最近、高難度は体力の多い鯖を連続で投入してくるばかりでとても怠いのですけれど……。
あ、後100話行きました。これソロモンやることには200超えるんじゃないんですかねぇ……(戦慄)
「まず、一報入れておくとしよう。仁慈、あの機械連中とぶつかり合っていた連中はおそらく私たちと同郷だろう」
「……師匠達と同郷ということは……」
『ケルト神話の兵隊……。つまり量産型仁慈君と言うことか………』
「ロマン。その換算方法について帰ったら話し合いだから」
「そんな……!先輩が、大量に……!?」
「ふっ、これは終わったな」
「そこの二人、その反応は一体どういうことなのかな?」
場所はレイシフトで訪れた森の中。一先ず周囲の安全を確認して問題がなかったので先程の戦闘を踏まえてわかったことを話し合っている途中である。そのはずなのにいつの間にか勝手にみんなが推測をして絶望を始めた件について。この反応には流石の俺も遺憾である。
『いや、貴方レベルのキチガイが分隊で襲ってくるなんて想像するだけでも恐ろしいわ。彼らの反応は納得できるもの、むしろ当然と言えるものだわ』
「所長まで……」
「そこは心配しなくてもいいぜ。そもそもコイツレベルに突き抜けた連中がそうそう居て――――いや案外いるかもだが、少なくともあの連中は違う。有象無象の雑兵だ。俺達なら問題はねえだろうよ」
兄貴がそういった瞬間今までの混乱は何だったのかと思うくらいに冷静になるケルト勢以外の人たち。凄まじい手のひら返しに全俺が泣いた。
「フォーウ?」
「大丈夫、慰めてくれてありがとう。ところでお前はいつもフッと現れるなー。もしかして自力でレイシフトしてんじゃないのかー?」
「ファッ!?」
俺のことを慰めてくれているのだろう、フォウがもふもふでぷにぷにの肉球でぽんぽんと身体を叩いてくれる。そんなフォウに対して和みつつ今までずっと疑問に思っていたことを言いながらもふると彼はびっくりしたように身体を跳ねさせた後、物凄い勢いで首を振った。相も変わらず意思疎通ができていると思えるくらい見事な動作だ。
「冗談冗談」
「ンキュ!」
脅かすなと文句を言うかの如くペシペシ手を叩いているフォウを抱きかかえつつ、俺は自動的に脱線してしまった話を元に戻す。
師匠や兄貴の言うことが正しいのだとしたら、ケルト兵を率いている方が特異点を作り出した原因の可能性が高い。何故なら独立戦争終結間際のこの国にケルト兵が居ること自体がおかしいからだ。それに、量産型バベジンと正面切って戦える奴はどう考えても普通の兵士ではない。師匠達が攻撃を避けたことから考えて、サーヴァントを傷つけることくらいはできるようだし、どう考えても神秘を含んでいる。そのような連中がこの時代に居るわけがないのだ。そんな奴は、もっと神秘が多く残っていた時代の連中だけだろう。
「はい、私も先輩の考えを支持します」
『うーん、となると中々に厄介だなぁ……。ケルト神話出身ということはほぼ確定だとしても、肝心のサーヴァントには遭遇できていないし……』
「そのことなのだがな、しばし私の方で探りを入れてみようと思う」
「ふぁっ!?」
唐突に放たれた言葉に思わず情けない言葉が漏れ出すものの、師匠の方はお構いなし。普段と同じような無表情で佇むのみだ。
「……それ、本気で言ってます?」
「無論。なに、戦力に関して問題はない。クー・フーリンも以前に比べて力を生前のものに近づいているし、そもそもお前自身早々くたばるとも思っとらんしの」
褒められているのかけなされているのか、微妙な気持ちを抱えつつ、俺は考える。ここで師匠と別れるリスクは大きい。マスターと離れることで現界が保てなくなる―――ことは彼女を召喚した経緯から心配ないとは思うけれど、一応パスは通っているため離れればその分魔力の方が厳しくなる。現界には問題ないけれど逆に言えばそれだけだ。戦いのなればまた別であり、師匠は師匠なので早々ピンチに陥ったりはしないと思うけれど、万が一ということもあるんだよなぁ……。この人、死にたい願望もあるし。
しかし、逆に師匠であれば何とかなるんじゃないかという安心感も確かに存在している。この中で誰に単独行動を許すかと言えば俺は間違いなく師匠を選ぶだろう。それほどまでに師匠の力は隔絶されているのだから。
「……わかりました。師匠には独自に動いてもらいます。いざという時の保険にもなるし」
……戦闘の規模を見る限り、確実にアメリカの半分は使って戦っているだろう。それほどの距離を離れてどの程度効果があるかわからないけれど、一応令呪もある。俺達に何かあった時にはそれを使って別行動している師匠を呼ぶことができると考えればそれなりに利点はあるだろう。
「……弟子が師の安否を気遣うな、お主に気遣われるほど落ちぶれてはいない……と言いたいところだが、その気持ちだけは受け取っておこう」
それだけ言い残して師匠は音もなくその場から消え失せた。行動早すぎィ!
