世界を越えたい   作:厨二王子

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遅くなって申し訳ない。


やって来る爆弾

「奴等に動きは今のところなしか……」

 

「なにをぶつぶつ言ってんだ?」

 

 現れたのは一見男性のように見えるが、ショートヘアの女性。彼女はアウトローである東京総本部の責任者……『輝爍の撒き手』の称号を持ち、“糜砕の裂眥”バラルのフレイムヘイズであるレベッカ・リードだ。

 

「しかし、仮装舞踏会の情報なんて集めてどうするきだ?」

 

「ちょっとね……」

 

 さてさて、彼女に自身の事情を告げていいものか。俺はのんびりと考える。しかし、あることを閃いて俺はにやけた。

 

「……実は新たな弟子が関係しててな」

 

「ほう、鬼功の手繰り手の新しい弟子か……。興味があるな」

 

「筋が良くてね。今はキアラと活動してるんだ。しかも、特殊な宝具を持っているミステスさ」

 

「その宝具が零時迷子。なるほど、それで仮装舞踏会に行き着く訳か」

 

 レベッカは少し考えると、やがて子供のようににやついて答えた。

 

「それなら、俺自身が見極める必要があるな」

 

『まさか……』

 

「そのまさかさ」

 

 彼女の相棒であるバラルも戸惑いの声を上げる。

 

「なに、これはサボりじゃない。調査だ」

 

『この前もそんなこと言ってなかったか?』

 

「気のせいだよ。そうと決まれば準備しなきゃな」

 

 レベッカは今後の方針を決めると、席を立ち荷物を纏め始めた。そして、部屋から出ていこうとする。

 

「そうだ、鬼功の繰り手。情報を感謝する、じゃあな」

 

 彼女は最後にそう告げると、恐らく悠二のいる

 御崎市に向かったのだろう。俺は飲みかけのグラスに口をつける。

 

『あれで、良かったのかい?』

 

「ああ。あの二人はいろいろな徒を狩って強くなってるし、悠二に関しては自在法も身に付けた。連携も上々だ。あいつに認められないということはないだろう」

 

『そうだが……』

 

「まぁ、ちょっと彼女はやり過ぎな部分もあるし、そこは心配だけど。しかし、これから仮装舞踏会と対立する以上、戦力は多い方がいい」

 

 俺は自身の相棒にそう語りかける。実際に仮装舞踏会の動きは悠二を鍛え始めた頃よりも活発になっているのは事実。彼らが悠二にたどり着くのも時間の問題だ。

 

「さてさて、どうなるのやら」

 

 俺は遠い三崎市にいる二人のことを思い、溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

「これで討滅完了ですね」

 

「ああ、やっと受験勉強に戻れる。戦いはホントに疲れるな」

 

『それでも、最近は徒は少ない方だと思うが』

 

「嵐の前の静けさと言うべきか……」

 

 俺は溜め息を吐きながら、周囲の気配を探知する。結果、徒やフレイムヘイズの気配は感じなかった。

 ここ最近はアルビオンの言うとおり、徒の姿が少ない。俺はフリアグネが討滅されたので、その反動がなにかでこの町に徒が押し寄せてくるのかなとも思ったがそうでもなかったようだ。

 精神世界での特訓も上出来で、自在法をうまく使う特訓を今では中心に行っている。ヨーハンは相変わらずだ。

 

「じゃあ、家に帰るか」

 

「はい」

 

 キアラの元気のいい返事を聞いて、家に帰ろうとしたときその反応が突然に現れた。

 

「なっ、フレイムヘイズ!?」

 

「この気配、サーレさんじゃありません。それにすごい勢いでこちらに向かってきます」

 

 そして俺が白龍皇の翼を出した直後、俺たちに大きな爆発が襲った。

 

 

 

 

 

『Divide』

 

「あぶねぇ、死ぬところだった。キアラは無事か?」

 

「はい、なんとか」

 

