この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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遂に来てしまったか、CCCコラボ(予定)……これは阿鼻叫喚の光景が予想できますよ……。


歎きの壁(胸じゃない)

 

 

 

 

 

「これもう絶対聖都ってその言葉通りの所じゃないですよね。アレですよ、聖都とは名ばかりで、思考停止した人間が日々決まった行動を起こすだけのロボット王国みたいなことになってますよきっと。私が視た星の中でそんな所ありましたし」

「ランクが下がってても直感持ちが言うと信憑性があって怖い……」

 

 円卓の騎士………なんか想像していた騎士と行動がかみ合わないので俺の中で(仮)ということにしておくけど、その円卓の騎士(仮)である鳥公だかトリスタンだかの行動を見たXは、俺と運転を交代したため後ろの席に座りながらとてつもなく嫌なことを言ってくれた。

 

 

 

 そして、その予感は現実のものとなる。

 

 

 順を追って説明しよう。

 あれから俺達は心なきゾンビ擬きとなってしまっている人から襲われている難民を見つけ出し、スピンクス号で軽く引くことで彼らを助けた。曰く彼らが言うには、聖都では月に一度、その聖都の中に入る人の厳選を行っているらしい。……この段階で既に嫌な予感しかしない。Xとサンタオルタも同じことを思っているのか耳打ちしてきていたので余計にそのことを感じた俺達は、サーヴァントと自分に補助魔術を使うことにした。

 助けた難民から話を聞いた後、日こそ完全に落ちてしまったもののようやく聖都と思わしき場所に辿り着くことができた。

 そこは白く巨大な壁でどこまでも覆われた要塞を思わせるつくりをしていて――――というかやはり完全に要塞である。外からの攻撃を守る役割を持っていることは想像に難くないが、どこか中からの脱出も拒んでいるように思えた。

 門と思わしき場所の近くにはいくつものテントが建てられており、いったいどれだけの人がここでセイバツの儀(難民から聞いた受け入れの事)を心待ちにしているかがよくわかった。

 

 まあ、着いたとたんになんか追いはぎを行う商人みたいなやつらを死なない程度にボコボコにしたのだが、それは別にいいだろう。

 問題はセイバツの儀とやらを行いに現れた騎士たちである。大層な鎧に身を包んだ騎士たちは聖都(要塞)の中から出て来るや否や、まるで難民たちを囲い込むようにして佇みはじめた。さらに円卓の騎士、サンタオルタからはガウェイン卿と、Xからは脳筋バスターゴリラと呼ばれていた要するにガウェインが出てきたわけだが、彼が姿を現した瞬間に美しい星々をみることができた夜空が一転して昼間の輝きを取り戻す事態となった。

 ガウェインからもトリスタンと同じような、何処か普通のサーヴァントとは違う何かが混ざっている感覚がするので親玉たる獅子王から何かしらの能力を賜っているとみてまず間違いないだろう。彼は日中では聖者の数字というものの効果で身体能力を始めとする戦闘技能が三倍になるという某赤い人仕様らしい。

 念のために襲ってきた商人から強d……借りた布を全員で被り難民として紛れる。しかし、ダ・ヴィンチちゃんとマシュの二人はとても隠せそうにない巨大な装備を持っているために全身を布のみで隠すことができる俺とX、そしてギリギリアウト染みたサンタオルタが彼女たちを隠しながらなんとか声が聞こえるあたりの場所まで移動したのだ。

 

 ガウェインが難民達へ演説を行った後に、彼らの身体から感じることができる力をさらに強大にしたような気配が現れた。

 その姿は獅子をモチーフにしたのだろう、立派な鬣のようなものを備えている兜をかぶった人物。その外見から性別は判断できないが声の感じからしてあれは女性だろう。その獅子をモチーフにした兜を装備したあの人物こそ獅子王であると、あたりを付ける。 

