この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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ラーマとシータ大人気過ぎィ!皆さんわかってますね!
しかし、今までにないくらいの高評価の嵐で続き書くのがすごく怖くなりました……。


当然の結果

 

 

 

 空を飛ぶ……それは等しく誰もが一度は夢見ていたことだと思う。もちろん、空を飛ぶと言っても飛行機やヘリコプター、気球などの乗り物に頼ったものではない。自身に翼が生えたかのように、自由に空を飛ぶということである。

 ……今、俺の目の前にはそんな夢のような光景が広がっている。数多の人間たちがその身体を大空へと投げ出し、実に綺麗な放物線を描いて空に浮かぶ雲と一体になっていた。

 

 

 

 

 ………まぁ、ネタ晴らしをするとただラーマにフッ飛ばされているだけなのではあるが。

 

 

 

「ははははは!このような心持で戦うなど、初めてのことかもしれん!体が軽い、剣が軽い!もはや何人たりとも余を止めることは出来ぬ!」

 

 シータと誰よりも再会を心待ちにしていただろうラーマ。今この時、彼は己の逸話を越えて少なくとも心情的には過去最高の高ぶりを見せていると思われる。その結果、敵のケルト兵たちが次々と犠牲になっていった。敵なので特になんとも思わないし、むしろいいぞもっとやれとも思うけれど、出番を奪われた兄貴とエミヤ師匠が少し不憫でならない。

 

「はっはっは!あれを見てみなさいディルムッド。あの眼はまさに己が好いた女性にいい所を見せたいと願う少年そのもの。いやはや、あそこまで純粋に一人の女性を思い、剣を執るなど何処かの男を思い起こさせるね?(チラッチラッ」

「も、申し訳ありません……」

「ああ、済まない。別に責めているわけではないんだ。ほんの踏み込んだ冗談だ。あれは私がいけなかったのだ。うん、我ながらこの性格はどうしようもならないな」

 

 何やら重苦しい話をしている敵将の二人組だが、戦場に慣れている二人はすぐにその雰囲気を改め作戦を練ることに決めたらしい。こちらとしてはこのまま後ろからあの二人を攻撃して、作戦を阻害もしくは直接倒すということをした方がはるかに効率的なんだけれども……。

 

「羅刹王すら屈した一撃……その身で受けてみよ!」

 

気円斬(ブラフマーストラ)まで持ち出したラーマの邪魔をしたくないという気持ちもある。それに彼は若干テンションを上げ過ぎている所為か、こちらの魔力をどんどん消費してっているのだ。霊薬はあるし、それに見合う分だけ敵を殲滅してくれているし、尚且つシータがいるし心情としてはそのまま突っ走ってほしいので文句は言ってないけど……この状態で不意打ちをかますのは厳しいという現実的な部分もあるんだ。

 

 改造した剣を回して円盤の斬撃に変えそれを手段に投擲する。高速で回転するその剣にケルト兵は為す術もなく切り裂かれていった。しかし、それだけではない。飛んでいった気円斬(ブラフマーストラ)はある一定のところまで進むと左右にその向きを変えて、集団を刈り取るように移動し始めた。……あの宝具操作できんのかよ……。まるで某宇宙の帝王のように円盤型の攻撃を操るその姿は確かに羅刹王を倒せそうなものではあった。

 

「……もしかしてこれはあれかな。物語でよくある覚醒後のイベントかなにかなのかね?ディルムッド」

「……我が王。お言葉ながら、聖杯を所持し、人理焼却を目論む側についている我等ではこうなることはもはや必然かと……」

「うーむ。ついた側が悪かったのかどうなのか……。まあ、それはどうでもよいか。若武者よ。我等はともに戦える。こうして柵もなく戦えることが至上の喜びなのだから」

「………無論、無論でございます王よ!」

「神の化身が相手であれば、フィオナ騎士団の役割とそう大して違いはしない……我が槍、その身体に刻み込め!」

 

 生前の柵を彼らは確かに消したのだろう。既にフィンの表情にふざけた物はなく、ディルムッドの表情にも残っていた後悔が少なくとも現在は全く見えていない。そこにあるのはおそらくかつての自分たち。只、弱き者のために災害とも言える神々や、それに属する超常の存在と鎬を削った彼らの本来の姿。歴史に名を刻む腕前に決して偽りなどはない。その実力は確かなものだろう。………最も、今回は相手とコンディションが悪すぎた。

 

「その意気込みやよし。この身はヴィシュヌの化身。恐れずしてかかってこい!羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)!」

 

 恐れずしてかかってこい(無慈悲の宝具)

