ロキ・ファミリアに入ってダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:戦犯

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最近知ったんですけど、二つ名も更新あるんですね。


限界の差

「あいよ、30万ヴァリスだ」

 

「「「「「・・・・・・・・・」」」」」

 

ギルド本部、魔石の換金所にてそんな声が響いた。

驚愕する五人、理由は少し違うが皆目の前に置かれた袋を食い入るように見ていた。

魔石が入っていた大きめの袋を五つ握りしめていたノーツ

 

「お、おう。ありがとな!」

 

換金員の早くしろという視線を受けてリーダーであるノーツがまるで危険物を扱うかのように受け取る。

換金してくれたギルド職員に礼を言うも若干詰まっていたのは仕方の無いことだろうか。

 

受け取ったのちギルドからそそくさと退散し、現在黄昏の館のノーツの部屋にて分配が行われようとしている。

 

「・・・」

 

「・・・なあ、これ」

 

「うむ・・・」

 

再び顔を見合わせるノーツ達。

ベルはパーティーを組むことによってここまで変わるのかと驚愕していたが、これを五人で割れば一人当たり6万ヴァリスと少し。

これまでで一番稼いだ日が5万ヴァリスほどなのを考えると正直あまり変わっていないのには気づけていない。

 

ちなみに、Lv.1冒険者五人のパーティーで一日に稼げるのは25000ヴァリスほどであるのを考えるとふざけるなと言いたくなる冒険者は大勢いるだろう。

 

そして、ノーツ達の驚愕はまた違うところへと向けられていた。

 

「とりあえず分けようか。はい、ベルはこれね」

 

そう言ってディーンに渡された袋は明らかに他のメンバーに配られたものよりも中身は多かった。

他のメンバーが一人5万ヴァリスなのに対してベルの持つ袋に入っているのは10万ヴァリスにものぼる。

そのおかしい配分に文句を言わない四人に異を唱えたのは他でもないベルだった。

 

「あの!僕のだけ多すぎるんですけど・・・」

 

「うーん・・・確かに僕たちはどんな仕事をしようが人数で割ることにはしてるんだけどね、いつもはサポーターさんにも手伝ってもらって20万ヴァリスってとこかな?」

 

「ああ、それも多くてだがな」

 

「だけど今回はサポーターもいないのに最高の収入が入った、しかもそれを四人で割れてるから今までで一番の稼ぎなんだよ!だから、ベルに残りを貰ってほしいんだ」

 

実際サシャなどは大金が入ったお金に頬ずりなどしていてノーツに引かれていた。

他のメンバーも心なしか嬉しそうな顔をしているのが目に入った。が、そう言われてもベルは納得することができなかった。

 

「で、でも・・・僕一人でもこんなに稼げなかったと思うんです・・・」

 

「ん〜、じゃあ僕たちからのランクアップのお祝いってことで受け取ってもらえないかな?」

 

そう言われてしまうと断りづらい。

ニコニコと人当たりの良さそうな顔でそうのたまうディーンはベルの性格を理解した上で狙って言っていると言える。

 

「そんなに渋るなら・・・あ!俺らに夕食奢ってくれよ!」

 

返そうと伸ばしていた腕を引っ込めようとしているベルに気づけなかったのか、ノーツがそう声をあげた。

無論向けられるのは白い目。

完全に空気を読み違えたノーツはその視線に動揺するしかなかったのだった。

 

「ノーツ・・・色々台無しだよ・・・」

 

「空気読めなのです」

 

「今のは擁護できんな」

 

「あ、あはは・・・」

 

それぞれの意見が飛び交って、その流れのままいつもノーツ達が通っている酒場へと行くことになった。

お金は結局ベルが払うことになったのだが、その請求のせいで他の人よりも稼げたお金が少なかったことになったと記しておく。

余談ではあるが、その大半はサシャが占めていた。

 

(食べたもの、どこに入るってるんだろう・・・)

 

どちらかというと小柄なサシャを眺めつつ、新しい人体の不思議に直面したベルであった。

 

 

 

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 

「ベル、ちょっといいか」

 

その日の夜、黄昏の館の一角にベルは呼び出された。

もちろん喧嘩を売られたわけではなく用事がある、とノーツに言われたためである。

これからロキの部屋へ『ステイタス』の更新に行こうかと考えていたベルだったが後にしようと予定を変更し、そこまで賑わってはいない場所へと連れてこられたのだった。

 