 その獅子王は短く言葉を紡いだ後に自らが持っている槍を掲げ、そこから眩いばかりの光を放った。すると、その光に呼応するかのように難民の中から三人の人物が輝き始めた。

 それを見届けた獅子王はその身体を翻し聖都……ガウェインの話ではキャメロットと呼ばれる都市の中へ。その後――――難民たちの周りを囲ってい居た騎士が光を放っていた難民を捕まえ、それ以外の難民に攻撃を仕掛けた。

 

 振り下ろされる西洋剣に難民たちは為す術もなく切り裂かれていく。身体を縦に真っ二つにされたもの。上半身と下半身を分けられたもの。庇った子どもごと切り裂かれたもの、首を刈り取られたもの……一貫して言えることはどうあっても生き残ることはできないだろうと確信できる傷を負わせているところだった。容赦ないな。

 

「………難民は大混乱、既に囲まれてしまっていて逃げ場はないと言ってもいい。しかし我々ならまだ逃げることができる。後は分かるね?」

「はい……この包囲網をこじ開けます!」

「よく言ったマシュ。……普通のオルタであれば、ここまでではなかっただろう。しかし、今の私は子どもに夢を届けるサンタオルタさんだ。……いつぞやのマッシュポテト、そしてビームブッパをするだけの簡単なお仕事とほざきやがった恨みをぶつけてやろう」

「えっ」

「珍しく気が合いましたね。あのバスターゴリラ、どういうことか問い詰めなければなりません。それに、セイバー顔でなくてもやはりセイバーは殺すべし。慈悲はない」

「えっ」

 

 嫌な予感というのは実によく当たるものだった。しかし、この光景を見てマシュは怒りの方が強いようだ。恐らく後で思い返して落ち込むこともあるかもしれないが少なくともこの場で立ち止まったりすることはないらしい。

 

「これで、今後の展開は決まっちゃったかな……?」

「……まぁ、ダブルアルトリアがいる時点で彼らとの敵対は決まっているようなものでしょ」

「だよねぇ……仕方ない。万能者、その所以を此処で見せてあげよう!流石に全員は既に不可能だが、百人くらいは逃がしてやるとも!」

「ダ・ヴィンチちゃんも意外と人ができてるよね」

 

 それだけ言い放ち、俺達はお互いに弾かれたかのようにその場から離れ、特攻をしていったマシュ達へと続いていくのだった。

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 阿鼻叫喚の地獄絵図。人々は泣き叫び、誰しも生き残ることはないと思われた空間。

選ばれたらしい女性の一人も既に愛すべき我が子を守るためにその命を散らしていた。まるで救いという言葉が忘れ去られたが如き空間に、彼らを殺して回る騎士たちとはまた別の人物たちが現れた。

 それは、守るべき人々を守るために使われる盾を振りかざしている騎士のような恰好をした少女であったり、どう考えても異国の文化を多分に含んだ白い袋を持った少女だったり、SFチックな装備を身に纏った少女だったりした。

 

「はぁぁぁぁあああ!!!」

 

 その中の盾を持った騎士―――マシュは懸命に己の心を震わせながら、難民を殺して回る騎士、粛清騎士の排除に動いていた。彼らを手に掛けんとする剣を身長程の盾で受け流すと、質量で勝るそれを振り回して騎士たちを殴打していく。

 難民はその隙にマシュが開けた包囲網から次々と逃走を行った。彼女はそれをチラリとわき目で確認すると再び別の場所へと赴き難民を殺そうとする粛清騎士の元へと赴き、その盾で凶暴な刃に晒されそうな人々を守っていた。

 

 仁慈はマシュのことを横目に見ながら戦場となった地を駆け抜ける。未だ被っている布に隠れて居る四次元鞄から小回りが利く小太刀とナイフを手に取り、地面に倒れている難民へ止めを刺そうとする粛清騎士の背後へ接近。鎧の隙間から生身の部分を即座に見破り、己の刃をそこに浴びせる。

