この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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なんかパッとしませんね……。


染まった人、そうでない人

 

 

 

 

「えーっと………これは一体どういうことなの……かな?」

 

「なんか大人数で駆けこんでしまって申し訳ありません」

 

「一応、こちらでしっかりと目をつけておきますんで」

 

「いやそうじゃなくてね………」

 

 ヒロインXと剣で語り合って多少のいざこざを洗い流したらしいモードレッドに連れられて向かった先はロンドンのとある一室。彼女の協力者が住んでいる住居だった。流石海外。たとえ一室だとしても結構な広さを誇っている部屋だった。まあ、それでも少々きついくらいの人数を連れてきてしまったために協力者である穏やかそうな青年の表情が微妙に引きつっていた。本当に申し訳ない。

 開幕からそのような謝罪を交えつつも、モードレッドの説明を元に俺たちの状況そして、彼らの状況を把握していく。

 

 モードレッドに協力している彼の名前はヘンリー・ジキルというらしい。ここロンドンで碩学―――科学者のようなことをしているとのことだ。そのジキルに話を聞くと、現在ロンドンの街に充満している霧はおおよそ三日前に発生したものらしい。ロマンが言ったように人体に悪影響を及ぼすものであり外に出るにはマスクが必須とのこと。しかも、それでも霧の濃いところには足を運べないそうだ。更に更に、ロンドンの街を脅かしているのはその霧だけではない。

 俺達も戦った謎の自立人形や、ホムンクルス、ロマンあふれる怪機械、最後に連続殺人鬼切り裂きジャックと呼ばれるものも出現しているとのことだ。まさに、ロンドンを舞台にする創作物の宝庫と言ったところだろう。一応この霧は室内に入り込むことは無いようだが三日間も孤立状態では近い未来に限界が来るだろう。

 

「……このまま放置しておけば、」

 

「ロンドンの市民は全滅……」

 

「その通りさ。………だからこその提案なんだけれど、僕たちと手を組む気ないかな?」

 

 ジキルがそう提案する。

 彼からすればここに来て一気に霧の中を歩ける人材が増えたのだ。是が非でも手に入れたい人材だろう。自分たちとしてはそれでもかまわないのだが、一応こちらにもここにきた目的というものがある。それを口にしようとした瞬間に通信越しに会話の内容を聞いていたであろうロマンがジキルに向けて話しかけた。

 

『こちらとしてもそれはとても助かる。多分僕たちの利害は一致しているだろう。この霧を生み出しているのは十中八九聖杯……もしくはそれに近いものが関わっているはずだから』

 

「ありがとう。………正直ほっとしたよ。なんせ――――」

 

 ロマンの返答に安心したのだろう。力を入れていた肩をリラックスさせて息を吐いたジキルはふぅと息を吐きつつモードレッドの方に視線を向けてから、続きを口にした。

 

「君たちのところに居たあのそっくりさんに、セイバーがぞっこんだからね……」

 

 そう。こうして会話している間でも、ヒロインXとモードレッドはべったりとくっついていた。正確にはモードレッドが近づこうとしてヒロインXがそれを拒んでいる形になっているのだが……傍から見てもわかる。恐らく俺たちが別々に行動することになったとしたら彼女は間違いなく俺たちの側……正確にはヒロインXの元に行ってしまうだろうと。

 

 そのことに気づいた俺は四次元バックの中からいざという時のために作っておいたお菓子を少々取り出してジキルへと手渡した。すると彼から物凄い穏やかな顔でありがとうとお礼を言われた。泣いた。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 俺のだしたお菓子をお茶うけにして軽い息抜きを行い、何気に霊脈の真上だったジキルの部屋に召喚サークルを作成した後、俺たちは再び濃霧が漂うロンドンの街へと繰り出していた。 

 ジキル曰く自分の協力者であるヴィクターという人物の様子を見てきてほしいそうだ。というわけで、ジキルの護衛用にヒロインXとタマモキャット、ハロエリを置いて俺たちは出てきたのである。

 

『まさかジキル氏の協力者にフランケンシュタイン氏が居るとはね………連絡系統などはどうなっていたのかわかるかい?』

 

