この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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すみません。少しだけ創作意欲がなえてしまいました。
一応は回復したはずなので、流石に四日も空くことはなくなると思います(休み中のみ)



おのれインド

 

 

 

 両手を上げて抵抗の意思がないことを示し、アイコンタクトでマシュに彼女を攻撃しないように指示を出す。その後、俺たちがどうやってここに来たのか、そもそも何をしに来たのかということを時間をかけて!念入りに!何とか!説明し、理解させた。久しぶりにバーサーカーらしいバーサーカーにあった気がする。基本的にカルデアのバーサーカーは一応意思疎通はできるからねー。ここまで本格的に会話が通じない相手は敵以外いなかったのではなかろうか。メルセデス(仮)の頃とのギャップの所為で倍疲れる。

 この人、本当に話を聞かなかった。関係ない話と判断するや否や上空に銃を発砲して話を戻そうとしてきたのだ。……控えめに言って頭おかしいと思う。ぶっちゃけ、俺は選択を間違えた気がしないでもない。外見がメルセデス(仮)にそっくりだと油断したことが運の尽きだったのかと思われる。

 ぶっちゃけ、彼女に協力を依頼しても意味がないと思うなぁ。本当にバーサーカーしている彼女では何かあったときに致命的な亀裂を生みかねない。

 

「とまぁ、そういうわけなんですよ」

 

『もしよければ、私たちに協力してくれませんか?』

 

「そちらの事情は分かりました。しかし私の役目は一人でも多くの患者を救うことです。ええ。例えその患者を殺してでも私は患者を救うでしょう」

 

 ……彼女の行動基準は分かった。バーサーカーになってでも、いや、バーサーカーとして呼ばれるほどに強力な執念を彼女は持っていたのだ。故に行動の基準はそれに準じ、それと関係ないものには関わらない。

 であれば、彼女は無理にでも引き込むのは得策とは言えないな。召喚したサーヴァントなら最悪令呪があるけれど彼女はここに召喚されているようだし。この様子だと敵にも回ることはないだろうしね。

 

「……わかりました。それでは俺たちはここで――――」

「――――しかし、」

 

 向こうも乗り気でないことを利用して早々に退散しようと踵を翻そうとするが、俺の肩にか細く、しかし骨を軋ませるような力で握りしめる手が置かれた。何を隠そう目の前の彼女の手である。嫌な予感を感じつつ、そちらの方を振り返ると、そこには顔を限界まで近づけて覗き込むメルセデス(仮)が居た。

 

「貴方もかなりの病気を患っている様子ですね。えぇ。それも、本人は自覚していない上に肉体的にも現れない厄介なものです。故に、貴方には私と行動を共にしていただきます。具体的に、私の治療をサポートしてもらいながらあなたの治療を行います」

 

「おっと……(汗)」

 

 これは流石にやばいかもしれない。まさか、逃がそうとせずに逆にこちらを拘束する方に奔るとは……。力尽く……としてもサーヴァントには勝てるわけがない。というわけで、エミヤ師匠、兄貴、マシュに視線で助けを求める。

 

 エミヤ師匠……黙って首を振るレベル。

 兄貴……槍を持ち出した。物理は流石に却下です。

 マシュ……自信あり気に頷いてくれた。流石マシュ。頼りになるぜ。

 

 というわけで、俺はマシュにすべてを任せることにした。

 

 

―――――――

 

 

 

「どこに行くのかしら、フローレンス?軍に置いて身勝手な行動は銃殺もの……さっさと治療に戻りなさい。さもないと、ひどい懲罰が待ってるかもよ?」

 

「……貴女の方こそ持ち場に戻りなさい。私はもっと根本的にこの病気を解決できそうなので、そちらの方に向かうというだけです。何も矛盾したことは行っていません」

 

 どうしてこうなったのだろうか。

 今の仁慈の内心にはこの一言しか浮かんでこなかった。

 仁慈が頼んだ通り、マシュは素晴らしい手際でメルセデス(仮)改めナイチンゲール・フローレンスに俺たちの状況とどのようなことをすればいいのかということを、彼女の興味ある事柄と絡めて説明を行い、見事に協力関係を《《穏便に》》結んで見せた。

 最悪逃走もしくは戦闘を視野に入れていた仁慈からすればこれ以上ないくらいの成果だったのだ。こうしてナイチンゲールを仲間に引き入れた彼はほんの僅かな不安とマシュの努力を無駄にはしないという意思の元、行動を開始しようとした時、今ナイチンゲールと対峙している女性―――エレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー。

 ナイチンゲールを最初に引き入れた戦力、アメリカンバベッジを使っていた陣営に所属しているサーヴァントのようで、引き入れた戦力であるナイチンゲールが抜けることを拒んでいるようだった。相手の言い分は十分に理解できた。彼らはケルトの軍勢とことを構えている。その状況でサーヴァントが一人抜けるという欠損はかなり痛手であろう。