「ベル、今日はありがとな。久々にこんなに稼げたし、楽しかったぜ!」

 

「いえいえ!僕こそ色々教えてもらえて・・・パーティー組むのも初めてだったので楽しかったです!」

 

笑顔満点でそう言いのけるベルに、ノーツは気まずそうな顔をして頭をかいた。

自分がこれから言うことがこの少年にどんな衝撃を与えてしまうのか・・・、と躊躇した上で再び話し出した。

 

「ベル、悪いが明日からは俺らとは組まないようにしてくれ」

 

「・・・えっ?」

 

驚愕をその顔に貼り付けるベル。

 

何かしてしまっただろうか。

慣れない集団戦に足を引っ張ったこと、ミノタウロスに一人で突撃したこと、挙げれば確かにキリがない。

それでも、極力乱さないようにはしたつもりであるし、そのために必死で観察し、合わせようともしていた。

 

これ以上ないほど混乱し、泣きそうな顔になっているベルを見てあわててノーツが付け足す。

 

「わ、悪い!言い方がまずかったな。別にベルがいて邪魔だったとかそんな訳じゃねえんだ。むしろ戦力的にはいてくれた方が安心できるレベルだ」

 

じゃあどうして・・・と内心で考えるベルの答えをノーツはすぐに話した。

 

「でも、ベルは強すぎるんだ。悔しいが、戦闘力だけで考えると俺達の誰よりもな。と言うより、Lv.2の中でも上の方に食い込めるはずだ」

 

群れで現れた五匹のミノタウロス。

それをソロで殲滅できる冒険者がそうそういるであろうか。

しかも、ランクアップしたて、それどころか冒険者になって二週間の少年がそれを成し遂げてしまったのである。

 

才能とは時に残酷である。

持つものと持たざる者、いくら時間をかけても、どれだけ努力しても、人によって限界は変わる。

 

現に数年冒険者をしているノーツ達にも既に追い付き、追い越してしまったベルがいるように。

 

「今日みたいにベルの強さに甘えてちゃ、俺らも成長できないってのもある。腐ってもリーダーだからな、ここはきちんとしておきたいんだ」

 

楽をするために強い者と組むのと、学ぶために強い者と組むのは本質的に異なる。

自分たちの利益のために、こんなところに止まらせておくべきではない。

才能のある少年、ベルはこれからも成長し続ける。

それを分かっているからこそ、ノーツはベルと組めないと言ったのだった。

 

「なに、別に今後ずっと会わないって訳じゃねえんだ。俺らも追いつけるよう頑張っとくから、またダンジョン行って、帰りに酒でも一緒に飲もうぜ!そん時は俺らの奢りだ」

 

頭をグリグリと撫でながらノーツは軽く笑いそう言った。

拒んだ理由の裏に隠された意味にベルが気付けたかどうかは分からない。

それでも、自分の為を思って言ってくれていることはしっかりとベルに伝わっていた。

 

悲しさはある。

それでも、そのノーツの言葉を無下にするわけには行かない。

少し湿った瞳を向け、今言うべき言葉を口にした。

 

「今日一日、ありがとうございました・・・っ」

 

その際、声が震えていたのを聞いたノーツはこんなに強くてもまだまだ子供なんだな、と苦笑いしながら当たり前のことを思うのだった。

 

 

 

 

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 

 

 

 

「神様、失礼します」

 

その後、元の予定通りロキの部屋へと向かった。

『ステイタス』の更新と、ランクアップした感想、さらに【聖癒】の効果等をロキと話している時にふと、ロキがベルの僅かな異変に気付いた。

 

「てことで【精癒】の上位互換になる訳やな・・・まあ、流石に消費を上回る訳ちゃうやろから限界は見極めるようにな!・・・んでベル、今日なんか悪いことでもあったんか?」

 

まさか見抜かれるとは思っていなかったので、内心で驚く。

しかし、長年人と、あるいは神と接してきたロキにとっては見え透けていたのである。

才はあるといえベルはまだ14歳。

心を読むという点においてロキには到底敵わなかった。

 

ぼつりぽつりと今日のパーティーでの出来事を話し始める。

知らないことをいっぱい学べたこと。ミノタウロスに対して一人で飛び込んでしまったこと。酒場で儲けたお金が消し飛んだこと。

そして、先程パーティーへのこれ以上の加入を断られたこと。

 

(・・・ほんま、ノーツ達でよかったわ。もっとこっぴどく断るような奴やったらベルはもっと凹んでたやろうな・・・)

