炎髪灼眼の討ち手との会合。悪い意味で予想通りの会合になってしまった。いや、自分は坂井悠二のように彼女を説得的なことで仲間に出来るなんて思ってなかったよ、うん。しかも、この子、予想以上に話を聞かない。なので、渋々と戦闘をすることになってしまった。これはもう、無力化して話を聞いてもらうしかないようだ。
『来るぞ』
「直球か」
炎髪灼眼の討ち手が刀を構え、こちらに突っ込んでくる。俺はそれに対して拳で迎え撃った。
「硬いわね」
「ちっ……」
彼女は連続で刀を振るってくる。俺はそれを見極めつつ、彼女の攻撃を避けた。
さらに、俺は周囲を見渡す。ここは商店街なので人がたくさんいる。今の彼女の性格だとそこのところ考えずに攻撃すると思い、俺は人気のない空き地へ誘導を始めた。
「逃げる気?」
「こんな人の多いところで戦えるか」
彼女の攻撃を受け止めながら無事に空き地への誘導に成功すると、俺は彼女と一度距離を取った。
「ふん、目的通りかしら?」
「そうだな、これで思う存分暴れられる」
「……ッ!」
彼女は刀に炎を纏わせると、俺に向けてその炎を飛ばしてくる。戦って感じたことだが、彼女は戦っている内にどんどん強くなっているようだ。その証拠に少しぎこちないが原作でまだ使うことが出来なかった炎を使ってくる。さらに、彼女のスピードも速くなっていった。さすがは主人公である。やはり彼女は俺の計画になくてはならない存在のようだ。
俺は彼女がとばした炎をグランマテイマィカで防ぎ、そのまま加速して彼女の後ろを取った。
「もらった!」
「なっ!」
俺はそのまま彼女の肩に触れる。そして、神器の半減が始まった。
『Divide、Divide、Divide、Divide、Divide、Divide……』
彼女の力が徐々に減らされていく。彼女は自分の急激な力の変化に困惑しているようだ。しかし、俺はそんな彼女を気にせず、拳を突き出す。彼女は咄嗟に刀でその一撃をいなした。
「一体どうなってるの、力が減っていく?」
『わからん。しかし、正体不明の能力で間違いないだろう。奴が使う自在法に関しては万能型のようだが……』
「なら押し込む!」
彼女は一度、俺から距離を取ると俺に向かいとても大きな炎をぶつけてそのまま真っ正面に突っ込んできた。
「ぬるいわ!」
炎が俺にぶつかる瞬間、俺の首に付けている指輪の宝具が光る。大きかった炎はその指輪に吸収され、やがて消失した。そして彼女は炎が消えたことに驚きを隠せないでいる。
「嘘、私の炎が!?」
『別の宝具か。厄介な……』
「ご名答!」
俺の首にネックレスとして付けている宝具、アズュール。これは所持者から炎を守ってくれる宝具だ。そしてフリアグネの戦利品の一つでもある。彼女と戦う上でこれほど相性のいい宝具はないだろう。
『いかん、一度止まるのだ!』
「問題ない!」
彼女はアラストールの言うことを聞かず、俺に突っ込んでいる。しかし、炎が完全に消えて視界が空けた時、そこに俺の姿はなかった。
「どこに!?」
「ここだよ!」
そう、俺は上空に飛んでいた。彼女は空に飛んでいる俺を見つめる。しかし、この時の彼女は空を飛ぶことはできない。
「終わりだ」
俺はそのまま空中からグランマティカを使うことで加速し、また彼女の背後に移動する。
そして、即座に彼女の意識を刈り取った。
「勢いで、意識刈り取っちゃったけど話を聞いてもらえるかな……」
『派手にやってくれたな』
「なんだ、あんたは意識があるのか?」
突然、彼女の首輪についている宝石から声が聞こえてくる。フレイムヘイズが意識を失ってもこちらは無事のようだ。
『ああ。しかし、貴様中々の使い手だな。本当に何者だ?』
「天罰神に誉められるとは光栄だな。なに、珍しい宝具持ちのミステスだよ。いろいろと事情があってね。自衛の力も必要なんだ」
『なるほど。その事情というのはこの近くにいるフレイムヘイズとも関係があるのか?』
