この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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化け物を倒すのはいつだって英雄かキチガイ

 

 

 

 

マリーアントワネットとヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの自己紹介からしばらくして、俺は一つの予想にたどり着いた。

 彼女たちは別に黒ジャンヌに呼ばれたわけではないらしい。それは彼女たちの瞳を見ればわかる。狂化が付与されている者たち特有の濁りがないからである。で、問題はここから。ここで疑問に思うべきなのは、誰が召喚したわけでもない彼女たちがどうして存在するのかということである。ロマンと所長曰く、これはこの時代の一種のカウンターだろうと言っていた。未来を焼却するとはいえ、元々の正しい流れがある。それを無理矢理捻じ曲げるのであれば修正力が働くのは当然だろうということらしい。で、その修正力がマリーアントワネットとヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトである。彼らはいわゆる歴史の中に現れた病原体(黒ジャンヌ)を排除するための白血球(対抗サーヴァント)として呼び出されたのだろう。

 

 もちろんこの考えは確証も何もないただの予想だ。唯のなんてことのないマスターの予想である。しかし、これが事実だとすると、他にも彼女たちのようなサーヴァントが居るということになるのだ。

 これが本当であれば今現在、戦力的に劣っているこちらとしてはかなり嬉しい話である。

 そのことをみんなに話してみれば概ね肯定的な意見が帰って来た。どうやら彼らも俺と同じ結論にたどり着いたらしい。

 

『確かに、まだかなり大雑把な理論だけど、可能性はなくはないね』

 

「では目下の目標として味方になってくれそうなサーヴァントの捜索かね」

 

「そうですね。おそらく向こうも、私たちと戦ってさらに戦力を増強しようとするでしょうし。………主に仁慈さんのせいで」

 

「なんでさ」

 

 ジャンヌさんの言葉に思わず反応してしまう。一回言ったような気もするけどさ。皆さま勘違いしているようですがあの槍をあんな現代兵器に変えたのはダ・ヴィンチちゃんですからね?俺はあれに魔力流してブン投げただけだから俺は悪くねぇ!

 

「投げれる時点でおかしいんだよ」

 

「解せぬ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――なんて、呑気に言い合っていたのが今から遡って数十分前のことである。

 

 

 

 

 では、急に数十分前のことを思い返している俺は何をやっているのかと言えば……

 

 

「ちっ、次から次へとわんこそばのようにどんどんやってくるんですけどぉ!」

 

「わんこそば……!自分の限界に挑むことができる素晴らしい食事システム……!これは私の出番ですね!私を倒したければこの三十倍は持ってきてください!」

 

「オメェじゃねえ。座ってろ。ついでに、俺たちが相手しているのはリビングデッドでわんこそばじゃねえよ」

 

 フランスの中にあるリヨンという町で、大量のリビングデッドとダンスっている途中である。正直、ツッコミを入れる気力もないので兄貴のツッコミはとてもありがたかった。俺はリビングデッドに槍を突っ込む作業で忙しいのである。

 どうしてこんなことになっているのかと言われれば話は再び数十分前、ちょうどほかのサーヴァントを探しつつマリーとアマデウスの両名と契約を結んだ頃に巻き戻る。

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――

 

 

 

『親方!空からサーヴァントが!』

 

「唯一の仕事でふざけ始めるんじゃありません」

 

 カルデアに帰ったら覚えておけよロマン。

 心の中でロマンの処遇を決めつつ、彼が言ったように空を見上げてみる。するとついさっき撤退したはずの黒ジャンヌたちが乗っていたワイバーンのうちの一体が下りてきた。その上には痴女シスターことバーサーク・ライダーが乗っていた。だが、その身体は撤退する前、Xに傷つけられたままの状態である。どこからどう見ても一度撤退して再び攻めてきたようには見えなかった。

 

「そこまで警戒しなくても大丈夫ですよ。私に戦う意思はありません。というか、もう戦うどころか現界すら厳しい状況です。………流石にあの数のサーヴァントから無傷で逃げるのは無理でしたから」

 

 ほら、と見せられた手は既に半分ほど透けており、彼女に残された時間が少ないことを知らせてくれた。確かにもう少しで消えるということは理解できるのだが、英霊が消えるプロセスってそんなものだっけ?

