この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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導入です。


第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン
第一特異点プロローグ


 

 

 

 

 

 

 

「あ、あはは――――ははははは!あはははははははは!!愉しい、愉しいわ、ジル!こんなに愉しいのは生まれて初めてよ!」

 

「ええ――――ええ、そうでしょうとも。それが正しい。それでよいのです。人々に担ぎ上げられ、人々の旗にされ、人々に利用され、人々に見捨てられた―――――だからこそあなたは正しい。この地上の誰が、何が。あなたのその本心を、裁くことができるでしょう……?」

 

「さぁ、幕を上げましょう。醜い欲が渦巻く惨劇の幕を!すべてを燃やしてしまいましょう憎悪の炎で!神々を信じるだけで何もしようともしない家畜共に、裁きを与えましょう!アハハ、あはははあはははh―――――ゲフンゲフン。………慣れないことはするものではありませんね」

 

「おぉ……!ジャンヌ!なんということだ、なんということだ!!あなたの笑い声すら神は否定するのか」

 

「いや、そういうわけじゃないと思うんだけど」

 

「ぬぉおおおおおおお!!やはり、神は何処までも彼女を引き離すのか!?誰よりもあなたにつかえた聖女たる彼女をッ!!」

 

「聞いてよ」

 

 黒い影の二人組は、一時間ほどそのやり取りを繰り返していた。

 

 

―――――――――――

 

 

 

「………何だ今の」

 

「………フォー?」

 

 なんか悪い夢を見ていた気がする……多分。うん、悪い夢だったと思うよ。普通に祭司的な人が殺されていたし。理由を聞けば自業自得が入っているうえに、最後の会話が完全に漫才じみていた気がしなくもないけれど。

 それに助けを求める声も聞こえてきたし。タスケテータスケテーとかはやくきてーはやくきてーとか。……いや、最後のは違うな。あれで呼んでいるのは俺じゃなくて騎士だわ。

 

「キュ?フ、フォーウ!フッ!」

 

 今の思考は俺の口からダダ漏れだったらしく、フォウがすぐさま反応してその短い前足で俺のことをぺシぺシと叩く。どうやらそんなことあるわけないだろうとツッコミを入れているようだった。小さい足を必死に動かして俺の腕をペシペシ叩く姿はものすごく和む光景だった。

 ちょうどいいので、先ほど見てしまった悪夢(?)で削れた精神ポイントをペシペシするフォウを眺めて回復を試みる。いつぞやのように全力でモフモフしに行くようなことはしない。何故なら俺は過去の失敗から学べる男だから。

 数分間じーっと眺めていると、マシュが俺の自室へと入室してきた。しかも、カルデアで着ているものではなく、デミ・サーヴァントの時に身にまとっている鎧の姿で。なんでや。

 

「おはようございます、先輩。よく眠れましたか?」

 

「今日の寝つきはそこまでよろしくなかったかなぁ……。ところで何故マシュはその恰好なんだ?」

 

 もしかして、今から特異点にでも行くのだろうか。それはそれとして、いきなりなんだけどどうしてマシュの鎧はお腹が完全露出しているのだろうか。鎧なのに中身丸見えって機能的とは言えないんじゃないかなぁ。いくら正面は盾で防ぐからと言ってもさ。マシュと融合した英霊の趣味だったのだろうか。

 

「これから管制室ブリーフィングですよ。どうやら、特異点にレイシフトする準備が整ったらしいです」

 

「わかった。今から着替えるからちょっと待ってて」

 

 一度マシュに外へと出てもらい、速攻で着替えてから俺も彼女に続いて外に出る。別に外に追い出すことはなかったんだけどさ。マシュの方が残りたくないと言っていたから外へと出てもらっていた。恥ずかしいから外へと出ていったと俺は信じている。というかそうじゃなかったら俺が泣く。