 

 まずは手に持っている西洋剣を落とし、痛みに悶える粛清騎士の首元……そこから見える首筋に小太刀を滑らせ、切断する。首が落ち、まるで英霊のように光の粒になって消えた粛清騎士を見た仁慈は、彼らの正体がサーヴァントに近い、肉体を持たないものであるということを理解した。

 

 だからと言って、この場で何かすることはできないので、消えたのを確認したのちにすぐ近くに居る騎士に躍りかかる。弓を構え、矢を放つ粛清騎士に狙いを定めた仁慈は雨のように降り注ぐそれらを回避、ないしは武器で切り裂きながら接近。勢いを殺すことなく跳躍する。跳び越えるようにして上を取った仁慈は頭をしっかりと手のひらで掴むと己の推進力を利用してそのまま首を半回転させて捻じ切った。続けざまに、宙にいる仁慈に槍を突き出す粛清騎士に狙いを変更し、左手に持っていたナイフをルーンで操り一時的に足場として踏みしめることで突き出された槍を回避した。そのまま槍を伝って肉薄した彼は兜の隙間から武器を突き入れ、防具されていない無防備な頭を突き刺した。 

 

 ダ・ヴィンチちゃんはそんな仁慈のフォローに回っていた。確かに彼女は万能人ではあるが限度があり全能ではない。キャスターというクラス柄接近して戦うことは難しいために、主に仁慈が助けた難民を軽く守ったり、仁慈の手が回らないところの足止めを行っていた。彼女は思う。いくら考えてもマスターとサーヴァントの役目が逆であると。その内なる考えは声に出せば途端にロマニが肯定してくれるであろうものだった。

 

 一方、図らずとも仁慈やマシュ達とは少し遠くに行ってしまったXとサンタオルタはお互いがお互いに干渉しないように戦っていた。それは当然何かしらトラブルが起きてしまうということを懸念しての行動である。

 

「無事か?けがはないな?……よし、であるならばそこの母親とすぐさま逃げるがいい。貴様が生きていたら来年の冬にプレゼントをやろう……何?私が誰かって?サンタだが……む?知らないのか……じっくり教えてやりたいところだが今はそんな暇はない。早く行け」

 

 背中から斬りかかろうとした騎士を黒いエクスカリバーで横薙ぎに切り払いうと、サンタオルタは立ち上がった。流石にど派手で、他の難民を巻き込みそうな宝具などは解禁しない。しかし、彼女は最終兵器ビームがなくともセイバーとして申し分ない実力を持っているのだ。

 左右から交互に襲い来る粛清騎士を黒いエクスカリバーとプレゼントがやや過疎気味な袋で叩きつぶしていきながら、己の道を進む彼女は優先的に子どもがいる場所へと向かって行く。サンタさんは良い子の味方である。そう宣言したからには、己の教示を曲げることがない彼女が子どもたちを見捨てることなどありえないのだ。

 

 打って変わってヒロインXは積極的に粛清騎士の方へ向かって行っていた。それも、西洋剣を使っている者たちだけではない。弓や槍を持っている粛清騎士にも「おのれ、粛清騎士ゆ゛る゛さ゛ん゛」と言わんばかりに必要以上に攻撃を行うほどである。

 

「私以外のセイバーぶっとばぁす!弓も槍も持っている騎士は、セイバーじゃないかもしれませんが……ぶっちゃけ一般市民に手を出したあたりでギルティです!モストギルティ!私は、最優にて最可愛なセイバー・アルトリアとは何の関係もありませんが……流石にこれは見逃せませんね!属性、善ですし!」

 

