この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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許しは請わん。恨めよ(三回目くらい)


羅刹を討った皇子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着しました。向こう側に見える島がアルカトラズ島です」

 

 一晩明けて体力も気力も満タンに近い状態になったところで森を一気に駆け抜け、島が見える場所までやって来た俺達。マシュが指す場所には確かに島が見え、魔力で強化すれば砦のようなものも確認できた。恐らくあれが刑務所の役割を果たしているのだろう。

 

「意外に近いな……。最終手段として泳ぐのも手か?」

「ラーマの傷で泳いだら確実に死ぬんじゃないかなー」

「そんなことよりシータd(BAN!」

「患者はおとなしくするべきです」

「背後に銃弾を……!?」

『というか、普通に泳ぐのは無理だね。サーヴァントならともかく、仁慈君には少し厳しい。潮流も速いし水温も低い。泳ぐのには極めて不向きな場所だ』

「なら跳ぶか」

「マスターの意見とは思えんな……」

 

 ああでもない、こうでもないと話し合ううちに、そもそも船の様な水場を渡れる何かを探した方がいいのではないかという結論に達した。しかし、近くにボートの類などはない。そこでマシュが近くに居たおじさんに船を貸してもらえないか相談をする提案を出した。代案があるわけではないので俺達はそれしかないと、ゾロゾロと歩きながらおじさんに声をかける。なんだかんだあったものの、渋々船を貸してくれた。只、そのおじさん曰くあそこには竜種が存在してるらしい。まぁオルレアンで散々やり合ったし今さらな気もするけど。

 さて、準備が整ったのでいざ出発……と本来であればそう言いたいところではあったのだけれども、ここに来て予想外の出来事が発生してしまう。

 

「先輩、問題があります。流石にこの人数は乗り切れません」

 

 此処に居るのは俺達カルデア組で五人。マーラ、ナイチンゲール、ジェロニモ、ロビン、ビリー、エリザベート、ネロで七人……合計で十二人の大所帯だ。おじさんから借りた船では到底全員乗り切れない。

 

 

 やはり跳ぶしかないかと思っているところ、影の国の師弟である兄貴と師匠が何かを思いついたらしく、少しだけ待ってろと言い残して森の中に戻っていく。言われた通りに待っていると、三十分ほどして二人が帰って来た。それも、出来立てのボートを担ぎ上げて。

 

「アイエエエ!?ボート、ボートナンデ!?」

「ふっ、愚問だな」

「ちっとばかりあそこで自作してきた。喜べマスター。師匠のルーンが刻んであるこのボートはちょっとやそっとじゃあ沈まねえぞ」

 

 やだ、このランサー達逞し過ぎ……。

 兄貴と師匠のファインプレーによって、重量制限という強敵を何とか乗り越えた俺達。一応マスターである俺は、安全であろう師匠達が作った方のボートに乗り込み、アルカトラズ島に上陸を試みる。

 

 泳ぐのには不適切なこの海域も、元々距離がそこまで離れていないということで問題なく渡ることができた。

 おそらく向こうも気づいたのだろう。ワイバーンに似た気配が俺達の方に近づいて来ているのが分かった。

 

『確かに、ワイバーンの反応は君たちに近づいてきている。けど、他に存在しているサーヴァント反応は一歩も動いていない……』

「どゆこと?」

「おそらく試しているのだろう。俺はここに居る、かかってこいというやつだ」

 

 首を傾げるエリザベートにそう答えるラーマ。この人数相手にそう言えるということは、よほど腕に自信があるのだろう。これは油断できない。フェルグスのこともある。これは一撃で仕留めるような心意気でいかなければいけないだろう。その結果、取ることになる戦法が遠距離攻撃ブッパによる制圧戦だったとしても。

 

「余程腕に自信があるのだろうな。そうでなければこうも堂々と待ち構えるようなことはしないだろう」

「成程。そのサーヴァントを倒さなければ、シータという方には出会えないということでしょう。分かりました。それでは一直線に、最短距離で行きましょう。それが患者を治す一番早い方法です」

 

 言い切ると同時に地面を蹴り、バーサーカーが故に強化された身体能力を以てして一目散に走りだすナイチンゲール。その様子に他のみんなも慣れたようですぐさま自分たちも、と走り出していた。

 

「シータという姫君を助けるために竜たちをなぎ倒す……まるでおとぎ話のようだな!余は燃えて来たぞ!必ずやあの者たちを会わせてやらねばな!」

「いいわよねぇ。ロマンチックだわ……。露払いっていうのはちょっとアレだけど、シータがラーマを一発叩けるように頑張るわよ!」

 

