この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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もうやめて!まともなサーヴァント達のライフはゼロよ!

そして話が中々進まない……本当に申し訳ないと思っている。


処方箋は胃薬で

 

 

「行きなさいスフィンクス!この者たちに偉大なりし太陽王の裁きを!」

 

 私たちが正体不明のサーヴァントから助けた女性――――ニトクリス。どうやら彼女はこちらが誘拐した犯人だと思い込んでいるようで先程から臨戦態勢をとっています。彼女だけでも格としては遥かに高く、強敵であることには間違いないのですが、それよりもさらに絶望的なのがスフィンクスという存在でした。

 ダ・ヴィンチちゃんの説明では魔獣の中でも最上位に組している存在で時に竜すらも越える神獣です。今の私達では完全に消滅させることなど不可能でした。

 

「ちっ、どこぞのハロウィンで着飾ったような性分の癖に面倒な」

「むしろ彼女と同類だからこそ、この対応とも言えます。そうですね……この方はエリちゃん風褐色エジプトと呼びましょう」

「なっ……!何のことかは、その……今一よくわかりませんが、何やら馬鹿にされていることだけは伝わりました。えぇ!もう容赦なんてしませんとも!」

 

 Xさーん!オルタさーん!火に油どころかガソリンをばらまいてからさらに風を起こすような真似はやめていただけると嬉しいのですが!

 

「カオスだねぇ、仁慈君のありがたみが感じられるねぇ。これ、もしかしなくても私が振り回すほうじゃなくて振り回される方になるのかな?」

「そんなことを言っている場合じゃありませんよ!」

 

 というか、既に向こうはやる気満々でいらっしゃるんですけど!皆さん何処か緊張感ない雰囲気ですけど、スフィンクス相手はかなり辛いものがあると思うんですけど!?私の盾も通じるかわからないですし。

 

「いや、貴女の盾はいかなる神獣であろうと砕けない。だから、顔を上げなさい」

「何者……!?」

 

 大変な状況(主に味方の所為で)に陥って、焦っている私にどこか落ち着いた男の人の声が聞こえてきました。

 それは、冷静さを失っているニトクリスさんにも聞こえたらしく、威厳に満ちた声で男の人に反応しました。けれどもすみません。どうにも誤解から私たちに攻撃を仕掛けてくるところや、寝起き云々の言葉で威厳の方は……。

 

「まだ名乗るほどの因果は持ち合わせていません。なのでどうか敵t――――!?」

「あ、ベディ君ですよね?」

「どっからどう見てもベディヴィエール卿だな」

 

 自然な流れでこちらに味方をしてくれそうだったいかにも騎士という男性の人の表情が固まりました。しかし、Xさんにサンタオルタさん。さらりとあの人のことをベディヴィエールと言っていましたね……。

 

「ベディヴィエール。円卓の騎士の一人だね。また最期までアーサー王に付き従った忠義の人としても知られる。彼だけは最期までアーサー王のことを信じてその最期を看取ったとも言われている……また隻腕にも拘わらず槍の腕は他の兵士の三倍の強さだったとか。……まあ、長々と語ったけど、彼は色々複雑な円卓の騎士の中でもかなりまともな部類の騎士だったんだ……。なのに、その彼がよりにもよって彼女たちと出くわしちゃうかー」

 

 あちゃーという風にダ・ヴィンチちゃんは義手がついていない方の手を額に当てました。気持ちは痛いほどにわかります。私も知識としては知っていますし、何故かこう胸の奥がぎゅっと締め付けられる気持ちになります。

 

「我が王―――?……いや、まさか。在り得ません。世界には同じ顔の人が三人はいると言います。きっと他人の空似でしょう。えぇ、そうですとも。我が王が何やら未来に生きて居そうな装備を持ったり、何処かで見た子ども達に夢を配るようなお仕事をして居そうな恰好をするなんてはっはっは……」

「こんなところで何をしているベディヴィエール卿」

「あの円卓という名のオワタ式サークルのストレスが限界に達して一人旅でもしてました?」

「」

 

 あぁ、ベディヴィエールさん(ほぼ断定)が白目をむいてその場で立ち尽くしてしまっています……!明らかにいい人に見えるのに、むしろそれが原因で大きなダメージを受けているように感じます。

 これはいくら何でも救われません……!

