この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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こ れ は ひ ど い(色々な意味で)

最近、クオリティーが落ちている気がする……急ぎすぎですかね?いや、元からなかったかも。


ぐだぐだ中盤戦

 

 

「何でこんなことになったのよ………」

 

 青い空、白い雲、太陽の光を反射してキラキラと輝く砂浜。そう、ここはどっからどう見ても美しい海であった。そんな砂浜の中で呆然と立ち尽くすのは三人の男女。

 一人は魔術師というようなローブを纏った女性。その風貌は美しく、尖っている耳が特徴的な美女だった。そして、その他の二人の男性は今この場に居ない仁慈がよく知っている人物である。

 

「本当にどうしてこうなったんだろうな。しかもお前らと組まなきゃいけねえなんてよ」

 

「召喚されれば従わなければならないのがサーヴァントであるが、今回ばかりは辞退したいものだ……。この組み合わせにも悪意を感じるものがある」

 

 クー・フーリンとエミヤ。仁慈が呼び出したサーヴァントの中でも良識を持っている方であり、男性ということと、戦闘面でのつながりが強いことから仁慈にとって頼れる兄貴分として陰ながら慕われているコンビである。

 

「私だって同じよ!大体何なのこの謎空間は!?魔力の流れもおかしなことになっているし………またろくでもないことに聖杯が使われているわね。たまにはまともに聖杯戦争する気はないの!?」

 

 若干ヒステリック気味に叫ぶ女性だが、それも仕方がない。彼女が召喚された聖杯戦争はよりにもよって最初から勝者ですら何も得ることのできない名ばかりの聖杯戦争だったのだから。一応、彼女自身が勝ち残れば聖杯を正しく使うことができたのだが、最古の王ギルガメッシュが受肉して潜んでいるためほぼ不可能だっただろう。唯でさえ、聖杯戦争では不利なクラスであるのに流石に不憫であると言えた。

 

「ほう。流石神代の魔女。今回のからくりもお見通しというわけかね」

 

「当然でしょ。最も、知っていてもどうしようもないのだけれどね。ほら、死体の肉を集めて作る使い魔がいるでしょ?フレッシュ……シュタイン?そんな感じのもの。この聖杯はそれと同じようなものよ。後付で色々弄られた結果おかしなものになってしまった……」

 

「そりゃ難儀なこった。というか、どうして俺は幼名なんだろうな……」

 

 そう呟き溜息を吐くクー・フーリン。

 キャスターのクラスであろう女性の説明によればフランケンシュタイン擬きと言える聖杯からクー・フーリンが割り当てられた名前は島津セタンタというものであった。彼はこのセタンタという名前で呼ばれることを苦手としており憂鬱としていたのである。

 

「貴方は本名なんだからマシでしょ!私なんて毛利メディナリよ!?ツッコミどころ満載だわ。毛利って何よ。戦国武将?戦国ってなによ。極東の歴史なんて知らないわよ!」

 

「ふむ。裏切りの魔女に稀代の謀将とは、聖杯も酷なことをする」

 

「そこ、一人で分かったような顔しないで。とりあえず、今ここいらに聖杯を探している奴らが来ているそうよ。とりあえず作戦でも立てましょうか」

 

 ヒステリックから一転、彼女が割り振られた役割の武将に相応しい頭脳を以てして彼女たちの領域内に来た侵入者に対抗しようと作戦を考え始める。するとここでクー・フーリン改め島津セタンタが「あっ」と間の抜けた声を上げた。当然彼のその声は他の二人の注意を引きつけるには十分なものであり、メディナリとエミチカも島津セタンタの方へと視線を向けた。

 

「何よ、どうかしたの?」

 

「そういえば、これ当然の如く聖杯に呼ばれたんだよな。俺達」

 

「私たちが現界している以上それは当然だろう」

 

「聖杯があるなら多分ここも特異点とまでは行かなくても、次元の歪みくらいは作るはずだよな」

 

「そうね。聖杯と素直に認めるには業腹すぎるけど、あれは立派な聖杯。貴方たちの言う特異点になっている可能性は十分にあるわ」

 

「………ここに向かっている侵入者ってマスター……いや、こっちの方が分かりやすいか。仁慈が来るってことだよな?」

 

『……………………』

 

 島津セタンタの言葉を聞いた瞬間、メディナリとエミチカの表情が完全に固まる。ここで思い返すのは人類最後にして人類最新のキチガイ。持っている技能も、魔術回路も、魔力の質も、戦闘経験も、常人をはるかに超えるサーヴァント要らずの人間である。

 

 その時、彼らは思い出した。

 彼は……樫原仁慈は、人間であるが故に、ケルトであるが故に、どこまでも非情になれる人物なのだと。敵に回った瞬間、元仲間でも容赦なく殺しにかかる生粋のキチガイであることを。

 

