この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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小川ハイム 二階、三階、四階

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジキル―――じゃなかったハイドだハイド。というわけでハイドを倒したのちに、先程のハイドにはジキルが居なくなっていたということに疑問を持った式がメフィストフェレスに問いかける。

 彼曰く、このマンションはサーヴァントの属性を変質させる効果があるらしい。具体的に言えば恨みがましくなるんだとか。生前にそれを抱いた人物にはクリティカルヒットとのこと。ジキルもそれに飲まれて消えてしまったということらしい。

 生前に恨み辛みを抱いて死んだ英霊ねぇ……。基本的に、英雄と呼ばれた人物たちが死ぬ場面というのは総じて救えない場面だ。そうでもしなければ英雄と呼ばれた人物たちが死ぬ条件がそろわない。恨み辛みを持っていない連中の方が少ないのではないのだろうか。ジキルだってそれがヒットしてああなったわけだし。これはかなり厄介かもなぁ……。

 

 

 

――――204号室

 

 

 

「クヒヒヒ!いいですねぇ、いい感じで焦げ臭い。臭います、臭いますよぉ。これは私と同類の匂いがしますねぇ。生前の悪行から噂され、恐れられ”あんなことをする奴が人間なわけがない。きっと怪物に違いない”と死後に相応しい罰を受けたクリーチャーの匂いがねぇ!」

 

 場所は一階上がって二階。1、2、3と表札がかかっていてようやくそれがない4号室。下の階と同じくくらいひび割れたその部屋に入った瞬間、メフィストフェレスが声高々にそう宣った。どう考えてもこの部屋に住んでいる住人を煽っている。流石悪魔。こんなの言われたらプッツンしますわ。と、考えて居たら、意外にも帰って来た声はメフィストフェレスを咎めるものではなく賛同する声だった。

 

「―――ハッ、その通りよ。しっかりと喋れるじゃない道化。なに?今さら引っ越し祝いにでも来たわけ?アタシが暗いレンガの部屋に引っ越したから」

 

「エリザベートさん………」

 

 マシュの呟きが耳に届く。そう、メフィストフェレスの言葉に返事をしたのは俺達のカルデアに居るエリザベートだった。最もその衣装はオルレアンで会った時のものになっており、ハロウィン仕様ではなかったが。しかも、変わっているのはそこだけではない。いつも無駄に自信に満ち溢れ輝いていた瞳は完全にハイライトがボイコットを起こしたレイプ目と化していた。普段の彼女を見慣れている俺達からすればその様子は異質と言える。

 まぁ、彼女の属性と反英霊という性質から本来はこっちの方がらしいのかもしれないが。どちらにせよ俺たちが知っている彼女でないのは確かだろう。

 

「いえ、あれは確かめなくてもわかります。あれは私たちが知っているエリザさんではありません」

 

「もしかしてダークエリz……ゴホン。なんでもない」

 

「今なんて言おうとしたのかしら。まぁ、いいわ。今の私は正真正銘の無辜の怪物ってワケ!いい得物連れて来たじゃない道化!さて、どうしてやろうかしら?エビみたいに生きたまま肢体を捥ぐ?それとも豚みたいに内臓を焼いてやろうかしら?まぁ、どちらにしても殺すわ!さぁ、始めましょう殺し合いましょうニンゲン!精々その断末魔で私を楽しませなさい!」

 

「―――ッ!エリザさん戦闘態勢です!」

 

「――――一応、聞いておくけど、戦わないっていう選択肢は?」

 

「あるわけないでしょ!家畜の癖に気にくわないわ!」

 

 だろうね。こうなることはわかり切っていた。高いところからありを落としてもありが無傷で静観するくらいにはわかり切っていた。これは唯の形式というやつだ。まさか、普通に帰ってくる気があるのにいきなり倒しにかかったらこっちが悪いし。

 

「そうだ。ロマン。ここで彼女を倒したらどうなる?まさか、また召喚しろとか?」

 

『いや、彼女との契約は生きてるし、カルデアに居る英霊たちは基本的にカルデアをホームとしてくれている。だから、倒してもこっちで勝手に再召喚されるよ』

 