 

「この不敬者ども……!いい加減こちらを向きなさい!」

『あっ、すっかり忘れてた……』

「まともそうな子にまで!?……くっ、この方たち、実は本当に助けてくれたのでは?と考えていた私が愚かでした!改めて太陽王の裁きを受けなさい!」

「ついに痺れを切らしたか。これは戦うしかなさそうだぞぉ!」

「正直、今何を言われても反論できない気がしますが行きます!」

 

 あの、そろそろ戦闘が始まるのでいい加減現世に帰って来てもらっていいでしょうか!?

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

「ちょっと、この気持ち悪い生き物キャスター判定なんですけど!?どうなってんですかこれ!」

「フッ、やはり貴様ではあてにならん。この私に任せておくがいい。―――スフィンクスよ、その身体サンタたる私に捧げよ。来年はお前に乗ってトナカイと共に世界中の子どもたちにプレゼントを配ることにするぞ」

「それもうトナカイ要らないじゃないですか!」

「――――あれが、我が王……?」

 

 混沌、カオス―――現状を伝える言葉にこれほど相応しいものはなかった。そこには存在するもの全てが幸せになることができない空間が広がっていた。

 敵対するニトクリスは目の前で太陽王なる人物から借り受けたスフィンクスが復活する様子もなく倒されるところを見せられて。ベディヴィエールは偽物と言いたいはずなのにずば抜けた王センサーが反応して彼女たちは間違いなくアーサー王であるということを確信することになって。ヒロインXはキャスターしかいないこの場所そのものが厳しい状況ということで。サンタオルタはトナカイ(乗り物)候補だったスフィンクスが消え去って……それぞれがそれぞれの理由で、それはもう誰もよい思いをしない空間が出来上がってしまっていた。

 例外として、一人だけダ・ヴィンチがこのカオスすぎる状況を愉しんでいるが、そのせいで味方であるはずのマシュから盾を喰らう始末である。……これは酷い。緊張感などどこにも無かった。何より一番かわいそうなのがスフィンクスである。どうしてここまで色物極まった連中に倒されなければならないのか、消えていく彼の目は切実にそれを訴えていた。残念ながらその意思を汲んでくれるものは誰一人としていなかったが。

 

「あ、あわわ……ファラオの神獣が……オジマンディアス様から預かった尊い神獣が……。完全に消え去るなんて……な、なんだというんです――――!?」

「あの騎士の右腕は、アガートラムかぁ。ケルトの戦神ヌァザの神腕、神霊クラスの武器だね。何でベディヴィエールが持っているのかは全く分からないけど」

 

 ダ・ヴィンチの解説もマシュがどうしてでしょうと聞いているだけで、他のサーヴァント達の耳には届いていない。ダブルアルトリアはじーっとベディヴィエールのことを眺めており、当の本人はその視線がとても気になるらしく、あからさまに冷や汗をだらだらと流していた。

 

「と、とりあえずニトクリス殿。彼女達は確かに貴女を助けました。山の翁たちに連れ去られそうなところを義によって救ったのです」

「しかしですね……。エジプトの民でもないかの者たちが、私を助ける理由など……」

「では逆に問いましょう。聖都の騎士が貴女を攫う理由があると?」

「うっ……そうですね。そもそも、あの場に忍び込めるのは山の民を置いて他にはいませんでした……」

 

 経緯はどうあれ一端話を聞く態勢になったところを見逃さずに、ベディヴィエールはニトクリスが抱いているマシュ達の誤解を解いていく。その様は、自分に向けられている二人分の視線からなんとしてでも逃げ延びたいというか、あってはならないことだけどここから早く逃げ出したいと考えていた。

 

 結局誤解は解けた。

 ニトクリスは彼女たちの訪問を許すことにしたのである。しかし、その彼女達という括りの中にベディヴィエールの姿はなかった。彼はやるべきことがあると言ってそのまま立ち去ってしまったのである。

 当然、これに異……ではないが意見したのがヒロインXとサンタオルタ。どうせならこのまま一緒に来ればいいじゃないかと誘う彼女たちに対し、彼はどのような反応を返していいのかわからないのか曖昧な笑みを浮かべて首を横に振ると足早にその場を離れてた。

