この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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第五章は書くことが多すぎて困る。
登場人物の多さもそうですけど、何より連れてきている面子がもう、ね?


まぁ、こうなるよね

 

 

 

 

 夢を見た。

 いつも頼りになる。傍から見ると少し……いえ、とってもおかしいと感じてしまう大好きなマスターの夢。恐らくこれが、サーヴァントとマスターの過去を契約のパスを通じてみることができるという現象なのでしょう。

 

 先輩は自分とは違う普通の人間であるはずなのに、彼が生まれた家から出ることは殆どありませんでした。毎日毎日、自室と道場と思わしき広い場所まで行き、日本刀や槍、空手、投擲、鎌等を振るっている毎日でした。……ほとんど数日で修めるという結果になってしまっていましたけど。

 関わる人は彼を生んだ両親くらいで他は武器の扱いや、身体の動かし方を教えている先生としか関わることができない毎日。本人にとってはそれが当たり前だったのです。

 

 おそらく、他の人からしたら、それなりに疲労する生活を送っていたのではないのではと思います。私は似たような生活しかしたことがないので今一実感をすることはできないのですが、職員の皆さんの話を聞いているとそう思います。

 

 けれど、そんな先輩にも明確な変化が訪れました。それは今カルデアにも召喚されているスカサハさんとの出会いです。恐らくこれが彼とスカサハさんの初邂逅なのでしょう。どこからともなく現れたスカサハさんを先輩はとても怪しんでいました。当のスカサハさんはまったく気にしていないようで、ぐいぐい話は進んでいきました。そうして、先輩にとって地獄とも思える二週間が始まったのだと思います。

 

 スカサハさんの槍は容赦なく先輩の身体を貫いていました。流石に実際の槍を使ったわけではありませんでしたが、スカサハさんの技量で模擬槍を振るわれても十分死ぬ危険性はあると思います。それを彼は必死になって回避したり、後ろに飛んだりと何とか致命傷いならないように立ち回っていました。

 そんな中、彼から話してもらったサバイバルの様子も見ることができました。……先輩はとてもコミカルにただ大変だったと話してくれましたけれど、そんな言葉で片付くようなものではないです。出てくる動物一つ一つ、どうやらスカサハさんが何かしらの細工をしていたのか、確実に普通の猛獣たちよりも強かったと断言できます。象が足を踏みしめただけで地震が起きたり、縮地じみた速度で襲い掛かるチーターなんてどう考えてもおかしいですから。

 

 ……ただ、そんな生活の中で先輩のねじは外れてしまったのではないかと思いました。サバイバルの終わり間際で既にその片鱗は見え始めています。普通に考えて、こちらを喰らおうとした口の中に手と共に武器を捻じ込み、口を閉じられる前に口内から頭を狙うなんて思いつかない上に実行しようだなんて思わないと思います。けれども先輩はそれを平気な顔をして行っていました。

 それを機に日々の修練や、夢で行われるスカサハさんとの戦いでも明確な違いが現れました。前に比べて躊躇というものがなくなったように思えます。そして、その様を見て何よりも疑問に思ったことは―――

 

 

――――そうして、どう考えても逸脱してしまった思考を手にしながら、まるでその状態が()()()()()()()()()姿()であるように()()()()()()()()()()()()()()()()でした。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

「ふぅ、レイシフト完了ですね。ここは1783年アメリカ―――のどこかの森ですね。正確にはまだアメリカではありませんけれども、この年で終結する独立戦争によってアメリカ合衆国が誕生することになります。……けれど、言ってしまいますと独立戦争の勝敗によって歴史が大きく変わることはありません。独立の意思を見せた段階で、何十年か遅れることにはなるでしょうが、どちらにせよアメリカ合衆国は誕生していたでしょう。なので、ここで起きる特異点化の原因は不明瞭ですね……」

 

「いつもの事だし、どうってことないない。只……今回の範囲はアメリカで、すっごく広いんだよなぁ……」

 

 特異点となるくらいだから、そこまでわかりにくい変化ではないとは思うんだけれども、それでもアメリカという大陸はでかい。今まで以上に疲れる探索になることは間違いないだろう。

 

「というわけで、遠見のルーンとかありません?」

 

「そんなことで魔力を消費していいのか?何があるのかわからんのだ。できるだけ節約したほうが良いだろう」

 

「足が使えるなら使っとけ。それで見つからなければ使えばいいだろ。……というか、そこの弓兵に見てもらえばいいんじゃねえの?」

 

「なに?私の力が必要だと?いいだろう。()()()()()としての眼を存分に使おうじゃないか」

 

 妙にアーチャーを強調するエミヤ師匠。自分がアーチャーじゃないと思われている自覚でもあるのだろうか。アーチャーと思われたいのであれば、前衛に出なければいいのではないかと思うのですが(←前に出るマスター)

 なんて俺の内心を悟ることができているわけもなく、エミヤ師匠は自分の眼を使用して森の中の付近で最も高い木の上に登って周囲の状況を見る。三十秒ほどしてエミヤ師匠はすぐに下に降りてくる。

 

「どうやらこの森の外で、かなり厄介な状況になっているようだぞ」

 

『君たちは本当に僕ら泣かせだな!仁慈君、今エミヤが言った通りだ!森の外でかなり大規模な戦いが繰り広げられている。ちょっと急いだほうがよさそうだぞ!』

 

「了解」

 

 ロマンからの通信を受けて、この特異点に連れて来たサーヴァント。師匠と兄貴、エミヤ師匠に目配せをしてから森をでる。森の中は素早く迅速に移動するとともに、森の出口では気配に気負付けつつそこから出ていく。