 善の前に混沌が付き、これはかの有名なギルガメッシュと同じ属性であることを彼女は知らない。

 ……しかし、口ではふざけながらも仁慈達を冬木を除くほぼすべての特異点で仁慈たちを支えてきた彼女の実力にもはや疑いなどはない。ただでさえ星が製造した聖剣二刀流という冷静に考えれば異常極まりないことを常日頃から行っている彼女である。両手に魔力(フォースではない)を込めれば淡く光り出し、刃ではなく高熱で焼き切るというえぐさカンストの武器となる聖剣を難民に当てないよう、巧みに操りながらも粛清騎士たちに無慈悲とも言える正確さで当て、鎧事中身を焼き切っていく。右手と左手、お互いに邪魔をすることなく振るわれる剣戟はまさに嵐の如く。生半可な攻めすらをも切り伏せ確実に敵の数を減らしていった。

 

 

 

 

 順調に数を減らし、難民を全体で見れば大したことはないかもしれないが確実に何百人か退避させた頃。撤退しようとしていたマシュの傍に、まるで絵にかいたような美青年でありながらこの場を昼にした張本人である円卓の騎士が一人、ガウェインがその退路を塞いだ。

 

『くっ……!何故か西側も攻撃されている今なら何とかなるかと思ったんだけど……!』

「逃がすということはありません。私はこの聖罰を任されたものとして、貴女方を処罰しなければならないのですから。――円卓の騎士、ガウェイン。我らが王の命により、その命を頂戴します」

『やっぱり彼女たちの予想通りか……!』

「ドクター……逃げ道などは……!」

「ありませんよ。貴女方は難民を救うためにこの中へ一人で赴いてきた。見事な暴動でしたが、それは我々の包囲網に自ら飛び込むということ。すなわち獣の腹に自ら飛び込むことと同義です。……その程度の事、既に予測済みだったのではないですか?」

「敵を前におしゃべりとはちょ~とばかり余裕すぎやしないかな?もしかして油断?」

「これは油断でありませんよ。今し方貴女が言ったように余裕です。……貴女方では私を倒すことはできないのですから」

 

 語り掛けながらも隙などは見つけることができない。彼は油断なく、いつでも万全の態勢を持ってマシュとダ・ヴィンチを倒す準備を整えていた。一方のマシュは何処かガウェインに対して雑念が混ざっていた。圧倒的な力差から来る怯えではなく、もっと別な何かが彼女の心の奥にしこりとして蔓延っているのである。

 

「―――それでは、」

 

 ガウェインが剣を構える。彼が持つのは彼のアーサー王が持つエクスカリバーの姉妹剣。太陽の力を内包した強大な一振りである。それを構えた彼は、真っ直ぐにマシュとダ・ヴィンチを捕らえ―――――しかし己の剣を後ろに振り切った。

 

 ガキィン!と響く金属音。それは彼の持つ聖剣が己に届かんとしていた刃をはじき返した音に他ならない。

 攻撃が失敗したと踏んだその人影は深入りをすることなく跳躍してマシュ達の近くに着地する。二人とも布を着込んだ人物であったが、ガウェインはその人影のうち一人を見て驚愕に目を見開いた。

 

 何故なら、その人影が握っている得物は間違いなく聖剣であり、本人も実際に幾度となく目にしてきたものなのだから。

 

「その剣は……まさか……!」

 

 そう。その剣こそかの有名なエクスカリバー。ガウェインを始めとする円卓の騎士が仕えていた騎士王の剣。

 それの所有者は彼らにとって唯一人。

 

 思わず聖剣を持つ手が震える。しかし、視線はまるで釘で討たれたかのようにその人影に固定されてしまっていた。

 すると聖剣を持つ人影は己が被っている布に手をかけそのままバッと勢いよくそれを外した。

 そこには当然――――仁慈達と行動を共にしていたヒロインXが立っている。その恰好は余りにも現代染みているというか……もはや現代を通り越して宇宙に進出してしまっているが、顔は紛れもなくアルトリア―――アーサー王である。

 

 ガウェインは、未だ震えが止まらない体で、一言呟いたのだった。

 

「えっ」

 

 

 


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