 どう考えても逃げている。円卓の騎士で一番の忠義を持つと言っても過言ではないベディヴィエールでも……いや、だからこそあの二人は耐えることができなかったのだろう。しかし、人間性を取り戻したという一点においては彼にとっても幸運な出来事であったことだろう。そうあってほしい。そうでないと救われない。

 

「風よ!しばしその任を解くがいい。ニトクリスの名において、天空の見晴らしをここに!」

 

 ニトクリスが声を張り上げて宣言する。すると砂嵐はたちどころに消えていき、その見栄えの良さは先程までとは雲泥の差であった。空を見上げれば雲一つない晴天をみることができ、それと同時に今までの特異点でも確認された光帯が浮かんでいた。

 ダ・ヴィンチが呟くとニトクリスは忌々しいという感情と共に天で輝くのは太陽だけで良いのに……と溢した。

 

 そこからマシュ達はニトクリスの護衛を行いながら、彼女が住みかとしている神殿へと行くことが決まった。その途中、彼女たちはカルデアのことをぼかしつつ自己紹介を行ったり、どこからか湧いて出てきたかもわからないzeroっぽいタコ擬きを処理しつつ、カルデアの戦力(マスター不在)たちはニトクリスから情報を引き出していた。主に彼女たちがいるエジプトのことについてである。この砂漠、この先にあるオアシスに神殿。それらは全て彼のオジマンディアスが復活した際に同時に呼び出されたものであるということを順調に聞き出していった。

 しかし、スムーズに進んでいた会話はある単語によって崩される。ニトクリスはオジマンディアス率いるエジプトの勢力と対抗しているところがあると言った。それは先程彼女を攫おうとした山の民ともう一つ聖都に居る民たち。

 ダ・ヴィンチは聖都をエルサレムと言い表した。けれども、その発言でニトクリスはマシュ達に再び疑いをかけた。

 

 ニトクリスは言う。

 エルサレム……彼の聖都はとっくに滅びたのだと。それを知らない民はもはやこの地にはいないということも。

 

 それが致命的となったのか、ニトクリスは再び砂嵐を巻き起こし、スフィンクスを呼び出した。当のニトクリスはマシュ達に助けてもらった返礼として戦うことはしないようだが、それでも神獣との連戦により彼女たちは消耗していた。さらに言ってしまえば、近くに仁慈が居ないということにより、どれだけ魔力を使っていいのかすらもわからないのである。下手に使いすぎた場合、どこかで仁慈の魔力が切れてしまうかもしれない。……口では散々と言いたい放題言っていたが、誰しもが心配しているのである。そういった事情もあり、全力が出せない一同であった。

 

「貴方たちは選べます。この地で太陽王に奉じるか否か……。拒むのであればこの砂漠が貴方たちの終焉の地となるでしょう。あるいは獅子王の……いいえ。いいえ、それはありませんでした。運命は全て我等が王、オジマンディアスに集まる!獅身獣よ、今一度この者たちの真を私に見せたまえ!」

 

 何処か葛藤を抱えながらもスフィンクスに指令を下す、ニトクリス。だが、此処でダ・ヴィンチが気づく。あのスフィンクスは本来のスペックの一割ほどしか力を以ていないと。

 ダ・ヴィンチは憐れむ。あれでは少し可哀想だと。それにサンタオルタも同意した。

 

「そうだな。人を越えた力、人を越えた役割……それを担うには、あの女の精神は常人と変わらなさすぎる。……そういった役目を果たすのであれば、少なくともトナカイ並みの逸脱具合が必須条件だ」

 

 嘗て、人の身には余るだろう理想の王を目指していた人物の言葉として、ソレには重みがあった。

 

「内緒話は後にしなさい!今はあなた方の身の潔白を――――」

 

 サンタオルタの解説が作戦会議に聞えたのか、先程のように無視されることを恐れてか、すかさずニトクリスがカルデア勢の注意を引き付けようと声を荒げる。 

 けれども、その言葉は最後まで紡ぐことができなかった。何故なら、上空から凄まじい勢いで飛来してきた物体があるからである。

 

 その物体は、頑丈そうな棒にどう考えても折れてしまっている槍の先端を括りつけただけの不格好極まりない武器を携え、ニトクリスが呼び出したスフィンクスの頭上を取り、そのまま貫通してしまう。