「その辺はジキルの管轄だ。唯、あいつの話だと少なくとも昨日の夜までは無事だったらしい」

 

 なら意図的に無視しいているのか、通信に出れないくらいに忙しいのか切羽詰まっているのか……もしくは死んでいるかのどれかということになるだろうな。

 

「………厳しいことを言うようじゃが、生存の確率はそこまで高くないと言えるだろうよ」

 

「だろうね」

 

 何やらは何込んでいるマシュとモードレッドの前を歩きながらノッブと話を行う。当然これは誰でも思いつく可能性なため、モードレッドもジキルもその可能性にたどり着いていることだろう。しかし、それでも行ってみる価値は十分に存在する。土地勘をつかむことにもつながるしな。

 

「それにしてもあのおっぱいマシュマロは何を話しておるのかの」

 

「さあ?なんか色々あるんじゃないの」

 

「デミ・サーヴァントです!というかそれは唯のセクハラですよ!」

 

「………聞こえていたのぅ」

 

「そろそろそれ、やめてくれませんかね?彼女の溜まりに溜まった負債がどこで爆発するのかわかったもんじゃないから」

 

 普段怒ることのない人が怒ると怖いというのは鉄板だろう。その時に何とかして事態を収束させるのは間違いなく俺になる。彼女がそうなるとは思わないが、何事も確定などはしていない。十中八九そうなる前に俺は原因を潰しにかかるけれども。

 

 なんにせよ、マシュに余計なストレス等を抱え込ませるなとノッブを殺気で脅しておく。世の中にはオルタ化というものがあるのだ。冬木であったアルトリア・ペンドラゴン然り、オルレアンで会ったジャンヌ・オルタ然り。この流れでマシュ・オルタとか出てきてみろ。絶望しかないぞ(俺が)

 多分、いや……絶対に勝てない。戦おうという気すら起きない。そのまま精神的にサヨナラコースだ。

 

「………前々から思っておったんじゃが……お主のその、神聖視とも言える対応は何なんじゃ?あのマシュマロが尊いものであることは当然わしも理解している。色々言われていても、お主はあくまで人間じゃからな。しかし、それにしてはちと、度が過ぎておらんか?………何かほかにあるのであはないか?」

 

「………さて、どうだろう」

 

 別に特別なことなんてない。

 少々特殊な家に生まれて、色々なものを兼ね備えて生まれただけで、そこまで深いものを抱え込んでいると良いわけでもない。マシュをそこまで思っているのも、ほとんどが癒しという意味で相違ないし。

 

「ま、深くは尋ねんよ。わしとしては割とどうでもいいし」

 

「おう貴様この槍が目に入らぬか」

 

「アーチャーであるわしにそれは効くからやめれ」

 

「慈悲はない」

 

「是非もないよネ!」

 

 いつもの流れを復活させてどことなく暗い雰囲気を消し去る。

 そして、チラリと背後にいる二人を確認したのと同時に、今までの街並みでは見ることのできなかった家へとたどり着いたのであった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「よっし、着いたな。このでかい屋敷がヴィクターじいさんの家だ。ジキルみたいな半端ものとは違ってじいさんは正真正銘の魔術師だからな。気を付けた方がいいぜ。結界やら不可解な何かやらが大量に仕掛けてあってな、当たるとサーヴァントでも地味に痛い。……初めて来たときは大変だったぜ」

 

「そうなんですね。私も気を付けます。……先輩も気を付けてくださいね」

 

「おう。……………ヒロインXが居ないと割とまともなんだな(ボソボソ」

 

「そうじゃな(ボソボソ」

 

「?」

 

 とんでもなく失礼な感想を平然と本人の前で口にする仁慈と信長。幸い、モードレッドの耳に届いてはいなかったらしく不思議そうに首を傾げるだけだったが、ロマンは聞こえていたため、内心同意しつつも話を変えるために自分の考えを口にした。

 

『ゴホン……それにしても街中にそんなデストラクション工房を作るなんて……随分と肝の据わった、用心深い老人だったようだね……』

 

