「……よし、行ったな。これからイイ女を絆そうというのだ。こどもが居たら本領もだせないだろうよ。……さて、やろうか。一切の憂いが残ることのないような殺し愛をしよう」
「………」
「しかし意外だった。まさか素直に見逃してくれるとは」
「―――私にとっては何も変わらぬ。ここでお前を潰した後、あの人間たちも破壊する。私は私の視界に入ったものを破壊する。私は、そう作られている」
タケシのようなモブ顔の男、フェルグスに対してアルテラは無感動に還す。その様はスカサハが先ほど口にした戦闘機械もどきという表現はしっくりくるとフェルグスは感じていた。
「はっはっは!そうかそうか。しかし、そう簡単にここを越えられるとは思わないことだな。あの二人、今は子どもだが、将来絶対にいい戦士になる。それを摘まれるわけにはいかない。あれ等は俺が熟成したときにいただくからな!……それに、この身体を焼き尽くさんとする滾りも沈めてもらわねばならない。無論、お前さんの身体でな!」
「目標一体……直ちに破壊する」
「ふっ……この剣は古き神々の欠片!さあ、破壊の大王。この剣は貴様を削ぎ落すにふさわしいものか、確かめさせてもらうぞ!」
お互いに言葉を発すると同時に轟音が大気を揺らす。
フェルグスもアルテラもお互いに破壊を得意とする人物である。かつて栄えていたローマ帝国を滅ぼしたと言われるアルテラ。様々な魔剣や聖剣の下とされた、剣光だけで丘を三つに分けたと言い伝えられている虹霓剣を持つフェルグス。
戦いの内容は五分と今のところは言っていいのだろうが、フェルグスはこれがそう長く持たないことを感じ取っていた。だからこそ、自分が目一杯楽しんだのちに何が何でもこれを倒し、仁慈とマシュを食べる(性的)算段でもつけておこうかと思いつつ、虹霓剣の回転数をさらに上げてアルテラの持つ三色ペンライトの如き剣にぶつけていくのだった。
戦いはまだ、終わらない。
――――――――――――――――
「フェルグスさんは、大丈夫でしょうか……」
唐突に出現した見覚えのない褐色白髪の女性、文明絶対破壊するウーマンことアルテラから逃げ切った仁慈一同。落ち着いてきて思考をする余裕が出てきたのかマシュがそのようなことを呟いた。これに反応したのはこのなかで最もケルト値が高いスカサハである。
「別に気にすることではない。アルスターの戦士にとって強者と戦うのはもはや習慣のようなものだ。あやつの場合はあの戦闘機械もどきが好みの外見をしていたということもあるだろう。今、お主たちが存在しているということは生きているにせよ死んでいるにせよ役目は果たしたということだ。………こういった場合は唯笑い飛ばしてやるだけでいい」
スカサハはそういうもののマシュにはある程度の常識というものが備わっている。生まれてこの方カルデアでほとんどの時間を過ごして来た彼女は世間一般から見ればずれているところもあるが、それでも常識的だ。それと照らし合わせてしまえばフェルグスのことに関して笑い飛ばすというのは聊か無理な話で合った。マシュの表情からそんな風な感情がありありと感じ取ることのできた仁慈。そこで、彼はすかさずフォローに入る。
「別に気にすることはないよ。これはケルトというか師匠達の言い分だから。この人も自分の教え子ではない人にまで思考の強要をするような人物ではないから」
「フム。マシュのような娘には合わなかったか………いや、別に悪く言っているわけではなないぞ?生命を慈しみ、愛しく思うことは文句なしの美徳と言えよう。残念ながら私にはもう、そのような感情は死んでしまったが」