 彼女たちはどうやら昨日俺が寝た後で色々話を聞いたのだろう。ナイチンゲールに次ぐくらいにはやる気満々である。

 俺も彼女たちに少し遅れながらも後を追っていく。するとロマンの言葉通りにワイバーンたちとケルト兵が往く手を阻むために現れた……のだけれども。なんというのだろうか、こちらには少なくともやる気……むしろ殺る気になったサーヴァントが二人とそれ以外にもサーヴァントが九人居るのである。単騎でもとんでもないのにそれが集団になって襲い来るなんて、もう結果が見えているのと同じことである。案の定、俺達に往く手を阻まんとする彼らはものの数分で片が付いてしまった。

 

『これは酷い。一騎当千の猛者たちが数で攻撃とか悪夢以外のなにものでもない……』

「しかも、ロビンやビリー、ジェロニモと言った前線で戦わないサーヴァントが隙を埋めるからさらに酷いことに」

 

 碌に作戦を立てずともその場でなんとなく連携ができるのはすごいと思う。ケルト兵というか名もなき兵士たちなら完封できるくらいには。

 

 順調に足を進めていき、特に何の問題もなく俺達は森を抜けた。すると、少しばかり距離があるものの、俺たちの視界に刑務所とその前に立っている傷だらけの男性を見ることができた。少し遠すぎてわからないが、あの笑みはおそらくサーヴァント、しかも師匠や兄貴たちのように戦闘が大好きな部類と見た。

 

「……あの英霊は、恐らくベオウルフだな。あの手に持っている赤い剣は赤原猟犬(フルンディング)……それを扱うのは彼しかいない」

赤原猟犬(フルンディング)……エミヤ師匠がカラドボルグと同じくらいに使って使い捨てるあの……」

「おい弓兵。お前もしかしたら狙われるんじゃねえか?」

「フッ………援護に徹するとしよう」

 

 むしろ囮にしてやる。昨日俺がやられたようにベオウルフ(暫定)の前でこの人オタクの宝具を爆発させたり散々な使いようですよとか言ってタゲを集中させてやる。遠くから宝具を射出して会う前に倒すという戦法も一瞬だけ頭に浮かんだものの、外したら背後にある刑務所、ひいてはシータの方にも被害が及びかねないために自重することにする。

 

「おう。アルカトラズ刑務所にようこそ。入監か?襲撃か?脱獄の手伝いか?とりあえず希望を言っておきな。殺した後にどうするか考えてやるから」

「こちらの患者の奥方がこの此処に監禁されているようで。治療に必要なのでお渡し願います」

「なんだよ面談かよ。おいおい、戦いに来たんじゃないのかい?」

「まさか。看護師が戦いに来てどうするのです。看護師が戦うのは病気と負傷だけと決まっています」

『えっ』

 

 何を当たり前のようなことを聞いているという風に堂々と毅然と返すナイチンゲール。もちろん、この特異点に来てから行動を共にしてきた俺達、そして何より彼女に背負われて散々振り回されたラーマの反応は鳩が豆鉄砲を食ったようなものだった。普段の彼女の行動を見て、いったい誰が病気と負傷としか戦わない看護師だと思えるだろうか。

 

「そりゃごもっとも。確かに命を奪った看護師なんてのは正気じゃねえ」

「その通りなんだよなぁ……」

 

 バーサーカーで召喚されている時点で少なくとも正気ではないはずである。けど、完全に狂っているというわけでもないんだよな。うちのカルデアで例えればタマモキャットみたいな感じがする。

 

「しかし残念ながら俺はここを通す気がない。通るにしても一戦俺と交えてもらおうか?」

「……………分かった。全員、宝具開帳」

 

 もちろん、この全員というのは俺と契約しているカルデアのサーヴァント達であり、他の人たちではない。俺達の目的はあくまでもラーマをシータと会わせてナイチンゲールに治療させることであり、最悪誰かがここで足止めをしてしまえばいいのである。幸運なことにこちらのサーヴァント数は十一人。数の利はこちらにある。

 

「く、クハハハ!いいねえ!その数のサーヴァントたちの宝具を一気に使わせるなんて、正気じゃねえのはそこの奴も一緒だったか!派手好きだなァ、乗ったぜ!」

 

