この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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セプテムとか、結構前過ぎて話を全く覚えていない……。
というわけでストーリーを再び読み返しつつ書いています。


だからさっさと戦えと(ry

 

 

 

 

 

 妙に偉そうで貫禄がある赤い彼女に連れていかれながら目的のローマへと目指して突き進む俺達。

 しかし、そこで再び目の前に大群が現れる。先程追い返したにも拘わらずこの短期間で帰ってくるとは近くに彼らの拠点でもあるのだろうか。

 

「えぇい……!余の行き先を邪魔するだけでは飽き足らず、目の前にいる美しい少年少女らとの語らいも邪魔するか!盾の少女よ、余の盾役を命じよう!あの不届き者どもに天誅を下そうぞ!」

 

「えっ、私は先輩の盾なのですが……先輩どうしましょう!どこか逆らえないような雰囲気です……!」

 

「あー……マシュ。今だけは彼女を護ってあげて。彼女サーヴァントじゃないし。この中では一番危ないでしょ」

 

「先輩もサーヴァントじゃありませんよね?」

 

「どうせ誰も俺が怪我するとか思ってないでしょ」

 

 今の発言で視線をそらした奴(赤い人の部下も含める)の顔を覚えつつもそう口にするとマシュはしぶしぶ納得したのか赤い人の前で盾を構えた。ごめんね。別にマシュの実力を疑っているわけじゃないからさ。今は我慢してくれ。

 

 アイコンタクトでその旨を伝える。その後すぐに清姫とXに好きに暴れていいことを伝えた。特にXは赤い人を斬れなかったストレスもあることから今回の戦いで少しでもガス抜きをしてほしいと考えてだ。清姫?彼女なら俺が望めば勝手にやってくれるでしょう。なんか女を自分に依存させて寄生する屑男みたいな思考回路だが、実際に寄生されているのは俺の方なのでお相子ということにしてほしい。

 

 特に報告することもなく再び襲い掛かって来た大群を潰す。………敵からしたらものすごい悪夢だろうな。何倍もある兵力差を個人で埋めてくる化け物を相手にするなんて考えたくもなかっただろう。このような圧倒的な物量が有利となる戦争においては尚更だ。リアルで無双するやつとか相手するには怖すぎるし。

 

「……ふむ。何とか凌いだか。このような物量差は戦争の常であるが……少数の方は疲れる。すっごく疲れる。貴公らが居なければ本当に危うかったやもしれぬ。これは褒美もはずんでやらねばな!そうだ!余の愛人として―――――」

 

「大丈夫です。間に合ってます」

 

「むっ、余の言葉を遮るとは無礼な。しかし、そうだな。今のは余も急ぎすぎた。これだけの上玉たちだ。ゆっくりと口説き落とすとしよう」

 

 そうじゃねえよ。

 可愛らしいどや顔で見当違いなことをおっしゃる赤いお方に溜息を吐く。……さて、ちょっとした小休憩を挟んだところで大物を相手にしなければ。

 

「っ!?マスターこれは!」

 

「サーヴァントが来た。X、清姫、マシュ。準備しろ」

 

『マシュ、仁慈君!君たちならどうせ感じてると思うけど、サーヴァント反応だ!』

 

『クラスはバーサーカーよ!油断したらアッという間に全滅させられるわ!』

 

「あっ、所長いたんですか」

 

『私だってカルデアで頑張ってるのよ!唯、通信に出ないだけで!しっかりと!働いて!いるのよっ!』

 

 何のアピールですか。知ってますから、大丈夫ですから。アレ、せっかく助けた所長働いてないんじゃね?とか思ってませんから。普通にご飯だしますからここでそんな必死こいてアピールしなくても……。

 

『私はね……次にいつご飯を抜かれるか、気が気じゃないの』

 

「いくら何でもあんた俺の飯に依存しすぎでしょ」

 

 俺の料理は純粋カルデア産の食材を使っているのであって決して依存性のある危ない薬などは配合していないんだが……。

 まぁ、それはともかく今一番考えなくてはいけない問題はバーサーカーのサーヴァントのことだろう。

 

「我が、愛しき……妹の、子よ」

 

「伯父上……!」

 

 どうやらこのバーサーカー、この赤い人と知り合いらしい。サーヴァントと生きている人間が知り合いしかもそこまで遠くない血縁者ということに違和感を覚えるも俺たちのやることは一つである。