スカサハは数多の神々や死霊を屠ったが故に、不老不死となって世界の外へと追放された身の上である。不老不死となり、長きにわたる時間の中で自分の心すら死に、完全な人外の者となったと彼女は言葉に表さずとも語る。
まぁ、仁慈は修練をしている時、あるいはするように強制している時のスカサハを知っているがために「感情が死んだとか絶対に嘘でしょう……」と思ている。何はともあれ、元々の性質と不老不死という存在になってしまったが故に彼女にとって命とは特に思い入れのあるようなものではなくなっているのだと、本人は語る。しかし、そこで仁慈のフォローが入る。
「別にそんなことはないんじゃないんですかね。今回俺達の前に現れたのは俺達の命が危なくなったからですし。少なくとも、何とも思っていない……感情が死んだということはないと思いますよ」
内心で修練の時の笑顔は感情が死んだというにはおかしいくらいいい笑顔だったと、文句を垂れる。
幸運にもこの度はそのことに気付かなかったらしいスカサハ。彼女は仁慈からの予想外のフォローに目を丸くした後小さくつぶやくような声で、
「あぁ、そうだな」
と答えた。
それに対して今度は仁慈とマシュがあっけにとられる番だった。何故ならこの時彼女が浮かべた表情は、今日この時知り合いになったマシュはもちろんのこと、ちょくちょく彼女と遭遇させられている仁慈ですら見たことのなかった柔らかい笑みを携えていたからだ。女神の如き美貌を持つスカサハに二人そろって見惚れる。彼らが正気に戻ったのは、頭の中からフェルグスの存在感が限りなく薄まった頃だったと、のちに仁慈は語った。
―――――――――――
フェルグスさんの犠牲を無駄にしないためにも歩き続けること三十分。まさかのスタート地点に戻るという結果に。
「こうも歩き続けて元の場所に戻るか……。どうやらここはよほどお主らの―――いや、正確にはマシュの方か。お主の心に死を刻みつけたのだろう」
師匠は言った。ここの残骸はかつて合った死の形やいずれ巡り合う死の形が集う場所であると。ファヴニールもそうだった。魔神柱も彼女にとってはそうだった。あの白い人は無視するとして、前二つの前例を見ると、この街はマシュにとってよっぽど死を意識したところだということになるらしい。
「……そうですね。ここに来た時の私は、直前で死にかけデミ・サーヴァントとなったばかりでした。いくら先輩が居たとはいえ、心の奥底ではここでの恐怖が焼き付いているのかもしれません」
「なるほどな。それでは死に置いて行かれた残骸共がうろつくのも道理というものか」
「確かに、貴女の言う通り、多くの嘆きと苦しみを以てこの街に残骸があふれることもあろう」
「来たな。私が用立てた最後の英霊。第二の時代より来たりし、栄光の騎士団の一番槍」
師匠の言葉に何処からともなく返事が返ってきたと思ったなら師匠も師匠でそれを待っていたというが如き反応を返す。
燃え盛る建物の瓦礫を踏みつける音が段々と大きくなっていき、そうして現れたのは、
「真名、ディルムッド・オディナ。此度の仮初の召喚ではランサーのクラスとして現界した。最後の試練、貴方たちと共に戦おう。スカサハ、盾の乙女、そして仮初のマスターよ」
半裸の男である。
鍛え上げられたことがわかる無駄のない肉体を惜しげもなくさらし、二本の色と長さの違う槍を持って居た。その表情はかなりの美貌であり、目の下についている黒子はなんとも言えない色気を生み出している。
イケメンである。色気もある。だが半裸だ。要するに変態だ。思わず俺の視線が不審者というか変質者を見るような目になってしまったことは許していただきたい。フェルグス?彼は一応羽織ってるからセーフ。