 若干疑問に思いつつも、どうして消える間際で俺たちの目の前に現れたのか問いかける。

 

「で、どうして俺たちの前に現れた?もうすぐ消えるっていうのなら、わざわざ俺たちの前に現れる意味が分からないんだけど」

 

「あぁ、それはですね――――」

 

「その前に一ついいですか?………正直、私はあなたの本性を知っているので猫かぶりはやめたらどうですか。猫かぶり系のヒロインは見苦しいですよ?」

 

「本っ当に一言、二言多いわね。ここで決着つけてやろうかしら……あっ。………コホン。な、なにを言っているのですか?これは私の嘘偽りない本心ですけれど?」

 

 嘘乙。

 あそこまでいい笑顔で明らかに嘘とわかることを言い切るとはある意味尊敬に値するメンタル面の強さだな。流石英霊。

 

「別にどれが素なのかとかどうでもいいけどさ。時間がないなら早くここに着た理由を教えてくれ」

 

 うちには最強のシリアスブレイカーことヒロインXが居るからさ。時間をかけると絶対話が脱線すると思うんだ。というかする。唯でさえ時間がないんだし、寄り道して時間切れは本当に格好がつかない。

 

 そんなことを考え、無理矢理話を進めることにした。黒ジャンヌのライダーはどうでもよくないと呟きつつも口を開いた。

 

「貴方たち、仲間を探しているのでしょう?だったらリヨンに向かいなさい。そこには私たちが追い詰めたサーヴァントが居るはずよ。彼ならかなり強力な戦力となってくれると思うわ。何せ、最強の竜殺しですもの」

 

「わざわざそれを言うために戻って来たんですか?敵である俺たちに対して?」

 

「別に私だって好きで街を破壊していたわけではないわ。そりゃあ、たまに暴れたい時だってあるけれど、人を襲うほどじゃないわよ。ほら、私聖女だから」

 

「知らねーよ」

 

 今までの話を総合した結果、この目の前のライダーが聖女という結論に至ることはなかったんですが……。見た目痴女のステゴロ女ということしかないんだよな。

 

「しかし、今さら気づいたんですけど、自分のことを偽るのやめたんですね」

 

「よくよく考えたらあなたたちは私の正体知らないだろうし、別にいいかなって」

 

「思い切りがよすぎる」

 

 1か10かしかないのだろうか。

 ということを考えつつ、光の粒子に変化していくライダーに頭を下げた。色々向こうにも事情があったことは承知だが、敵である俺たちに死に体の身体を引きずってまで情報をくれたことに変わりはないからである。すると、ライダーはフッと微笑み、胸の前で手を組んで祈りを捧げるように目を閉じで言葉を紡いだ。

 

「どうか、すべてを救わんとする貴方たちに神のご加護がありますように……」

 

 どこか粗暴そうな先ほどとは雰囲気から違い、まさに外見通りのシスターもしくは聖女のような言葉を残して彼女は消える―――――はずだったのだが、

 

「あ、そういえば私、貴女の正体わかりましたよ」

 

「えっ、ちょ―――――」

 

 最後の最後、Xの言葉に反応してしまった彼女はどうにも決まり切らない表情で座へと帰って行ってしまった。

 あとに残されたのは気まずい空気である。

 

「もしかしてやらかしちゃいましたかね?」

 

「もしかしても何も、完全にやらかしてますよ……」

 

 冷や汗をだらだらと流しながら俺にそう問いかけるXに返事を返したのは、何とも言えない表情を浮かべたマシュだった。

 

 

 

 ―――――――――――――

 

 

 と、いうことがありリヨンに来てみたものの、ライダーが言っていたとおりかなり激しい戦闘の跡があり、巻き込まれたであろう人たちがリビングデッドとなって俺たちに襲い掛かっているあの状況に繋がるわけである。

 一体一体は大したことないのだが、ジャンヌさんとマシュの精神ポイントと兄貴のやる気ゲージが赤ゾーンで割とピンチである。一応この状況に憤りを感じているマリーが手を貸してくれているが彼女は元々王女であり、戦士ではない。アマデウスと組んで何とかといったところだろうか。決して弱くはないのだが、決定打に欠けているのである。さらに、

 

「GAAAAAAAA!!」

 

「GAROOOOOOOOOOO!!!」

 

