この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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ハッハ!私がシリアスなんて書けるわけないじゃないか!

例の如くキャラ崩壊注意。


奇跡のめぐりあわせ

 

 

 

 

 

 

 

 

「父上、戦い方変わった?いつぞやはかなり正々堂々を素で行ってたと思うんだが……オレの戦い方にも何も言わないしさぁ……」

 

「そうですか?気のせいでしょう。とりあえず大人しく斬られなさいカリバー!」

 

「うぉっ!?……へへっ、不意打ちもしてくるのか。ちょっとばかり複雑だが、面白れぇ!」

 

 あーあ、出会っちまったかな二人、ヒロインXとモードレッドが剣を交える。ヒロインXはアルトリア顔のセイバーということで、冗談とは思えない殺気をモードレッド目掛けてぶつけているが、相手をする当のモードレッドは笑顔である。

 彼女からすれば、並々ならない執着を抱いていた相手が自分のことを無視することなく戦ってくれている上に、自分と似たような戦い方をしているのだ。嘗ては否定された自分の剣術。剣を投げ、足を使い、真正面からの戦いに強いこだわりは持たない……そんな剣術と似たようなものを扱うヒロインXを見て彼女は自分が認められているような錯覚に陥ったのである。こちらもこちらで中々にこじらせていると思う。もはやこじらせすぎていて別世界の彼女が混ざっているのではないかと考えるほどであった。

 

 当然、その様を遠目から眺めている仁慈たちはどうにかしたいと思いつつも、どうにもできないでいた。

 強制的に仲裁に入っても、今後の関係に何かしらの悪影響を及ぼしそうだと考えていたからだ。彼らの名前と戦いぶりを見ればその因果関係など一目瞭然。むやみやたらに敵を増やすことは決して得策とは言えない・・・・・それが仁慈の考えだった。

 

「あの二人、随分と盛り上がっているようじゃのぉ……」

 

「この私を無視とは失礼しちゃうわ。……いっそ、ここで歌って視線を奪ってやろうかしら」

 

「やめるがよい元ご主人。そんなことになれば、このキャット。わずかながらの理性すら野生に還して襲い掛かるワン」

 

「ぶ、物騒なこと言わないでよ……。あと、やっぱり私のこと嫌いでしょ?」

 

「とりあえずハロエリの案は却下。………ま、このままここで突っ立ってても仕方ない。この近くを軽く見回ってみるか……」

 

 二人の戦いは苛烈を極める一方であり、まだまだ終わりそうになかった。そのため仁慈は一回時間を置くためにヒロインXをその場に残して周囲の探索へと乗り出したのであった。……これでは彼女の同行を許可した意味がないじゃないかと思いながら。

 

 

――――――――――――――――

 

 

 そこから二時間後、近場の調査を一通り終わらせた仁慈達だったが、流石に近場の調査だけでは限界があるらしく、そこまで有益な情報を得ることはできなかった。彼らがこの二時間で掴んだ情報と言えば、自律人形以外にも蒸気機関を搭載した男のロマンを刺激する機械が存在するくらいだった。

 そんなことがありつつも、無事に元居た場所へと帰還を果たした仁慈たち。二時間も経っていることから多少の変化はあっただろうと勘ぐっていた彼らだったが、その予想を裏切るような光景が仁慈たちの目に飛び込んできた。

 

 あの二人、まだまだ元気にやりあっていたのである。

 特に大きな傷を負うこともなく、二時間前と変わらないように剣を交える二人。これには先程まで優しい表情を浮かべていたマシュも苦笑を浮かべていた。

 

「まるで変化がないわね」

 

「…………はぁ」

 

「しっかりしてください先輩」

 

「いや、だって。これは横から口出ししたら絶対に面倒くさいパターンだと思うんだけど」

 

「わしも同意するぞ。この手の因縁に横から手を出した者は大体結託された当事者たちにやられるもんじゃ」

 

「ですよねぇ」

 

 信長の発言に仁慈は力なく同意する。

 わかっているのだ。ここで止めに入るということは今後モードレッドを敵にする可能性が高いということくらい。しかし、何時までもここで待ちぼうけを喰らっているわけにはいかず、また貴重な情報源である彼女をみすみすヒロインXに殺されるわけにはいかなかった。やるにしてもせめて情報を貰ってからにしてくれと心底思っていた。故に、彼はここで多少のいざこざが残っても止めることを決意する。もしここで敵対者となった場合には最悪速攻で倒すという考えを頭の片隅に置きながら。