「ディルムッド・オディナ……!ケルト神話における第二時代、フェニアンサイクルの勇者ですね。神霊殺しの大英雄、フィン・マックールと共にフィオナ騎士団の栄光を築いた人物であり――――」
「マシュ、ストップ」
「え?あっ―――――」
何やら苦虫を噛むような顔をしていたディルムッドに気づいた俺はマシュに静止呼びかける。師匠の時と同じく少々熱が入っていたマシュは俺の言葉で正気に戻りディルムッドの様子に気が付いたようだ。
「申し訳ありません。口走りすぎました」
「いや、気にすることはない。盾の乙女よ。伝説に語られる事柄はすべて私の不徳と不実の具現。自業自得というものだ」
「英雄の果て。裏切りと死。栄光の男の最期は必ずしも幸福なものではなかったということだ」
「ま、そうでしょうね」
英雄の最期なんてのは何処でもそんなところだろう。
多くの英雄は戦争などの戦いで名を上げた者達であり、それはすなわち平和になれば彼らほど強く、厄介事を引き起こしかねない人物たちは居ないということだ。戦いが終われば程度はあれ、必要とされなくなる。その捨てられ方は千差万別だけれども、その多くはろくなものではない。
もちろん、戦いが終わった後に王や貴族になった人物などもいるだろうがそういった連中の最期は総じて女か金、権力と相場が決まっている。どちらにせよ、いい最期とは言えないもんだろう。
「お主は英雄になるなどと言い出したりはしないのか?昔からそうだったが」
「この時代は平和なんですよ?本来なら。だったら英雄になる必要はないでしょう。普通にしていればそれなりの人生はある程度まで約束されているんですし。それに、英雄になる=師匠の修練みたいなのが永遠と続くってことですよね?俺、そんなのごめんですよ」
「ハハハ………」
実際に英雄となったディルムッドから乾いた笑いを受け取ってしまった……。やっぱり事実なんだな。英雄とは恐ろしきものだ。
「何はともあれ、私は伝説に記されたことを悔いています。故に、ここであなたの力となりましょう。生前には成せなかったことを奇跡のような今この瞬間を使って」
「仲間が増えることはいいことだし、短い間かもしれないけどよろしくディルムッド。一応、戦略上卑怯なことも多々あるとは思うけど、そこは見逃してくれると嬉しい」
「………この状況がどのようなことを引き起こすのかは理解している。むしろ、こうして前もって言ってくれた方がこちらとしてはありがたい」
「こっちとしても、努力はするよ。別に勝たなくてもいい勝負なら余計な口出しはしないし。そういった場面での一対一であれば邪魔はしないから」
「配慮もしてくれるとは……なんという親切設計……。よろしい。ここまで言われてまで全力を振るわなかったとなれば騎士の名折れ!このディルムッド・オディナ、全霊を尽くして貴殿の槍となりましょう!」
こちらの特性上どうしても、卑怯な手段は必要となってくる。かつて神霊を相手に戦ってきた騎士団の一員というだけあって一応そこら辺のことに関しては心得があるのだろう。大事なのはこちらのスタンスをしっかりと説明して納得してもらうことだ。些細なすれ違いから不和を生み出したら、最悪自害してもらうしかなくなるし。
「うむうむ。やはり相性は悪くなかったようだな」
「スカサハさんはこの結果が分かっていたんですか?」
「これでも多くの勇士を育てた身、人の相性なりはそれなりに見る目があると自負している」
「まるで縁結びの神様のようですね」
俺とディルムッドの様子を見ていた師匠とマシュの会話が耳に届く。俺は見合いを進める親戚のおばちゃんみたく思ったわ。実際に被害を受けたのは俺じゃなかったけど。いや、それもないか。あの人はおばちゃんなんて生易しいものじゃ――――殺気!?