 そんなくだらないことを考えつつ歩いているといつの間にか管制室の入り口まで来ていた。ウィーンと近未来的な自動ドアを潜り抜ければそこには真っ赤に染まったカルデアスとロマンがいた。ほかにもダ・ヴィンチちゃんとか所長とかいるけど今はいいや。

 

「やぁ、待ってたよ、仁慈君」

 

 にこっと緩く笑った彼の口から聞かされたのはこれからのことである。

 具体的に言うと俺が特異点に行って何をするのかということだ。まずやることその1、レイシフト先でいい感じの霊脈を見つけて召喚サークルを作成する。これをやることにより、レイシフト先でも支給された道具や食料を受け取ることができるから必要なことと言えるだろう。次、特異点の修正。これは絶対条件だな。これをやらなければ何のためにレイシフトしているのかわからなくなってしまう。そして最後は聖杯の調査&回収。特異点と言われている場所に、歪みを作っていると思われるこの聖遺物(笑)を回収しないことにはまたいつどこで時代が歪むか分かったものじゃないからな。

 以上3点がレイシフト先で俺とマシュがすることである。どれも納得の理由ですな。さて、やるべきことも聞いたので俺は早速呼び出した新たな仲間である。ランサーニキと腹ペコXを管制室に呼び出す。

 

「おう、ようやく出番か。いいぜ、任せな」

 

「特異点に聖杯があるとすれば、当然セイバーもいるわけですね。いえ、居ないはずがありません。しからば、私が行かないわけがないでしょう。セイバーいるところに私在り、です」

 

 どちらもやる気が満々なようで大変よろしい。しかし、何かあれば令呪を使うことすら辞さないぞ?いいね?

 

『アッハイ』

 

 こいつらを召喚してから割と経過したけど、大まかな扱い方が分かって来た。ヒロインXには一度、飯をマジで制限してから真面目な時は自重するようになったし。ランサーニキもどうしても言うことを聞かない時はマーボー師匠直伝、激辛麻婆豆腐をちらつかせたら普通に言うことを聞くことになった。……どうしよう。飯こそ最強という適当な理由で料理人を目指した彼は物凄く正しかったんじゃなかろうか。

 

「じゃあ、悪いんだけど早速向かってくれるかな?大丈夫。今回はコフィンを使ったレイシフトだから失敗することはほとんどないよ」

 

「ゼロじゃないけれどね」

 

「何でそんなこと言うんですかねぇ……」

 

 今から行こうって時にどうしてこうも行く気をそぐような言葉を呟くんですか所長。あれか、今回はレイシフト行わないから好き勝手言っているのか。帰ってきたら覚えていたまえ、所長。君だけ飯抜きにしてくれるわ。

 

「――――――――ッ!!??」

 

 まさに絶望という表情を浮かべた彼女はその場に手を付いた。心なしかレフ・ライノールから真実を告げられた時よりも絶望しているようにも見えた。うん、完全に克服したようで何より。頑張って自分の現状を受け入れることができた所長には特別飯抜きはなしにしてあげよう。

 

 さて、相変わらず緊張感のかけらもない会話をしながら俺たちはコフィンの中へと入り込みレイシフトを開始した。

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 うぁー。レイシフトの感覚はなんかなれないんだよなぁ。

 なんていうの?荒れた海の中にボートで取り残された感じ?あのぐわんぐわんっていうのが本当に気持ち悪い。吐くほどではないんだけどいい感じに不快感を刺激してくるんだよな。

 

「レイシフト完了。………のどかでいいところですね。先輩」

 

「ん?」

 

 マシュに話しかけられて彼女のいう言葉を確かめるためにざっと周囲を見渡してみる。そこにはどこまでも続いていそうな草原が広がっていた。道端に視界を防ぐような建物や木もなく、見たこともないのにこちらの気持ちを落ち着かせてくれる……そんな感覚である。

 

「確かに、いいところだね」

 

「昼寝したら気持ちよさそうだな」

 

「はい、ここは確かにいい場所です。……視界を遮るものがないので、セイバーが来たらすぐにわかりますから」

 

