この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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七章が終わり、課題も終わり、小便王が来るということなので、勢いで投稿。


もう、ゴールしてもいいんじゃないかな

 

 

――――――――期待はずれにも程がある。

 

 ここ最近、家の中には入らないとはいえ物凄い量で街中を動き回るヘルタースケルター。流石にこのままではあれかと何か打つ手はないのかと頭を悩ませる中。カルデアのドラえもんことダ・ヴィンチちゃんの解析であれらはある意味宝具に似たものであり、全てのヘルタースケルターに指示を出している奴もいるという。その言葉でその司令官的な役割を背負う機械を見つけ出すために、そいつらの居場所がわかるというフランを引き連れてロンドンの街に切り出した。

 

 そうして、実際にその機械に会ってきたわけだが……外見も中身もただでかいだけのヘルタースケルターだった。とんだ期待外れである。攻撃パターンまでそこまで変わらない。変わったことと言えばその強度だろう。今まで一突きで壊れていたのが三回突き刺して爆散するということに変わっただけだった。しかもこれでしっかりとすべてのヘルタースケルターが停止するという有様。もっとロボット然としているかなぁとか淡い希望……もとい妄想を抱いた結果がこれである。流石にへこんだ。

 

「マスターが妙に落ち込んでいます……。おかしいですね。ヘルタースケルターは停止して私たちの活動がしやすくなったはずなのに……」

 

『マシュ。漢はね。誰しもロマンを背負っているものなんだ』

 

「?」

 

 流石ダ・ヴィンチちゃん。自分の求める最高の女体を目指し、最終的に自分がそれになるという変態的偉業を成し遂げたある意味での先達者。憧れはしないがその並々ならない執着には敬意を表せるレベルだ。ま、俺の心情はどうでもいいとして、結果を見れば敵の主戦力とはいかないが先兵もしくは目の役割を持っていたであろうヘルタースケルターを潰すことだ出来ただけでも十分だったと言えるだろう。今日はもう寝よう。昨日、主に作家組とうちのどこに出しても恥ずかしい低能サーヴァント(某月の数学者並みの感想)たちの所為で寝れなかったしな。そろそろ一回本格的に休んどかないと死ぬ。

 

 そんな感じで、今回は作家組のサーヴァントにも強制的に退場(物理)をしてもらい、ぐっすりと一日寝ることにして、実際にぐっすりゆっくりすることができた。おかげで体調はロンドンに来てから一番いい。

 ……ま、俺の体調が回復したと同時にまたヘルタースケルターが起動し始めたようなんですがね。

 

 その報告を受ける過程でフランケンシュタインと知り合いであり、本来この時代には生きていないはずのチャールズ・バベッジという人物の存在をジキルから知らされたがそんなことより今はヘルタースケルターだ、という感じで言った本人を含めてそこまで真面目に取り合っておらず、フランを連れてさっさとこの前のようにリモコンを見つける作業へと向かって行った。俺は先導するモードレッドの背中を見ながら、これってBじゃね?と考えていた。いや、だって。本来この時代に生きていない人物がいるとか怪しいと思うじゃん?

 

 

 

 

 

 

 

――――――――フランのレーダー(仮)を頼りに昨日と同じく司令塔の役割を持っているような奴を探すが、今日は中々ヒットしなかった。昨日と打って変わった状況に俺達もそろって首を傾げる。もちろん。最初は中々見つけられないのかとか、敵の方も対策を取って来たのかもしれないと考えたが、明らかにフランの様子がおかしかった。先導する足取りにも迷いが見えていて、しかもそれは場所がわからないからではなくどうすれば遠ざかることができるのかという感じの足取りだった。

 俺が気づいたのだから、勘の鋭いモードレッドが気づかないわけもなく、案の定フランに問いただしていた。

 

 それに対する答えは、肯定。

 なんでもフランはこのヘルタースケルターという存在、そしてそれを動かしている人物に心当たりがあるらしい。しかし、彼女の知っているその人物はこんなことをするような人間ではないらしく庇っているとのことだ。心優しいフランらしい庇い方だが、そこにモードレッドが待ったをかけた。曰く、そんな人物がこんなことをしているということは何らかの理由で協力せざるを得ない状態にされているのではないか、と。

 