「ワイバーン……!」

 

「えぇい!ま た お ま え か!!」

 

 リビングデッドに引き続きワイバーンまでやって来た。正直キレそう。

 仕方がないので、俺に狙いを定めているリビングデッドを八極拳で内側から爆発させ、襲い来るワイバーンの首を相手の勢いや自分の体の勢い、魔術その他諸々を使って引きちぎると兄貴に向かって声を張り上げた。

 

「ランサー!宝具の開帳を許す。ここら一体の敵を根こそぎ殲滅しろ!」

 

「おう!思い切りがいいのは好きだぜ!――――――その心臓、貰い受ける。突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

 兄貴―――クー・フーリンの代名詞と言ってもいい宝具、ゲイボルクを撃ち放つ。

 投げた瞬間に当たることが確定するというわけわかめ効果を持つその深紅の槍は、近くにいるリビングデッドやワイバーンの心臓を根こそぎ貫きながら普通ではありえない軌道で敵を殲滅していった。流石本家本元のゲイボルクは違うね。当たらないゲイボルクなんてなかったんやな。

 兄貴の宝具とほかのみんなの頑張りもあり、何とか雑魚ラッシュを切り抜けた俺たち。ここでようやく本命である竜殺しのサーヴァントの捜索を行おうとした時、唐突に一体のサーヴァントが現れた。今まで誰も気づくことができなかったことからクラスはアサシンだと考えることができる。

 

 そのアサシンは顔面の半分を仮面で覆い、その手はおおよそ人のものとは思えない形状をしていた。

 

「私はサーヴァント……竜の魔女よりこの街を支配下に置く者。……人は私をオペラ座の怪人(ファントム・オブ・ジ・オペラ)と呼ぶ。さあ、さあ、さあ。ここは死者が蘇る地獄の只中。――――君たちはどうする?」

 

 不気味な声と表情語り掛けるように問うファントム。しかし、残念かな。

 本人がまさに舞台さながらのセリフ回しをしている間に俺は気配を世界と同化させて彼の背後に回っているのである。

 卑怯?卑劣?外道?鬼、悪魔、仁慈?何をおっしゃるウサギさん。前にも言ったかもしれないが、戦場では口ではなく身体を動かすべきである。ここは物語の中の世界ではなく現実だ。RPGのように魔王は世界の半分をくれないし、こちら側がわざわざ相手の言葉を聞く義理はこれっぽっちもないのだから。

 まぁ、しかし問答無用での攻撃は流石にかわいそうなので一応答えておくことにする。

 

「俺たちがどうするかって?もちろん見敵必殺(サーチ&デストロイ)に決まってるじゃないか」

 

「何っ!?」

 

 背後から回答が帰って来たことに驚いたのかそのままこちらを振り向くファントム。しかし、遅い。初動が認知してからの時点で遅すぎるのだ。

 俺はルーンを利用した転移の魔術で四次元鞄から小太刀を取り出すと、彼が攻撃に移る前にその首をきれいに跳ね飛ばした。

 

 「なんとあっけない幕切れか……だが、お前たちの地獄はここから始まるぞ。せいぜいこの後に来る邪悪な竜に食い破られないことだ」

 

「生首状態でご忠告どうも」

 

 首をはね飛ばした割によくしゃべったファントムは飛ばした首が地面に接触する前に金色の粒子となってその場から消え失せた。完全に出落ちだったな。いや、俺がそうしたんだけどさ。アサシンなのに堂々と現れて演説かますってことはつまりやれってことだったんだと思うんだ。

 

 ファントムに関してそのようなことを考えつつ、彼の言った邪悪な竜という言葉がどうにも引っかかる。

 今までのワイバーンのことでは絶対にないだろうし……おそらくは黒ジャンヌが呼び出したものなのだろうけど……問題はどんなものが呼ばれたかだ。

 うーんと頭を悩ませつつも瓦礫の山と化した町でサーヴァントの捜索を再開すると、このリヨンについてから全く話さなかったロマンが慌てた様子で通信をよこしてきた。

 

『あぁ!やっと繋がった!いきなりで悪いけど、全員撤退をお勧めする!!サーヴァントを上回る超極大の生体反応だ!ものすごい速度でそちらに向かっている!』

 