「―――――――うん。それを聞いて安心した。じゃあマシュ。やろうか」

 

「はい」

 

「俺には何もなしか。まぁいいけど」

 

「いつまでも余裕ぶっこいてんじゃないわよ!」

 

 しびれを切らしたエリザベートが元のクラスに戻ったことで手にした槍を持って突撃をしてくる。その動きはサーヴァントということと無辜の怪物の補正により凄まじいことになっている。だが、残念ながら、彼女は本来貴族。戦う者ではないのだ。いくらステータスが高くても高い技術を持った相手には勝てない。

 エリザベートの槍をマシュが一歩も下がることなくその場で受け止める。その隙に俺と式は両サイドをとり、式はナイフで俺は無手で彼女に向かう。

 

「甘いのよ!」

 

 それに対してエリザベートは無辜の怪物のスキルによって生えている尻尾で応戦しようとする。部屋にある壊れ気味の家具が吹き飛ぶものの、俺と式には当たらない。危なげもなく回避すると、まずは俺が懐に入り込む。そして、いつものように拳に魔力を流して、震脚を行う。

 震脚の威力と魔力、そして重心の動きを乗せた拳をエリザベートの身体に情け容赦なく突き刺す。

 

「ッ、アァァアァァッァ!!??」

 

 震脚により踏ん張りがきかず後方に飛ばされた彼女。しかし、ここは部屋の中。すぐに壁は迫り思いっきり叩きつけられることとなった。そこに追撃を加えるのは直死なんて卑怯臭いスキルを持っている式。

 彼女はその瞳を青いものへと変化させ、恐らく寿命の線があると思われるところ目掛けてナイフを振るう。

 

「――――――――ッ!!」

 

 効果は覿面。エリザベートは声にならない悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。そういえばメフィストフェレスは全く役に立ってませんね。

 

「ッ、くっ……痛いじゃない……痛いじゃない、痛いじゃない!……やめてよ。教えないでよ。殴られることが、お腹を切られることが、こんなに痛いことだなんて教えないでよ……!今さらニンゲンは皆同じ作りだったって教えないでよ!そんなこと、言われてももうしょうがない!どうしようもない!貴方たちがニンゲンなら、私はもっと下等な生物じゃない!」

 

 嘆く、喚く、叫び散らす。

 その咆哮は確かにエリザベートのものだ。歪んだ貴族の社会に生まれ、何が悪いのか、理解しないままに生きてしまった少女の歎きだ。

 

「トカゲみたい、トカゲみたい、トカゲみたい……!地面に這い蹲って無残に踏みつぶされろっていうの!?……耐えられない。アタシはそんなこと耐えられない!だから、大人しく殺させなさいよ。殺されなさいよ!お願いだから――――――――私を容赦なく殺してよぉおおおおお!!」

 

「サーヴァント・エリザベート消失を確認しました。しかし、今のは……」

 

「えぇ、間違いなく彼女の本音でしたな。私には悲鳴にしか聞こえなかったですが。まぁ?いいガス抜きにはなったのではないでしょうか?あの方、品性というかプライドだけは無駄に高そうですし」

 

「………ま、確かに。普段ならあんなこと絶対に言わないだろうし。本音を出すっていう点ではよかったんだろう」

 

 惜しむべきはそれが根本的な解決になっていないということなんだけど、残念ながら、それはどうしようもない。彼女の性質から言ってどうにかなりそうな気もするしどうにもならない気もする。……その辺は本人次第というところだろうなぁ。

 

『そうかなぁ……。今のが間違いなく彼女の本音だとしたら、そのうち自家中毒で本当に怪物になったりなんて―――――』

 

『たたた、タイヘンだロマニ!理由はわからいけど、急にエリザベートがうちの工房に攻め入って来た!”今は気分がすっきりしてるから特別に料理を作ってみたの!喜んで、泣きながら食べなさい!”とかいって!あ、ちょっと待って。何で皿が溶けてるのかな!?……なん……だと……ゴーレム三体を焼いてお団子クッキーにしてみただって……?あぁ、助けてロマニ!一人じゃなんともでき――――』

 

『…………』

 

「…………」

 

「…………」

 