 モードレッドの言葉を聞いたフランはその発想はなかったという表情を浮かべたのちに早くしなければと体全体を使って俺たちを急かし始めた。モードレッド含めた俺たちは苦笑を浮かべつつも急ぐ彼女を追うことになった……。

 

 

 

 

 と、言うのが現在に至るまでの経緯である。さて、そんな語りをしている俺が今どこで何をしているのかと言えば……。

 

 

「ほぉ………」

 

 

 たどり着いた場所は街の中心に噴水。ここはもう既に何度か通ったこともある場所であるが、どうやら濃すぎる霧で分からなかったようだ。灯台下暗しとはまさにこのことだろう。

 フランの言葉にしたがい、魔力で限界まで視覚を強化し、目を凝らす。すると、濃い霧の中にぼんやりとした輪郭が浮かび上がった。恐らくこれが大本なのだろう。そう認識した瞬間、ヘルタースケルターの大本と思わしきものが、ピコンという音とともに起動する。シューシューという蒸気の音と駆動音をまき散らしながら、その機械は一歩、また一歩とこちらに踏み出して来た。

 

 そうして、しっかりとその外見を確認できる位置までやってくる。

 明らかになったその身体はヘルタースケルターとにたデザインでありながらその大きさはそれをはるかに超えている。そして何より、動く度に蒸気を噴き出す音と、地面を踏み鳴らして揺らしているさまは一昔前のロボットのようであった。これはテンションを上げざるを得ない。警戒心からむやみに近づいたり触ったりすることはないが、蒸気で動くソレとかロマンの塊だぞ。

 

「先輩の瞳がとんでもなくキラキラしています……」

 

『男の子だからね』

 

『ふふ、その気持ちは大いにわかるよ仁慈君!』

 

 呼び名からロマンあふれる男(ロマニ・アーキマン)ロマンを極めし者(レオナルド・ダ・ヴィンチ)からの援護が入る。が、マシュには理解できなかったのか首をコテンと傾げていた。それもまた致し方なし。多分、お持ち帰りをしようとした南蛮大好きノッブならわかってくれるかもしれない。

 

『―――――――聞け、聞け、聞け。我が名は蒸気王。在り得た筈の未来をつかむこと叶わず、仮初として消え果た、はかなき空想世界の王である。そして、魔霧計画の首魁が一人、魔術師Bである』

 

「ちっ、確定かよ単純すぎて全く気づけなかった自分に腹が立つ。まぁ、いい。それは後だ。いいか、よく聞け鉄くず。お前の知り合いの娘がほかでもないお前を止めに来たぜ」

 

 後押しを受けてフランが一歩前に出る。魔術師B―――チャールズ・バベッジもフランのことは覚えているのか、彼女の悲痛な呼びかけにしっかりと応対していた。もちろんこの間俺が不意打ちをかますことはない。フランが必死に呼びかけていることもあるし、会話が通じるのであればそれで解決するに越したことはない。フランが説得してくれれば首魁の一人から情報を聞き出せるという打算もあるけども。何も、誰もかれもを問答無用で攻撃するほど世紀末ではないのだ。しっかりと敵と認識したあたりで攻撃を仕掛ける。…………………戦闘準備だけはしておくけどね。

 

 

 せっせと俺が武器を用意する中、フランとバベッジの様子はどうかと言えば、傍から見ている限りではしっかりと効果が表れているようだった。バベッジも人の身体を捨て、あそこまでロマンあふれる体になったとしても理性が残っているらしく、フランの手を取ろうとシューシュー言いながら巨大な身体をこちらに一歩動かした。

 

 だが、協力体制を敷く暇もなく、バベッジは暴走に近い状態へと陥ってしまう。ロマン曰く、聖杯を通した令呪の仕様が確認されたと言っていた。恐らく彼は令呪によりこちらを攻撃しなければいけない状態にされてしまったのだろう。いまだに呼びかけを続けるフランだが、モードレッドは既に無駄と割り切っているらしく、フランを後ろに下げると俺に視線をよこす。

 モードレッドはフランの守りに入るために援護はできない。つまり、バベッジは俺とマシュで相手にするしかないのだ。他のサーヴァントは召喚サークルもある重要な拠点であるジキルの部屋を守っているためいないし。ま、何とかしますけれども。

 

「先輩。敵、大型サーヴァントのチャールズ・バベッジです」

 

「了解。フランのために、速やかに終わらせよう。なるべく壊れないようにね」

 