「相変わらずの判断基準ですね、ヒロインXさん……」

 

 もはやこれがないと正気を疑うレベルだからな。このセイバー狂いがあって初めてヒロインXと言える。これがなかったらただのアーサー王だし。

 

「フォーウ………」

 

 フォウも俺の考えに同意しているようで、短く鳴いた。このカルデアチーム(仮)の中でフォウが上位に食い込む常識人(?)という状況に……。不思議生物と大天使しか俺の味方はいないのか。

 

 

 

 自分の仲間のぶっ飛んでいる事実を改めて思い知らされた俺は思わず天を仰ぐ、すると何やら空に光の輪の様なものを発見した。すかさず、魔術で視力を強化してその光の輪を眺めてみると、いかにも魔術に使っているような文字が羅列されていた。

 

 

「先輩、どうやらこの世界は1431年。現状、百年戦争と呼ばれる戦争があった時代のようです。現在は戦争の休止期間らしいですけれど………先輩?」

 

「マシュ、上を見て」

 

「?……あれは……」

 

『あ、やっと繋がった』

 

『ここまで時間がかかるのはいけないわね。彼らが帰ってきたら改良を加えましょうか』

 

『真面目な所長……珍しい……』

 

『ご飯がかかっているのよ、ご飯が。………今まで市販のレトルトとかで済ませていた地獄を貴方も覚えているでしょう?』

 

『まぁ、確かにそうですね。仁慈君の料理食べちゃったらもうレトルトは食べれませんねー』

 

「おい、サポートしろよ」

 

 いかにも怪しい感じの紋章が宙に浮いてんだろ。

 マシュにこの映像をカルデアのモニターの方に送ってもらう。すると、これは惑星を覆っているほどの規模ということが分かった。こんなもの実際にはなかったものなので、これが特異点を作り出している原因、もしくはその一つであると、所長とロマンは語った。

 あれは彼らが解析してくれるらしいので、俺たちは召喚サークルを作るための霊脈を探すために移動を開始した。

 

 

 

 しばらくこの穏やかな草原を歩いていると、目の前に武装した集団を発見した。マシュによると、彼らはフランスの斥候部隊とのこと。

 正直、何もわからない状態で姿をさらすのは得策とは言えない。誰が味方で誰が敵なのかもわからないからだ。しかし、情報が何もない現状において動かなければどちらにせよ詰むのも事実。どちらを取ろうかと考えていると、ジャージのポケットに両手を突っ込んでいるXが口を開いた。

 

「マスター、別に話しかけても大丈夫そうですよ。私の勘がそう言っています」

 

 彼女の直感はどういうわけか多少劣化しているらしいがそれでも、俺たちに打つ手はないので、どうせなら信じて話しかけることにしてみた。

 そうして、なるべく笑顔で彼らに話しかけると、

 

 

「ヒッ……!敵襲!敵襲ー!」

 

 普通に戦うことになりました。なんでさ。いや、確かに俺たちの格好は良くも悪くもこの時代に合ってないし、不審者と言えば不審者なんだけどさ。

 

「……まぁ、準備運動として軽くひねってやるか」

 

「いいでしょう。今まで見せることができなかった私の実力を思い知らせてやりましょう。宇宙聖剣二刀流の力を見せつけてやりますよ!フォ〇スとともにあらんことを!」

 

『やる気満々マン!?一応そこは正史と隔離された特異点だけど、できれば穏便にお願いね!?情報を聞き出すとかあるから!』

 

「……失敗しました。話しかけるときはフランス語でしたね……」

 

「そういう問題じゃない気がするけど……ええい!仕方ない。とりあえず、話を聞いてもらえる状態まで強制的にしてやるわ!」

 

 

 

 そうして、俺たちはフランスの精鋭部隊と激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




鬼殺しの難易度が上がってきましたね。
茨城童子の攻撃力上げてくるとか、卑怯すぎやしませんかね………。

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