 

目の前の若干暗い少年を見てそう内心で安堵の息を吐く。

普通なら、その圧倒的な才能、強さに僻んでもおかしくなかっただろう。

自分たちが数年かかったことを、たった二週間程度で追いつかれてしまったのだから。

それを間に受けてなお、ベルにそう諭せたのはノーツ達が()()だったからだろう。

 

(まあ、ベルの性格のお陰でもあるんやろうけどな)

 

そっとベルを胸に抱き寄せて頭を撫でる。

柄では無いのは分かっている。が、妙に庇護欲をそそったのであった。

 

「神様・・・」

 

「ん?」

 

「い、痛いです・・・」

 

「誰がまな板じゃボケ!」

 

「違うんです服のボタンがぁぁぁ!」

 

怒り狂ってさらにぐりぐりと抱き寄せるがそれはベルにとって拷問でしかなく額にゴリゴリとボタンがくい込んでいくのだった。

何とも締まらない終わり方であった。

 

 

 

 

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 

 

 

 

明朝、城壁の上にて。

キキキキンッ、と高速で刃が打ち合わされる。

一般人が見れば、ただ美しい金髪の少女が剣を振るっているようにしか見えないだろう。

ただし、その少女の手元もぶれて見えないという補足はつくが。

何かに当たっている音は聞こえるが、それを視認することは叶わない。

そんな中、少女が一つ大きく剣を振り降ろせばその何かに直撃して白髪の少年が吹き飛ばされながら現れる。

 

激しく息を切らしている少年。

対して全く息を乱さない少女。

両者の力の差は明確であった。

 

一歩も動くことなく捌き続けたアイズは剣を下ろし、休憩にしよっか、とベルに言った。

これがベルがLv.2に、アイズがLv.6になってから初めての朝の特訓となった(前日は調整をするためとアイズが辞退した)のだがお互いに今までとは違う強さに少なからず驚いてた。

 

水を飲み、一息ついたところでアイズがベルに問う。

 

「そう言えば、二つ名は?」

 

「え・・・あー・・・はい、決まりました」

 

いまいち歯切れの悪い返事をするベルに首を傾げる。

他の【ファミリア】ならまだしも、【ロキ・ファミリア】団員に変な二つ名が付けられるとは考えにくい。

ふとアイズの頭の中に【超凡夫(ハイ・ノービス)】と呼ばれる男の姿が思い浮かんだがあれは別、と頭の隅に追いやる。

 

「どんなのになったの?」

 

「・・・えっと」

 

じー・・・と、未だに言い渋るベルに視線を向け続けるアイズ。

正直なところ、知ろうと思えばすぐに拡散されて勝手に耳に入ってくるのだが何故か本人から聞きたいと思った。

必死に顔を逸らしていたベルだが、やがて観念したようにぽつりと声に出した。

 

「・・・【白い光牙(ホワイト・ファング)】、です」

 

・・・どうだろうか、一般的に聞いたとしてもどちらかと言えばかっこいいと言えるのではないか。

オラリオに来て数年、アイズは様々な冒険者の酷い--鳥肌の立つような--二つ名を聞いてきたが、そこまで変だとは思わなかった。

それが、ベルにつけられたもので無かったとしたら、という但し書きは付くが。

ベルの顔をもう一度見る。

 

(・・・【兎の前歯】?)

 

ふと頭に浮かんだ言葉は、奇しくもロキが二つ名を決定する時に内心で大爆笑しながら思い浮かべていた物と同じだった。

 

「・・・アイズさん?」

 

言い渋っていた事といい、自分にあまり(だいぶ)似合っていない物だという自覚はあるのか先ほどとは逆に無表情で顔を逸らし始めたアイズをジトっと目で追いかけるベル。

始めの頃はともかく、最近になっては無表情を見る方のことが稀なベルは不自然なその行動に良からぬことを考えているのだろうと予想を付けて見続ける。

 

そんな不毛な争いは、アイズが急に真面目な顔になって訓練の再開を告げるまで続いたのだった。

 

 

そう軽く考えているが、アイズはずっと無表情とは行かないにしろ、感情が顕著に顔に現れるのはベルと話している時だけであるということは本人は知らないままであった。




ベル君に周りと比較するとどうなっているのかをわかってもらう話でした。
これ以降はオリキャラではなく、原作キャラとの絡み主体で書いていきたいと思います。

オリキャラ出しすぎじゃね?と思った方、その通りです。自重します。

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