この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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ここから空の境界イベント開始です。
セイバーウォーズ?既にXがいるので無効です。


空の境界コラボ ~キチガイさん、ようこそ幽霊マンションへ~
……すごくいい夢だった。だって戦闘がないんだもの


 

 

 

 

 

 

 

 ふと、何かに呼ばれたようなというは普段とは明らかに違うなという感じ目を覚ます。

 するとそこは例の如く俺が眠っていた部屋なのではなかった。しかし、だからと言って師匠の気まぐれであの冥界とも言ってもいい影の国に連れていかれたわけでもなさそうだ。何故なら、目に映る風景には桜のような花がそこら中に舞い散っており、空気も死んでいる影の国ではありえない雰囲気だからである。

 

「……しっかし、なんか温かいというか、懐かしい感じがするなぁ……」

 

 うまくは言えない。

 けれど、来たことがないのに言いようのない安心感を覚える。実に不思議なところだ。まぁ、ここ最近は特異点に行ってたし、こう落ち着けるところにこれるのはありがたい。夢で別次元に飛ぶとかもう普通のことだって割り切ってるし。

 

「あら。ここにお客様が来るなんて、どんな間違いかしら」

 

 どうやらここにいるのは俺だけではないらしい。声のする方向を見てみると、そこには結構値の張りそうな着物に身を包んだ女性が立っていた。ついでにその顔はヒロインXがアルトリア顔と判定するか否かの微妙なラインに立っている。うん。でも不思議なことに彼女ではどうあがいても勝てない気がする。

 

「夢を見ているのなら、元の場所におかえりなさい。ここは境界のない場所。名前を持つアナタが居てはいけない世界よ?」

 

「いや、自分から来たわけじゃないんだけど……」

 

「あら?求めてきたわけではないの?なら――――ごめんなさい。縁を結んでしまったのはこちらの方みたい。今のうちに謝っておくわ、仁慈君。……でも、一方的に私が悪いわけじゃなさそうよね。……ふふっ、私達意外と似た者同士なのかも」

 

「はぁ……」

 

 縁を結んだ等のところはわからないけど、似た者同士というところには少々心当たりというか予感はある。なんというんだろう。貴方とは他人の気がしない、わけではないけど、完全に初対面って感じでもないという曖昧なラインだ。

 

「けど、簡単に仁慈君がこっちに来た理由は大方読めたわ。どうせ、外で切った張ったのロマンスの欠片もない事件の所為でしょう。ちょっとだけ、今の自分にできることを見誤っちゃったのね」

 

「………さっきから意味深な発言ばかりしてるけど……何か知ってるの?」

 

「いえ。これは全部予想。普段は眠ってるしね。このことも含めてもっとあなたとお喋りしていたいのだけど――――――――残念。もう夜が明けてしまいそう。夢は終わる頃みたい」

 

 その女性の言う通り、自分の意識が外へと引っ張られる感覚がする。これが夢だというのであればおそらくもうじき目が覚めるということなのであろう。あれだけ視界にちらついていた桜のような花びらも徐々に見えなくなっていき、女性の姿もおぼろげになる。

 しかし、わずかに機能を残していた聴覚が最後に女性の言葉を拾ってきた。

 

「もしまた会えることになったら、その時は、どうか私の名前を口にしてね?」

 

 

 

―――――――

 

 

 

「やあ、深夜零時だけどおはよう仁慈君。仮眠中、起こして済まない。けど異常事態でね、無理を承知で通信したんだ。すまないけど管制室に来てくれ」

 

「ま、非常事態ならしかたないよね。ロマン、おはよう」

 

「うん、おはよう。異常事態だけどそこまで切羽詰まっているわけじゃないから準備ならゆっくりしてくれていいよ」

 

「なるべく早くいくよ」

 

 ………通信が切れたことを確認して俺は心中で考える。ロマンっていつ休んでいるのだろうか。深夜ということだが、あの声音は普通に起きている時の声音だ。起きて来たばかりという寝ぼけの混じったものではない……。今度、エミヤ師匠とかに相談してみよう。