 バーサーカーとはその特性上、正面から戦うとかなり厄介だ。狂化によってそのステータスにはかなりの上方修正がされている。唯の十三歳の少女であった清姫も、そのステータスは底辺に近いものの狂化EXという規格外のアレっぷりでそれを補っている。しかし、英霊の最も大切なものの一つである理性を犠牲にしているため正面突破でなければそこまでではない。無意識レベルまで研ぎ澄まされた力を持つ英霊であれば多少の苦戦は強いられるだろうが、十二分に不意打ちから戦闘不能まで持ち込むことができる。今俺が行っているのはバーサーカー特有の注意の散漫+知り合いで因縁のあるであろう赤い人との会話で気がそがれているあのバーサーカーを囲って、隙ができたら速攻で倒すことができる陣形を作っている。マシュには一応赤い人の守りを頼んでいる。相手はバーサーカーだしいつ赤い人に襲い掛かってもおかしくないからだ。それに彼女にこういう攻め方は似合わないということが普通にわかったし。適材適所というやつだ。

 

 俺達が配置に着くと赤い人はバーサーカー――――カリギュラという名前だったらしい――――を睨みつけて堂々と敵宣言をした。身内であろうと、自分たちを襲うのであれば、自分の国に敵対すればしっかりとそれなりの対応をする。見事だと思う。

 なので俺たちはそれに報いるために戦闘態勢に入った。そして、カリギュラが口を開いた瞬間、お得意の不意打ちを行う。実はアサシンのXよりも隠密性が高いのだ俺は。本人隠れる気がないから仕方ないのかもしれないけど。アサシンの癖に気配遮断スキルねぇし。

 

「余の、振る舞い、は、運命、で、ある。捧げよ、その命。捧げよ、その―――――」

 

「――――――――――――」

 

 何やら口上を述べているようだがそれを華麗に無視。どうしてこう、サーヴァントは戦場で口を動かすのだろうか。普通に体を動かすべきだと思う。あれかな。自分たちが強くなるとこういった不意打ちとかには頼らなくてよくなるからだろうか。などと考えつつ、声も気配も一切漏らさず、まずは身体能力上昇の魔術をかけた状態で接近。攻撃を当てる瞬間にだけ魔力放出でさらに出力を向上させる。

 カリギュラがこちらに気づいたようだが、もう遅い。俺の蹴りは既にカリギュラの首を捕らえていた。

 遠慮も手加減も何もない蹴りを意識外から受けて、その場に踏ん張ることのできなかったカリギュラは思わず吹き飛ぶ。そしてその先には先ほど囲った時にスタンバっている清姫。彼女は持っている扇を自分の前に出すと自身の代名詞。自分が生きていた証でもある宝具を開帳した。

 

「これより逃げた大噓吐きを退治します―――――転身火生三昧……!」

 

 自身の身体を大蛇と変化させ、自分の方向に吹き飛んでくるカリギュラを飲み込む。蛇とも炎ともいえる体に焼かれながら、バーサーカーとは思えないタフさでなんとか清姫の宝具を耐えたらしく、蛇が通り過ぎた後もその原型を保ち、カリギュラは立っていた。

 

「グッ、オォォオオオォオオオオ……!」

 

 雄たけびを上げて自分を振るい立たせるカリギュラ。

 しかし、残念ながら彼のターンは回ってこないのである。

 

 ドゴンッ!

 

「――――ッ!!??」

 

 どこからともなく轟音と共にカリギュラに砲撃が飛んでくる。それはヒロインXの謎スキル。一体どこから発射されているのかと疑問に思う支援砲撃である。これにはスタン効果が付いており一定の確率でサーヴァントの行動を一定時間封じることができる。バーサーカーということでこういった搦め手に対する耐性がないカリギュラはこれをレジストするすべを持たずそのまま拘束される。

 

「ォォォオォォォオオオオオオオオオ!!」

 

 それでもなお動こうとするカリギュラに、ヒロインXは召喚した黒聖剣も使って彼との距離を一気にゼロにした。

 

「星光の剣よ………赤とか黒とか白とか桜とか、ありとあらゆるセイバー顔を消し去るべし!!みんなには内緒ダヨ?スターバースト……間違えたえっくす、カリバァァァー!!」

 

 アイツ自分の宝具名間違えたぞ。やっぱりソード・アート・オン〇インなんて貸すべきじゃなかったかもしれない。X見たときから似てるなとか考えてたからやってみたけど過去の自分の行動を若干後悔している。

 

 真名開放で間違えたにも拘わらず既存の威力をしっかりと発揮したその宝具は情けも容赦もなくカリギュラの身体を切り刻んでいく。

 

「お前は……ネロ……?」

 

「私は赤ではなぁぁぁぁあぁあああい!!」

 

 カリギュラの言葉がヒロインXの逆鱗に触れたらしく、彼女の剣戟の速度がさらに上昇する。彼女に対してあの赤い人と間違われることは何より許しがたいことのようだ。

 結局カリギュラははじめよりもさらに激化した剣戟に身を引き裂かれ続け、

 

「我が、妹の、子よ。なぜ、捧げぬ、なぜ、何故、ナゼ………」

 