バッと、何かに弾かれたようにその場から跳躍してみせる。すると先程まで俺のいた場所にはいくつものゲイボルクが突き刺さって針山のようになっていた。
少しでも反応が遅れればすべての槍を俺が背負っていたことになっただろう。こんなことをするのは一人しかいないわけで………。
錆び付いたブリキのおもちゃが如きぎこちない動作でその原因と思われる師匠の方へ視線を向ける。するとそこにはとってもイイ笑顔を浮かべて師匠が佇んでおられた。いつもいつも思うんだけどあの人どうして俺の思考が読めるんですかねぇ……。
「覚えておけよ。仁慈」
「今のは自業自得として謹んでお受けいたします」
このやり取りをマシュとディルムッドはわけがわからないという風に首を揃って傾げていた。
こんなやり取りをしていたせいで忘れてしまいがちだが、ここは残骸蔓延る冬木(再現)である。ここには俺たちの敵として存在している残骸がうようよいるのだ。これまでは普通に対応することができた。あの褐色白髪の女性もフェルグスのおかげでどうにかなった。
であるならば、俺たちの敵である靄はどうするか?更に強力なものを再現しようとするのだ。
「――――――どうやら、おしゃべりの時間はここまでのようだな。最後の残骸が来るぞ」
師匠の言葉に全員の視線が一点に集中する。
今度底に現れた残骸は先程の褐色白髪の女性のように知らない人物ではなかった。むしろその逆、知っている人物だったのである。
現れたのは、白い恰好を黒い靄で覆った一人の女性。そこにかつてあった明るさはなく、唯々、通常の気配ではありえないものを纏ってその場に佇んでいた。
「あれは……!」
「英霊オリオン、否、貴様はオリンポスの古き神々がひと柱。月の女神、アルテミス。しかしその姿はどうしたことか。あぁ、成程。人間に恋をしたという話は真実だったようだな。ならば、その姿も納得か……」
「前会ったときと、威圧感が全然違います……!」
「そうだろうよ。あれは過去、お主たちがあった奴とは違う。分霊であるが正真正銘のアルテミス。第三の特異点で現れた代理召喚ではないのだから。先の戦闘機械もどきといい残骸というのは厄介なものばかり再現するものだ。その獰猛と凶猛のさまはかの魔猪にも匹敵するだろうよ」
師匠が誰を引き合いに出したのかはわからないがとりあえず、あれは代理召喚で神格を落としたというわけではないアルテミスということだろう。俺とマシュは前の印象もあり少々準備に後れを取ったが、元々こういった連中と戦っていたディルムッドと師匠の対応は速かった。
「獰猛と……凶猛………!凄まじい殺気と敵意の塊です……!」
「お主たちの過去における残骸か、未来における残骸か……果たしてどちらなのやら。何はともあれだ。分霊であることは変わりない。ふふ、はははは!久方ぶりの神殺し!これはさすがの私も血が滾るというものだ!貴様を殺すぞアルテミス!人間の真似事した神など、悪趣味にもほどがある!」
「テンション高いっすね!」
「いやなに、地中海の神なんぞは久々なのでのぅ。これは腕ばかりか胸まで鳴りよるわ!」
神と戦るということでテンションを上げる。まさに正しきケルト人よ。
なんてことを考えているうちに向こうは戦闘準備ができたらしく、光線のような矢を無数に放つ。
その速度は見かけに負けないほどであり、仁慈たちを正面から射こうと迫り来る。それに対して俺と師匠の対応は簡単だ。槍で追撃する。ただそれだけである。
師匠は言わずもがな神殺し、死霊殺しとして人外にまで至った人だから問題ないし、俺の槍は人外……特に神に関することには強い効果を発揮しているために問題はないが、素早さ重視のディルムッドとアルテミスのギャップから来る迫力に押されていたマシュは少々手こずっていた。
なので、槍を振るって雨の如く降り注ぐ矢の中を搔い潜り、マシュの下へと向かった。
「マシュ。大丈夫。ディルムッドも師匠だっているんだから、死にゃしないよ」
「先輩……」
「だから落ち着いて、いつも通り行こう」
「そう……ですね……。こんな状況の中でも先輩はいつも通り在り得ないことを平然とやってのけてますし。そんな先輩が近くに居れば、何の問題もないですよね」
素直に喜んでいいのだろうか……。屈託のない笑顔でそういわれてしまっては俺もどう反応すればいいのかわからないんですけど。
