この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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活動報告のアンケートですけど、今日の21時に締め切りたいと思います。


幕間の物語Ⅵ
このサーヴァントにしてこのマスターあり


 

 

 

 

「――――以上が僕が語れるマシュの話だ。ここカルデアは国連主催の組織だけど、その内情は魔術教会……アニムスフィアの研究施設だ。人類を守るという大義名分の下で非人道的なものもいくつか行われてきた。その一つが英霊と人間の融合―――デミ・サーヴァント実験だ……」

「あ、そこから先は語らなくてもいいよ。所長も辛そうだし、何より予想しやすい」

 

 マシュを急いで医務室に運び、その知らせを聞きつけて飛び込んできたロマンと所長から彼女の生い立ちを説明された。

 と、言っても俺はサーヴァントの記憶を夢で見るという経験から大凡予想することはできていたので特に不思議がることはない。彼女の稼働活動年月が18歳までと聞いたのは初耳ではあるが。そして彼女の稼働できる時間はあと1年あるかどうかということらしい。つまり17歳。俺より年上じゃん……。どうしよう先輩って呼ばれにくくなるな……。

 

「君にしてほしいのは、彼女をそういった色眼鏡で―――」

「大丈夫、見ないし見れない。俺に彼女は一番頼りにしている存在であり、尚且つ俺の唯一といっていい癒し……それ以外は別に何だろうと気にしない。……というか、今さらデザインベイビーで動揺するほど、軟な人生は送ってない」

「成人していない人とは思えない台詞……普段であればただの世間知らずの薄っぺらい言葉なのに……しかしッ!説得力がまるで違うわ!」

 

 フハハハ!若干16歳の俺に今まで訪れた試練の数々!麻婆の愉悦講座、エミヤ師匠の土下座講座……そして何よりスカサハ師匠の~これで今日から君もケルト人!~サバイバル編、武術編を乗り越えてきた俺の説得力は凄まじいだろう!俺と似たような体験をしている人がいるなら是非とも呼んで欲しい。朝まで語り合えると思う。

 

「確かに説得力が違うねー。でも、それが一番いいのかもしれないね。ロマンにしては落としどころもしっかりしてるし文句なしだ」

「うわっ!? ダ・ヴィンチちゃん!? 隠れて聞いていたのかい!?」

「もちろん。この期に及んでロマンがチキって言わない可能性もあったからね。……今から考えればどうあっても仁慈君に吐かされていた気がしないでもないけど」

「素直に言ってくれて俺も助かった」

「何それ怖い。僕何されるところだったの? ねえ……?」

 

 ハッハッハと笑いながら俺は医務室をあとにする。マシュのことについてはとりあえずある程度のことは理解した。これからはそのことも加味して戦いに参加させるか否かを決めなければならない。ま、そこまで過剰にする必要はないけど、戦闘中の万が一に備えることは必要だ。今まで大丈夫だったから……それは自分を追い詰める思考の始まりとも言えるしね。

 

 ―――とりあえず、新しい戦力の増強から始めようか。今回は本人たちから渡された媒体もあるし、流石にサーヴァント呼べるだろ。ぶっちゃけそろそろ呼べないともう召喚自体を諦めるレベル。そろそろライオンのぬいぐるみとか、セルフ・ギアス・スクロールとか、麻婆豆腐以外のものが召喚されて欲しいと願うのは贅沢なのだろうか……。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 仁慈がでていったあと、このカルデアでも重要な部分に関わっており、尚且つそれらを把握している人物たちは先程の仁慈の様子を見て話し合っていた。

 

「うーむ。ナイチンゲールが言っていたこと……これは本当に当たっているかもしれないねぇ」

「仁慈君の精神が逸脱してるって話?まぁ、それはそうだとは思うけど……」

「そんなのいつものことじゃない……」

 

 ダ・ヴィンチの指摘に確かそんなことを言っていたと記憶を探るロマニと今さら何をというオルガマリー。それらの指摘について彼らは特に疑問を思っていなかった。その中でも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 この反応にダ・ヴィンチは更に続ける。

 

「私が気になったのはナイチンゲールが言った()()()()()()()()()()っていうところさ。それを聞いた時私は目から鱗が落ちる心境だったね」

 

 ダ・ヴィンチは語る。

 仁慈の判断力の速さは異常であると。通常、()()()()な人間の選択には常に葛藤が混じる。それはサーヴァントであっても同じことだ。仁慈だってそれなりに時間をかけて思考するところは当然にある。しかし、まるで普通の人間と思わせるかのような思考を行っているのだ。日常生活ではそうではない。しかし、特異点などではこれが顕著に表れているようにダ・ヴィンチは感じていた。

 

「日常生活の彼は違和感を感じるほどじゃないさ。でもね、戦闘時の彼は一瞬たりとも迷ってないと私は考えて居るよ。ごちゃごちゃ色々なことを言っていてもそれでも既にやるべきことは決まっている」

 

 思考したのちに行う行動に躊躇いが見られないのがいい証拠だと言った。しかしロマニは反論する。

 

「でも、それはスカサハを始めとする意味不明とも言える体験が起こしたことかもしれないよ?」

「その線もある。常人には耐えられない環境に適応するためにそうなったのかもしれない。……けど、それならナイチンゲールが後付けなんて言わない。その場合はトラウマとも呼べる経験の所為で感情が失われた、もしくはそれに似たような表現になるんじゃないかな」

