら、疲れてるようだが』
そりゃあね、寝てる間に特訓してるわけだからな、普通に疲れるさ。
『だが、相棒の話では徒やフレイムヘイズは相当の強者なのだろう?』
その通りだよ。はぁ、自在法とか使えるようになりたいなぁー……マジで。
俺は心の中でアルビオンと話しながら溜め息を吐く。御崎市でもフリアグネやその一味とかにエンカウントしないように意識しなきゃいけないし、疲れることばっかだな。
『今のところ大丈夫だが、そう長くはいかないだろうな』
ですよねぇー。原作までの後二年、なんとかしたい。
俺とアルビオンが心の中で会話をしていると、隣にいる池が声を掛けてきた。
「なぁ、坂井。楽しみだな」
「……ああ」
「なんだ、具合でも悪いのか?」
「大丈夫だ、問題ない」
俺は池に大丈夫だと伝えると、目を閉じる。しかし、なんか嫌な予感がするんだよな。ドラゴンは戦いを呼び寄せるなんていうし……まぁ、御崎市でも何もなかったし大丈夫か。
この時俺は自身が盛大なフラグを建てたことに気付かなかった。
「着いたぜ、長崎!!」
「おい、坂井。さっきとは打って変わって元気だな」
「おうよ。せっかくの旅行だからな。楽しまなくては!」
池の他にもモブの姿が見える。全員集合したようだ。
……よし!
「リーダーは俺だからな。俺に続けよー!」
「はいはい、リーダーさん」
池が適当に返事をする。んー、ノリが悪いな。
俺はそんな皆を連れ、事前に予定してい通りに行動を開始した。
「ソフトクリーム、うまかったな」
「ああ、最高だっぜ」
夕方になり俺は班行動を終え、池と二人で行動していた。そして今はソフトクリーム屋の屋体の前のベンチに座っている。
「明日はお寺まわりか……」
「なに、勉強になる」
「池は相変わらず真面目だな」
「そういうお前は最近少し変わったよ」
「そうか?」
俺は適当に誤魔化す。俺も坂井悠二とは色々と結構違っていると思うのだが、意外に指摘してくる者はいない。存在の力とかトーチとかが関係しているのだろうか。
俺は池と軽く話した後、宿に向けて歩き出した……少し後に来た三人には気付かずに。
「お兄様、このアイスはいかがですか?」
「うーん、僕いらない」
「そうですか……」
「……」
仲のいい二人の兄妹が会話する中、もう一人の男は別の方向に向いていた。
『相棒、まずいことになった』
「どうしたアルビオン?」
宿に戻り夕食と御風呂を済ませると、一人になった部屋にアルビオンが話し掛けてきた。
『私の探知と気配に気付いたやつがいる。それも恐らく大物だ』
「なに!?」
俺はアルビオンの言葉に驚く。そんな奴がいたのか。というかここ付近で徒やフレイムヘイズがいたのにも気付かなかった。
『すまない。私もうまく気配を隠してるため気付かなかった。反応は三つでその内の一つに気付かれたようだ。もしかしたら、接触してくるかもしれん』
……まずいな。まさか、こんなところで徒やフレイムヘイズと接触することになるとは。複数ということは恐らく徒で間違いないだろう。出来れば原作で関わりのないやつであることを願う。まぁ、アルビオンが大物というくらいだから、そう上手くはいかないだろうけど……。
「出来れば皆を巻き込みたくない」
『戦うのか?』
「やるしかないだろ。今の俺が徒相手にどれだけ戦えるか確かめるチャンスでもあるし」
『しかし、ダメだと思ったら……』
「もちろん、逃げるさ。命を大事に……な」
俺とアルビオンはこうして会話を終える。出来ればここに現れないことを願うばかりだ。
この後、池や他の皆が部屋に入っていきて静かに就寝した。
「どうした、そんな戦いに行くような顔をして」
「……まさに、その状況なんだけどな」
「?」
池は俺の言葉に首を傾げる。そして俺は今日のことを池に伝えた。
「一人で行動する?」
「ああ、悪いな。どうしても行きたいところかあって」
「なんだよ、みずくさい。俺も一緒にいくのに」
「一人じゃないと恥ずかしい場所なんだ」
「ははーん」
池はなにやら分かったような顔をすると、他の友達のところに向かって行った。
なんか変な誤解を生んでしまったような気がする……。
俺は朝食を食べると外に出る準備をして、宿から出ていった。
俺は宿から出た後、あのソフトクリーム屋の近くのお寺に一人立っていた。周りに他の人の姿は見えない。しかし、俺はアルビオンに一応確認する。
「アルビオン、人の気配は?」
『大丈夫だ。この付近にはいない』
「良かった。出来れば関係ない人は巻き込みたくないからな」
『知らぬ間に人が消えていくとは恐ろしい世界だ』
「お前のところもそんなに変わらないと思うが……」
記憶操作とかしてさ……
『まぁ、気にするな』
「気にするわ!」
俺はアルビオンに突っ込みを入れる。すると突然、世界が変わった。
『ほう、これが封絶か……。不思議な感覚だ』
「敵は?」
『もう直ぐそこまで来ている。来るぞ……』
敵……いや、徒が姿を現わす。しかし、その徒が醸し出すオーラは尋常なものじゃなかった。
俺は白龍皇の影響か、近くの相手なら力量など感じることができる。そして俺は思わずそのオーラに膝を付き添うになった。こいつ……まさか。
俺はまだ普通の徒にも会ったことがないから徒がどの程度のオーラを放つのか分からない。なので俺はある可能性も考えてこちらに近づいてくる敵を見据える。
そして、俺は思わずこう叫びたくて堪らなかった。
……オワタ
一体現れたのはどこのロリコン疑惑のオッサンなんだ!?