この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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アーチャーの主力がアルジュナ君しかいない私としては、単体アーツのクロは救世主です(唐突)


幕間の物語Ⅲ
エミヤ師匠の華麗なる一日 だいじぇすと


 

 

 

 

 ついこの間、召喚された英霊エミヤ。人類最後のマスターにして人類最大のキチガイで常識はずれな化け物の師匠の一人であり、冬木にて仁慈の楔を抜き放ってしまった張本人である。遠回しに、自分のことを酷使してきたモノに復讐しているとしか思えない行動である。

 

 それはともかく、そんなエミヤの一日は割と早くから始まる。英霊とはその名の通り生きているものではなく睡眠や食事も基本的に必要としない。だからこそ、誰も起きていないであろう時間から活動を開始するのだ。

 

 そうして早々に活動を開始したエミヤは仁慈が来るまで全く使われず、何のために取り付けたのかと思える台所に向かって朝食の用意をした。

 三十分ほど下準備をすると、人類最後のマスターである仁慈も台所に姿を現す。昼食や夕食ならともかく朝食を作るのは時々な仁慈が台所に来るのは珍しいことと言えた。

 

「こんな朝早くからどうしたのかね?まさか料理の匂いに釣られてつまみ食いしに来たわけじゃないだろう?」

 

「ヒロインXじゃないんですから……そんなことするわけないでしょう。というか、俺は貴方の側ですよ?生産できる消費者ですから」

 

「あぁ………そういえばそうだった。すまない。今の今まで君のような人間は私の周りには居なかったのでね」

 

 遠い目をするエミヤ。その表情からはいい思い出と取るか苦労話と取るかという葛藤が見て取れた。その表情から、仁慈も彼の心情を察してそれ以上追及することをやめた。仁慈だって戦闘時が特別おかしいだけで普段は常識を持っているのである。多分。

 

「まぁ、エミヤ師匠が来てくれて本当に助かってますよ。おかげで負担が減りました」

 

「そうだろうな。その気持ちは痛いほどわかる。なんせ私もそうだったからな」

 

 不思議と、ここで会話をしているとお互いのテンションが下がっていくのである。そんなこんなでエミヤの華麗な一日が本格的に始まるのである。

 

 

 

 

 

 朝食を終えて、仁慈と共同でその他の雑用を終わらせるとエミヤはカルデアにある訓練場に向かう。

 そこには既に先客がおり、仁慈が初めて呼び出したサーヴァントである。ヒロインXとクー・フーリンが仁慈と打ち合っていた。二対一で。サーヴァント二人掛りでマスターと。

 常人なら度肝を抜かれるような光景であるが、カルデアに来てから訓練されたエミヤはそのくらいでは驚かない。

 もちろん、来た当初は、冬木のこともあり久しぶりに稽古をつけてやろうと仁慈と戦ったが、あの時とは似ても似つかない仁慈の様子に終始圧倒されっぱなしだった。ぶっちゃけいうと油断して負けた。そのこともあり、今さらサーヴァント二体を相手取ろうと奴ならやりかねないと考えているのである。

 

「ちょっとこれどうなっているんですか!?マスターに一太刀も浴びせられてないんですけど!?」

 

「俺が知るか!つーか、お前の方が詳しいだろ!マスターがここまで強くなったのはこの前の特異点から帰って来てからじゃねえか!いったい何があったんだよ!?」

 

「いつも通り過ぎるくらいいつも通りでしたよ!」

 

 醜い争いを続ける英霊二人。仁慈はそんな彼らの隙を突き、真名開放をしていない槍で一気に二人を吹き飛ばした。

 

「言い争うくらいなら別々でやろう。思いっきり二人で邪魔しあってるじゃん」

 

「普通はお互いに邪魔しあっていてもあしらえないはずなんですけど!?くっ、流石マスター。意味が分かりません……!」

 

 Xの言葉にエミヤは心底同意した。というか、その感情に関してはこの場にいる誰よりもエミヤが実感している。仁慈の師匠として、彼の小さい頃のことを知り、影の国の女王のようにキチガイへの切符を渡したわけでもないのだから当然と言えるだろう。

 ちなみに、エミヤは仁慈の存在と同じくらいXのことを意味が分からないとも思っていた。

 

 それはともかく、エミヤは戦いを終えた仁慈の方に近づくと、自身が愛用している弓を投影して彼に話しかけた。

 

「久しぶりに見てやろう」

 

「おー、いいですね。最近は全く使わないんですけど、だからと言って錆び付かせていいわけじゃないですよね」

 

 そんなやり取りをしているとそこに異論を唱える者が現れる。先程仁慈と戦っていたクー・フーリンだ。

 

「おい、弓兵。出しゃばるな。今は俺と戦ってるんだ。てめぇの出る幕じゃねえ」

 

「フン。あれほど無様に吹き飛ばされたにも拘わらずそんな口を叩けるとは……流石は大英雄だ。私では到底真似できん」

 

「んだと!?」

 

 肝心の仁慈そっちのけで言い争いを始める二人。

 この光景も何度も見ているからか、仁慈の対応は鮮やかかつ迅速だった。

 

「じゃあ俺Xと組むので二対二でやりましょう」

 

『なにっ!?』

 

 ぐちぐちと文句を言う二人に対して、Xと仁慈の不意打ち卑怯はウェルカムのド外道コンビは情け容赦なく襲い掛かった。

 

 

 

 

 仁慈達との訓練(笑)を無事に乗り切ったエミヤだったが、その表情は硬かった。いや、むしろ先ほどの訓練よりも険しい雰囲気をかもしだしている。

 その場には仁慈とエミヤと同じくしてカルデア入りを果たしたブーディカも居て、どちらもエミヤと同じようは雰囲気を放っている。

 

「さて、二人とも覚悟はいい?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

「問題はない。いつでも始められる」

 

 仁慈の問いかけに答える二人、それを見て仁慈は宣言した。

 

「これより夕飯の支度に入る。ここ最近、料理を作れる人が増えたからか、Xがどんどんギアを上げてきている………俺達もそれに対抗していかなくてはならない。さもなければこのカルデアはXによって滅ぼされる」

 

「似たようで違う存在でもここ(ハラペコ)は同じとは、な」

 

「いやーいっぱい食べることはいいことだけどさ。限度ってもんがあるよね。流石に」

 

 仁慈の言葉を誰も疑いはしない、確実にあり得ることだと彼らは認識していた。

 

「さぁ、俺たちの聖戦(調理)を開始しよう」

 

 その宣言と共に各々が己の戦いへと入っていった。

 

 

 彼らの料理はこれからだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。どうやら今日も無事に乗り切れたようだ……」

 

 疲れを明日に残さないために仁慈を先に眠らせたエミヤは一人で大量の食器と戦いながら一人呟く。

 これが彼が来てからのカルデアの日常だった。

 

 数日前来た時にはこのカルデアで起こること一つ一つにリアクションを取り、ツッコミを入れていたのだが、一日が数十日ばりの密度を持っているために、彼はもう慣れてしまった。

 Xの対応も今では慣れたものである。主に彼女があんなのなわけがないと言い聞かせただけなのだが。

 

 そんなにぎやかであり得ないようなカルデアの日々を思い浮かべつつ食器を片付けた彼はエミヤはしばらく仮眠を取りつつ、再び朝食の準備を行うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




三章をやるかイベント編をやるか……迷いますね。

活動報告でまたアンケートでも取りましょうか。

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