 宝具開帳を目の前にしてもベオウルフは恐れることはなかった。逆に彼は、ワイバーンとは違い純粋な竜種を呼び出して俺達に対抗しようとして来ている。やはり戦闘狂が入ったサーヴァントだったか。であれば目を盗むことなど容易い。

 

「(ロビン。姿を隠す宝具でナイチンゲールとラーマを先に通してあげて)」

「(……あいよ。まぁ、俺がここに居てもそこまでやることなさそうだしな)」

 

 宝具を一気に開帳する俺に対してか、この戦力差でも戦いを楽しもうとするベオウルフに対してか、溜息を吐いた後、少しだけ疲れたような笑みを浮かべて今にも飛び掛かりそうなナイチンゲールの元へと向かっていく。その姿を見届けた俺達は、まず目の前に立ちふさがる竜種と竜殺しを倒さなければならない。……なんとなく、このままではうまくいかない気もするので早めに処理をしたいところである。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 さっさと倒さなければ……そう思っていた時期もありました。

 割かし無傷でベオウルフをやり過ごした俺は何処か拍子抜けた感じで先程のことを思い返していた。

 まず、俺がエミヤ師匠をベオウルフの前に突き出し、この人は宝具を無限に作り出せるすごい人ですと口にした後、フェルグスとの戦いのとき、念のためで作ってもらっていた赤原猟犬をベオウルフに向けてブン投げ、そのまま壊れた幻想をぶち込む。あたかもエミヤ師匠がそれを行ったかのようにカモフラージュしたそれは大いに効果を成し、彼のヘイトが完全にエミヤ師匠に向いた。その隙に、他のサーヴァントたちはベオウルフが従えていた竜に群がった。

 いくらワイバーンとは異なる純粋な竜種と言えども、こちらに居るのは一騎当千のサーヴァント達であり、尚且つ神殺しやら何やらが得意な人も居る。俺の槍も使い、宝具をブッパしまくったおかげで竜はすぐにその身体を地面に沈めることになった。そして、ここから予想外のことが起きた。竜と俺達との戦いを見ていたベオウルフは俺達の中で特に戦いがいのあるサーヴァントを選出していたようで、エミヤ師匠を巻き込みながらその相手である兄貴に躍りかかったのだ。それはもう、他にもその場に居た筈の俺達すら無視して。

 ロマンが言うにはベオウルフもバーサーカーとして召喚されており、感情が昂った結果ではないかと言っていた。というわけで、俺達は二人しか見えなくなったベオウルフをスルーして刑務所の中へと侵入したのである。普段であればその隙に横から攻撃くらいはするのだけれど、これは仕返しだからね。仕方がないね。

 

「む、どうやら居たようだな」

 

 ジェロニモが指す方向には確かにラーマと彼に似た少女、そしてナイチンゲールがいた。しかしラーマは意識を失っており、そんな彼の手をラーマに似た少女が握りしめた状態でナイチンゲールが治療を行っているようだった。気絶とかどうしたんだろう。

 

「彼女の姿を見て気を抜いてしまったのでしょう。眠るように気絶してしまいました」

 

 心でも読めるのか。手を動かしラーマを治療しながらもナイチンゲールが短くそう答えた。しかしそんな彼女の言葉に待ったをかけた人物がいた。それは今ラーマの手を握っている少女―――恐らくではあるがシータであった。

 

『どういうことだ?彼女の霊基がラーマのモノとほぼ一致している……!?』

「これは……何かの魔術でしょうか?どこからか声が聞こえてきますね……。けれど、その声の方の言う通り()()()()()()()

「どういうことですか?」

 

 皆が皆驚きの声を上げる中、彼女は語る。彼女とラーマは己の伝説の中で呪いをかけられているらしい。その効果はラーマとシータが出会えない、同じ場所に居ることができないというもの。彼女曰く、ここでラーマが目を覚ましてもシータはラーマの前からいなくなってしまう……そういう風になってしまっているらしい。

 

「聖杯戦争でもそうなのです。サーヴァントとして参加する場合、私か彼のどちらかがラーマとして召喚される……同時に召喚されることはないのです」

 

 例え、人類史が焼却されたとしても、例え正しい歴史から逸脱しているこのような特異な場所でもそれは変わらないと彼女は言うが、本人に悲観的な部分はない。むしろ、こうしてラーマの手を握り、彼の顔を眺めているだけで……ただそれだけでいいという気すら感じる。

 