 

 

「先輩!」

 

「フォウ、フォーウ!」

 

「こんばんは、マシュ。ついでに久しぶりな気がするねフォウ」

 

「ンキュ!」

 

「こんばんはです。……はっ、挨拶は古事記に書いてあるくらいに大事なことですが今は緊急出動要請が出ていたんでした。管制室に急ぎましょう。先輩」

 

「そうだね。………ついでにマシュ。古事記の下り、誰に教えてもらったの?」

 

「Xさんです」

 

「絶許」

 

 ロマンの体調のことを考えつつ外に出るとマシュと遭遇。挨拶を交わし、ついでにマシュに余計なことを吹き込んだであろうXに文句をつける算段を付けつつ俺たちは管制室に向かう。

 

 

 特に誰とすれ違うわけでもなく管制室にたどり着いたレ俺たちは、険しい顔をしているロマンの下へとやって来ていた。

 

「ああ、二人ともそろったね。まとめて説明できるからよかったよ。早速だけど、モニターを見てくれ。世界地図の日本のあたりね」

 

 ロマンの言葉通りにそこに視線を向けてみれば、俺たちが一番初めに修復した冬木の特異点を見つける。いつもは日本にある特異点はそれだけなのだが、今日は違う。その近くに妙なものが存在していた。

 

「……フユキの隣になにかありますね」

 

「そう。この揺らぎは冬木のものとは別でね。数日前から観測されているんだ。はじめは小さい誤差で、特異点F修復の揺り戻しなんて考えていたんだけどね……いつまでたっても消えないからちょっとシバの角度を変えてみたんだ。そしたら、」

 

「生体反応がありますね。座標は燃え尽きているはずなのに」

 

「それだけじゃない。生体反応はごくわずかだけど、動体反応はとんでもない数だ。おまけにシバをどう弄っても規模、時代ともに不明。完全にブラックボックス。この座標にレイシフトしないと分からない状況だ」

 

「なんだいつものことか」

 

 つまりはいつものことじゃないですかヤダー。今までの特異点だって時代と場所がわかっていただけだし、その中で何が起こっているのかという点については不明のままだった。それを考えれば時代と規模なんて俺にとっては関係ない。日本ってだけで、今までよりははるかに有利に働くはずだ。

 にしても、動体反応だけはあるなんて、自動人形やゾンビみたいな連中がウヨウヨしてるってことだよなぁ……バイオでハザードな特異点なのだろうか。

 

「どうして生体反応が少なくて動体反応だけは多いのかと気になっている子はいないかー?」

 

「あ、間に合ってます。……どうせゾンビとかその辺の連中がウヨウヨしているということだろ?」

 

「まぁそういうことだね!流石仁慈君!略してさす仁!……っとこんなこと話している場合じゃない。別にゾンビ云々は脅威になり得ないからどうでもいいんだけど……ゾンビ以外の厄介な問題があるんだよ」

 

 ダ・ヴィンチちゃん曰く。この特異点擬きは人類史にとっての穴であり、どういう理屈かわからないにしろサーヴァントたちを引き寄せて閉じこめているらしい。それはここカルデアも例外ではない。カルデアに居るサーヴァント達もいくらか自発的にそちらに行ってそこから帰ってこないとのこと。一応契約は生きているらしいのだが、かえって来ないということは、自分から帰ってこないかあるいはそうならざるを得ない状況にされているかということだ。

 

 故に、この特異点の調査をしてほしいとのこと。こちらとしても戦力であるサーヴァントたちがいないのは物凄く困るために当然了承した。

 

「ま、ホントはこういう場所に行くためには所長の了承が必要なんだけど……オルガマリーが寝ちゃっててね……。まぁ、僕の独断でおkということで」

 

「雑だな……とりあえずそれはいいや。ところで、誰が居なくなったのさ」

 