「そのフレイムヘイズは仲間だよ。一緒に行動してるんだ」
『ほう、余程の事情のようだな』
「まぁ、彼女が目を覚ましたら説明するよ」
俺は眠っている炎髪灼眼の討ち手を見ながら、
アラストールに言った。
「しかし、なにもしないんだな」
『貴様から敵意を感じないからな。なにかするのなら容赦はしないが』
「大丈夫。なにもしないから」
危ない、危ない。アラストールの顕現とか、覇龍を使っても止められないかもしれない。
『少し気になったのだが貴様の魂とトーチ……いや、なんでもない』
最後にアラストールがなにかを言ったような気がしたがよく聞こえなかった。
俺は冷や汗をかきつつ、レベッカの到着を待つのであった。
「なるほど。そういうことだったのね」
「こうやって、最初から説明すれば良かったんですよ」
「いやいや、あの状態からは無理だから」
場所を変えて今度は俺の家。そこではレベッカの話を聞き、炎髪灼眼の討ち手がメロンパンを食べながら納得していた。
レベッカの説明というのはここまでの経緯や俺の宝具である零時迷子についてなどだ。
ちなみに俺は戦闘を控えろというレベッカの言葉を無視したので、少し前に説教を受けた。
……解せぬ。
まぁ、とりあえず炎髪灼眼の討ち手がこれからどうするかだな。なので俺はさりげなく聞いてみる。
「ということなんだが、これからどうするんだ?」
「私たち的には残ってほしいんですが……」
炎髪灼眼の討ち手は少し考えるしぐさを見せると、俺たちに向かって一言告げる。
「決めたわ。この町に残ることにする。でもあんたの監視としてなんだからね!」
ツンデレか!?
彼女は俺を指差しながら答えた。レベッカは何故か微笑ましく、その様子を見ている。
「しかし、どんどん仲間が増えてきますね」
『仮装舞踏会の連中は歴戦の猛者ばかりだからな、戦力は多い方がいいだろう』
「まぁ、とりあえず……」
俺は席を立ち上がり、炎髪灼眼の討ち手に手を差しのべて言った。
「これからよろしくな、シャナ」
「「シャナ?」」
……あっ。
言った後に気付いても、もう遅い。俺は前世からの癖で思わずシャナと呼んでしまった。先程、贄殿遮那については話を聞いていたのでそこまで問題ではないのだが。
この後、彼女に名前がなかったからと咄嗟に閃いたのだと伝えると、二人供なんとか納得したようだ。そしてシャナに名前を付けることはレベッカも賛成して色々と考えるが、結局のところ彼女の名前は俺の言った通りシャナとなった。
「くっ、しぶといわね!」
「……」
『まぁ、そう怒りなさるな。我が短き導火線、マージョリー・ドー』
暗い空に青い炎が輝く。それを避けていくのは
ジェントルマンのような格好をしたお年寄り。その正体は名のある紅の徒、屍拾いのラミーだ。そして、その男を追いかける女性。彼女は蹂躙の爪牙のフレイムヘイズ、弔詞の詠み手のマージョリー・ドー。
「仕方ないわね。一発大きいのいくわよ」
『ほい、きた。……なっ』
マージョリーが動く前に、ラミーが動いた。ラミーがとある自在式を発動させる。
「すまないね、ここでやられる訳にはいかないんだ」
「ちょっ……」
ラミーが自在式を発動させると、周囲が眩しい光に包まれる。マージョリーは思わず目を瞑ってしまった。どうやら、目潰しを目的とした自在式のようだ。マージョリーは目を開けるとそこにはラミーの姿はなかった。
『はっはっは、一杯食わされたな』
「笑いごとじゃないわよ、ばかマルコ」
マージョリーは自身の相棒であるマルコを怒鳴る、すると彼女はラミーのいなくなった方向にある町を見据えた。
「どうやら、あそこに逃げん混んだみたいね」
『おいおい、あそこに複数のフレイムヘイズの気配がするが……』
「邪魔をするんだったら容赦しない……それだけよ」
マージョリーはマルコシアスと話し終わると、御崎市に向かって飛んでいった。