※なんだかんだで50話行きました。いやーはやいなー(棒読み)
というか、このままだと確実に100話超える気がする……。
地下迷宮でアステリオスとエウリュアレを仲間にした俺達、なんだかんだで一緒についてくることになったのでアステリオスに結界を解除してもらい、船へと乗り込んだ。
アステリオスが船に乗り込ん際、ドレイクの部下たちが若干怯えつつ驚いていたのは仕方がないと思う。初見だと普通にビビる外見しているし。だが、ドレイクはそれを一蹴、海賊たるものこの程度で驚くなと言っていた。超男前である。二人の名前を覚えてはいなかったけど。
「名前くらい覚えなさいよ……。私はエウリュアレ。こっちがアステリオス。一応言っておくけど、私たちはあのマシュっていう人間と同じ存在だから……手を出したら殴るわよ?」
「そんな攻撃的な……」
「こういうのはね。一番最初に釘を刺した方がいいのよ」
とエウリュアレは答える。女神っていうくらいだし色々あったのかもしれない。まぁ、外面は女神というだけあって物凄くいいし、何か苦労でもしたのだろう。
そんなことがありつつも出航。
島から離れてしばらくは特に敵と遭遇するわけでもなく、平和な航海を続けていた。ドレイクは天気がいいから酒を呷りたいと言っている。マシュに突っ込まれてたけど。飲兵衛っていうのは何かに理由をつけて酒を飲みたがるのさ。ツッコミを入れるだけ無駄なんだよ。
「姉御!また見たことのない旗の海賊船を発見しました!」
「ようし、こいつらを片付けて祝宴と行くか!」
戦闘はすぐに終わった。
まぁ、ぶっちゃけまた俺とエミヤ師匠が弓で船を沈めただけの簡単な撃墜方法である。そもそも、船を近づかせなければこちらに被害が出ることはない。そういった意味でこの戦法はとんでもなく有効だった。数分もかからないうちに敵を倒したのだが、いい加減あの旗が気になったのでロマンに聞いてみることにした。
「というわけで、あの旗がどこの海賊のモノかわかる?」
『僕を都合のいいように使って……酷いよ仁慈君!所詮僕と君は身体だけの関係だったんだね!』
「殺すぞ」
『うひゃあ!?えっ!?仁慈君の殺気って時空を超えるの!?背筋が思いっきり寒くなったんだけど!?』
「今の一言に殺意を抱いた俺は悪くない。ということで、あの旗の解析をお願い。早くしないと沈み切るよ」
『え?あぁ……船を沈めるなんていう生身の人間では考え付かないようなことをやるからそうなるんだよ!――――っと、ぎりぎりセーフ!』
何とか俺の言葉に反応したらしいロマンはその旗をすぐさま調べ始める。ロマンは飄々としてなよなよしている外見とは裏腹に普通に優秀だ。ダ・ヴィンチちゃんは凡人なんて言うけれど、彼の本分は医療。にも拘わらずこうしてオペレーターのようなことも行うことができる。ダ・ヴィンチちゃんの言う通り凡人だとしても、努力で自分のできることを増やす、まごうことなき秀才だ。
『うわっ!?マジか……』
検索結果が出たらしいロマンが驚きの声を上げる。この段階で面倒事の予感しかしない。そんな中、他の人たちはエウリュアレの歌を聞いていた。おぉう、のんびりとした時間が流れているぜぇ。特に、アステリオスはエウリュアレの歌に乗せて身体を左右に小さく揺らしていた。体格に似合わず、幼い精神から来る行動だろうか。妙にほっこりとした。
『……もういいかい?』
「あ、ごめん」
「大丈夫だDr.ロマン、話を続けてくれ」
「エミヤ師匠居たんですか」
「生憎と、こちらの話が歌よりも残ってしまってね」
どうやら美しい歌に聞き入ることができない野蛮な男たちが集まったようだ。まぁ、歌を楽しむなんて機会には恵まれなかったからね、仕方ないね。
『もう言っちゃうよ。……あの海賊船の旗は、恐らく史上最も有名な海賊のものだ』
「史上もっとも有名な海賊となると……」
『気づいたようだね。そう、黒髭。真名をエドワード・ティーチ。君たちが行動を共にしているフランシス・ドレイクの約百年後に現れた、大海賊だ』
「これはまたとんでもないビックネームが飛び出して来たものだ……いや、今更か」
エミヤ師匠の言う通り。人理復元を目指すならどんな有名人とあっても不思議じゃない。別に世界一有名な海賊が相手だろうと別にやることは変わらない。味方の可能性があるなら協力してもらえるように努力するし、敵なら倒す。単純明快で分かりやすい。
「物騒だな……」