「……………どうやらそれも、大して意味がなかったようじゃがな」

 

「ちっ、遅かったか」

 

 しかし、ロマンの気づかいは無に帰すこととなる。

 何故なら仁慈たちが今から入ろうとするフランケンシュタイン宅のドアの前に既に先客が存在していたからである。

 その人物は、到底フランケンシュタインの客であるとは言いにくい恰好だった。まるで道化師のような格好をして笑みを浮かべながら佇んでいる。

 

「マシュ、戦闘態勢」

 

「……はい」

 

 仁慈の雰囲気が戦闘時のものへとなっていることを感じ取ったマシュは彼の言葉に従い盾を構えた。その隣では既に信長が火縄銃を手に取り、いつでも発砲できるような態勢を整えていた。

 

「へぇ……流石父上を召喚するだけのことはあるな。……そこのお前。阿保みたいに臭うぞ。血と臓物と火薬の匂いがな。お前、殺したな。ヴィクター・フランケンシュタインを」

 

 モードレッドの言葉にピエロ然とした男は彼女たちの方に視線を向けて唇の両端を釣り上げた。

 

「えぇ、えぇ。確かに、確かに。彼のご老体はもう二度と食事をすることも、歯を磨くことも、息をすることもありませんけども。えぇ、有り体に行ってしまうと絶命しているのでしょう」

 

「うっとおしい話し方」

 

 どこかもったいぶるように、意味のない言葉を繰り返すピエロ然とした男に仁慈が思わず感想を呟く。だが、向こうはその呟きを全く以って気にすることなく続きの言葉を紡いでゆく。

 

「残念なことです。彼は最後まで『計画』に参加することを拒んだ。しかししかし、だが、けれどもしかし。誰がヴィクター・フランケンシュタインを殺したのか?……それはとても難しい質問かもしれません。何故なら彼は一人でに爆発したのですから!」

 

 今までで一番の笑顔を携えつつ、両手を広げて高らかに、歌う様に、そう宣言する。マシュはその様に押され、その表情を引きつらせた。

 ピエロ然とした男はそれに対して申し訳なさそな顔をしつつ、自分の自己紹介をしていく。

 

「おやおや、美しいお嬢さんを怖がらせてしまいましたか?これは失礼しました。わたくし、見ての通り悪魔でございます―――――――――というのは冗談で、期待に背くようですが英霊です。貴方たちと同じサーヴァント、真名はメフィストフェレス。クラスはキャスターです」

 

「隠す気がありませんね……」

 

「隠す必要がないからですよお嬢さん。皆さま既にお判りでしょうが、これは純粋な聖杯戦争などではありません!即座の総力戦、それも既に片方が聖杯を持っているという状況なのですから。……我々はマスターなきサーヴァント達、およそ地上に在って最強の戦力としかるべきでしょう。しかし……そちらには哀れにもマスターが居るご様子。ようくお守りなさい。出なければすぐに――――――」

 

「ごちゃごちゃと、薄気味悪ぃ笑みを浮かべながら御託を並べやがって……てめえ、そんなにジジイを殺すことが楽しかったか?」

 

 内心では怒りを抱きながら問いかけるモードレッド。それに対するピエロ然とした男……メフィストフェレスの答えは簡潔なものであり、尚且つその場にいる誰もが予想していた答えだった。

 

「まあ、えぇ―――――我等の『計画』を拒むものであれば、言ってしまえば仕事だったのです。仕事ということはしなければならないというものでして……これがまた実に厄介なのですよ。故に、楽しめるようにしました。―――――――最期の瞬間、あの表情……生から死への切り替わりを理解してしまった人間の顔!絶望!嘆き!ああそれこそが―――――!」

 

 心の底から愉しいと、笑いながらあるいは嗤いながら口調を強めていくメフィストフェレス。しかし次の瞬間には冷静になったように静かな口調へと転調した。

 

「というわけで、ええ、まあ……退屈しのぎ、にはなりました?」

 

「――――そうか。俺が召喚に応じた理由はな、自分のものに手を出されるのが我慢ならなかったからだ。移民とはいえ、あの爺もブリテンの民……つまりは俺のものだ」

 