 

 森からでた俺たちが目にしたのは、鎧に近接武器や弓を装備した今まで目にしたような兵士たちと、量産型アメリカンカラーバベッジとしか言えない機械と銃を装備した人間が戦っている姿だった。どちらも視界に入りきらないような人数であり、俺たちは丁度その二つの勢力がぶつかり合っている中間地点に出現してしまった形になっている。これはマズイ。ほぼ確実に両方の陣営から攻撃を受けるパターンだ。

 

「……セタンタ、これは」

 

「あぁ、恐らくこいつは……」

 

 兄貴と師匠は今まで見てきたような兵士たちに心当たりがあるのか、神妙そうな顔つきをしているが、残念ながらじっくりと考え込む時間はなさそうである。どちらの陣営も俺たちがお互い敵としている奴らの増援だと思い込んでいるらしい。俺たちの近くに居る兵士たちをそれぞれ派遣して、攻撃を開始していた。お前ら同時に攻撃しているのをみて俺たちが第三勢力ってわかんねえのか。

 

『―――ッ!?仁慈君戦闘準備だ!結構な数が居るから気を付けて!』

 

「了解。というわけで戦闘開始」

 

「はい!この特異点での初戦闘、開始します!」

 

 号令と共にそれぞれがそれぞれの相手と戦いを開始する。普通の兵士の方は今までの兵士よりは強かったものの、それでもまだサーヴァントと呼ばれる存在を倒すにはまだ足りない。師匠や兄貴と言った真の強者に根こそぎ倒されていた。けれども彼らの表情は今一晴れない。やはり何かしら引っかかっているようだ。後で聞いておこうと心の中で決めると同時にこちらも量産型アメリカンバベッジへと向き直る。

 

「機械の兵隊なんて……随分と近未来の戦いだったんだなぁ。独立戦争」

 

「いえ、先輩。実際の独立戦争にこのような兵器は使用されておりません」

 

「というか現代でも使われていないぞ。ほら、無駄口を叩いている暇があるなら戦うことだ」

 

 エミヤ師匠に注意された俺は、いつもの如く四次元鞄から彼が精製した剣と、師匠が作った武器類を上に向けてばら撒く。そしてその直後に例の如く隠れて居るマシュの盾から飛び出した。同時に彼女にもアイコンタクトで好きに暴れていい旨を伝える。

 

 盾から飛び出した俺を狙う量産型アメリカンバベッジ。しかし、銃は撃たれてしまえば対応が難しいが、照準を合わせるという工程を踏まなければいけない。それは戦いにおいて致命的な隙となる。

 まず、俺の正面で照準を合わせる量産型アメリカンバベッジに持っていた短刀を投げつけ、銃を使えなくする。その後、先程ばら撒いておいた武器を引きぬきつつ接近、頭と思わしき部分に刀を突きさした後に、その更に後方で銃を構えている別の機械兵(略称)にぶつけた。ぶつかりあった機械兵たちの状態を確認しないまま俺はその場で跳躍し、後方から向けられ、放たれていた銃弾を回避しそのまま空中で身体をひねって背後を振り返る。その流れで手に持っている刀を投擲し後方にいた機械兵の胴体部分を突き刺す。

 

 その状態で手にあらかじめ刻んでいたルーンを発動する。するとばら撒いていた武器のいくつかが俺の手元に吸い寄せられるように飛来してきた。飛来する武器を掴むと同時に投擲、掴んで投擲、投擲、投擲、投擲……それらを繰り返しながら落下するころには周辺の機械兵はすべて鉄くずと化していた。

 

「ば、馬鹿な!?閣下から頂いた強化外骨格ハードワークMk-2が全て破壊されただと!?しかもあんな華奢な女の子やひょろい男の子にか!?ま、まさかあれが報告にあったサーヴァントタイプか!ちっ、前衛後退!援軍が到着するまで下がれ!」

 

 この前線の司令官と思わしき人物の号令と共に、機械兵たちはその場から引いて行く。とりあえず近代的な部隊の方は何とかなったかと思い、師匠達の方を確認すると向こうも戦いを終えていたらしく、槍を下ろして一息ついていた。

 

「戦闘終了です」

 

「お疲れ様……とりあえず、この場から離れようか。さっきの言葉を聞くに少なくとも量産型バベッジを使っている連中は援軍を要請しているようだし」

 

「そうですね」

 

「確かに一旦落ち着ける場所の方がいいな。マスターに報告したいこともあるしな」

 

「そうさな。―――仁慈、此度の特異点。一筋縄ではいかないかもしれんぞ」

 

 師匠の言葉を聞いて俺の精神的疲労感がMAXになった。この人がこんなことを言うのだから十中八九事実なのだろう。今から先が思いやられる。はぁ……と溜息を吐いた時、エミヤ師匠の焦った声が届いてきた。

 

「―――避けろマスター!」

 

 彼の声に指摘され、俺は反射的にバックステップを踏む。するとその直後、俺が先程まで居た場所に大砲のようなものが飛来していた。もしエミヤ師匠の言葉がなければ俺はあのままあの大砲に潰されていたことだろう。

 彼に礼をいい、いち早くこの場から離れることを決意した俺は、再び俺たちがレイシフトした際に居た森の中に入っていくのだった。

 

 




早速ナイチンゲールとであうフラグをへし折っていくスタイル。
内のマスターは自分で戦えちゃう系マスターだからね、キリモミ回転なんてことにはなりませんとも。

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