『――――よし、何事もなかった。カルデアはいつものように平和だ仁慈君。だから君は気にせずに探索を続行してくれ。僕も全力で君のサポートに取り掛かる。むしろそれ以外はしない!』

 

「………せめて、まるごしダビデくんがあれば……!」

 

 とりあえず、現状エリザベートには問題がなさそうなので、適当にロマンに言葉を返すことにした。

 

「ちょっと俺、空気過ぎないか?」

 

 

 

 

――――――304号室

 

 

 

 なんか、色々すっ飛ばしてね?と思うそこのあなた。残念。このマンション思ったよりもガバガバです。二階にはエリザベートしかいなかった。そして、三階はこの部屋が最後である。

 

「お邪魔しまーす」

 

 マシュが扉を開けてご丁寧にそういうと、中から明るい声ではーいと返事がした。返事がしたということで中に入っていくと、今までの部屋とは打って変わり罅割れても折らずきれいに整頓された部屋の中でカルデアの二大お母さんであるブーディカが鍋を回していた。決してから鍋ではない。

 

「やあ、こんばんは。マシュに仁慈。アタシの部屋にようこそ。もしかして迎えにきてくれたの?」

 

「まぁ、そんなところ」

 

「ふふ、それはありがとう。あ、丁度シチューができたところなんだ。よかったら食べていく?」

 

「は、はい!よかったです。先輩!ブーディカさんはいつものブーディカさんでした!いつもの、頼りになって、優しくて―――抱きしめられたらほわっとするブーディカさんです!」

 

「え、私そんなハグ魔だったかなぁ……?」

 

 ………一見、普通に見える会話。しかし、先程俺が迎えに来たと言った時彼女は確かに敵意を抱いた。それはエリザベートとは違う。相手がしっかりと定まっている燃え盛る憎悪だ。一回目は何とか耐えたあたり、完全に変質したというわけではないのだろうけど、もう次は耐えられないだろう。マシュも彼女が普通と判断してしまった以上この後帰ろうと笑顔で語り掛けるだろう。その前に、言っとくか。

 

「いや、シチューはカルデアに帰ったから貰うことにするわ」

 

「――――カルデアに帰る、ね。それは私も一緒に?」

 

「ブー、ディカ……さん?」

 

「もちろん。俺たちの目的はカルデアから消えたサーヴァントをカルデアに戻すことだし」

 

 一緒に帰る。連れて帰る。その言葉を肯定した瞬間、部屋の風景が一変する。綺麗なだった部屋はもはや見慣れた罅割れたものに変わり、彼女もグレードの上がった盾と剣を持って武装完了状態だ。

 

「あたしは帰らない。私に帰る場所なんてない。だって―――――全部お前らが奪って行ったんだ!あの人の親族は私たちだけだった。王には私と娘しかいなかった!だから私が相続したのに―――――女には相続権がないとか言って―――――お前たちが!ローマ(お前たちが)!全部奪って行ったんだ!……私は忘れていた。人類を守るとかいう大義名分の前に忘却してしまっていた。この怒りを、この憎しみを、この憎悪を――――――!」

 

「ブーディカさん……」

 

「―――――マシュ、戦闘準備」

 

「それを邪魔するものは誰であろうと許さない。勝利の女王の名の元に、その首を晒すがいい……!」

 

 ブーディカが初めて発するだろう殺気、そして恨み辛みの感情。それを直接叩きつけられたマシュはその身体を固まらせてしまう。……まぁ、無理もないことだ。時に母親のように慕い、時に姉のように想った彼女から殺気をぶつけられるなんて思いもしなかっただろう。

 敵との心構えは出来て来たけれど、何らかの事情で仲間だった者と戦う覚悟はまだできていないのだろう。そういう場面は限りなく少ないし仕方ないことではある。が、このブーディカはこちらの事情なんてお構いなしに襲い掛かってくる。ということは、当然俺の取るべき手段は決まっている。踊りかかった彼女の攻撃を後ろに身を引くことによって軽減しながら受け止めつつ、マシュに話しかける。

 

「きついなら、見てるだけでもいいよ」

 

