この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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疲れている仁慈に追い打ちをかけていくスタイル。
まぁ、邪ンヌたちにやった所業を考えれば当然だね(暗黒微笑)


幕間の物語Ⅱ
くるーきっとくるー


 

 

 

 

 

 

 

「いやー……流石、英霊と肩を並べるほどの実力の持ち主。発想、行動がすべて常軌を逸脱しているね!そこに痺れる!憧れるゥ!」

 

「喧嘩売ってんのか」

 

 オルレアンの聖杯を回収し終えてカルデアに戻って来た俺たちを出迎えたロマンの言葉にとりあえず拳を構える。誰がラスボスか。こっちはれっきとした人類の救世主(笑)やぞ。……自分で言ったことだけど、これはないな。うん。キャラじゃない。

 

「やめて!筋力Aのサーヴァントと正面から戦える仁慈君のパンチなんて受けたら、もやしボディの僕は爆発四散してしまうよ!」

 

 ステラァァァァアアアア!!(爆発四散)と、七個目あたりの聖杯回収でネタにし難くなりそうなことを思いつつも、構えていた腕を引っ込めて管制室を後にする。

 こんな感じでも意外と疲れているのだ。正直早く自分の部屋のベットに入って泥のように眠りたい。そんな俺の状態を見破ったのか、ロマンは先程まで浮かべていたふざけた表情を一気に消して、カルデア内の医療部門のトップとした表情を表に出した。

 

「おっと、いくら君でも限界だったか。今日は部屋に帰ってゆっくりすると良いよ。詳しい検査などは明日行うことにするから。マシュもそれでいいよね?」

 

「はいドクター。はっきり言いますと、私の方にもそれなりに疲労がたまっていまして……今すぐにも休憩したいです」

 

「うん、わかったよ。今回は自ら動いた初めての人理復元だったことだし、疲労も前回とは比べ物にもならないだろう。あとのことは僕と所長に任せてゆっくり休むと言い」

 

「ではお言葉に甘えて。あっ、そういえば先輩。ここでレムレムしないでくださいね」

 

「レムレム?」

 

 なにそれ響きが可愛い。しかし心当たりが全くないんだけれど……。

 俺の反応にマシュはわたわたと手を顔の前で振ってなんでもありませんと先ほどの言葉を訂正した。その後に、小さく首を傾げていたけれどきっと別世界からの電波でも受信したんだろう。この世界では稀によくあることなので気にしてはいけない。

 

「それじゃ、お先にマシュ」

 

「あっ、はい!お疲れさまでした先輩!」

 

 笑顔で答えたマシュに俺も笑顔を返して自室へと戻った。

 

 

 

 白を基調とした自室は生活に必要なもの以外はほとんど外に出ていないのでどことなく病室を思わせるものだ。俺の私物だって基本的に四次元鞄に突っ込んでいて、さらには武器の類しかし待っていないためさらに質素なイメージを加速させていく。

 まぁ、見えないところにはXがどこからか持ってきたアホ毛に似た何かやライトセイバー擬きなんかが置かれていているのだけれども。

 

「ふぅー……」

 

 設置されたベットに腰を下ろし、長い溜息を吐いた。

 今回の特異点を振り返り自分の足りないところをあぶりだしていく。……やっぱり、マスターの分際で前線に出すぎていることが一番の問題だろうか。次の特異点ではなるべく後方支援に回った方がいいかもしれない。接近戦は既にXと兄貴がいるし、後方支援の懸念である隙の大きさもマシュが居るから問題ないし。

 

「……次の特異点が出てくるまで弓や魔術の方に行った方がいいかもしれない」

 

 苦手なことをいつまでも残したままというのもよくないだろうし。

 そこまで考えると、ついに限界が訪れたのかふらりと意識が一瞬だけなくなる。と言ってもこれはとんでもなく強力な睡魔が進撃を開始しただけで、特に具合が悪いというわけではない。とはいえ、流石にこのまま眠るのはどうかと思うわけで、最後の力を振り絞って何とか服を着替えるとそのまま倒れるようにベットに向かう。