「成程……」

 

 激しい議論を繰り広げる二人を見ながらオルガマリーも一度仁慈のことをよく知ってみようとカルデアに会った情報から彼の素性を割り出したことがあり、その時の記憶を引っ張り出していた。

 

 樫原仁慈。樫原という武家の最高傑作と呼ばれている者。最高傑作というだけあり、ほぼすべてのジャンルで平均をはるかに超える能力を引き出していた。また、魔力回路も非常に良いもので、保有している魔力も多い。それ故に一般枠として招集された。

 けれど樫原という家のことをたどっていくと彼らの家系は元々魔術師であったことが分かった。はじめは魔術師らしく根源を目指していたらしいのだが、彼らは良質な魔術回路を持っておらず魔術による根源到達は不可能と判断したらしい。その結果、武術をきわめて根源を目指そうとした生粋のキチガイ集団だった。

 

 一応、正当な魔術師であるオルガマリー。その文面を見て彼女はげっそりとした。普通の魔術師であればそのような反応になることも頷ける。どう考えても頭おかしいもの。

 とりあえず、彼女は思い出したその情報をロマニとダ・ヴィンチに伝えた。

 

「……末代がキチガイなら祖先もそれ相応、か……」

「発想が私でもドン引きするくらいだねー……。………ん?待てよ。根源……なーんか引っ掛かりが…………あっ!」

 

 ここでダ・ヴィンチが何かを思いついたのか、オルガマリーにずいっと顔を近づけた。急に顔が目の前に現れたのでオルガマリーは思わず後ろに仰け反ってしまう。しかし、そんな彼女の状態は眼に入っていないのだろう。ダ・ヴィンチはそのまま食い気味で彼女に問いかけた。

 

「オルガマリー。君はさっき仁慈君がおかしいと言っていた時、首を傾げていたよね?それはどうしてだい?」

「何故って……。そんなことは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ロマニ!君は今まで仁慈の行動にツッコミを入れまくってたよね?」

「ここ最近は、仁慈だし仕方ない……なんて思い始めてきたけどね。まあツッコミを入れていると言われればしているのかなぁ……?」

 

 これでダ・ヴィンチは確信に近い答えを得た。彼女だって悪乗りで彼ならしょうがないなんて言ってはいたけど、心底染まっているわけじゃない。だからこそナイチンゲールの発言に気づき思考することができた。しかし、ロマニとオルガマリーは()()()()()怪しい状態となっている。それこそつまり……。

 

「薄々絶対に働いているだろうとは思ったけどさ……これはそういうレベルの話じゃあないかもしれないぞ……」

「―――一体何に気づいたのさ、レオナルド」

「もう、これだから天才は……!自分だけで納得してないで周囲に伝える努力もしなさいよ!」

 

 答えが理解できないのかロマニとオルガマリーの言葉がダ・ヴィンチに向けられる。そこで彼女は限りなく答えに近いヒントを言うことにした。

 

「君たちならわかると思うけど。人理焼却、人類滅亡なんて危機に現在私たちは陥っているわけだけど……そういった時、真っ先に働きそうなモノがあるだろう?」

「――――まさか……」

「待て、待て、待ってくれ……いや、確かに……でも本当に……?」

「でもこれだと大体の辻褄があう。何故、彼が遥か格上のサーヴァントを相手取ることができるのか。何故、彼は悉くと不可能と思われることを成すことができるのか。何故、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その言葉が決定的なものとなったのだろう。

 どうやらロマニとオルガマリーは答えに辿り着いたようだった。それは魔術師であれば大体は知っているだろう。なんせ、彼らの目指すものに必ず付随してくる問題みたいなものだからだ。

 

「そう。恐らく彼は―――――」

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

「よくってよ。このキャスターが、貴方を導いてあげる。ちゃんと約束通り呼んでくれたみたいだしね」

「――サーヴァント・セイバー。偉大なるコサラの王、ラーマだ……なんてな。これからもよろしく頼むぞマスター」

「――サーヴァント・アーチャー。真名をラーマ……ではなくシータです。呼んでくれてありがとうございます」

 

 

 召喚した結果。媒体ありだからだろう、そのまま3人普通に呼ぶことができた。しかも、ラーマとシータまで呼ぶことができた。これは一体どういうことだろうか。あれかな。いつもはサークルの代わりになっているマシュの盾がないから適当に折れてしまった突き崩す神葬の槍を媒体にしたから呪いだけいい感じにカットしたんだろうか。

 

「シータ!」

「ラーマ様!」

 

 そして感動の抱擁。なんと別れてから一時間も経過していないうちの出来事であった。しかし幸せそうでよかったよ。

 

「ふーん、ここがカルデアの内部ねー……。面白いじゃない。ねえ、マスター?もっと案内してくれないかしら?」

 

 こっちはこっちで興味津々という風に話しかけてきていた。外見と相まって子どものようにも見える。やりたいことが多くあるのは仕方がないのだけれども、とりあえず彼らがこれから過ごすことになる部屋に案内することにした。特にラーマとシータはそのルームで存分にいちゃついて欲しいと思う。ここは戦場ではないんだから。

 

 

 

 

 




……なんだかんだで、もう六章ですか……。
こんなこと自分で言うのは何なんですけど、結構頑張ったな。私。

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