 しかし、仁慈達を見つけた瞬間彼女の態度は一変した。どうやら戦力不足ということを実感しているらしくぱっと見三体のサーヴァント+マスターを見つけたことにより、さらに戦いが楽になると考えているのだろう。エレナは王様が喜ぶと笑顔を見せていた。

 

「王……?」

 

「あら、アメリカの現状を知らないの?今この国は二つに分離して絶賛内戦中なの。一つがただ滅ぼすことしか能のない野蛮人、つまり向こう側ね。それともう一つが―――あたしたちの王様が率いるアメリカ西部合衆国。南北戦争ならぬ東西戦争というわけよ」

 

『なるほど……。話はもはや南北戦争、というわけではなくて全く未知の敵とことを構えているわけか……』

 

「それにしても滅ぼすことしか能のない野蛮人、か……」

 

 エミヤはエレナの言葉を無意識に呟いたのちに、その向こう側に位置する英霊と、どちらかと言えば向こう側……というかお前完全に向こう側でいいんじゃね?と思われるマスターに視線を向け、そして独自に納得した。

 

 そこからさらに話は進み、結局は交渉は失敗した。

 向こうからすれば仁慈達は自分たちの戦力を引き抜こうとするある意味敵となるためである。今さらナイチンゲールはいいですなんて言ったところで、根本的な治療……特異点の復元という手段を知ってしまったナイチンゲールを止めることはできず、撤回は利かない。仁慈は思う。こちらから声をかけておいてなんだが、切り離すことができず勝手についてくる様はまるで呪いの装備のようだと。

 

「あーあ、仕方ないか。こちらも虎の子を呼び出さないといけないわ。じゃ、まずは彼らからね。機械化歩兵、前に出なさい!」

 

 彼女の号令と共に仁慈達の前に先程相手にした量産型にしてアメリカン仕様のバベッジが現れる。

 仁慈はエレナの言葉が気になり、量産型バベッジに視線を固定しながらも周囲に気を回すのだった。

 

 

―――――――――

 

 

 

――――量産型バベッジなんて目じゃないくらいやばい奴がいる件について。

 

 エレナの号令と共に戦いを開始した俺達だったが俺は、彼女の言葉……虎の子、そしてまずは―――という言葉が引っかかり、範囲を広げて周囲の索敵を行った。反応こそはなかったものの、エレナの余裕の表情が切り札を予感させるには十分だった。それ故に、一応マシュ、エミヤ師匠、兄貴に俺が感じたことの旨を知らせたのだ。

 

 そうしたのちに、量産型バベッジを全員スクラップに変えたところ、エレナが一体のサーヴァントを呼び出した。それはカルナという英霊らしい。ぶっちゃけ俺は存じ得ないがマシュとロマンの驚愕、尚且つインド出身ということからそのやばさを直感で感じ取る。インドはマズイ。あそこの神はステップ踏んだだけで世界を滅ぼす連中なのだ。そこ出身の英霊とかヤな予感しかしない。

 

「カルナー?悪いけど彼らのこと捕まえてくれないかしら?一応ほら、敵に回るみたいだし」

 

「その不誠実な憶測に従おう」

 

 そうして降りてきたのは、病的にまで肌の白い線の細い青年だった。見た目だけはそこまで強そうには見えない。だが、それは誤りだ。彼の身につけているものはどれもこれも俺がこの前相手にしたグリード並みもしくはそれ以上の威圧を感じるし、本人も常に余裕を持っている態度から並みの英霊ではないことくらいわかる。ここで彼とやり合えるとするなら兄貴がワンチャンあるくらいだろう。

 

「異邦からの客人よ、手洗い歓迎だが悪く思うな。梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)

 

 カルナの言葉と共に飛び道具のような目からビームのような、なんとなく正体がパッとしない攻撃が放たれる。このようなふざけた描写をしたもののその速度はかなりのもので初見で翻せるかと言われれば否と答え、不意に喰らったら100%当たるだろうと思えるくらいのものであった。しかし、こちらとて警戒はしており、防御するくらいの心構えは出来ているのである。まずエミヤ師匠が前に素早く出ると右手を前に突き出した。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!」

 

 一枚一枚が古の城壁と同等の防御力を持つ代物ではあるが、流石にインドステップ→世界崩壊神話出身の攻撃は厳しいのかしばらく持った後に破壊される。破壊されたと同時にエミヤ師匠はすぐさま後ろに下がり、今度はマシュが宝具を発動する。

 

仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!!」

 

 エミヤ師匠の熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)によって威力を大幅に減少させられているカルナの攻撃をシールダーのクラスを冠するマシュが受け止める。彼女は、デミ・サーヴァントとなったばかりの冬木でも黒騎士王の宝具を受け止めた実績をもつ。こと防御に関してうちのカルデアに彼女以上のサーヴァントはおらず、何処に出しても恥ずかしくないうちのメイン盾だ。彼女の盾の前でカルナの攻撃が爆ぜる。