「チッ、それが邪悪な竜か」

 

「サ、サーヴァントを上回るなんて……そんな生命がこの世に存在するんですか!?」

 

『そりゃするさ、もちろんするさ!なんたって世界は広いからね!というか既に身近に一人いるじゃないか、サーヴァントを上回る生命』

 

『あっ(察し)』

 

「おい」

 

 こっちみんな。さっき実演したばかりで無理かもしないけどこっちみんな。

 

『おっと、こんなことしている場合じゃない。さらにサーヴァントも3騎セットでついてきてるぞ!』

 

「でもお高いんでしょう?」

 

「先輩までXさんみたいなこと言わないでください。これは通販じゃありません」

 

「あれ、流れで軽くdisられました?」

 

 いつもの流れが帰って来たところで、再びたいして良くない頭を回転させる。この邪悪な竜がどの程度のものかがわからないため、普通は逃げるということが最も賢い選択となる。しかし、サーヴァントを上回る竜となるとあのライダーが言った竜殺しのサーヴァントは戦力としてぜひお迎えしたいところだ。…………まぁ、このまま逃げてもじり貧だ。なんせ向こうには汚染されていない純粋な聖杯を所有している。サーヴァントのバーゲンセールということもできる相手に向かって逃げても無駄だろう。なら、味方になりそうな竜殺しのサーヴァントを捜索したほうがいいかもしれない。

 

「皆聞いてくれ。今後の方針を話す」

 

『………』

 

「俺たちはここに残って竜殺しの捜索を行う。ぶっちゃけ、ここで逃げても無駄だと思うし」

 

「はい。マスターの指示に賛成です」

 

「邪悪な竜ねえ……いいぜ、面白い」

 

「その竜、私なら狩れる気がします!なんというか相性的に!」

 

「私もその方がいいと思うわ。というわけでアマデウス。迎撃の準備をしましょう」

 

「拒否権はないんだね………。まぁ、いいさ。僕はやばくなったら一人で逃げるからね!」

 

 方針を決めてそれぞれがやる気(?)を出している中、ロマンには竜殺しのサーヴァントの反応を探るように頼む。

 彼はそれを受けた後、十数秒でその情報を伝えてくれた。

 

『反応キャッチ!結構弱まってはいるけど、その先の城からサーヴァント反応だ!』

 

「了解!マシュとジャンヌさんは一緒に中へ。それ以外はいつでも迎撃できるように外で待機」

 

 指示をだし、二人と一緒にリヨンに立っていた城に入る。探していたサーヴァントはすぐに見つかったが、かなり追い詰められていたのか生きているのが不思議なほどの重傷を負っていた。

 

「ちっ、次から次へと……」

 

 敵と勘違いしているらしいサーヴァントは手に持っていた大剣を振るう。その攻撃をマシュに受け止めてもらいつつ、ジャンヌさんと俺とでそのサーヴァントに今までの状況を簡単に説明した。ぶっちゃけ、ここで嘘だと断じられていたらかなり面倒なことになっていたのだが、彼は竜という単語に色々納得したらしくあっさりと協力をしてくれた。そんな彼を伴い急いで外に出てみれば、既に間違えようのないほどはっきりと敵の存在が感知できた。

 

 

 

 ――――そうしてやってきたのはワイバーンなんて比べ物にならないほどの力を備えた竜だった。

 全身は黒い鱗で覆われており、その全長は相当な大きさだ。唯その場にいるだけなのに押しつぶされそうな圧力を感じてしまう。

 これが、真の竜種……なるほど、サーヴァントを上回る生命と言うことも納得せざるを得ない。

 

 そんな圧倒的な黒竜にまたがっていた黒ジャンヌは俺たちが見つけた竜殺しのサーヴァントを見ると冷たい目線を向けつつ口を開いた。

 

 「何を見つけたかと思えば、瀕死のサーヴァント一騎ですか……。いいでしょう、もろとも滅びなさい!特にそこのマスターは絶対に滅びなさい!」

 

 なぜか名指しをされつつ、強力なブレスを溜めている黒竜を見やる。……推定あと十五秒といったところか。なら――――

 

「ランサー、アサシン。令呪を以て命ずる。全力であの黒竜の懐に潜り込み、あの口を閉めて来い!」

 