 当然、スフィンクスはそのせいで亡き者となり、本来すぐに修復されるはずの霊基も完全な消滅とまではいかなくても、かなりの時間がかかりそうではあった。それはまるで、修復しようとする霊基を拒もうとしている何かがあると感じることができた。

 

「あぁっ……もう!今度は一体何なのですか!?というかどうなっているんですか!?」

 

 ここまで散々自分の行動をよくわからない闖入者たちに邪魔されてしまっているニトクリスは、ファラオの態度とか自分の短気な性格とかその他諸々を全て青空に放り投げて叫ぶ。

 

「やった、追いついた」

 

 叫ぶが、この惨状を作り出した当の本人はニトクリスに見向きもせずにマシュ達の方を見やった。そして、セーフ?と問いかけるかのように首を傾げる。……まあ、当然と言えば当然、上空から飛来し、スフィンクスの頭をぶち破って登場したのははぐれていた仁慈であった。

 ちなみに、セーフかアウトかという彼の問いかけに対してはサーヴァント達が満場一致でギルティと答えることになったのであった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「砂嵐が止んだ……」

 

 現地で切り結んだサーヴァント・アサシンから情報を貰い大よそ、マシュ達の位置を特定した仁慈は強化魔術と魔力放出を併用して全速力でその方向に急いでいた。かなりの速度で走っているため、砂嵐が仁慈に確かなダメージとなって襲い掛かっていたのだが、何故か砂嵐が止んだためにこれ以上の負傷をすることはなかった。

 

 そのように多少の怪我を負いつつも順調に進んでいる彼の目の前に巨大な体躯の生物が現れる。四足歩行のそれは背に大きな翼を生やし、顔に当たる部分は人と同じものを持っている。そう。マシュ達が相手にしていたスフィンクスである。この砂漠には守護獣として彼らが多く存在しており、派手に移動をしている仁慈も当然そのスフィンクスに遭遇していた。

 

「SAN値減りそう」

 

 くだらないことを呟きつつ、スフィンクスを見やる。向こうが自分に興味を示すことがないのであればそのままスルーしようとしていたためである。が、仁慈は知る余地もないが彼らはここの守護獣。見るからに怪しい男を通すわけにはいかない。前足を上げ、地面に振り下ろしつつ、雄たけびを上げて仁慈を威嚇した。

 スフィンクスの威嚇に対して仁慈の返答は当然の如く逃げの一択である。危険を冒してまで戦う必要はない。そのまま迂回してスフィンクスをやり過ごそうとしたが、彼らの速度ではすぐに追いつかれてしまい、巨大な体躯を支える前足が仁慈に向けられていた。

 これではこのまま通るどころか逃げることもままならないという判断を下した仁慈はすぐさま身体を反転させ、鞄の中から適当な刀を一本用意した。

 剣を握れば縮地が殆どの確率で成功するという謎理論を持っている彼は砂漠の砂を巻き上げつつ、縮地の名に相応しい動きでスフィンクスの背中をとった。彼は更に身体を反転させてスフィンクスの翼に目を付けるとそのまま刀を持ち、地球の重力に身を任せる。

 先程まで補足していた仁慈の姿が消えたことに動揺していたスフィンクスはそのまま片翼に彼の刀を受けることになった。切り落とすというほどではないモノの、その傷は決して浅くはない。

 これに激怒したスフィンクスは両目を光らせ狂ったように暴れまわる。体躯に見合うだけの翼は暴風を巻き起こし、激怒からか仮面の奥にあるであろう目からは赤い光がこぼれている。

 

 まるで、闘牛のような様子にスフィンクスを激怒させた当の本人は大した感情を抱かない。肌を裂くほどの暴風を身に纏ったその突撃を彼は真上に跳躍することによって回避する。砂場ということから普段より上昇する高さはなかったものの、それでも回避するには十分である。

 そのままスフィンクスの真上を取った仁慈は自分の地点を追い越すように抜けていった姿を見てから地面に降り立ち、唯一風のシールドを纏っていない後方から再び縮地で肉薄する。

 気配を殺しているからか、砂に塗れた筈のその踏み込みは、神獣たるスフィンクスに気取られることなくそれが当たり前であるかのようにその距離をないものとした。

 

 そのまま仁慈は刀を突き出しスフィンクスに突き刺し、それだけでは留まらず突き刺さった刀を蹴飛ばして体内へと無理矢理押し込めた。そして―――、

 

「壊れた幻想」

 