 そのことにより一瞬だけ凄まじい光と爆音に視界が消え失せるのだが、俺と兄貴には関係がない。なんせこちとら滅ぼすことしか能のない野蛮人らしいからな(根に持っている)

 

 気配を頼りに俺はエレナへ、兄貴はカルナへと殺到する。しかし、カルナの方は気づかれたのか俺の後ろで武器と武器がぶつかり合う音が響いていた。それを無視し、俺はエレナの背後に素早く回り込んでその華奢な背中に槍を向ける。

 

「動くな」

 

「!」

 

 こちらを振り返るエレナ。その隙に俺は量産型バベッジを相手にした時にばらまいていた武器を、手に刻んだルーンを使って収束、四方八方エレナに触れる直前で静止させる。後は俺がルーンが刻まれている手を握ればこの武器はエレナを黒髭危機一髪よろしく串刺しにするだろう。師匠が夜なべして作り出した武器の数々だ。使い手が俺だとしても重症は確実だ。

 カルナと兄貴が撃ち合っている間に、エミヤ師匠をカルナの方へ、マシュを俺の隣へ来てもらいこちらの優勢を維持しておく。ナイチンゲールさん?ああ、彼女はこちらを見ているようで全く見ていないよ、うん。いや、サーヴァントとして契約しているわけじゃないから意思疎通ができないんだ……。仕方がないね。

 

「……もしかして、貴方もサーヴァントだったりしたのかしら?」

 

「残念普通にマスターでした。令呪もありますよ?」

 

「―――そう。それで、私はこれからどうされちゃうのかしら」

 

「……別にどうもしませんよ?俺達がここから離れることを黙認してくれれば、それで」

 

 問答無用で攻撃からこちらを捕らえようとした向こうとしてはこの状況に言い返すことはできないだろう。なんせ、俺たちが今行っていることは向こうが行おうとしたことと同じなのだから。

 

「………なら、妥協案を出しましょう。貴方たちはあたしたちの王様と一度邂逅してもらうわ。実際に話をするの、それくらいの時間は割いてくれてもいいでしょう?……じゃないと、カルナを本気でけしかけちゃうわよ?」

 

 今度は俺が黙る番だった。チラリとカルナの様子を見てみるが、彼は今兄貴とエミヤ師匠相手に一歩も引いていない。数と手数の利から攻められるということには今のところ陥っていないが、それでもほぼ完全に防がれている。ぶっちゃけ、こんなレイシフトしたばっかりから宝具を二個も使っているために結構ギリギリなのだ。一応今の段階ではこちらが有利だが、兄貴たちがやられた場合あれ程の英霊ならこの状況くらいいくらでもひっくり返すことが可能だろう。彼の手綱を握っているエレナが妥協としてこう言ってくれたのであれば乗るのも手かもしれない。王様とやらを説得できれば彼女たちが味方になるかもしれないし、そうでなくてももっと詳しい情報を得られる可能性もある。

 

「………もし、王様との交渉が決裂した場合に素直に逃がしてくれることを条件とするなら」

 

「よくってよ。そのくらいならね。……カルナー!一端戦闘中止!この子たちを王様の元に連れていくわよ!」

 

「………承知した」

 

 カルナが動きを止めると同時にこちらも槍を下ろす。そして、四次元鞄にすべての武器を収納したのちに、兄貴とエミヤ師匠にカルナと戦った感想を言ってもらった。

 

「アレはちと厳しいな、倒せと言われれば全力を尽くすが、確実に倒せると保証は出来ねえ」

 

「……正直、こちらにクー・フーリンが居なければ危うかったと言わざるを得ないな。あれは私が相手した中で過去最悪の相手を思い起こさせる……」

 

「……あぁ、あの金ぴか……」

 

 何やらエミヤ師匠と兄貴の表情が露骨に歪んだ気がしたが、それは別にいい。とりあえず今は、すぐにでも飛び出しかねないナイチンゲールとそれを全力で止めているマシュの援護に向わなければ。

 

 

 

 

 

 

 ……さて、相手があの口約束を素直に守るとは思えないし、ダ・ヴィンチちゃんから貰っていた霊薬でも飲んでおこうか。最悪、こちらの宝具ブッパで乗り切る必要があると思うし。……はぁ、兄貴が知名度Maxの究極完全体兄貴で呼ばれていればなぁ……。

 

 

 

 




そういえば、前回フィンの求婚で仁慈が激おこ不可避とか色々書かれていましたけれど、そんなことはありませんよ?

前にも感想を頂いたのですけど、うちの仁慈は別にマシュの恋人でも何でもないので。彼女の嫌がることをする連中には容赦ないですけど、求婚で無理矢理迫ったりしなければおーけーです。実際に実害が出始めると………まぁ、御想像の通りということで。

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