 ―――――――こうして、彼らは真面目に作戦会議に取り組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「ってなわけで、その心臓おいてけやぁぁぁあああ!」

 

「うわぁあああああああ!?わしの心臓がぁああああ!!??」

 

「まだ取られてません!」

 

「逆にあんたがおいてけ兄貴!!」

 

「ぬわぁあああああ!?俺の心臓がぁああああ!?」

 

「だからまだ取られてませんってば!?」

 

 のっけからぐだぐだである。

 ま、何はともあれ襲ってきたのは兄貴ことクー・フーリン。そこにはいつものタイツ姿ではなく、なんかイケメン度が増し増しな兄貴がそこにいた。反応を見る限りかっこよくなったのは外見だけで中身は聖杯の影響なのか残念なことになっていたが。

 

「と、とにかく追撃しないと……。じ、仁慈!早く何とかしなさい!」

 

「はいはい。それでは皆さん戦闘の準備ですよー。と言っても戦うのは俺だけだけど」

 

 周囲を見渡すとそこには相性最悪、本来の実力すら出せない魔人アーチャーと病弱スキルだけは無駄に絶好調の桜セイバー。戦闘力皆無……とは言わないけれど、対魔力を持っている兄貴相手では分が悪すぎる所長。そして、それらを守るために盾を構えるマシュ。

 ほら、戦えるのは俺だけだ。

 ………どう考えてもおかしいよな。この状況。

 

「おっ、やっぱり仁慈が来るか。ちっとばかり、聖杯の所為でおかしなことになっているが、丁度いい。いつもとは違って実戦同様の稽古をつけてやる」

 

 ニヤリと笑ってそういう兄貴。しかし、この時俺は他のことを考えていた。この世界にある聖杯がこの兄貴を召喚したとしても見たところマスターとなる人物は居なさそうだ。ということは、俺との契約も実は生きているのではないのだろうか。

 

 独特の構えから深紅の槍を突き出す兄貴。それに対して俺も突き崩す神葬の槍をぶつけて相殺しつつ、近づいてきたこの隙に自分の中にパスが通っているのかどうかを確かめてみる。

 ……結果、あった。

 この世界を作った聖杯……わかりやすいようにぐだぐだ聖杯と仮称する。そのぐだぐだ聖杯はその性質からどうも適当が過ぎるようだ。カルデア側のサーヴァントを使役するならマスターとの契約くらいは切っておくべきだと思う。そんなことを考えつつ、一度

兄貴から距離を取る。

 

「あん?どうした、打ち込んでこないのかよ?」

 

「兄貴。俺はもう疲れたんだ。役に立たないぐだぐだなサーヴァント。廃テンションな敵サーヴァント達……正直、早くカルデアの愛しいマイルームでぐだぐだ過ごしたいんだ……」

 

「お、おう」

 

「だから、ごめん。後でなんでも詫びるから、今だけは死んでくれ」

 

「はっ?」

 

 俺の言葉が唐突過ぎて理解できないのかキョトンとした表情を作る兄貴。そんな彼に向かって俺は令呪を兄貴に向けると、静かに告げた。

 

「自害せよ。ランサー」

 

「マジかよ!?」

 

 俺の言ったことが信じられないと言わんばかりの表情。だが、それに対して俺は無表情を向けるしかなかった。

 済まない。兄貴。まともに戦っているのはもう面倒くさいんだ。これ以上は真面目に戦闘したくないんだ。

 

 今まで俺に向けていた深紅の槍が自分の心臓へと向かって行く。そうして、彼はそのまま自分の心臓を突き刺した。しかし、彼はこれくらいでは死なない。兄貴には自身の逸話からしぶといくらいのスキルを保有しているのである。

 本当にごめんと思いつつ俺は神葬の槍を兄貴に突き立てた。

 

「……帰ったら、思いっきりやるぞ。それでチャラだ」

 

 ……兄貴の最期の言葉を聞いて罪悪感がMaxだった。

 

「ランサーが死んだ!」

 

「この人でなし!なのじゃ!」

 

「……ほんとに容赦ないわね。仁慈」

 

 そんな目で俺を見るんじゃありません。自覚しているから。

 

 

 そんなこんなでクー・フーリンを倒した俺達。

 再び進んでいると、遥か後方から風を切りながら飛来してくるものを捉えた。マシュにひと声をかけてそれを防いでもらうと、盾の前で爆発を起こす。この爆発の仕方には見覚えがあった。俺だって何度もお世話になった壊れた幻想。今の魔力の流れは確実にそれだった。ここで俺はようやく気付いたのである。カルデアに人が少なかったのはここに呼ばれていたからだと。

 

―――――――――まぁ、だからと言って容赦するとは限らないけど。

 

「自害せよアーチャー」

 

『やめろ!令呪の力は、お前を孤独にするぞ!』

 