「―――それだけでいいの?心からの謝罪は?全身を込めた愛の告白は?」

「そういったものが、欲しいとは思わぬのか?」

「この人は、十四年間も私を求めて戦い続けました。ラーヴァナを相手取り、一年間しか共に過ごしていなかった私を。新しい妻を娶ることもできた筈なのに、この人はそうしなかった。―――それでいい、私はあの恋と、あの愛を知っている。だからこの先もずっとお互いを求め続ける。それが叶わぬ願いだとしても――――いつか、叶うと信じて」

「……そう。短い間だったけど、貴方たちはとても幸福な出会いをしたのね」

 

 エリザベートやネロももう何かを言うのは無粋と思っているのか、それ以降口を開くことはなかった。開けるわけがない。これ以上何かを言うのは無粋というものだろう。本人たちが納得しているのならそれで……。

 

「……修復は大体終わりました。ですが、やはり心臓に巣窟っている何かが邪魔ですね」

「ゲイ・ボルグの呪い、ですか……」

「……師匠、どうですか?今の状態だと何とかなりますか?」

「ふむ……………そうさな。少々分の悪い賭けになるが一応方法のほどはある。……どうする?」

「やりましょう」

「では、お主。シータと……そしてラーマと契約せよ」

『えっ?』

「一か八かではあるが、お主たちの望む最高の結果を導き出せるやもしれぬ。コイツ次第だがな」

 

 そう言って俺の方をぽんぽんと叩く師匠。……まじっすか……?

 

 

――――――――――

 

 

 

「ちっ、このままいけば気持ちいいくらいの全滅だったていうのによォ……タイミングが悪すぎだぜ」

「あん?」

「ランサー、後ろからケルトの部隊だ。先頭にはフィン・マックールとディルムッド・オディナがいる」

 

 仁慈達が刑務所に入った後、スケープゴートに使われたエミヤとクー・フーリンはその後、順当にベオウルフを地面に倒していた。元々、ベオウルフとは圧倒的力にものを言わせた戦士である。確かに彼の肉体は天性のものではあるのだが、技術には乏しい。かつて、数多の格上を相手に立ち回って来たエミヤとその武勇に偽りなどないクー・フーリン相手には分が悪かったのだ。

 そうして、彼に止めを刺そうとしたところで二人は背後に近づく部隊の存在に気が付いた。それはこの特異点に来てから初めて遭遇したサーヴァントであるフィン・マックールとディルムッド・オディナの気配であった。

 

「フム……カルデアのマスター、そして彼に付き従う美しい盾の乙女は中、か……。惜しいな、一言求婚をしたかったのだが……」

「王よ。あの手練れたちを相手にそれは聊かどうかと思います」

「ハハハッ。流石、女性の方から声をかけられる男は言うことが違うな!」

「なっ……!そのようなことなど決して……!考えてはおりませぬ!」

「はっはっは!冗談だよ。まったく気にしないでくれ」

「…………いや、流石にそれは酷なことだと思うのだがね」

 

 ブラックジョークを交えるフィンと、それに脂汗を浮かべながら答えるディルムッドの姿に我慢ならないという風にツッコミを入れるエミヤ。何処か緊張感に欠ける光景だが、それでも状況はエミヤ達の圧倒的不利である。フィンたちは何百、何千……いや、もしかしたらそれ以上かもしれない数の兵を率いてやって来ていた。対するはエミヤとクー・フーリンの二人。いくら二人が一騎当千の英霊だとしても、相手にも英霊は存在するためそのまま他の兵の差が戦力差となっていた。

 

「それにしても、これは中々壮大な光景だな」

「ハッ、こんなもん。とっくに経験済みだっつの。……手前は弓兵らしく後ろにすっこんでてもいいんだぜ?」

「何。普段頭のおかしいマスターの所為で悉く出番を奪われているのでね。ここいらでただ飯ぐらいではないことを見せておかなければ、後が怖い」

「怒らせた結果がここに釘付け状態じゃねえのかよ」

「リスク管理は得意なんだ」

「答えになってねえ」

 

 罵り(?)合いつつも、お互いに既に獲物は構えている。エミヤは投影した干将莫邪を、クー・フーリンは朱槍をそれぞれ自分に慣れ親しんだ武器を。

 

「……向こうのやる気は十分と。では、ベオウルフ君。君はどうするかね?」

「ん?ああ。俺は東に戻るとするさ。なんせ元々好きでやってた仕事でもねえしな」

「わかった。好きにするといい。……では、ディルムッドよ。いいな?」

「はい。我が槍は今度こそ、最期まで王……貴方のモノです」

「よし。――――では、往けッ!!」

 