「えーっと……エミヤ君とタマモキャット、清姫以外の全員……かな?」

 

「マジか」

 

 予想以上に居なくなってしまっている件について。これはなんとしてでも取り戻さざるを得ないな。

 

「因みに、今回こちらからのバックアップはできない。サークルも設置できない。完全に君たちだけで戦うような状況だ。だから、無茶なことはしないように。……あと、これはついでなんだけど、これから見るだろう光景は君にとって馴染みの深いところだろう。だから、マシュに色々教えてあげて欲しいんだ。彼女はそういう風景を見るのは初めてだろうからね」

 

「了解」

 

「?」

 

 コンクリートジャングルを見て特に言うことなんてないが、マシュが知りたいのであればこの樫原仁慈、全力を出さざるを得ない!

 

 

―――――――

 

 

 レイシフトした先は俺の予想通り。日本でよく見る光景だった。そこら辺にそびえたつマンションをはじめとする建物。設置するだけでかなりの電力を持っていく自動販売機。そこら辺に乱立している街灯は、真夜中と思われる今の時間でもしっかりと周囲の光景を映し出してくれている。カルデアに来てから久しく見ていなかったコンクリートジャングルだった。

 特異点を回っているからか、この光景がとても懐かしく感じるなぁ……。なんて感慨に受けっていると、隣のマシュがプルプルとその身体を震わせていた。

 

「アスファルトで舗装された車道……壁のようにそびえる高層建築……これは……これは……!間違いありません。ここは二十一世紀の日本の都市部です、先輩!」

 

 超テンション上がってる。なんだこれ、今までに見たことのないわけではないが、それでも上位に入るくらいのテンションだ。しかも、恰好は戦闘時のもので、でかい盾を持ちながら興奮しているさまは何処かシュールだった。

 

「見てください!破壊されていない自動販売機があります!公衆電話も、バス停もあります!ああ、あのお家っぽいものはトイレですね!そして、どこもかしこも清掃が行き届いています。街も静かで人影もない、パーフェクトな治安です!噂の不夜城、コンビニエンスストアが見当たらないのは残念なのですが、それはそれ。本当に資料通りの街並みなんですね………マシュ・キリエライト、夢が一つ叶いました!」

 

「くすっ、それはよかったね。……ま、人理修復が終わったら、色々別のところを見て回ればいいよ。所長も許可を出してくれるでしょ」

 

『あー、てすてす。通信、映像、ともに良好っと。それにしても、予想通りやっぱり日本の首都部か。……けど、ここまで正常な都市部だとは思わなかったな。冬木ほどひどくないにせよ、ところどころ壊れているのかと思ったけど……』

 

「……そうですね。普通であることが逆に怪しいです。通常の生命体は私と先輩の二つ、高次元の生命体反応はあのビルに確認できますが……それ以外は皆無です。これだけの住宅が立ち並んでいるにも関わらず、です」

 

 マシュが指さすのは一つのマンション。

 この建物だけは他のものとは違い、丸いフォルムを持っていた。そして、傍から見るだけでもよくない雰囲気を漂わせているのが分かる。

 ……しかもよく見たらひとりの人影とその人影に群がるゴーストまでいた。雰囲気どころのレベルじゃなかった実際に見えるまである。

 

『!そのマンションの近くにサーヴァントっぽい反応と敵正反応あり!おそらくゴーストだ!』

 

「先輩!」

 

「とりあえず行ってみよう」

 

「はい!」

 

 そういってマシュと二人でその人影のところへと駆けだしていく。ま、傍から見るだけでも助けが居るとは思えないな。現にその人影は特に動揺したわけでもなくポケットからナイフを取り出してゴーストに斬りかかっている。俺たちが着くまでには片付くだろう。実際に、斬られたゴーストはスゥっと消えたらしい。

 

『!ゴーストの反応は一気に消失!?霧散じゃなくて消失だって!?消しゴムで消すみたいに残留思念が消えた!ナニコレ怖い!どんな異能だ!?』

 