しかし、それで緊張は解けたようで、それからマシュは矢を正面から受け止めるようなことをせず、しっかりと身体と盾を動かして矢を受け流すようにし始めていた。もちろん俺が居ることにより矢の密度は二倍になってしまっているものの、そこはしっかりと自分でカバーしている。
一方、純粋のケルト組はというと、雨の如く降り注ぐ光の矢をそれぞれの方法で翻しつつ、とんでもない速さでアルテミスへと接近していた。
相手は弓を使い、彼らは槍を使っている。間合いに入ってしまえばこちらのものだ。
そうこうしているうちに二人はアルテミスを挟み込む形で各々の槍を振りかぶった。だが、そこは流石神とでもいうべきか、ほぼゼロ距離にまで接近されたにも拘わらず、一瞬にして二人に対して矢を放ってみせたのである。まさに、文字通りの神速の射貫きだった。
これには流石の二人も攻撃を中断せざるを得ないのか、師匠は槍を召喚して、ディルムッドは構えていなかったほうの槍でその矢を打ち消した。
「それでこそ神よな」
「流石ですね」
まだまだ余裕の無表情であるスカサハ。それに対して、ディルムッドは所々に傷を負っていた。決して深くはない傷だ。あの距離から矢の雨を浴びせられたというのに、よくあれで済んでいると思う。
「そら仁慈。いつまで矢と戯れておる。早くこっちに参加せんか」
「久しぶりの無茶振りキター」
文句を言っても始まらない。ここでいかなければ後々師匠から死にそうな目に合わされるのだからそれに比べれば矢の雨を突き進むくらいはどうってことないのだ。そう思えるくらいのことを過去にさせられているからね。悲しき習性よ。
自身に降り注ぐ分の矢を槍の性質を使って突き進みつつ、師匠達に合流する。少しだけ遅れてマシュも合流した。
「ところで師匠。何か策はあるんですか?」
「神と戦うのに策などいらぬ。己の磨いたものを駆使して戦うのみよ」
変なところで脳筋なんだからこの人は……。ほらディルムッドさんだって呆れ……てないな。むしろうんうんと頷いていらっしゃる。あれかな、騎士団の一番槍ということでとりあえず特攻しておけばいいや的な思考がわずかながらにあるとかそういうのじゃないよね。
思いつつも、師匠とディルムッドさんが先行するため俺とマシュも後方からついて行く。
そして、結論から言おう。
俺達要らなかった。
久方ぶりの神殺しで血が滾る……その言葉に嘘偽りなどなかったのである。神と対峙するからと気合を入れてみればただテンションの上がった師匠のキチっぷりをまじかで見るだけという有様。
この光景を俺の隣で見ていたマシュはまるで俺のことを見ているようだと口にしていた。どうやら、マシュの視点から見れば俺はああ見えているらしい。これで俺も立派なケルト人だね(白目)
閑話休題
でだ、その後どうなったかと言えば普通にアルテミスは消滅した。最後の最後で正気に戻った感はあったのだが、そんなことより師匠の戦いっぷりが印象に残りすぎてて覚えていない。
「………………唯の一度の戦い、それも殆ど働きもしなかったわけですが、お役に立てたのであれば、この上ない喜びです。盾の乙女そして仮初のマスターよ。時の果てを越えて、また再び巡り合う時もあるでしょう。それまでさらば。あぁ、そしてスカサハよ。―――――――あなたの慈悲に幾万の感謝を」
最後の方はなんとも閉まらない感じではあったが、それでもディルムッドは何処か満足げに消えていった。
しかし、今回は殆ど師匠がやってましたよね。あれは、本人のスタンスとしていいのだろうか……。
「今回は特別だ。私だって、はじけたい時くらいある」
ストレスでも溜まっていたのだろうか。実はここに来たのも何かにつけてストレスを発散しに来ただけという可能性も……いや、これ以上考えるのはやめておこう。
「スカサハさん。貴女は先程あれが最後の残骸だと言っていましたね?ということはこれで戦いは終わったのですか?」
「正解だ。マシュ、満点をやろう。そして同時に私がここにいる意味もなくなったというわけだ」
「そう………ですね……」
「なに、そんな不安そうな顔をするな。残骸は確かにお主たちの内側から排除された。それに、あの残骸を見て未来に不安を覚える必要もない。……そこにいる仁慈はまだまだ未熟だが、発想力と実行能力だけは群を抜いているからな」