 ラーマのテンションが天井知らずである。かかってこいと言いつつ無慈悲の宝具ブッパ……あれ、何処かで見たような。

 と、どこかの誰かを見ているような光景を前にしてもフィン・マックールとディルムッド・オディナは怯むことはない。彼らに追随する兵士たちをなぎ倒して来たあの宝具をまともに受けることはせずに己の技量を頼りに狙いを悉くとずらす。シータと会ってから操作性があるという以外過ぎる宝具は当然、彼らを必要以上に狙う。しかし背後から来る攻撃は彼のフィンの部下であるディルムッドがしっかりと守り、主人であるフィンに通すことはなかった。今のラーマに武器はない。彼が持っている武器は絶賛気円斬と化しており、ディルムッドが引き付けている最中だ。

 

「―――届いたぞ、コサラの王よ。その首を頂戴する!」

「―――よく届かせた。…………だが言っただろう。今の余は、絶好調であると。偉大なる者の腕(ヴィシュヌ・バージュー)!」

 

 彼がそう言った瞬間。何もなかったはずの彼の手には三叉の槍が握られていた。だが、彼のことをよく知らない俺でもあの槍がとんでもないものということが分かった。あの槍が発している力が尋常じゃないのだ。ヘラクレスと戦った時に感じたものと同等か、あるいはそれ以上のものを感じることができる。

 

『あれは……もしかして……!』

「知っているのですかドクター!」

『彼は元々神々では殺すことのできない魔王ラーヴァナを倒すために、ヴィシュヌが人間として生まれ変わった存在と言われている。そんな彼は、話の中で聖人ヴィシュヴァーミトラにより、あらゆる神魔に対抗するために授けられた武器が数々も存在するんだ。その中の武器の一つなのかもしれない』

「強い(確信)」

 

 武器召喚というか、武器で攻撃するところまで宝具のようだけど、どちらにせよ無手と思い込んだところを不意打ちで槍を召喚されたフィンは流石に予想外だったらしい。彼は反応できずにラーマの召喚した三叉槍に心臓部にあった霊核を貫かれた。

 

「―――ッ!王!?ぐっ!」

 

 そして、ディルムッドもまた自分が王と仰ぐ人物が貫かれたことにより意識がそれた。その結果、気円斬をその身体に受けることとなった。が、身を削られた時に槍を上から突き刺し、羅刹を穿つ不滅を力尽くで消し去った。その身体は既に切り裂かれてとても助からないものではあったが、それでも彼はラーマの宝具を消し去ったのだ。

 

「ハハ……まあ、仕方あるまい。元々、自分たちの付いた側があれだった時点でこの結末は予想できた。いやいや、満足だ。存分に戦いつくすことができたのだから。……だが、お前は不満そうだなディルムッド」

 

 心臓をラーマの三叉槍で貫かれたにも拘わらず、彼の言葉は穏やかだった。声だけ聴きとれば、とても致命傷を背負っているとは思えないくらいの。一方のディルムッドもそうだ。生きているのが不思議なほどの重症、胴体は削れ、左の腕など繋がっているのがやっとという惨状でも、彼は消えることなどなかった。それこそ最期まで主と共に居ると表現するように。

 

「はい。今度こそ、貴方様に勝利を……と思っていましたので」

「そうか。しかし、私にとって勝敗はどうでもよかった。……生前の私はどんどん薄汚れていった。政に財宝、権力、義理……年を取るたびに柵が増えて雁字搦めだ。―――それを自覚しているから、愛に殉じたお前が妬ましかったのかもしれん」

「………貴方、は」

「けれど、此度は最期まで純粋に戦うことだけを楽しんだ。純朴に勝利だけを共に、と……。この瞬間まで私はこの私のままで居ることができた。それが何よりなんだ」

「………そうですか。では、このディルムッド・オディナ。貴方様の供回りを務めさせていただきます」

「そうか……。では、敗れたものは未練がましく残ってないでさっさと逝くとするか。……見事だったコサラの王。こちらに組した私たちが言うのもなんだが、君たちの勝利を祈らせてもらおう」

「その言葉、しかと余が受け取った」

「………なら良い。ではさらばだ!秩序の守り手たちよ!」

 

 フィンはその最期、俺達全員に視線を投げかけそれだけを言い残して消えていった。それと同時にディルムッドの身体も光の粒と消える。こうして、敵側から二人のサーヴァントが退場することになった。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 フィンとディルムッドを座に還した完全版ラーマ。その力は計り知れず、ぶっちゃけこちらの味方の中でトップレベルの強さを誇る味方となった。しかし、その反動に。

 

「………」

「………」

 

 シータから離れない。特に話し合うわけでもなく、幸せそうにお互いに見つめ合って手を絡ませている。……つまり自分たちの世界に入っているともいう。具体的に言うと、対非リア充宝具閉鎖的愛情空間(オール・ラブ・オール)を発動させているので俺達では彼らに干渉できないのだ。固有結界ミタイダナーと思いつつも彼らの経歴が経歴なので、一度俺の頭から彼らのことを度外視して現状を整理する。