 ゴーストって今まで消失じゃなくて霧散だったんだ……。知らなかったわ。

 そんなことを頭の中で浮かべつつ、現場に向かってみれば、遠目から見ても不機嫌そうな顔をした女性が立っていた。………何だろう。とっても見覚えがある。具体的には夢であったような気がする顔つきをしてる。髪の毛は短いし、着物の上から赤い上着羽織ってるけど。

 

「あれは、ナイフを持って着物を来た少女……でいいのでしょうか?先輩、一応聞いておきますけど、あの方と知り合いってことは……」

 

「ないね」

 

「ですよね。……とにかく会話を試みてみます」

 

「その必要はない。アンタらの話は長そうだし。善人であれ、悪人であれ、頭にこれを突き刺せばこんな現実からはおさらばだ。厄介事に首を突っ込んだのはその頭だろ?なら綺麗さっぱり、元居た場所に帰してやるよ」

 

 取り付く島なし。

 着物+上着という何処かミスマッチなナイフを持つ女性は言い終わると同時にこちらに向かって駆けだした。その瞳は先程までの黒色ではなく中心が青くその周辺が虹色に近い輝きを放っている物へと変化させて。

 

「来ます!わけがわかりませんが、とりあえず応戦を!」

 

「………」

 

 あの眼、絶対にやばい奴だ。散々鍛えられた(強制)第六感が囁いている。あの攻撃には一度も当たるなと。これはちょっとマシュだと相性が悪いかもしれない……。

 

「マシュ、ちょっと申し訳ないんだけど、この戦いで盾の使用は控えるように。ついでに攻撃にも当たらないで」

 

「は、はい……?」

 

 首を傾げているようだが、ここで説明している暇はない。相手の得物はナイフで超近接型なのはほぼ確定だろう。ならば、ここで取り出すのは同じ得物。既に先手を許している以上今更距離を取るなんてことはできない。なら、多少無茶でも同じ土俵に立つしかないのだ。

 

 槍ではなく、ナイフを取り出して素早く構えると、俺は彼女のナイフを受け止めた。しかし、そのナイフは相手の攻撃を受け止めただけで崩れ去る。一応、師匠が夜なべして作ったゲイボルク(ナイフ)だぞ。それを一撃で壊すとはやはりやばい。ナイフから特別なものを感じない以上、確実にあの眼だ。

 遮るものがなくなったために、はじめの目的通り、ナイフが俺に襲い掛かる。しかし、そこは我らの頼れる後輩。マシュが横からシールドバッシュを行うことによって攻撃は中断された。まぁ、攻撃事態はヒットしなかったけどね。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ありがとう。助かった」

 

「いえ、それが私の役目ですから……。それより、先輩、そのナイフはそこまで壊れやすいものでしたか?」

 

「そんなわけない」

 

 と、会話している場合ではない。向こうはこちらの死角に入りながら再びそのナイフで俺たちの命を狙っているのだ。このタイプは今までであまり見ないタイプ。俺と同じく勝つためには手段を選ばず、不意打ち上等のタイプだ。なら、狙うべきところもわかるし、誘導も容易い。

 

 するりと懐に入り込んできた相手のナイフに手をかけようと右手をのばす。しかし、流石にそう簡単には取らせてくれないらしくするりと交わされてしまう。

 だがそれこそがこちらの狙いだ。一瞬でも意識がナイフのほうに向かってくれればいい。その隙に俺は渾身の蹴りを相手の腹を蹴とばす。

 

「ち、不覚……。けど、なんかいいなアンタ。面白い。なんか気が合いそうだ」

 

「」

 

 ニヤリと笑った。どうしよう、師匠とは別ベクトルで面倒くさい気がする。気が合いそうっていうのは否定しないけど。まぁ、相手が殺しに来ているんだし、こっちもその気で行かないと速攻で殺されそうだ。

 

 心配そうにこちらを見やるマシュに指示を出しつつ、俺は気を引きしめた。


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