 俺はキアラに安否の声を掛けるが、彼女から無事に声が帰ってくる。俺はその声に安心すると、少し離れたところにいるこの爆発の犯人を目で捉えた。

 

「なるほど、この攻撃に耐えるとはな。本人から聞いていたが、鬼功の繰り手の弟子というのは間違いないようだ」

 

 煙でまだ相手の顔は見えないが、俺は目の前の人物に心当たりがあった。男っぽい口調やシルエットが男性だが、この爆発を使いこなすフレイムヘイズ。

 

「レベッカ・リード……」

 

「へぇ、俺の名前を知ってるのか。ならなおさら……」

 

 レベッカは俺に一言告げると、彼女の腕に付いてる神器の瞳が開く。

 

 ……まずい!

 

「禁手〈バランスブレイク〉!」

 

《Vanishing Dragon Balance Breaker!!》

 

「やりがいがあるってもんだ!」

 

 俺は瞬時に鎧を纏い、グランマティカを発動させた。さらに、半減もおこなう。

 俺は彼女の一点に絞った爆発を防ぐ。キアラの方も俺のグランマティカが彼女を守ることが出来た。といってもレベッカの猛攻がここで終わるはずはない。

 

「それが例の鎧か。なかなかのもんだが、俺のこれからの攻撃に耐えられるかな」

 

「ちっ!」

 

 レベッカの周りには既に複数の紫色の球体が浮いていた。俺はその様子を見て、思わず舌打ちをする。何故なら俺はこの後、何が行われるか予想できるからだ。

 しかし、何故レベッカが俺たちを襲撃してくるのか分からないが、やらなきゃやられる。

 

「おらよっと!」

 

 俺が考えていると、レベッカは複数の球体を俺たちに向けて飛ばしてきた。

 俺は直ぐにキアラに指示を出す。

 

「攻撃は出来るだけ俺が防ぐ。相手はフレイムヘイズでやりにくとは分かるが、軽く弱らせるくらいに、キアラは狙えるときは狙ってくれ」

 

「分かりました」

 

 キアラは俺に言葉を返すと、弓を出し射撃の準備に入った。

 俺はレベッカに触れるべく加速する。

 

『Divide、Divide、Divide……』

 

 レベッカの紫色の球体は俺の神器によって半減され、半減しきれないものはグランマティカで防いでいく。

 

「聞いた通りだな!」

 

「一体誰から俺のことについて聞いた!?」

 

 なんとなく、想像がつくが……。

 

「さてな。俺を認めさせたら、教えてやらんこともない」

 

「めんどくせぇ」

 

 俺は一人ぼやきながら、レベッカの攻撃をうまくさばいていく。

 

「なかなか近づけないな」

 

「さすがは輝爍の撒き手ですね。隙がありません……」

 

 俺とキアラはレベッカの実力に舌をまく。誰から情報を貰っているとはいえ、ここまで俺とキアラに隙を見せないとは。

 

「じゃあ、あの作戦でいく。いけるか?」

 

「もちろん!」

 

 この一年、サーレとの特訓は少なかったが、キアラとの連携は何度もやってきた。その中でさらに強くなったのはもちろん俺だけではない。

 

「どうする。お二人さん?」

 

「こうするんだよ!」

 

 俺が合図すると、キアラはレベッカの弓をしまい、レベッカの周囲に複数の光の矢を出現させる。光の矢の遠隔操作だ。

 レベッカは予想してなかった事態に驚きを隠せないでいた。

 

「しまった!」

 

「これでもくらいなさい」

 

 光の矢はレベッカにぶつかり爆発する。恐らく、彼女の紫の炎で相殺したのだろう。そしてこの一瞬こそが俺たちの狙い。

 俺はグランマティカを使い、一瞬で彼女の後ろに移動した。

 

「あぶねぇ」

 

「そうだな」

 

「マジかよ!」

 

