あと、課金しました。爆死しました。私はもう課金しないことを決めましたとも。ええ。
第五特異点 プロローグ
夢を見た。
出てくる人影はとても朧気で聞こえてくる音にもどこかノイズがかかったような音質だったが、その夢はここカルデアで生活していた誰かのだということが推測できるくらいには覚えている。恐らく、あれは彼女の見た夢なのだろう。彼女の感じていたことなのだろう。
「………よし、今日もいつも通りの時間だ」
近くに置いてある若干近代的な時計を眺めて現在の時間を確認する。……今見た夢に関して気になるところは多々ある。
「……フォーウ……」
「お、久しぶりの出番だね。フォウ。これいる?」
「フォー、キュ!」
いつの間にか俺のベッドへと潜り込んでいたらしいこのカルデアの不思議系マスコット兼ランナーのフォウが何やら神妙な面持ちでこちらを見ていたのでお腹がすいたのかと思い、こんな時のために備蓄してあった彼専用に開発した食料を用意する。
もぐもぐと食料を食べるフォウの姿に浄化をされつつ、俺はカルデアの礼装に着替えて管制室を目指す――――前に食堂で朝食を作るためにそちらへと先に足を運ぶことにしたのであった。
現在、朝の5時である。
「ではいただきます」
『いただきます』
食堂。
職員たちは皆が交代交代で働いてくれているために大体この時間にいるし、サーヴァント達も睡眠等は特に必要がないため、カルデアの朝食は割と早い。いただきますの挨拶については、俺とエミヤが徹底してそういい含めたために面子を見ると少し間抜けな様にも見えるが揃えて言う様にしている。アイサツは重要だからね。仕方がないね。
「って、そういえば仁慈君。こうやってのんびりと食事をしている時間はないんだ。次の特異点へレイシフトする準備が整ったんだ」
「じゃあロマンの食事はしまっちゃいましょうねー」
「あぁー!ごめんなさいごめんなさい!食事、ジュウヨウ、絶対!」
いい年した成人男性が涙目で両手を精一杯伸ばすという光景に憐れみを覚え、取り上げた食事を返すことにする。ロマンは「美味しいって自分から思える料理は初めてだから、とりあげないでー……」と言いながらパクついていた。そこまでロマンの食事情は酷かったのだろうか……。いや、酷かったんだろう。だって所長が俺の料理なんかで即堕ちするくらいだし。やはり研究機関というか、そっち系に特化しすぎたのが駄目だったんやな。
さりげなくロマンやカルデア職員の近くに食べれる量のおかわりを配置すると、俺は一足先に食器をかたずけ、先に食べ終えた人の食器や、その後に運ばれてくる食器を洗う作業に入るのだった。
――――――――
「コホン、それではブリーフィングを始めます。まず、仁慈。今日もご飯は美味しかったわ」
「ありがとうございます。所長。ところで久しぶりですね。てっきり死んだものかと……」
「私を助けてくれた貴方がそれを言うの……!?」
「あはは、所長も順調に仁慈君に汚染されていますねー」
「料理の感想をまず最初に言ってくるあたり、結構芯まで漬かってるよねぇ。これ」
「そこ、うるさいわよ!」
指をさして医療部門と技術開発部門のトップに対して注意をするカルデアの最高責任者。字面はとても仰々しいが、実際に状況を見てみるとそこまで緊迫したような感じではない。これがレイシフト前の空気である。いったいどうしてこうなってしまったんだ……(すっとぼけ)
「……ん‶んぅ。それでは話を元に戻します。まず、前回の特異点において私たちの敵がはっきりとしました」
「あの魔術王ですね」
「そうです。人理の焼却を行ったのは本人の発言から見て、魔術王で決まりでしょう。……今後とも魔術王が私たちの妨害に来る可能性がないわけでもないのですが……そこは気にしなくても大丈夫でしょう」
珍しく確信に満ちた声音でそう断言する所長。基本的にヘタレで保身を第一に考えがちの彼女からすればとても珍しいことである。
「おそらく、魔術王はこれからも己のやるべきことを優先するでしょう。しかし、あの時『お前たちの時代は既に消滅している』と言いました。……つまり、魔術王にとって人理焼却は既に
なるほど。
確かに、魔術王はぶっちゃけて言うと詰めが甘い。一つ一つのアクションでとても強力にして絶対に近い結果を叩き出せる所為か、手を一つ打つだけでそれを終わったことだと片付けている傾向にあるように思える。俺が監獄塔に送られたことだった、魔神柱が設置されていたものの、結局はそれだけだった。万全を期すならもっとムリゲー仕様にするべきである。例えば、7つの支配者ボスラッシュとか。……ほんと、ここ最近の高難度はなんでも高い体力のサーヴァントを連続して出せばいいと思っているから困る。
「……どちらにしても、私達には特異点に赴き、その時代の修復をしていくこと以外に道はありません。邪魔するにせよ、してこないにせよ選択肢なんてありません」
「極論ですねぇ。真理ですけど」
結局俺たちにできることは邪魔する連中は蹴散らして、目的を達成することだけで、ラスボスがたとえ途中でちょっかいだして来たとしても物理で押しとおるしかないのだ。
「ところで今回の特異点はどこなんです?」
「……今回の特異点は北アメリカ大陸です。いわゆるアメリカ合衆国でしょうか」
「ここは魔術的にはそこまで重要な部分ではないのだけれど、人類史の観点で見ればローマにも匹敵するくらい重要なところだからね」
まぁ、確かに。独立とか現代では世界でもかなりの力を持った国でもあるし、世界的にも影響力はかなりあるからね。納得。
「あそこかぁ。私的には勝手に暗号を書いたことにされた国だなぁ。描いている途中そんな余裕なんてないっつーの。精々クライアントに対する愚痴くらいだっつーの」
「………あぁ、ダ〇ヴィンチコードか」
というか、そのクライアントへの愚痴が暗号と誤認されているのではなかろうか。つまりは自業自得……いや、やめよう。俺の勝手な想像で周りを混乱させたくない。脳内でくだらないことに思考を費やしているとロマンがさらに補足で説明を入れた。
「でも、魔術的に重要ではないからと言って全く魔術がなかったわけではないよ。向こうには精霊を呼び出したりする……なんて独特の魔術があったらしいからね」
「それに、サーヴァントの存在を前もって確認しています。その数や具体的な場所は不明ですが……かなりの人数と見ていいでしょう。決して油断しないように」
「了解です」
ロマンと所長の話を聞き終え、隣にいるマシュに視線を送る。彼女も真っ直ぐにこちらを見つめ返してきている。どうやら準備は万全のようである。さて、それじゃあレイシフトとしようか。
あえて特異点に行くサーヴァントを晒さないスタイル。