「うわー。なんて命令出すんですかねぇ……」

 

「あっはっは!面白れぇこと考えるじゃねえか!」

 

 自分でも酷な命令だと思うが、今考えられる中で一番これが有効だと思う。ジャンヌさんとマシュで受け止めてもらうことも考えたが、とりあえず撃たせないことを考えての采配だ。二人には悪いけどね。

 

「いや、ここいらで頼りになるとこを見せておかねえとな。もう全部アイツだけでいいんじゃないかなって言われかねん」

 

「確かに。ま、マスターに頼られたとプラスに考えておきますよ」

 

 とだけ言って、二人は一斉に駆けだす。

 令呪によってブーストされた二人は一瞬にして黒竜の懐へと移動した。そして、ブレスを放とうとする顎に渾身の一撃を叩き込む。

 

「オラァ!」

 

「カリバー!」

 

「グォォ!!??」

 

 ブレスを放とうとした時に口を閉ざされたため、溜めていた炎は外に出ることなく黒竜の口の中で暴発した。

 その隙に俺は助け出した竜殺しのサーヴァントに魔術をかけた。

 

「mp_heal(32)!」

 

「……む?」

 

 俺がかけた魔術は魔力をサーヴァントに譲渡する魔術。それによって竜殺しのサーヴァントの魔力をある程度まで回復させる。ついでに俺がよく使っている武器にも魔力を回す。

 

「魔力を少し分けてみたけど、戦えそう?」

 

「すまない、感謝する。宝具一回使うくらいは可能だ。早速、与えられた仕事をさせてもらおう」

 

 言って、彼はぼろぼろの身体で一歩前に出る。

 すると、あの黒竜が目に見えて怯えだした。

 

「久しぶりだな邪悪なる竜(ファヴニール)。再び蘇ったというのであれば、再びお前を打ち倒そう」

 

「ファヴニールが怯えている……。あのサーヴァント、まさか――――ッ!」

 

「蒼天に聞け!我が名はジークフリート!かつて汝を打ち倒した者なり!――――――宝具開放、幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

 

「――――ッ!?ファヴニール、()がりなさい!」

 

 ファヴニールにジークフリート……物語に沿った結果を引き起こしやすい生物としては致命的な一撃を黒ジャンヌは何とか回避した。ジークフリートさんは今まで負っていた傷と魔力切れでその場で膝をつく。それを確認した俺は念のため魔力を流し込んでおいたあの現代兵器じみた深紅の槍を構えて、ファヴニールに向かって投擲した。

 

「トベウリャ!」

 

 なんとなく違う掛け声とともに放たれた深紅の槍はファヴニールの目に着弾、上に乗っている黒ジャンヌもろとも巨大な爆発を起こした。汚ぇ花火だ。

 

「さて、今のうちに逃げようか」

 

 膝をついて驚いているジークフリートさんに肩を貸しつつ、他のサーヴァントにそう声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これから下の小話は本編とは全く関係がありません。







英霊召喚を行うカルデアの一室で、仁慈は一人呆然としていた。
誰にも言わずなんとなくで英霊召喚を行うというある意味で愚行をした仁慈だったが、そんな彼を神が罰したのか英霊を召喚することはかなわなかったのである。
始めはそれで気落ちしていた彼だったが、代わりに召喚された概念礼装をみて彼は呆然としているのだった。

☆5

名前:神機

保有スキル
 
樫原仁慈が装備しているときに限り、すべての身体能力の上昇&自身に神性特攻を200%付与。

解説

別の世界線の遥か彼方の樫原仁慈が使っていた物。
その刀身で数多の神を殺し、あまたの理不尽を翻し、あまたの理不尽を築き上げてきたまさに世界にも影響を及ぼす神殺しの武器。

さぁ、英雄(キチガイ)よ。武器を取れ。世界に蔓延りし神々を一匹残らず喰らいつくせ。それが樫原仁慈だ。


「………」


効果と解説を読み、武器を手に取ってみる。
説明に偽りはないらしく、自分の体に力がめぐって来たのを仁慈ははっきりと自覚することができた。
そこで彼はその武器にルーンを刻んで鞄の中にしまうと、部屋を後にした。



このときから、彼は槍と併用してこの神機を使うことが多くなった。
その結果――――





――――――全敵が泣いた。



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