 フィンの号令と共に突き進んでいくケルトの兵士たち。女王―――メイヴから作り出されたためか言語は発さない。しかし、声にならない雄たけびを上げながら突き進むその姿は相手に威圧感を与えるには十分だった。並みのモノであればその光景に恐れをなし、恥も外聞も投げ捨てて逃げ出すことは間違いないだろう。

 しかし、彼らは違う。エミヤもクー・フーリンもこれくらいで怖気づいてしまうほど肝の小さい者ではなかった。二人とも不敵な笑みを浮かべながらその集団を相手取ろうとしたその時――――

 

「――――羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)!!」

 

 ケルト兵へと唐突に円盤が上空から飛来し、ケルト兵を根こそぎなぎ倒していったのである。

 不意打ちくらいなら予想はしていたものの、この宝具に該当するものはフィンたちの情報にはおらず、また上空からということで全員がその方向へと視線を向けた。するとその直後にクー・フーリンとケルト兵の間に着地する影が一つ。その姿はまごうことなきコサラの王。燃えるような赤髪をなびかせて登場したその人物とは当然、完全復活を遂げたラーマであった。

 

「完全復活である!今の余は絶好調だ、斬り捨てて欲しい者からかかってこい!」

 

 しかし様子がおかしい。いくら自ら戦うことができるようになったとしても、ここまで高いテンションになるだろうか。エミヤとクー・フーリンがそう首を傾げたところで、彼らの耳に聞きなれない声が聞こえて来た。

 

「頑張ってください。ラーマ様」

 

 二人にはそれだけでもう合点がいった。

 今の声こそが、彼の后であるシータなのだろうと。そして同時に思った。これは自分たちの出番はないな、と。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

『………なんであれで成功するんだ……いや、考えるのはやめよう。仁慈君とスカサハだからだ。うん。彼らは僕たちの理解の及ばないところに生きているんだよ……』

「うわ、あの王サマ絶好調ね」

「シータにいいところを見せたいと頑張っているのを考えると微笑ましいものよな!」

「いやあれそういうことじゃないでしょ。どこぞの無双ゲーみたいになってるんだけど」

「ジェロニモの言ってることは本当だったねー。あれは心強い」

「………予想よりもさらに強いんだがな」

「うむ。うまくいったようだな」

「お疲れ様です先輩」

 

 いや本当に何で行けたのか今でもわからないんだけど……。そう疑問に思いつつ、つい先程のことを思い返してみる。

 

 

 

 師匠が俺に言ったことは単純明快。俺が彼らと契約して、存在の補強を行いつつ俺が突き崩す神葬の槍でゲイ・ボルクの呪いとシータにかかっている呪いを両方潰すということであった。

 

 普通に考えれば無理である。そもそも俺の槍は人外とか神性とかに特化しているだけの槍であり、普通に実害があるんですけど。

 

「そもそも契約で存在の補強って何ですか」

『契約していることで令呪を通して存在を繋ぎとめるということ……まぁ、現界を維持するということを言いかえれば何とかそう言えるかもしれないけどさ……』

「その通りだ。そして、サーヴァントとマスターはお互いに夢という形で色々見えることもあるだろう?それを利用する」

 

 曰く。俺の神殺しというかそういう概念系は結構強力らしい。師匠から貰った只の出来損ないだった槍に、人外殺しという概念を付与するくらいには。なので俺が意識してそういった力を契約したサーヴァントに魔力を通すのと同じように行ってみればワンチャンあるで、ということらしい。一応第三の特異点で、ヘラクレスの権能ともいえる能力、十二の試練をも侵食したその浸透力があればゲイボルクの呪いも神話で得た呪いもなんとかなるだろうという根拠という名のこじつけを見たが……実際にそれでうまくいったんだからしょうがない。こんなの絶対おかしいよ……。なんで呪いだけピンポイントで除くことができたんだよ……。一応令呪を一画使ったけど、それでも割に合わないとは思った。

 

「今の余を倒したければこの三倍と頭が十、腕をニ十本持った奴を三体もってこい!」

「カッコイイですよ。ラーマ様」

「ふははは!ありがとうシータ。愛してるぞぉぉおおお!!」

 

 …………うん。もう、色々考えるのが面倒くさくなってきた。とりあえず、ラーマは好きなだけ暴れると良いよ。

 

 

 

 

 

 

 




低評価を覚悟している。
支離滅裂なのも理解している。
しかし済まない……私ではこれが限界です……。

師匠「細かい操作は私がやった」

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