そして、と師匠は言葉を続ける。
「人理を救って英雄となれ。お主たちならば、その程度は余裕だろう。これでも、人を見る目はそれなりにあるのだ」
師匠にしては珍しく、そんな励ますようなことを言ってくれた。それを聞き届けた瞬間に不自然なくらいに瞼が重くなる。
そしてそのまま、起きようという意思が湧かないくらいにあっさりと俺はそのまま眠ってしまったのであった。
―――――――――――――
ふと目が覚める。
初めに視界に入ってくるのは燃え盛る街並み―――――ではなく見慣れた自室の天井だった。研究機関ということで娯楽の類の道具は全くおいていない質素なつくりの部屋で俺はしっかりと目を覚ますことができた。しかし、先程までの記憶や経験は俺の脳内に難くこびり付いてる。
我ながらとんでもない体験をしたと思う。師匠が夢の中に現れることというのは特に珍しいことではないのだが、ああして色々な人と巡り合うのは初めてであった。正直そこまで楽しいものでもなかったので二度目は勘弁してほしいと思うが。
眠気覚ましに洗面所へと向かって顔を洗う。
するとここでタオルを出し忘れていたことに気づいた。既に顔は濡らしてしまっていたためにどうしようかと思考を巡らせていると、急に横からタオルがにゅっと出てきたような感覚がした。
ありがとうと言いつつ俺はそれを受け取って顔についている水滴をふき取る。ここで、ふと気が付いた。先程までこの部屋には俺しかいなかった。しかし、こうしてタオルが俺の横に来ていることから誰かが居るのは明白である。
いくら寝ぼけていたからと言って、入って来た時には自動ドアの駆動音が絶対に聞えるはずだ。それすらも聞こえず、かつ俺に気配を悟らせない人物は正直今一名しか思い至らない。
「一応、仕方がないとはいえ、少々だらしがないのではないか?私が敵で合ったら今頃お主は冥界逝きだぞ?」
……待って待って。確かにカルデアに来るとは言ってた。それは聞いた。だからこそ内心で二回くらい兄貴に謝った。だけどさ、いくらなんでもさ………召喚システムフェイトすら使ってないのに俺の部屋に来ないでくれませんかね……。
そう考えた俺を責められる人はいないと思う。
「ところで、仁慈。お主に複数の槍の使い方と、他の武器の使い方も教えてやろう。ついでにセタンタも呼んで来い」
「マジですか(あと兄貴ごめん)」
次回予告
師匠がカルデアへとやってきてしまったがために、ついに仁慈の胃が限界を迎えてしまう!
寝込む仁慈!それを看病しようとするサーヴァント達!
やる気もあって普通に先輩想いのマシュ!
人格、発言、行動、それら全て仁慈のためにやっているようでそうでない清姫!
言動は意味不明だが、家事は万能タマモキャット!
なんか発光しているぞヒロインX!
善意しかないのにとどめを刺しに行く系アイドル、ハロウィンエリザベート!
もう普通にお母さんじゃね!?ブーディカ!
そして我らが大本命、皆のオカンであるエミヤ!
総勢七人による、仁義なき看病対決が今始まる!
「病人で遊ぶな………」
次回予告に進みますか?
>はい いいえ
こっちがほんとー、次回予告ー!
大河「みんな大好きタイガー道場、出張版始まるよー!」
イリヤ「でも師匠。私たちこのgrandorderには出てませんよー?出たとしても礼装ですよれ・い・そ・う」
大河「ぬぁにィ!?このfateシリーズのメインヒロインにして看板ヒロインの私が礼装ですって!?」
イリヤ「それはセイバーなんじゃないかと私は思うんですけど……」
大河「そんなことはどうでもいいのよっ!というか、弟子一号!貴女はなんだかんだで出ているじゃない!プリズマで魔法少女しているじゃない!そういうの私にはないわけ!?」
イリヤ「あれだって正確には私じゃないですけど……」
大河「ずるいずるい!私も魔法少女やりたいー!」
イリヤ「師匠、年齢を考えた方がいいですよ」
大河「なんだとぉ!?これでも昔はイケイケだったんだぞ!?あー!こうなれば直談判だ!待ってろお偉いさん!セイバー顔より、私の出番を増やせー!!」
イリヤ「色々危ない!?じ、次回FINAL DEAD LANCERS!お楽しみに!」