「でも、否定なんてしないでしょう?これは戦場の常ですよ。まぁ、カルデアに来る前は模擬戦だけで本当の戦場なんて知りませんでしたけどね」
だからこそ余計恐ろしいよ、とエミヤ師匠とロマンに突っ込まれた。解せぬ。
ま、何はともあれ、次あの旗の船に遭遇したら気を付けるということだけを意識して、通信を終わらせるはずだったのだが……
『―――っ!仁慈君。強力な魔力反応を確認した。かなり規模が大きいぞ!』
ロマンが言ったその言葉と共に、ドレイクの部下である海賊も敵の海賊船を発見したと報告を上げた。ドレイクもその方向を向き、俺たちと会う前にあの海賊船に追いかけられたことを明かす。マジか。
エミヤ師匠と共に魔力で強化した視線を海賊船に向ける。甲板には、女性のサーヴァントが二人と、黒髭と思われる男が一人、そして機械の右腕を持っている男性が一人と仕留め損ねたエイリークを発見した。サーヴァントは全部で五体か。結構な数がいるな。
「どう見る?エミヤ師匠」
「ふむ、バーサーカーが一人、ランサーが一人、黒髭はライダーとみるべきだろう。あそこの女性のサーヴァントは……セイバーとアーチャーか?」
「ま、見た目からだとそうだよね」
とりあえず、敵の船に偽・螺旋剣を発射。沈められるかどうかだけを確認する。初弾は命中。しかし、傷はつかなかった。どうやらあの船、普通の船ではなさそうだ。黒髭の宝具かもしれない。ロマンも魔力反応の規模がでかいって言っていたし。
「エミヤ師匠。船を沈めるのは無理そうですね」
「……そのようだな。仁慈、私はしばらく偽・螺旋剣を投影しておく。それまで何とか戦闘を遅らせてくれ」
「了解」
作業に取り掛かるために後方へと下がったエミヤ師匠を見送りつつ、ドレイクと合流をする。彼女は自分のことを散々追い掛け回した黒髭に対して文句を言っているところだったのだが、相手の一言によってそれ以上の言葉を紡げなくなってしまう。
「はぁ?BBAの声など一向に聞えませぬが?」
「……………は?お前、今、なんて、言った?」
「だーかーらー。BBAはおよびじゃないんですぅー。なにその無駄乳ふざけてるの?いや、顔の刀傷はいいよ?いいよね刀傷、そういう属性はアリ。でも、年齢がねぇ?ちょっと困るよね。ま、その年齢が半分くらいだったら拙者の許容範囲でござるけどねえ。デュフフフフ」
「……………」
「姉御?姉御ー?ダメだ、死んでる………(精神的に)」
「ダメね。凍っているわ。……ムリもないわね。私も最初に遭遇したとき、こうなったもの………よく生き延びたわね、私」
「んほおおおおおおおお!やっぱりいたじゃないですか!エウリュアレちゃん!あぁ、やっぱり可愛い!かわいい!kawaii!ペロペロしたい!されたい!主に脇と鼠蹊部を!あ、踏まれるのもいいよ!素足で!素足で踏んで、ゴキブリを見るような目で見下されたい!蔑まれたい!」
「うぅ、やだこれ……」
「………」
「ちょっと、そこのでかいの!邪魔でおじゃるよ!」
黒髭の視線と言葉に耐え切れなくなったエウリュアレをアステリオスは無言で自分の背後へと隠す。やだ、紳士。特に何も言わないですっと自然に隠すところがポイント高いと思う。なんという男前。
………にしても、あの黒髭と思われる人物。表情と口は糞みたいなオタクっぽいが、目が笑ってない。ああいうタイプは自分を低く見せて油断させるタイプの人間か。まぁ、色々な意味で有名な黒髭がそう簡単に現代のサブカルチャーに汚染されるわけはないわな。多少素が混ざってそうなのもいい感じでカモフラージュになっているのだろう。
「……………はっ!?すみません、意識が遠ざかっていました」
「まぁ、無理もないと思うよ。マシュも俺の後ろに来な。多分、標的になるよ」
「失礼します!」
食い気味に答えたマシュはすっと素早く俺の背後に隠れる。盾のサーヴァントだということだが、今回は仕方がないと思う。
「な、なんですか?あれは……?」
「黒髭だろ」
「嫌です。私はあれをサーヴァントと認めたくありません」
「ま、仕方ないね」
演技だろうと、あれは女性にとってかなりつらいものがあるだろう。
けど、さっきも言ったようにああやって自分から道化を行う連中は厄介だと相場が決まっている。普段飄々とした奴ほど強い。これは漫画の鉄則だからなぁ。
そんなことを考えていると、黒髭の視線がマシュに向いた。それをマシュも感じたのか背後でびくりと震える。
仕方がないので左腕を後ろに回して彼女の手を握って落ち着かせた。ついでに空いた右手で槍を召喚して黒髭に投げておく。
