袁紹を活躍させてみようぜ!   作:spring snow

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今回は少し短めです。


第五〇話 新たな部下

 ではここで漢全土で何が起きているのかを説明しておこう。

 

 まず皇帝を支配下に置いていたとされる董卓は袁紹と結託。現在の冀州を中心とした地において拠点を設ける。だが、これは結託と言っても董卓には今後、世に覇権を唱える気はサラサラ無く袁紹の実質的な配下になったのが現状だ。

 このことにより袁紹が皇帝を擁立し天下の趨勢は袁紹へと大きく傾いている。

 

 また、洛陽戦における董卓の敗北というのは世に大きな戦乱を引き起こすことになる。

 まず、董卓が支配下に置いていた涼州は地元で元々有名であった馬騰が一気に勢力を拡大していき、支配下に置いてしまっている。

 

 反董卓連合は董卓が逃げたことにより瓦解。

 各諸侯は自分らの持つ領地へと帰っていった。その中でも一際勢力を伸ばしたのが、袁術である。

 彼女は洛陽を占拠した功績を生かし、廃れた洛陽を再建を行う。これらの再建を支えたのが袁術が配下にしていた優れた文官達であった。彼女は仮にも名家の袁家の正式な跡継ぎ。彼女に仕えるのは袁家が数多くの方面に排出した優秀な文官達である。彼らが本気になればそれこそ都市の一つや二つの再建など造作も無いことだ。

 こうしたことから周囲から戦乱を避けていた住民達が洛陽に再び戻ってきてかつての賑わいを取り戻しつつあった。

 この功績は周囲の諸侯達に知れ渡り、袁紹までは及ばないにしろそれに準ずるだけの力を蓄えていた。

 また、これらの流れに乗っかる形で孫策が袁術の配下に入ったのは周囲に衝撃を与えた。江東の麒麟児と謳われるほどの猛将が袁術配下に入ったことは周囲の諸侯にとっては脅威だ。

 

 江東や寿春周辺の各地においてこうした大きな動きが起きている中で、袁紹周辺の地でもいくつか事は起きていた。

 まず、曹操が太守のいなくなった北海国を占拠し、新たな太守として就任したのだ。

 当初は彼女が一人で宣言するのみであったがある人物が朝廷に上奏し、ついに正式に認められるところとなった。その太守にと上奏したのは寿春太守の袁術であった。彼女は袁紹がいずれ自分と仇なす存在だと考え、予め自分と共闘する人間として曹操を取り立てたのだ。

 

 これに対抗するかのように袁紹は劉備を東群太守任命を上奏した。これは曹操と対抗する人材として劉備を共闘する人間と考えるのと同時に今後、中原へ出る際の足がかりとしてここを利用するつもりであったのだ。

 劉備と曹操で考えれば、圧倒的に曹操に才能や人脈の分がある。それは曹操とかつて洛陽を駆け回った袁紹は誰よりもよく分かっていた。

 しかし、曹操は宿敵とも言える袁術と手を組んでおり、最早関係改善は見込めない。だからといって他の有能な人材は殆ど誰かの配下になっており、下手に董卓のように力がある人間を取り立てでもしたら、自分が食われる可能性がある。

 そういったことを考えると劉備はそれなりの配下もいる。だが、力があるわけではない。利用するにはちょうど良い存在であった。

 

 こうして董卓という一大組織が袁紹の配下に組み込まれることで中華は大きな変化の時を迎えていた。

 

 時は190年4月下旬。未だ乱世は収まるのか、そもそも朝廷の手に返るのかすら分からない状況であった。

 

 

 

 

「ふむ。韓馥に変わった動きはないか」

 

 田中は間諜の人間から報告を受け取った。現在、袁紹は曹操や袁術と言った諸侯と対立している。故に周辺で火種となる可能性があるものは極力取り払っておきたかった。

 

「それにしても袁刺史はどうやって復活なされたのだ?」

 

 その疑問にちょうど用事があって田中の元を訪れいていた田豊が答えた。

 

「何でも沮授が上手く立ち回ったようですよ。彼女はそういった処世術には長けていますから」

 

「何をやったんだ奴は……」

 

 田中は思わず頭を抱え込みながら言う。もし袁紹配下の古参組と対立をすれば面倒なことになると考えたのだ。

 

「分かりません。『女はいくつか人には言えぬ秘密を持っているのですよ~』とか言ってましたけど」

 

「頼むから問題だけは起こすなよ」

 

「大丈夫でしょう。逢殿も大喜びで特別に報酬出すとか言ってたくらいですし」

 

 田豊の言葉にひとまず史実のような権力争いが起きることはないと思い、一安心をする田中。

 

「なら、良いんだが……。そういえば、元皓何か用事かい?」

 

「ええ。田中殿が望んでいた新たな戦力です。ようやく人材が集まってきたので、回せる人材が出来ました」

 

「おお。早いな! それでどなたかな?」

 

「入りなさい」

 

 そう言って田豊は外の人物に声を掛けた。

 するとドアが開き、二人の女性が入ってきた。一人は眼鏡を掛けており、深緑を思わせる緑色の髪を持つ女性。もう一人はかなり背が小さく、髑髏の付いた帽子を被り、青みがかった緑色の髪を持つ少女である。

 

「こちらがあなた方の上司に当たる田中殿です」

 

 田豊が田中の紹介を行うと二人とも田中に臣下の礼を取る。

 そして眼鏡を掛けている人物から話し出した。

 

「私の名は賈詡、字を文和と申します」

 

 続く髑髏少女の方も話す。

 

「ねねの名は陳宮、字は公台です。宜しくお願いします」

 

 田中はまたも優秀すぎる人材が来たと頭を抱え込んだ。


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