「……師匠の方はもういいとして、これから俺たちはどうするか……」
「私としては、機械兵を連れていた連中と接触……とまではいかずとも、あちらの陣営の様子を見る位はしておいた方がいいだろう」
「エミヤ先輩の言う通りですね。ケルトの軍勢の方が今回の原因とするならば、バベッジさんたちの方は私たちの味方になってくれるかもしれませんから」
「ま、そうだな。そこの弓兵の言っていることは間違ってねえ。今俺たちに足りないのは情報と戦力だからな」
兄貴、エミヤ師匠、マシュの同意も得ることができたので俺たちは再び森をでて、量産型バベッジを使っていた連中が撤退していった場所へと歩みを進めるのであった。というか改めて思うけどほんと今回範囲広すぎじゃね?
―――――――――
たどり着いた先はおそらく野戦病院の役割を果たしているであろうテントやほかの兵士たちが休息しているテント群だった。恐らくここがケルトの軍勢と戦っている連中の前線ということだろう。
先程も、奥にあるひときわ大きなテントに重症を負った兵士が連れていかれたところを確認したため、奥の方のテントが先程言った野戦病院だと考えられる。この光景にマシュは少しだけ顔を顰めた。エミヤ師匠も何ともいえなさそうな顔をしている。兄貴だけはいつも通りだった。
「………兄貴」
「あぁ。あのテントの中にサーヴァントがいるな」
念のため兄貴に確認を取ってみると彼も俺と同じようなことを返してくれた。その言葉にマシュやエミヤ師匠も意識してテントを見ているようである。それと同時に俺はロマンにテントの中の反応を解析してもらう様に頼む。
『……うん。間違いない。あの中にはサーヴァントが居るね。多分、バーサーカーだ。……相変わらず呆れるほどの勘の良さだね……』
「流石、クランの猛犬。鼻が利くな」
「うるせえ。つーか、弓兵であるお前が気づかなくてどうすんだよ?それともお前やっぱり弓兵じゃなくて執事か?」
「はーい、二人ともそれ以上言い争うようならこの場で串団子にしますからねー」
『………………』
「お二方の顔がものすごい勢いで真っ青に……!」
いい歳した大人がくだらない言い争いを始めないでくださいよー。うっかり殺気とか敵意とかが漏れそうですからー……。
と、子どもよろしく言い争いを始めた二人を宥めてテントの様子の観察を再開する。するとしばらくして、一人の兵士があわただしくテントの方にやって来ていた。そして早次に何かを話すとほかの兵士たちも慌てて跳び上がり、戦いの準備を始める。
おそらくこの様子から考えるにケルトの軍勢が攻めてきたのだろう。そうして、戦いの準備を始める兵士たちだったが、野戦病院の役割を持っていると思わしきテントの中からサーヴァントの気配がする女性が兵士たちを止めて奥の方へと引っ込ませてしまった。
彼女はそのまま敵が攻めてきた方に一人で向かって行った。……ところであの人影物凄く見覚えがあるんですけど……。具体的にはつい最近、ポークパイハットを被った某巌窟王と共に駆け抜けた監獄塔で出会ったことがあるような顔をしていたんですが。
「………マスター。あのサーヴァントが向かった先からケルトの軍勢と思わしきものがやって来ている。数はそこまで多くはないが――――」
『―――!みんな、そちらに近づいてきている軍勢の中に二騎サーヴァントが混じっている!交戦するなら気を付けてほしい!』
「―――というわけだ」
ロマンとエミヤ師匠の言葉を受け取り、俺は頭を回転させる。ここで様子見をするメリットとデメリットの計算だ。
ここで待っているメリットは、あのメルセデス(仮)が奮闘した場合、敵サーヴァントの戦い方法をエミヤ師匠が捕らえることができるということではあるが、十中八九彼女は負けるだろう。ロマンの言葉では彼女はバーサーカー。監獄塔にて出会った感じの英霊であれば戦闘能力に期待はできない。……あれ、ならメリットなくね?逆に助けに入って仲間アピールをして情報聞き出した方が早くね?