「うぉ!?あぶね!……へいへい!そこの少年よ、美少女に密着されながら攻撃しかけるとかどういう了見なんですかねぇ?というか、うらやまけしからん!今すぐ拙者と交代するでござる!」
「うちの子が、アンタの視姦に耐えられないからあらかじめ守ってるの。ついでにその眼も潰しておこうかと思って先制攻撃をね?」
「何あのガキすごい怖い。特に何の気負いもなく目を潰すと言ったあたりが」
「貴方の方がもっと恐ろしいことをしてきたでしょうに……」
「というか、向こうのマスターは気遣いができてまともだね。そして何より自分で戦うこともできる。……今からマスターを変えたい気分だよ」
「なんです?メアリー氏。なんだったら拙者が守って差し上げましょうか?背後に庇って『俺の女に手を出すな』と言って差し上げましょうか!?」
「死ね」
「ドゥフww辛辣wwwwボクチン悲しいでおじゃる」
「「……はぁ」」
黒髭の船に乗っている女性サーヴァント二人組が黒髭に呆れかえっていた。本人はそれも悦んでいるが。
ここで、今までフリーズしていたドレイクが復活した。その顔にはすごい怒りの表情が浮かんでおり、確実に限界を超えたことを知らせてくれた。
「大砲」
「はい?」
「大砲。全部。ありったけ。いいから。撃て。さもないとアンタたちを砲弾の代わり詰めて撃つ」
「ア、アイアイ………マム!」
ドレイクの部下もさすがに混乱していたが、ドレイクが本気だと分かったのか一斉に動き出す。
「あれ?BBAちゃん?もしかてして、おこなの?激おこなの?ぷんすかぷん?」
「船を回船しろッ!あの髭を地獄の底に叩き落してやれぇええええ!!」
「あらまぁ。んー、じゃあブラッドアックス・キングさーん!あの船に行ってBBAのあれを取ってきてくれない?その間に拙者はエウリュアレたんをprprするという人類の義務に勤しんでくるから」
「……ギギギ」
どうやら向こうは本格的にやる気のようだ。
ならばこちらも対応しなければならない。特にあのエイリークには前回取り逃がしてしまった分、容赦はしない。最初から全力全壊。動きが鈍かろうとどうなろうと、しっかり仕留める。
「……そこの仁慈。それとサーヴァント。あの史上最低フナムシがこっちに来ないように、しっかりと私を守りなさい。いいわね?幸い私のクラスはアーチャーよ。援護くらいならしてあげるわ」
「アステリオス!エウリュアレを守ってあげてくれ。これはお前にしかできない」
「……ん。えうりゅ、あれ。まも、る」
「よし、いい子だ」
アステリオスにエウリュアレを任せて、俺たちはこちらに乗り移って来たエイリークの相手をする。
「エミヤ師匠。偽・螺旋剣はどうですか?」
「もう問題ない。いつでも攻撃は可能だ」
「だったら、それを敵の甲板にお願いします。X、エイリークに止めさすぞ!宝具の開帳を許す!」
「了解しました。くたばれ、もじゃもじゃバーサーカー!星光の剣よ(以下略)無名勝利剣!」
バーサーカー一体で乗り込んでくるとはまさに無謀。エイリークがここに来た瞬間、Xの宝具を使って先制攻撃をおこなう。
エイリークは持っている斧でその攻撃を防いでいるが、二刀流と化したXの剣戟について行くことができず、段々とその傷を増やしていった。その隙に俺とマシュはエイリークの後ろを取って、彼女の盾でエイリークの脊髄を攻撃する。英霊化していたとしても元は人間、首に一撃を貰ったらただでは済まない。実際、エイリークは首を抑えてXの攻撃を防御できなくなる。
Xがその隙を見逃すはずもなく、今までよりもむしろ剣戟の速度を上げてエイリークを切り刻む。それでも彼が倒れることはなかった。明らかにXの宝具の威力が下がっている。もしかしてそういったスキルを所持しているのかもしれない。
――――――まぁ、俺には関係ないけれど。
「刺し穿つ―――――死棘の槍!ゴォレンダァ!!」
エミヤ師匠から渡されていた突き穿つ死棘の槍を五本、真名開放を行ってすべてエイリークの心臓に突き刺していく。そして、さらに八極拳を利用した拳を使って、突き刺した槍をさらに体内に抉り込ませた。
「コロス……コロス……チクショウ、セイハイテニ……」
それでも尚、言葉を発するエイリーク。ここまで来ると呆れるくらいしぶといな。そう思いながら、新しく一本普通の槍を召喚して頭蓋骨に突き刺した。
そうしてようやくエイリークは息絶えた。その証拠に金色の光となって消えていく。これが確認できたのでもう大丈夫だろう。