 

「X-!そこの騎士にこの街の状況を聞きたいから少しだけ戦いをやめてもらってもいい!?」

 

「無理です!」

 

「誰だお前は?邪魔すんな!」

 

「知ってた」

 

 聞く耳は持たなかった。

 仁慈は予想通りの結果に再び溜息を吐く。もとより言葉で止まるとは思っていなかったが、まるで相手にされていなかった。

 がっくりと肩を落としつつ仁慈は背後にいる信長とハロエリに視線を向ける。一方向けられた彼女たちはコテンと揃って首を傾げた。

 

「死なない程度に」

 

「「えっ?」」

 

「死なない程度にあの二人を止めてきて。信長がモードレッド、ハロエリがXでお願い」

 

 仁慈の口からで出た言葉に思わず固まる二人だったが、そんな反応をしたところで仁慈の発言が覆ることはなかった。この男、言葉で聞かないのであれば実力で黙らせる気である。当て馬として相性のいい二人を指名していることから確実に自覚があっての指示だろう。通信越しにこれを聞いていたロマンは静かに合掌した。

 

 指名された二人は簡潔な言葉に固まっていたものの言葉の意味を理解した後はごく普通に動き出し、首を縦に振った。もとより容赦など欠片ほど……は言いすぎなもののそこらの人間よりも持ち合わせていない人物たちである。殺さない程度に殴り倒す程度で彼女たちが揺らぐわけがなかった。

 

「よかろう。任せておくがよい!」

 

「この後のライブに備えてちょっとだけウォーミングアップと行きましょうか!」

 

 戸惑うどころかノリノリで駆け出していく二人。仁慈は彼女たちに対してパスを通した魔力強化でサポートを行う。いくら聖杯がないと言っても、仁慈は『ぼくたちがかんがえたさいきょうのにんげん』のようなステータスを持つ人物である。魔術にも使い慣れた今の彼ではこの程度何の負担にもならないようなものだった。

 ということで、元々存在する相性差と仁慈による強化魔術のおかげで二人の鎮圧にそう時間はかからなかったという。

 

 

―――――――――――――

 

 

 

「………流石にこの対応はどうかと思うんですが?」

 

「いいところだったのに邪魔しやがって……!」

 

 同じような顔の二人から睨まれる仁慈。並みのマスターやサーヴァントであれば震えあがるような光景だが、生憎と仁慈はそれ以上の修羅場を知っている。そのため、そんな二人に対して殺意丸出しのステキな笑顔で対応した。二人は顔を青くして黙り込んだ。

 

「まったく……X。今回は最悪この街のことを聞ければそのまま戦ってもいいからさ。今はおとなしくしててくれ。本当に」

 

「はい」

 

「まぁ、Xはいいとして……問題はこっちか……」

 

「………なんだよ」

 

 明らかに不機嫌ですという表情を浮かべるモードレッド。バリバリの殺意を向けられるよりはマシなのかもしれないが、それはそれで対応に困る態度だった。この反応は流石の仁慈も予想外であり、少々動揺しながらも彼女に対して問いかける。

 

「Xと戦いたいというならこちらは邪魔しない。唯、俺たちは今このロンドンで起きている問題をどうにかしたいと思っているんだ。だから、知っていることがあれば教えてほしい」

 

「……………ふん。そのことはもう父上から聞いてるよ。なんでも人理復元ということをやってるらしいじゃねえか。一応、俺の目的とお前たちの目的は一致してる。……腕前もそこまで悪くねえらしいな。それなら別に構わねえ。なんにせよ戦力が増えることは悪いことじゃないしな」

 

 意外とまともで協力的な言葉だった。再び予想外の回答に仁慈は更にたじろく。その様が面白かったのかモードレッドはくつくつと笑いながら再び口を開いた。

 

「はっは。狂戦士じゃねえんだ。話くらいはできるさ。それに今のオレは機嫌がいいからな」

 

 どうやらヒロインXと斬り合ったことが彼女にとってもいい変化をもたらしたらしい。これも正真正銘のアルトリア・ペンドラゴンと言えないかもしれないヒロインXだからこそ起こり得た変化だということを仁慈は知らないのだが、それはそれ。彼はこれをチャンスだと受け取り、モードレッドと簡単に自己紹介を交わしたのちに彼女が根城としている家と協力者の下へ歩き始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




モーさん。思いっきりぶつかって多少丸くなるの図。
ヒロインXと戦ったというのも割とポイント高い。

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