俺が、そんな身もふたもない結論に辿り着くまで時間はかからなかった。急いで結論をだし俺は待機しているみんなへと伝える。
「賛成です先輩。あのままあの人を見捨てることなんてできません」
「まぁ、それが一番合理的だろう。断定はできないが、今回の敵は十中八九ケルト側だろうからな」
「マスターがいいって言うならいいぜ。まぁ、任せろ。これでも対軍の戦い方は心得てる」
「よっし、やる気満々なようで何より。じゃあ行くぞ!」
そうして俺たちは戦場に駆け寄る……前に、気づかれていないことをいいことに遠距離から軍勢の勢いを削ぐために攻撃を開始する。エミヤ師匠はそのクラスを存分に生かして矢の雨を降らせ、俺と兄貴は槍を投げ込み軍勢をなぎ倒す。マシュは遠距離の攻撃手段がないため、一直線に軍勢へと走って一騎当千の力を発揮していた。師匠と兄貴の言う通り向こうはサーヴァントに対処できるほどの練度はないらしくマシュとメルセデス(仮)の攻撃によって次々と倒されていった。
いや、ちょっと待って。俺の知ってるメルセデス(仮)じゃないぞあれ。俺たちと一緒に居た彼女は大声で殺菌!とか言いながらサマーソルトは決めないし、そこら辺に銃を乱発するトリガーハッピーでもなかった。何あれ怖い。
槍投げを兄貴に任せ、槍を構えて軍勢の腹部、その上空を取る。そしてそのまま真下に投擲すると同時に別の槍を構えさらに第二波として投擲を行う。小さいながらも確かな爆風を上げながら飛来した槍にケルトの軍勢は吹き飛び、体勢を崩した。その隙を我等がエミヤ師匠と兄貴が逃すはずもなくしっかりと止めを刺していく。
「………貴方たちは?」
「説明はあとで。とりあえず味方だと思ってもらえれば……」
流石に怪しすぎたか……?
監獄塔の時には見せなかったとても鋭い視線が俺の顔を貫く。ギャップもあってかなり堪えた。
「…………嘘は言っていないようですし、今だけは信じましょう。ここは協力をした方が多くの命を救うことにもつながるでしょうから」
まるで自分に言い聞かせるように、そう呟いた後彼女は俺に背中を預けるように背後を振り返り、そこに居た兵士を発砲した。……やっぱり俺の知ってる彼女じゃないわ。
そんなことを思いつつ、俺も目の前にいる敵に集中するのだった。
その後、粗方の軍勢を片付け、エミヤ師匠を除き全員が前線で大暴れしている頃、耳に痛いばかりの声が届いた。
『先程のサーヴァント2騎が来た!』
ロマンの言葉に弾かれたように軍勢に視線を向けると確かに居た。サーヴァントの気配が二人分。
一人は既に一度邂逅したことがあり、オリオン……いや、アルテミス狩りを助けてもらったディルムッド・オディナ。そしてもう一人は初めて見る金髪ロンゲのイケメンである。
「………これは、どういうことでしょうか?我が主」
俺達に気づいたのだろうか、ディルムッドは飛んでもないものを見たような顔で俺たちを―――――正確には兄貴を見ていた。
それに追随するかのように金髪ロンゲも兄貴の方を見て表情を固める。当の兄貴は全く身に覚えがないのか首を傾げるばかりだった。あれかな。ケルト神話の大先輩が目の前に現れたから驚いてんのかな。
「これは……いや、これは戦争であっても聖杯をめぐる戦いでもある。こういったこともあるのだろうよ。ディルムッド」
「……先輩、ディルムッドさんです。そして、先程の会話から推測するに、その背後に控えているのがフィン・マックールであると思われます」
「……へぇ。おもしれえ。同郷の英霊と一戦交えるなんて中々出来ねえ経験だからな。思いっきり暴れさせてもらおうか」
マシュの推測に反応したのは兄貴だった。景気よく師匠から授かった朱槍を振り回し、実にいい笑顔を浮かべている。メルセデス(仮)は彼らが病原菌なのですね……とブツブツ呟いているが戦う意思があるのか銃を構えて既に発砲していた。やっぱり俺の知っている彼女と違う。
「フッ……!急に発砲するとは、なんというg「消毒!清潔!」―――くっ、話が通じないタイプか……!」
「ハッハッハ。口より手を動かせということではないかな。―――さて、気になることは多々あるが、私も行かせてもらおうか」
少しグダグダになったものの、戦闘態勢へと移行するディルムッドとフィン。どうやら、ディルムッドの方は俺たちのことを覚えていないのか、特にアクションを起こすこともなく槍を構えていた。
それに習い俺も武器をばらまくと同時に槍を構えて戦える準備を整えつつ、令呪のパスから俺の魔力をサーヴァントたちに回した。ここで景気よく敵のサーヴァントは落としておくに限るからである。