―――――――――サーヴァントだし手加減なんて必要ないし、したら俺が死にそうだけど念の為ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――いやぁ、チャールズ・バベッジは強敵でしたね……。

 

 激闘の末、俺とマシュは何とかバベッジを止めることができた。しかし、その過程で彼の身体は既に半壊、特に霊核を傷つけたためにもう現界することは不可能な状態になってしまった。

 予想以上に令呪が強く、ちょっとの損傷で彼は止まらなかったのである。そのため、こちらとしても仕方なく彼の霊核を直接攻撃し止めることとなったのだ。フランには正直申し訳ないと思っている。

 

「……ゥゥ…」

 

「―――――――これで良いのだ。ヴィクターの娘よ。所詮私はかつて見た夢の残滓、消え切らなかった想いの具現。命なきものだ。人間を捨て、我等が碩学の何たるかということでさえ忘却した時、こうなることは決定したのだ」

 

「……ァァ………ゥァ……」

 

「……シティの地下に行くがいい。そこに、聖杯を核とした巨大蒸気機関アングルボダがある。それがこの霧を発生させている原因だ」

 

「それは本当か?」

 

「事実だとも、遠き世界の隣人よ。この世界は確かに、私が想い、焦がれた世界とは違う。だが、それでも、隣人たち、の、世界を、終わらせようとは、思わ、ない――――」

 

 

 最後にそう言い残し、チャールズ・バベッジは光の残滓となって消えていった。

 

 

 シティの地下。

 このシティの地下にそんなものがあったのか、と思いつつ俺は天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 バベッジとの一戦から再び一夜明け、入念な準備を整えてから俺はバベッジに言われた通り地下に訪れていた。ちなみに戦力はカルデアから来たサーヴァント達全員とナーサリーである。本当はナーサリーもフランやジキルと一緒に待っていて欲しかったのだが本人がどうしても聞かなかったのだ。

 

「ごめんなさいね。わがままを言ってしまって」

 

「別に構わないけど、何か心境の変化でもあった?」

 

「そういうわけではないわ。只、ジメジメした空気と濃い霧に飽きたのよ。そろそろポカポカなお日様の下でお散歩でもしたい気分だわ」

 

「なるほどね」

 

「マスターマスター。そろそろセイバー出てきますかね?ぶっちゃけ、私この特異点に来てから全くと言っていいほど活躍していないんですけど。そろそろ私の華麗な剣技を、セイバーとしての実力を見せつける必要があると思うのですがどうでしょうか」

 

「ヘルタースケルターを腐るほど倒してきておいて何をいまさら」

 

「のう、マスター。わしさ。お主と役割被ってると思うわけよ。ほら、わしの神性特攻持ってるし?………これわしの出番なくね?」

 

「大丈夫大丈夫。俺のは複数に当たったりはしないから。爆発はするけど。それにノッブは騎乗特攻あるでしょ」

 

「……そういえば私も影薄くない?おかしいわよね?スポットライト浴びてないわよね?これアイドルとしてどうかと思うわよね?」

 

「問題ないんじゃない?いつか日の目を浴びる日が来るよ」

 

「ご主人。散歩の時間だ。首輪を持て。あと、キャット的にこの先の展開上、殺意溢れ結果になりそうなのだが、タマモ地獄を見せるということでよろしいか?」

 

「よろしくない落ち着け。………そんなに暇なら目の前で道を塞いでいる連中を殴りにでも行って来い」

 

 ここぞとばかりに話しかけてくるサーヴァントたちを追い返しながら俺は溜息を一つ吐く。

 現在、シティの地下とやらに居るのだが、道のいたるところに敵が潜んでいるのだ。そりゃ、敵にとっては計画の中枢だし無防備だとは思ってないけれども、ここまで大量にいると果てしなく面倒くさいです。

 

 聖剣が光り、火縄銃が入り乱れ、カボチャが降ってきて、人参も飛び交う謎現場を眺めている間にさっさと目的地と思わしき場所に着く。

 本来ならこういった場所に着くと、意気込みというかそういったことを言ってから突入するのかもしれないが、この面子でそんなことをすることもない。普通に侵入する……どころか。

 

 

「突き崩す神葬の槍!」

 

 

 開幕ブッパをかますのだった。

 

 

 

 敵の本拠地って言われたら、もうこうするしかないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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