 久しぶりに使うエミヤのそれ。内部から武器が爆発したことによりスフィンクスの霊基はあえなく崩れ去った。ここまでの流れ、まるで決められた動作を淡々と行う機械のようである。

 しかし、機械のような正確さでスフィンクスを葬ったがそれは完全な消滅とはいえない。時間が立てばそれは直に復元される。その光景を見た仁慈は仕留めきれる相手ではないと悟り、修復している間に目的地へと再び走り出した。

 

 

 このような光景がこの先いくつも見ることができた。

 なんせ本人は気づいていないが、マシュ達が向かっているところはこのスフィンクスが守護する建造物がある場所。当然、近くなるにつれて警備も厳重になっていく。途中からこのスフィンクスが神獣ということに気づいた仁慈は、折れてしまった突き崩す神葬の槍、その先端を別の武器に取り付けることで微弱ながらも効果を扱いその厳重な警備を搔い潜っていた。

 

 そうして移動すること一時間。マシュ達がスフィンクスと対峙している場面を発見して乱入したのであった。

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

「えぇっと……に、ニトクリスさん。この場合、どうすれば……?」

「うっ……――――えぇい!ここまで奇妙な縁を引き寄せるとは、それ即ち太陽王にその力、その意思を認められていることと同義!であればこれから先の案内など不要!恐れずこの嵐を抜けるがいい!王の慈悲は光輝となって汝らを迎えるだろう。さらばだ!………本当に、どうしてこのような……」

 

 マシュ達が相手にしようとしていたスフィンクスを上からアンブッシュしたら近くに言ったエリちゃん風褐色エジプト系サーヴァントのような人がフェードアウトしていた。正直状況がよく呑み込めない。これはしばらく様子を見るべきだったのであろうか。

 

「空気が読めていないことは確かだけど、こうして合流できたことは喜ばしいことだよ。……というか、私たちも信じていると言った手前こう言うのもなんだけど、良く生きてたね」

「やはり心配されていなかったか……」

 

 まあ、わかってた(諦め)

 

「先輩……!無事でよかったです……とても心配したんですよ?」

 

 やはりマシュは天使だったか。……なんか、自分でも久しぶりに彼女に癒された気がする。おかしいな。前だったら日常的に癒されてもおかしくないのに……。

 

 そのようなことを疑問に思ったが、まあいいと気持ちを切り替える。今必要なのはお互いに持っている情報の確認であり現状の把握だ。

 とりあえず俺は交戦したサーヴァントからの情報を彼女たちに伝え、逆に俺は彼女達から今の状態とわかる限りの情報を得た。

 

「……ふむ。話を纏める限り、ここには三つの勢力があるようだね。仁慈君が交戦し、ニトクリスが自分のことを連れ出せると言った勢力……山の民。そしていま私たちが向かおうとしているエジプト勢力……最後に聖都を支配している獅子王。こんなところか」

「聞くだけでもろくでもないな」

「三つ巴ですからねー……。しかし、その聖都とやら。何故か私のセンサーがビンビン反応しているのですが。何故でしょうか」

 

 見てみれば帽子から飛び出るアホ毛が上下左右と縦横無尽に暴れまわっていた。どうやら値的にはカンストと言っていいだろう。

 

「Xさんのセンサーが反応しているとすると……」

「まさか、」

「聖都にはいるらしいな。()が」

 

 言ってはいけないことをサンタオルタが口にする。私が居るという言葉だけならあまりにもおかしなものだが、誰も不自然さを唱えたりはしなかった。もう俺達の中ではアルトリア、もしくはアーサー王は増えてナンボという認識が出来上がってすらいるし、そもそも彼女が俺たちの前に立ちふさがったのは過去二回。周期的にもそろそろ来て言いと思われる。

 

「ベディ君も居ましたし、間違いないでしょう」

「アーサー王にして直感持ちの二人がそう言うならほぼ確定したようなもんだね。やれやれ、人理修復の旅は本当に地獄だぜ!」

 

 この旅で一番被害をこうむっているのは実はアルトリアなのではないだろうか。

 そんなことを考えながら、俺達はニトクリスというサーヴァントが消えていった場所を目指すことになった。

 

 




こんなに早くに合流させるならはぐれさせる意味はなかったんじゃないかって?
いや、それだと百貌さんが……ね?

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