「戦闘開始します!」
「いっちょ派手に暴れますか!」
―――――――――
戦いはこちらが終始押す形となっていた。当然だろう。何故ならこちらにはサーヴァントが四騎おり、向こうの倍の戦力となっているからだ。逆にそれでも未だに戦い続けることができる向こうの生存能力は伊達ではないと思うう。
「―――ふむ。我々二人でも押し負けるか……。流石は名高き戦士クー・フーリン殿だ。それにほかの英雄達も歴戦の勇士と言うに相応しい。……しかし、これは戦争だ。だからこそ――――」
フィンはマシュを始めとするサーヴァントの実力を褒めつつ、こちらの方に視線を向けた。そして、槍を構えてこちらに突っ込んでくる。
「―――弱点を狙うことも考えるべきだよ。特に真名を明かせぬシールダーのサーヴァントよ」
英霊たちの弱点であるマスター、つまりは俺を此処で潰してしまおうという魂胆であろう。槍を持っているだけのマスターなんて軽くひねれる、そう思っていることを余裕の表情が伝えてくれる。当然このまま某立ちしていては俺は串刺しにされて死んでしまうだろう。……が、正面からこうしてやって来てくれているのだ。態々素直にやられている義理はない。ましてや相手は俺の命を狙う敵なのだから。
「存分に恨むと言い。私と、ここに来てしまった自分自身を」
槍が俺の心臓目掛けて突き出される。もちろんそのまま俺の心臓をくれてやるわけにはいかない。魔術で強化した身体能力を生かして既に初動は行っている。フィンの繰り出す槍を身体を半身にすることによって回避すると同時に蹴り上げて重心と態勢を崩す。
槍が撃ちあがったことにより一瞬の隙を見せたフィンの懐に俺は潜り込みその霊核があると思わしき胸の中央部分に震脚を乗せた肘鉄を叩きこんで彼を後方に吹き飛ばし、追い打ちとばかりに手に持っていた槍を投擲する。そして、パスを通じてエミヤ師匠に吹き飛んだフィンに向けて攻撃をしてほしい旨を伝えた。
流石は弓兵エミヤ師匠。俺の言葉を聞いた直後にフィンの身体に剣製され、矢として放たれた武器たちが殺到していた。
しかし、それは途中で身体を滑らせ間に入ったディルムッドに防がれてしまう。彼を相手にしていた兄貴やメルセデス(仮)はどうやらケルト兵の妨害にあって隙を与えてしまっていたようだった。
「主!?無事ですか!?」
「ハッハ、唯のマスターと侮っていた私の自業自得さ。やはり戦う前に親指カムカムしておけばよかったかもしれないな……。ディルムッド、流石にこの状況はマズイ。マスターですら一筋縄ではいかないというのであれば、一度撤退したほうがいいだろう」
「ハッ、かしこまりました。……しかし、この兵たちが聞き入れるでしょうか?」
「聞き入れなければそれで構わないさ。彼らは女王を母体とする無限の怪物。いくらでも補充は利く」
会話の流れから言って彼らは撤退するようだ。フィンは足に刺さっていた槍を引き抜き、こちらに投擲すると踵を翻した。ディルムッドもそんな彼を庇う様に後ろに続く。俺は逃がすかと久しぶりに我が愛槍の真名を開放する。
「――――突き崩す、神葬の槍!」
フィン・マックール、ディルムッド・オディナ彼らは人間ではあるものの、俺の槍は爆発する為広範囲攻撃としても一応使えるのだ。故に追い打ちとしては最適である。
そうして放たれる俺の槍だったが、直線にケルト兵たちがこぞってその前に飛び出し、身を挺して彼らを守った。
爆風が晴れたころには既に二人の姿はなく、念のためエミヤ師匠の眼で探してもらうが、捕らえることはできなかったそうだ。足に槍が刺さったっていうのに逃げ足の速いことである。
まぁ、何はともあれ、一応撃退は出来たのだ。とりあえず前のように大砲などで狙われていないか、気配だけでなく空気の振動にまで気を使って周囲を警戒し問題なかったので槍を下ろす。
戦いが終わったことを実感して一つ溜息を吐いてみんなをねぎらおうかと動き出そうとしたら、後ろから銃を突き付けられた。
「戦闘は終わりました。とりあえず、貴方が何者か話してもらいましょうか」
殺気も何もなかったから油断してた。というかこの人やっぱりやばい。監獄塔の彼女は一体何だったんだ。皮だけ借りた別人だろ絶対。
そんなことを考えつつ、俺は両手を上げると俺たちのことを一から話し始めるのだった。
悲報 師匠単独行動する。
悲報 監獄塔で知り合った人がオカシすぎる。
悲報 フィン・マックール、求婚できず。
朗報 仁慈はいつも通り。