 なんか幻聴が聞こえた気がするけど気にしない。気にしている余裕もない。遠距離攻撃を行ってきたアーチャー(おそらくエミヤ師匠)もサクッと倒して、ここにいる最後のサーヴァントであろう女性の前にたどり着いた。

 

「………こうやって実際に見てみると凄まじいものがあるわね。この坊や」

 

「初対面に失礼な……。まぁ、いいです。どうせ戦うんでしょう?さっさとやりましょう。ほら、行きますよー」

 

「いくら何でもやさぐれすぎじゃないかしら!?けれど、容赦なく令呪を使ってあの島津セタンタと長宗我部エミチカを倒すとはやるじゃない。しかし、この毛利メディナリはそう簡単にはやられないわ。私には日輪の加護があるのよ。きっと。日輪よ照覧あれ!」

 

「それなんか違う」

 

 そういって意気込む女性改め毛利メディナリ。唯のオクラじゃないんですかやだー。なんて心中で突っ込んでいると、病弱によってお荷物と化していた桜セイバーが急にふらふらと立ち上がった。

 

「毛利?島津?長宗我部?……土佐?」

 

「おや?桜セイバーさんの様子が……?」

 

「うおおおおおおおお!!……哀しみと八つ当たり的な感情を力に変えて、今こそ着込みましょう。我が誓いの羽織を!薩長死すべし、慈悲はない!」

 

 キィィィィン!と音を立てた彼女。いつの間にか先程まで着込んでいた薄ピンク色の羽織と袴を一新させてどこかで見たような羽織を背負った桜セイバー。というか、ぶっちゃけ真名わかっちゃってるんだけどね。前回で。

 

「えっ。なんか急に雰囲気変わったんだけど。なにこの子。すごい怖い」

 

「説明するのじゃ!この病弱セイバーこと桜セイバー。実は……」

 

「あ、もう知ってるんでいいです。前回思いっきり沖田さん大勝利って言って名乗ってたし」

 

「何しとるんじゃあの人斬り!?力のないわしが唯一活躍できる場面なのに!?」

 

 直接戦闘で役に立てない魔人アーチャーは、説明の機会を奪った桜セイバー改め新選組一番隊隊長沖田総司に向けて怒鳴りかかる。

 だが、残念かな。薩長絶対に殺すマンとして覚醒した彼女に魔人アーチャーの言葉は届かなかった。それどころか、唯々彼女の変化についていけていなかったメディナリにたいして思いっきり斬りかかっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 

 しっかりとメディナリたる女性に止めを刺した俺たちはダ・ヴィンチちゃんが追加情報としてくれた特異点反応の中心点である大阪に向かっていた。しかし、そんな中、急に魔人アーチャーが口を開く。

 

「いい加減飽きて来たんじゃが」

 

「そんないい加減な!?」

 

「――――――――――」

 

「うぉわ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 魔人アーチャーが発した言葉に反射的に槍を取り出し彼女の顔面に当たるか当たらないかの距離で止める。

 ついつい彼女が発した言葉で俺のストレスが刺激されたらしい。というか、元々お前らが原因だろうがコンチクショウ。

 

「わかった。もう無神経なことはいわんからその槍をどかすんじゃ!マジでシャレにならん!」

 

 必死に訴える彼女の意思を尊重し、仕方なく槍を下げる俺。そうしてひと段落したところで、マシュが桜セイバーと魔人アーチャーに質問を投げかけた。

 

「あの、そういえば、お二人は元居た世界ではどのような間柄だったのですか?」

 

「どういったと言われても……目障りな奴じゃなとにかく。ワープとかうざいし」

 

「それはこちらのセリフです。そもそも貴女が聖杯を爆弾なんかに変えようとしなければこんなことにはならなかったんです」

 

「「聖杯を爆弾に!?」」

 

 これには今まで恐怖から静観を決め込んでいた所長も反応せざるを得ないものだった。聖杯は願望機としても魔力タンクとしても十分な代物である。どうしてそれを態々爆弾なんかに………あっ(察し)

 

「うむ。画期的な発想の超兵器じゃ!しかし、聖杯を再構成中にその中へと落っこちてしまっての。おかげでこのような事態じゃ」

 

「やっぱり手前のせいか……!」

 

「ぐりぐりはやめれー!」

 

 どこかどや顔で聖杯を爆弾に変えたことを誇った彼女の頭をぐりぐりした。

 そんな俺たちにマシュと沖田、挙句の果てには所長までもが哀れみに満ちた視線を向けてきたのだった。おい、そこの病人。お前も俺がこうなった原因なんだけど?

 

 なにはともあれ、もうすぐで終わりそうだと俺の勘も言ってるし、早く終わらせよう。

 

 

 明らかにローマな街並みの自称大阪を視界に捉えつつ俺はそんなことを考えていた。

 




ぐだぐだしまくってますね。しかも二話で終わらせるといったにもかかわらず三話目突入ですよ……。すみません。次回で必ず終わらせます。

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