「――――――――いえ、やります。エリザさんの時と同じです。つらいなら、苦しいなら早く解放してあげなくてはいけません」

 

「―――そうか、ならよし!式も手伝ってくれます?」

 

「今回はしっかり声もかかったし、さっきよりもやる気だしてやるよ」

 

「舐めるな!」

 

 勝利の女王。その名前に偽りなどない。集団を動かす力も強く個人の武勇も立つ。だが、残念。こちらは単純計算にして4人。約一名は全く役立たずといってもいいのだが、式とマシュが居ればこちらは常勝である。

 

 一度俺から距離を取った、彼女だが、マシュが逃がさないと言わんばかりに一歩踏み込み、ブーディカに距離を取らせないようにしている。

 

「くっ!このっ……!」

 

「はぁぁぁぁあ!!」

 

 ブーディカの剣と盾による連続攻撃を的確な盾捌きで完璧に防いでいく。盾の英霊、その名は伊達ではない。

 

「邪魔……するなぁ!!」

 

「いくらブーディカさんのお願いでもそれは聞けません!!」

 

 今度は憎しみの籠ったブーディカの叫びを受けても一歩も引かずむしろ言い返すくらいの気概を見せていた。それを見た俺はもう心配ないと判断して、気配を消し、ブーディカの死角を取った。同時に式がブーディカの背後を取る。

 

「バレバレだよ!」

 

 バッと上空を振り返り、式の方に盾を置く。………盾と剣、両方使った彼女にもう攻撃を防ぐ手段はない。スッと時間をかけず彼女の懐に入り込んだ俺は、エリザベートの時と同じく魔力を込めた拳をブーディカの脇腹に見舞う。今回は一発だけでは終わらせない。吹き飛ぼうとした、彼女の身体の反対側に回り込み、もう一発見舞い逆方向に吹き飛ばす。

 

「……ああ……あたし……何を……。あ、そっか、アハハ。恥ずかしいところ見せちゃったかな?勝利の女王(ヴィクトリア)なんて……あたし、大事な大戦ではいつも負けてたのにね?」

 

 自嘲するブーディカ。それに対して、マシュは優しく微笑みながら、消えていくブーディカを抱きしめた。その光景はいつもとは全くの逆。

 

「そんなことはないですよ。……大丈夫です、大丈夫」

 

「あ、あは、は……ホント、情けないなぁ……。仁慈もごめんね。先にシチュー作って待ってることにするよ」

 

「楽しみにしてる」

 

 俺の返答と同時にブーディカは消えた。

 

「サーヴァント、ブーディカの消失を確認しました」

 

「ん、ならさっさと帰ってシチュー食べに行こうか」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「やっぱり、アサシンのお嬢さん。私と同類なんじゃありませんか~ァ!?こうして無視されているところなんて特にねぇ!」

 

「戦闘にすら出てないお前と一緒にするな」

 

「ヒャーキビシー!ヒヒヒヒ」

 

 

 

 

―――――404号室

 

 

 

 一階以降の階層がマジで過疎っている件について。二階三階四階と結局二部屋しかサーヴァントがいなかったんだが。四階も最後のところまで来てしまったし。

 

「でも先輩。一階と同じパターンだとするなら、そろそろハイドさんと同じような人が現れるかもしれませんよ?」

 

 マシュの指摘は十分にあり得る。というか、どうやら彼女の言葉に反応して向こうからやってきたようだ。

 

「―――立ち去れ、ここより先は死霊の吹き溜まり。生者が足を踏み入れていい場所ではない」

 

「――――――――(唐突な馬の登場に唖然としている)」

 

「敵性反応現れました。先輩、戦闘準備に入ります!」

 

 現れたのはこちらもロンドンで遭遇した槍を持ったアルトリア。顔は相変わらず見えないが、嵐を先、槍をぶつけた相手だからこそ見間違うことはない。正直、オルタでアルトリアならそこまで酷い汚染はされていない気がする。元々オルタがそれっぽい変化だし。そして、マシュがブーディカの件もあって張り切りまくってる。おかげで向こうさんまさかの動揺である。

 

「………む?」

 

「なんという禍々しい、魔力でしょう……!これはメフィストさんですら上回る、混沌・悪のサーヴァントと断定します」

 