 うわごとのように呟いてカリギュラはオルレアンで散々見た光の粒となって消えた。一応気配の方とロマンの方にも確認を取ってみるがしっかりと消滅したようである。こういった手合いは他の奴と組ませると物凄く面倒くさいのだ。一人で暴走し、止める人もフォローをする人もいない今の状況でしっかりと仕留めることができたのは幸先がいいと言えるだろう。

 

「清姫、X、それにマシュもお疲れ様。サーヴァント一人撃破してこれでいくらか楽になったと思う」

 

『うーん、相も変わらない容赦のなさ。本当にどうしてこの子はこうなったんだろうか……』

 

 多分環境の所為だと思う。

 俺の周りには奇人変人しかいなかったから。俺の師匠はもちろん、俺の家の人だって傍から見たら十分におかしな人たちだったと断言してもいい。

 つまり俺がこうなったのは必然。俺は悪くない。

 

「いえ、先輩。環境だけではどうあがいてもそうなりません。本人の資質もあると思います」

 

「だからナチュラルに心を読むなと……」

 

 これ以上になってくると俺の頭が上がらなくなるので本当に勘弁してください。マシュさん。

 

「大丈夫です。先輩が何を考えていても私は受け入れますから」

 

「うぁお、いい笑顔」

 

 けど、その言葉だと俺がいつもよからぬことを考えている変態に聞こえるのでちょっと複雑ですわ……。

 

「マスターマスター。今の私は大変不機嫌です。先程、私のことをそこの赤と間違えた不届き物を切り刻んで宇宙の塵に変えましたけれど、この怒りは収まるところを知りません。というわけで、私はマスターに尽くされながらの食事を所望します」

 

「急すぎる……」

 

安珍様(ますたぁ)安珍様(ますたぁ)。私は生まれてきてありがとうから、よい人生だったという大往生まで一緒にいてほしいです」

 

「重すぎる……」

 

 そんないつも通りのやり取りをしつつ俺たちは赤い人と共にローマへと再び歩みを進めた。その間、彼女と微妙に距離が開いたのはおそらくカリギュラに対する仕打ちが原因だと思う。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 攻められている割には活気づいている。

 それが俺の印象だった。おそらく、ここにいる赤い人改めネロ・クラウディウスが色々手を回しているのだろう。林檎を分けてくれた店の店主も普通にしていたし、ここに住む人の顔には恐怖がない。狙われていることがわかりつつもこういった表情をみんなが出せるのは目の前にいる彼女の采配だと素直に思うことができた。俺だったら絶対に無理ですわー。

 

「ところで、貴公らの目的は私を守ること……で良かったのか?」

 

「結果的にはそうですね。まぁ、正確な目的は違うんですけど、今貴女が敵対しているであろう勢力が自分たちの欲しいものを持っている確率があるので……」

 

「目的は違えど、相手する輩は同じ。であるが故に、協力体制を引けそうな余も守った、と?」

 

「簡単に言えば」

 

 もっと正確に言うと、本当に結果が伴っただけで狙ってネロを守ったわけじゃないんだけどね。そこは黙っておこう。相手が好意的であるなら自分からそれを崩すこともない。

 

「ふむ……大まかなことはわかった。貴公らの言うことが確かなら、こちらも話すことがある。余の館に向かうぞ。そこで詳しい話し合いを執り行おうではないか」

 

 ネロの言葉に従い、彼女の館とやらに向かう。

 道中トラブルがあったものの軽くひねって館にたどり着くと、ネロの――――ローマ帝国が置かれている状況について聞いた。

 

 なんでも現在ここは連合ローマ帝国なる複数の皇帝が統べる連合に攻撃をうけているらしい。現状何とか持ちこたえているものの、徐々に戦力は衰えていき既に風前の灯火という。彼女の伯父であり、俺たちが先ほど屠ったカリギュラもその中の将だったらしい。

 

 話を聞く限り、おそらく敵は聖杯を手に入れ、英霊として歴代ローマ皇帝をよびだしているのだろう。そうでもしないと複数の皇帝などは現れない。誰かが偽って名乗っているならまだしもカリギュラが出てきたことからその可能性もほぼないと言っていいだろう。

 ネロの話では敵に、かなりの魔術を操るものがいるという話も聞いたし、もしかしたらレフ・ライノールが直接聖杯を使っているのかもしれない。これで俺たちの戦うべき相手は決まったな。

 

 と、頭の中でまとめていると、ネロが俺たちに客将となってほしいと言ってきた。代わりに聖杯の回収を手伝うと。

 元々こっちもそのつもりだったので彼女の提案を呑み、俺たちははれてこの世界での基盤となるところを確保したのだった。

 

 ちなみに、

 

「マスター。膝枕を要求します。あと、そこの果物切って食べさせてください」

 

 Xは昼間の件を完全に覚えており、色々と要求された。

 こんなこと言いたくないけどさ。従者(サーヴァント)主人(マスター)を使うなよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦う前に口上を垂れる奴は総じて仁慈と相性が悪いです。

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