 俺はレベッカの肩に触れる。彼女自身に触れたことにより、彼女の力を半減することができる。俺は体勢を建て直すべく、いつも通り後ろに下がる。そしてサーレやキアラ、歴代たちとの間で鍛えたおかげで、俺は瞬間的な半減を行うことが出来ていた。

 

『Divide、Divide、Divide……』

 

「くっ、力が減っていくって奇妙な感覚だな」

 

「まだまだ半減されるぜ」

 

「まったく、恐ろしいもんだ」

 

「私のことも忘れては困ります」

 

 キアラの光の矢がレベッカに向かっていく。彼女はそれらを避けるが、それが致命的な隙となった。さらに、彼女の力は徐々に半減されていっている。それにより、彼女の動きも遅くなっていた。

 

「あまい!」

 

「なっ!?」

 

 俺はここぞとばかりにグランマティカを再び発動。俺はレベッカの懐に入る。

 

「俺が感知出来なかっただと」

 

「終わりだ!」

 

 俺は思いっきり拳をレベッカの腹に殴りつける。俺の拳を受けたレベッカは思いっきり後方にぶっ飛んだ。

 

「もう一度……」

 

「ゴホゴホ、まてまて。降参だ、降参」

 

 俺が追撃しようとすると、レベッカは両手を上げて降参してきた。俺とキアラは思わず顔を見合せながら動きを止めてしまう。

 

「いやー、ここまでやるとはな。合格だ合格」

 

『まったく、最初の一撃で終えるはずじゃなかったのかい?』

 

「熱くなりすぎちゃって」

 

「あの~」

 

「悪い悪い」

 

 俺とキアラはレベッカの説明を聞く。話を纏めるとこうだ。アウトロー……というかフレイムヘイズとしては俺の零時迷子は仮装舞踏会がなにか企んでいる以上危険で、そんな俺を排除するかどうか自身の目で確かめに来たらしい。というか、サーレの言葉が原因でこの町に来たそうだ。

 

 サーレェ……

 

 あとこのことはまだ他のアウトローのメンバーなどには伝えてないので大丈夫だそうだ。まぁ、ヴィルヘルミナも原作で最初の方で悠二を抹殺しようとしてたし、分からないこともない。

 

「なるほど、事情は分かりました」

 

「ということで、俺もお前たちの力になるぜ」

 

 レベッカは豪快に笑いながら、俺の背中を叩いてくる。ホントに男っぽい。原作でもフレイムヘイズでも徒でもない慶一に爆発をくらわせてたし、この強引な方法も納得してしまう。

 しかし、彼女が味方になってくれるのなら、これほどありがたいことはない。

 

「じゃあ、これからよろしく。レベッカ」

 

「よろしくお願いします」

 

「ああ、よろしくな!」

 

 そして、流れ的に暫くこの町に滞在するかと思いきや、どうやら仕事をサボてここにきたらしく、部下の通信を受けてアウトローに帰って行った。一応連絡先は交換したが……。

 

 何だったんだ一体。

 

「嵐のような人でしたね」

 

「あれは爆弾という表現の方がいいと思う」

 

 まぁ、何はともあれ……。

 

「帰るか」

 

「はい」

 

 受験も近くに迫ってきてるため、俺とキアラは暖かい我が家に帰って行った。

 

 

 

 

 

 

『だいぶ、道が拓けてきたな』

 

「……」

 

 森の中、一人の少女が歩いていた。彼女は燃えるような赤く長い髪をなびかせている。周囲に人影はいない。

 

『確かこの先には町があったな。休憩がてら立ち寄ってみるとするのもいいかもしれん』

 

「そうね……」

 

 少女は笑顔を見せることなく、自身が着けているペンダントに語りかける。

 少女はただ前へとつき進む。自らの使命を果たすために……。

 白き龍を宿す者と天罰神のフレイムヘイズ、二人が交わる時は近い。




はい、レベッカ登場。
そして、次回から原作開始です。更新少し開けてしまうかもしれませんが、ぜひお楽しみに!

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