「いや、まて」

 

「っ!甲冑越しの眼光を受けるだじぇでも感じるこの寒気……なんて血も涙もないサーヴァントなんでしょう……!気をつけてください!彼女は話の通じる相手ではありません!」

 

 ……言いたくはないのだが、現状一番話が通じないのはマシュなんだ……。ほら、相手の槍を持ったアルトリアのその動揺がよく感じられるんだけど。

 

「えぇい……!いい加減気づかぬか、マシュマロ娘!」

 

「マシュマロ!?」

 

「クックック……話を聞く必要はありませんよぉ!あれはまごうことなき邪悪なサーヴァント。きっと中身もないスケルトンナイトに違いないのですから!」

 

「誰がスケルトンだ、この道化師もどき。よく見よ!」

 

 言われようのない風評被害に痺れを切らしたのか槍を持ったアルトリアはその鎧を脱ぎ捨て自身の顔と何故か体までも晒し始めた。Xとは比べるまでもない豊満な肉体を惜しげもなくさらすその姿はヒロインXが居なくてよかったという安堵を思い浮かばせるには十分なものだった。

 

「――――――――――!(唐突な露出に呆然としている)」

 

 ついでに式のキャパシティーもオーバーしてしまったようだ。

 

『なんとー!?RECだ!久しぶりにRECの準備だーっ!』

 

 ロマンのロマンを越えてしまったようだ……。なんだろう。色々カオスなんだけれども、これこのままスルーしてもいいのだろうか。

 

「待てトナカイ。この状況を無視しようとするんじゃない」

 

「いや、こんなのスルーしたくなる―――――ってちょっと待って、今トナカイっていった?」

 

 彼女から聞くはずのない言葉に俺は耳を疑う。あれはサンタクロースの恰好をしたアルトリアが言うものであって、決して目の間に存在する槍を持ったアルトリアが発言するものではない。

 

「………まさか……」

 

「フッ、その通りだトナカイ。この通り、霊基すら変化してしまったようだが、元はみんな大好きサンタクロースのお姉さんである」

 

 絶句、というのはまさにこのことだろう。隣でぽかんとしている式を馬鹿にできない。いったい誰がこのようなことを予想できるのだろうか。というかどうしてここにいるのだろうか。クリスマスなんてとっくに終わっているんだけど。

 

「何を言う。私がいる限り、一年中クリスマスだ。むしろ、私の存在がクリスマスであることの証明だ。……それはともかく、ここには報われない子どもたちも存在している。ということであれば、子どもたちの味方である私の出番だということだ」

 

 普段は決してついていない豊満な双山を大胆に逸らしながらドヤ顔をかます槍を持つアルトリアに見せかけたサンタオルタ。彼女曰く、周囲に侍らしている幽霊もすべて子供の幽霊であるとか。なんなんだこの人。

 

「―――――――で、俺たちは戦うのか?」

 

 とりあえず、浮かぶ疑問はすべて丸投げして本題を切り出す。すると、サンタオルタ(槍トリア)は首を横に振った。

 

「私の役割は、力なきものがここから上に行くのを阻止すること、そして子どもたちへプレゼントを配ることだ。トナカイであれば、実力など試すまでもない。そこに、死を視る眼を持つ者もいるようだしな……というわけで、これが先に進むための鍵だ。持っていくがいい。ちなみに、私はすべてが終わったら勝手に帰る」

 

 それだけ言い残して、その姿を消す。

 …………なんとも微妙な感じで鍵を手に入れた俺は、馬が現れたり、露出したりでキャパシティーオーバーになっていた式を叩き起こして上に向かうことを決めた。

 

 

 

 

 




ロマン「ところで、どうして令呪を使って自害をさせなかったんだい?ブーディカとエリザベートを。まさか相手が女性だから使わなかったってわけじゃないだろ?」

仁慈「……回数に制限があるし、物に当たりたい時もあるだろ」

ロマン「………ちなみに面白いから的な理由でこの場にとどまっているサーヴァントは?」

仁慈「自害……は令呪が勿体ないから、数で潰す」

ロマン「知ってた」


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