「やりました。エイリーク血斧王撃破です」
「ヒョヒョヒョ!喜ぶのはまだ早いですぞwwwwwエイリーク血斧王など、我が黒髭海賊団の中では最弱の存在。それに血なまぐさいし、脇はむわっと臭うし、油足だし、いいとこなしですぞー!」
「それは全部船長だよ」
仲間から突っ込まれてるぞ黒髭さんよ。
いくらキャラとは言え、あれでいいのだろうか……。
まぁ、いいや。気にすることじゃない。
問題なのは、マシュがずっと相手している緑色の方か。
「ずっとしつこいんですよこの男!」
マシュにそこまで言わせるとはすごいな。あの大天使マシュ相手に。そういう意味では黒髭も伝説的だけど。
「隙が無いねぇ。いい子いい子。マスターを手っ取り早く始末できればどうにでもなると思ったんだけどねェ……。―――いやはや傑作だ。いったいどんな英霊なのやら。ま、この程度で潰れるくらいなら生かしておく価値も――――ッ!?」
「ちっ、外したか」
さっきから俺のことを狙ってマシュが相手していた緑の奴が意味深なことを語りだしたため、久しぶりに気配を殺して背後を取り、突き崩す神葬の槍で霊核を潰そうとした瞬間に、気づかれたようで回避されてしまった。一応、気づくのが遅かったために左腕を貫通してから抉り取ったものの、本体を落とせなかったことはかなり痛い。厄介そうだったから早々にご退場願いたかったんだが……。
「おいおい。聞いてないよ?マスターって宝具振り回して、積極的にサーヴァントを脱落させに来るものだったっけ?」
「どうした?隙だらけのマスターを倒しに来たんじゃないのか?自分が隙をさらしてちゃあ世話ないと思うけど」
「……ははっ、全くその通りだ。やっぱり年を取るっていうのはつらいなぁ。自分から攻め手に回るなんて慣れないことはするもんじゃないな、まったく」
長居する気はないのか、緑のサーヴァントは黒髭の下へと戻っていく。その隙をエミヤ師匠が狙撃するも、片腕だけで器用に槍を操り、やり過ごしていた。
その隙にドレイクは黒髭の船から遠ざかるらしく、いつの間にやら繋がれていたロープを銃を使って焼き切っている。
それを見た向こうの女性サーヴァントが、動いた。
赤い服を着た方のアーチャーと思われる女性の銃弾がこちらの船の底目掛けて撃ち込まれる。しかし、こちらにだってアーチャーは居るのだ。
「
エミヤ師匠がひたすら投影し続けた偽・螺旋剣が相手の攻撃を相殺する。さらにエミヤ師匠は相殺のために矢を撃った後、既に二発目をアーチャーと思われる女性に向けていた。俺も、そこらに置いてあった偽・螺旋剣を手に取って弓に番えて構える。
「プレゼントのお返しだ」
エミヤ師匠の言葉と共に放たれた偽・螺旋剣。それは真っ直ぐに赤い服の女性の下へと向かうのだが、近くに居た黒い服の女性に弾かれてしまう。
……が、それだと甘い。エミヤ師匠の投影は特別性。ただ弾けばいいというものではないのである。
「壊れた幻想」
その言葉と共に偽・螺旋剣の中の魔力が暴走し、強力な爆発を引き起こす。黒い煙がその女性を覆っている間に俺も追撃として一発打ち込み魔力を暴走させて二回目の爆発を起こした。
こうして足止めをしているとやっと黄金の鹿号は黒髭の船から遠ざかることができた。……今回の戦いは引き分けってところだろう。サーヴァントは一騎落したけど、あの船を攻略できない限り、こっちはずっと不利のままだ。なんて言ったって、今まで俺たちがやってきたように船を沈められたらアウトだからな。
「そうだ。とりあえず、加速の意味も込めてこれをやっておきましょうか」
思考を巡らせていると、Xが急に船の最後尾へと赴き、背後に構えている黒髭の船に向かって持っている聖剣を振り下ろした。
「さよならさんかくまた来ますカリバー!!」
もう無茶苦茶である。
何を言っているのかわからないし、真名開放となっているのかもわからない言葉を発しつつ振り下ろされた聖剣。だが、星の作り出した聖剣は物凄く健気だった。原型などない名前にも拘わらず、束ねた星の息吹か宇宙のコスモパワーか何かをビームとして発射。黄金の鹿号の加速をしつつ敵にしっかりと攻撃をしていった。
その光景は思わずエミヤ師匠が白目をむいてしまうほどの威力である。というか、お前の剣はビーム撃てたのか。
「撃てるように改造しました」
「マジか」
マジで聖剣を改造していた事実に驚愕しつつ、俺たちはとりあえず黒髭の船から逃走を図るのだった。
これはひどい(平常運転)