 

 いつ手入れをしているのかわからないけれど、ここに住み始めたときに感じた反発性が疲れた体を包み込む。そのままこの柔らかさに任せて眠ってしまおうと瞼を下ろした直後、俺はあることに気が付いた。

 

「(なんかあったかい……?)」

 

 ここは俺の部屋であり、ついさっき帰って来たばかりだ。このことから、布団がこうまで暖かいのはおかしい。座っていたのは別の部分だし、そもそもこの暖かさは布団に残っているぬくもりとはまた別のもの……完全に生き物を触っている感じのぬくもりだった。なんだろう。とんでもなく嫌な予感がするんだが……。

 

 よくよくその場所を観察してみると、丁度人が一人入っているかのような膨らみが見て取れた。眠気に侵食された頭では認識できなかったことでもこうして覚醒した状態なら普通に認識できてしまった。

 気配を全く感じさせないその隠密性に驚愕しつつも意を決して掛布団を引っぺがす。

 

 

 するとそこには――――――――――――――

 

 

 

「お待ちしておりましたわ安珍様(ますたぁ)

 

 

 

 ついさっきまで一緒に行動し、そして英霊の座へと還って行ったはずのバーサーカー・清姫がその白い頬を若干赤く染めながら寝転がっていた。

 なんでさ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

「で?」

 

「で、とは?」

 

 清姫の登場で完全覚醒どころかそれ以上まで行ってしまったため眠気がなくなった俺はとりあえず俺のベッドを陣取っていた清姫を引っ張り出して、彼女と向き直る。そして、何をどうしてあのような状況になったのかという説明を求めた。

 

「何であそこに居たの?というか、どうしてここに?聖杯がなくなった所為で座に還ったんじゃ」

 

「確かに一度、私は帰りました。しかし、私と安珍様(ますたぁ)にはしっかりと縁がありますから」

 

 というと、彼女は右手の小指を愛おしそうに撫でながら恍惚とした表情を浮かべた。まさか、一時的に契約したときに行った指切りの小指か?

 いくら契約と言っても、それをたどって自力で座からやってくるとかどう考えてもおかしいと思う。

 

「まさかそれでここまで来るとは……」

 

 さらに付け加えれば、こちらから英霊を呼ぼうと召喚システムフェイトを使ったわけでもないのだ。きっかけすらなしにカルデアまで来るとは本気でおかしいとしか思えない。

 

「いいですか?旦那様(マスター)。愛に不可能はないんですよ?」

 

「愛と言えば何でも許されると思うなよ……」

 

 しかし、彼女の話を聞けばそれもまたあり得ることだと思えてしまう。思い込みだけで竜へと変貌を遂げた彼女は某憂鬱の少女と同じような能力でも所持しているのではなかろうか。

 

「いいえ。愛はすべてを超越するのです。いえ、この話はもういいですね。重要なのはここにどうやって来たのかという過程ではなく、今私がここにいて旦那様と共にいるという結果なのですから」

 

 言って、彼女は俺の身体に寄りかかるように身を寄せ、耳元で静かにささやいた。

 

「これからよろしくお願いしますね旦那様(マスター)。くれぐれも、私に嘘はつかないように。嘘は幸せな家庭を壊してしまう猛毒ですから」

 

 別に俺たちは家族でも何でもないというツッコミを入れる気力は既になかった。

 話がひと段落ついたというか、無理矢理つけたといっても過言ではない状況に今までの疲れが二倍三倍になって帰って来たことを自覚する。

 

 

 とりあえず、今は早く寝たいわ………。

 

 

 

 これから起こるだろう厄介事のことを考えないようにしつつ、俺はそんなことを考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やめて!清姫の炎で今の仁慈が焼き払われたら、疲労がマッハで弱っている仁慈の魂ごと燃え尽きちゃう!
お願い死なないで仁慈!あんたが今ここで倒れたら人理復元はどうなっちゃうの!?
ヤンデレゲージはまだ残ってる!ここを堪え切れれば、清姫を撒けるんだから!


次回「仁慈死す」デュエルスタンバイ!

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