 

「さて、あの二人には後で俺が念話を入れておくとして……こうして敵の将二人を倒したわけですが、師匠どうですか?これでケルト側の弱体化は望めましたか?」

「無理だな。向こうには聖杯がある。その気になれば戦力の増強など容易くやり遂げてみせるだろう。恐らく、今頃西の連中も押され始めている頃だと思うぞ?」

 

 師匠から凡そ予想通りの返答を貰うことができた。やはり聖杯があるというのはでかい。暗殺もいいのだけれど、相手に師匠を返り討ちにするレベルとなった兄貴が居る段階でそれは不可能に近いだろう。

 ここで取れる手とすれば、エジソン側にこのままでは負けるから俺達を入れればええんやでと脅迫まがいの交渉に行くことだけど、向こうにはカルナがいる。ともに戦うことを計算に入れると物騒で尚且つ強引な手段は使えない。

 ……あ、そういえば……。

 

「師匠。昨日はサラッと流しましたけど、確か女王メイヴが聖杯持っているって言いましたよね?」

「ああ、そう言ったが?」

「……助けてロマえもん。メイヴの死因を教えてー」

『色々な方面から怒られそうなことを……今が人理焼却中で良かったね。…えーっと、メイヴの死因は頭部にチーズが飛来したことで死亡したとされている。なんでも彼女に対して復讐する人が練習として投石器に設置したチーズがたまたま直撃してしまったらしい。……もちろん、チーズと言っても君たちが普段口にしている奴じゃなくてその元の奴ね。大体重さは30kgにもなる。殺すにしては十分なものだ』

「……へえ」

 

 成程ね。再現は十分に可能ということか。

 

 嘗て所長から教わったことがある。英霊とは自身の出典たるものから外れることは難しいと。エミヤ師匠が言うには完全に不可能ということはないのだそうだけれども、基本的には己の逸話を越えることは難しいらしい。だからこそアキレウスはアキレス腱が弱点だし、オルレアンで会ったジークフリートも背中が絶対にして克服できない弱点だという。

 今回も同じだ。死因たる要因を用意すれば、ある程度因果が引っ張られて倒せるのではないかと俺は考えた。

 

 故に、イチャイチャしてこちらに気づかなかったラーマシータの肩を叩いて正気に戻してマシュが召喚サークルを出した森の中に戻り、そしてカルデアから物資を送ってもらう。主に俺とエミヤ師匠でカルデアのロマンがぐー〇るで検索した手順を再現し、大きさ重さともに十分なチーズを錬成し、さらにそれを俺の四次元鞄に突っ込んだ。この作業だけで一日使ってしまったもののこれで準備は整った。

 

「今日はここで一晩を明かして、明日あたりにエジソンの所に行こう。この凶器と情報、そして今の現状を知れば、恐らくは受け入れてもらえると思う。向こうだって滅びたいわけじゃないんだから」

「……私が言うのもなんだけど、エグイわね。子ジカ」

「……これが人理を守る戦いか……うむ、何とも世知辛いものよ……ちと余の肌には合わないが」

「やはりこれくらいでなければ人理を守ることは叶わないというのだろう」

「うーん、スカサハの話も合わせて中々笑えないなー」

「俺としてはやりやすくていいけど」

「……余も、カルデアの……いや、マスターの采配に不満などはない。まともに戦って危ないのであれば策を弄する。上に立つ者としては当然のことだ」

「ラーマ様を助けていただいたのです。私に言うべきことなどはありません。只、この人といられるだけで……」

「シータ……」

 

 再び固有結界染みた何かが発動した気もするけれどもそれはいい。本番は明日からだ。投石機であればおそらくエジソンは簡単に作る。逆に前時代過ぎて却下される可能性もなくはないけれども、有用性を説けばほぼ確実に乗ってくるだろう。……まあ、説得(物理)になる可能性もなくはないけれどもそれはそれ。とにかく、全ては明日にかかっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、内心で思い返し、俺はエミヤ師匠と共に夕食を作るのだった。

 

「―――ついてこれるか?」

「エミヤ師匠の方こそついて来やがれ!(ノリノリ)」

 

 作るのだった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




外道砲の玉が仁慈の懐に入りした。
まあ、真名が分かってそれが聖杯の所持者だとすればこうなるよね。


ちなみに、私が頑張って考えたラーマとシータの再会理由。
仁慈と契約して存在を保つ楔とする。
       ↓
ゲイボルク呪いは仁慈の能力とマシュの守護で消し去る。
       ↓
シータの呪いは仁慈の能力で消し去る。ただし、この時彼女の神性ごと削ったため戦力としては数えることはできない。

大体こんな感じ。ちなみに、シータには持続して仁慈の概念を魔力と共に流し込んでいるので復活しようとしている呪いを殺し続けている状態です。

  

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