「――――はて?」

 

「――――要するにお前を殺すってことだよ!この道化師野郎!」

 

 彼女の怒りに呼応するように、紫電を帯びた魔力が彼女から放出される。アルトリア・ペンドラゴンを模しているが故に所持している強大な魔力をバチバチと散らしながらモードレッドはメフィストフェレスに彼女の剣を向けた。

 

 大気も振るえるモードレッドの怒りを向けられたメフィストフェレスは特別恐怖することなく真っ直ぐに対峙する。その様子からは向けられる怒りを楽しんでいる雰囲気すら感じ取れるものだった。

 

「いやはやなかなか!殺しますか、私を!殺せますか、私を!貴方様は血の気が多いお人であるようだ!よろしい、ならばその期待に応えましょう!それでは精々爆発にはお気を付けくださいませ!なんせ、我が宝具は既に設置済み。我が真名、メフィストフェレスの名に懸けて、皆様方を、面白おかしく絶望の淵へと叩き込みましょうではありませんか!」

 

 右手に持っている鋏を構え、これからショーを開催する道化師の如く、両手を広げて宣言するメフィストフェレス。

 

『くそっ、設置したって何をだ!?霧が濃くて感知できない!みんな、十分に気を付けるんだ!』

 

「どうしてこう爆発物には縁があるのかの……やっぱり、聖杯を爆弾に変えようとしたのが悪かったか……」

 

「ヴィクター・フランケンシュタイン氏を引き入れて行おうとしていた『計画』……それも含めてすべて話してもらいます!」

 

「それでは始めましょう!人智を越えた存在たちが織り成す、面白可笑しい恐怖と狂気の宴を!」

 

「―――――――――そうだな」

 

 

 これから戦いが始まる。

 誰の目から見ても明らかなその雰囲気の中、メフィストフェレス目掛けて深紅の光が軌跡を描きながら飛んでいった。

 余りにも意図していない部分から飛来してきた攻撃をメフィストフェレスは対応しきれずに直接受けてしまう。幸いというべきか、致命傷に至る部分ではなかったために、そのまま座に還ることはなかったが、絶頂とも言える状態だったが故に放心にも近い状態になってしまっていた。

 

 メフィストフェレスは自然と、自分の身体に刺さっている深紅の刀が飛んできた方向に視線を向ける。

 するとそこには、いつの間にか自分の周りを同じく深紅の色をした様々な武器が刺さっておりその中心点に先ほどメフィストフェレスが馬鹿にした彼女たちのマスターが立っていた。

 

「さて………俺を守らなくっちゃ即座に、なんだっけ?」

 

 問いかけつつ、自強化した身体能力をフルに使い、近くに刺さっていた槍を投擲する。それは、サーヴァントですら一瞬見失う程の速度であり、キャスターのクラスで現界しているメフィストフェレスには捕らえられないほどの速度であった。

 

 再び深紅の光が、ロンドンに蔓延る霧を切り裂きながらメフィストフェレスに突き刺さる。モードレッドとメフィストフェレスが呆然とする中、この状況に慣れに慣れたマシュと信長だけが追撃に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 あれだけ長々と話しているんだもの。準備くらい余裕だよね、ということであのピエロもどき――――メフィストフェレスが面倒くさい言いまわしで色々情報?を吐いているうちに準備を整えた俺はすぐさまに攻撃を開始したわけだ。今回は不意打ちとは言えないだろう。俺は目の前で堂々と準備をしていたんだ。自己陶酔をして周囲を見ていなかったあれが悪い。

 

 

――――というわけで、サクッとメフィストフェレスを倒しましたとさ。

 

 

「あぁ……今回の現界ではそこまで楽しむことはできませんでしたね。やはり、マスターの存在も必要だと――――」

 

「情報を吐かないのなら、さっさと消えろ」

 

 ついでに余計なことを言おうとしたメフィストフェレスをそのまま座へと還す。こういう輩は情報を吐かせようとして生かしておくと余計なことしか言わないタイプの輩ということは戦う前の話を聞いていればなんとなくわかっていたために、一切の容赦もなく即座に座に還したのだ。

 

「…………さて、それじゃあ中に入ってみるか」

 

 ただ、何処か釈然としないという表情をモードレッドだけが浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、フランケンシュタインの自室。何か計画の手掛かりはないかとがさ入れをしているところである。途中で何かの仕掛けが発動したこともあったが俺は元気です。

 

「あの距離の爆発でもピンピンしておるマスターっていったい……」

 

「ケルト式生存術講座(強制参加、授業料は自身の命と時間)を受けて居なければ即死だった」

 

「おいお前ら、なんか見つかったか?」

 

「はい。博士の残したメモが見つかりました。どうやらこれを書いている途中に襲われたようです」

 

「そっか。最後まで閉まらないじいさんだな」

 

「……………読み上げますね。『私は一つの存在の計画を突き止めた――――――』」

 

 マシュの読み上げた内容は、フランケンシュタインがこのロンドンを覆っている霧を使った計画の存在。そして、それの主導者と思われる人物のそんざいだった。なんでも三人ほどいて、「P」「B」「M」というらしい。彼の予想では人智を越えた存在……すなわち英霊ではないかとの予想も立てられていた。

 

「ふむ……そういえば先程戦った奴はメフィストフェレスでMじゃな」

 

「あれは主導者って感じではないと思うけど」

 

「まぁ、その辺のことは帰ってジキルにでも考えさせればいい。それよりも、オレも面白いものを見つけたぜ。ほら、入って来いよ」

 

「………ゥ」

 

 モードレッドの声に反応して入って来たのは純白のドレスを来た女の子だった。しかし、その外見は普通の女の子とは違い頭にユニコーンの如き一角が生えている。うん…控えめに言っても普通の人間ではないと思う。

 

「女の子?……あの、貴女はサーヴァントですか?」

 

「……ゥゥ」

 

 考えても仕方がないと思ったのか、マシュが直接女の子に話しかける。けれども帰ってきた答えは先程のような呻き声だけだった。ここで俺の頭に一つの考えがよぎる。フランケンシュタインという本来博士の名前が本命であるかのように思われがちである怪物の存在を。

 

「まさか、フランケンシュタインの怪物……?」

 

「正式な名前はわからねえが多分そんな感じじゃないか?こいつが居た棺桶に説明書きみたいなものがあったんだが、そこには祖父ヴィクター・フランケンシュタインが一番最初に作成した人造人間って書いてあった」

 

『なら、確定かな。霧の影響で詳しいことはわからないけれど。話を聞く限りは間違いないだろうね。……ええっと、僕の声は聞こえるかな?君はフランケンシュタインの怪物かい?』

 

「………ァ……ゥゥ……ゥ……」

 

「どうやら言語能力は備わっていないようですね。しかし言いたいことは何となくわかります。流石に怪物何て名前は嫌ですよね」

 

「そうか?わしは好きじゃが」

 

「自ら第六天魔王を名乗る人のセンスはちょっと……」

 

「なんじゃと!?かっこいいじゃろ!?」

 

 すっと目を逸らす。するとノッブはがくりとその場に倒れ伏した。ブツブツと何百年経とうと時代はわしに追いつかないのいうのか……!?と呟いていた。ノッブの場合は別次元だから時間は関係ないと思う。

 

「先輩。何かいい名前を考えてあげてください」

 

「唐突に無茶振りをするねマシュ。……んー……シンプルにフランでどうよ?」

 

「……ァゥ」

 

「ん、気に入ったようだな。じゃあフラン。とりあえずオレたちと一緒に来い。ここに居たらほかの連中が来る可能性もあるな」

 

「…………ゥ」

 

「よっし、じゃあいったん帰るか」

 

 こうして、フランという新たな仲間を加えて俺たちはジキルの部屋へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

「フランより、嘆きの花嫁とかの方がいいんじゃないかの?」

 

「それは名前じゃなくて通称とか、通り名みたいな感じだろ。しかも、ダサい」

 

「――――――(チーン)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




メフィストフェレスの話し方すごくめんどくさい。何だアイツ……。

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