ロキ・ファミリアに入ってダンジョンに潜るのは間違っているだろうか 作:戦犯
そしていきなり申し訳ないのですが、5/22に投稿した話を一旦削除しました。
今回の話をサラッとまとめて次に進もうとしていたのですがどんどん膨れ上がるばかりで私の力量不足でそのような判断を致しました。
ややこしい事をして申し訳ありません。
削除した話に関しては、来週の投稿の二時間ほど前に改訂して再投稿します。
ミノタウロスとの激戦の帰り道、ベルとフィン、ガレスは会話混じりに上へと歩みを進めていた。
「そういえば、どうしてここが?って、もしかして・・・」
「うん、思っている通りだと思うよ。ベルが逃がした冒険者・・・名前は聞いてないけど、彼が助けを必死に探してくれたおかげで僕達のところに報告が届いたんだ」
「ベルも大概じゃが、その男もなかなかの阿呆よの!低階層とはいえ、一人でダンジョンを駆け抜けていたんじゃからな」
そんな二人の説明にその時のことを思い出す。
まだそう時間はたっていないのに、とても前のように感じた。
『すぐ、助けを呼んでくるからな!』
結果的に自力でミノタウロスを打ち破ったとはいえ、その言葉を違えずに口約束でしかないそれを誠実に守ってくれたという事実に心が温かくなる。
「・・・帰ったら、お礼言わないと」
二人がいることで圧倒的に安全になった帰り道。安心してか小さい声でそうボソッとこぼしたベルだったが、周りの大人二人はただ苦笑するだけだった。
「ベル・・・どちらかと言うと君はお礼を言う側じゃなくて言われる側だと思うよ?」
「がっはっはっ、やはりベルも阿呆じゃの!それでこそ未来の英雄殿じゃ!」
ガレスが笑い声と共にベルの背中をバシバシと叩くが、叩かれている本人は痛くて若干涙目だった。
「・・・という事がありました」
「ふーん・・・そいつら、ええ度胸やな。潰すか」
「ちょっ!?僕は大丈夫ですからやめてください!」
そしてその日の夜、ロキの部屋にてそんな物騒な会話が繰り広げられていた。
過去にはそのことが原因で
「・・・まあ、ベルが無事で良かったわ!じゃあ、早速やけど更新しよか!」
「神様?今、誤魔化しませんでしたか?」
「さ、はよ寝て脱げ!」
明らかに話を逸らすロキに言われるがまま服を脱いでステイタスの更新が始まる。
ロキが指に針を刺し、垂れた血がベルの背に付いた瞬間に背中のロックが外され、更新が始まる。
いつものように文字が動くような音が鳴っていると思ったその時、ガコンッと今まで聞いたことのない音が聞こえた。
「ふぅ・・・やっぱりやな」
「神様?」
「ベル。背中乗ったままで悪いけど言うで、ランクアップや!」
ロキがやっぱりと言ったのも、強化種のミノタウロスと戦い、勝ち残ってきたこと。常識的に考えて乗り越えられるはずのない壁を自らの力で打ち破って来たベルならばと思いながらの更新だったからである。
「ランクアップ・・・じゃあ僕は」
「今日から晴れてLv.2や!最速記録も更新やで、おめでとうな!」
「・・・!ありがとうございます!」
これで少し
一年はかかると言われていたランクアップがこんなにも早く訪れたことに驚きながらもこみ上げる嬉しさに笑顔になっているベルを見ながらロキは続ける。
「そんで、ランクアップしたから決めなあかんことがあるんやけど・・・やっぱりここでもベルやったか・・・」
「えっと、発展アビリティですよね?あとそれはどういう・・・」
発展アビリティ。ランクアップした際に1つ、基本アビリティである力、俊敏などの他に特殊な恩恵を受けられることができるアビリティが追加されるものである。
候補が多数あがることもあり、発現するものは人によって様々ではあるが、それぞれの得意な技能を伸ばすものであったり専門職へとたどり着きやすくするような物が多い。
そんな中、ベルの発展アビリティ候補は三つ挙がった。
「【狩人】と【耐異常】、これはええねん。【狩人】は短期間に大量のモンスターの撃退が条件やからベルは取れてもおかしくないし、【耐異常】は割とメジャーなアビリティや。でも・・・【聖癒】ってなんなんや!こんなん聞いたことあらへんぞ!」
「ひっ!?ごめんなさい分からないです!」
髪をわしゃわしゃとかき回し、ヒステリックにそう喚くロキの姿に若干引きながらそう返事をする。
「字面的に見たら【精癒】と似たもんか?」
「【精癒】?って、何ですか?」
「
ここでロキは言わなかったが、アイズやリヴェリアなどが【精癒】を持っている。
暫しそこで考えこむロキ。
背中の上にいるのでベルからは見えないが、悩んでいるだろうことが雰囲気から分かった。
「・・・ほんまなら、【狩人】も割かしレアな発展アビリティやし、【耐異常】ももはや必須やとウチは思ってる。でも、【聖癒】は多分ベルのユニークアビリティや。どれを取るもベル次第、ウチは何も言わん!」
「・・・じゃあ、【聖癒】でお願いします!」
「ええんやな?わかってると思うけど一つしか取れへんし、【狩人】はLv.2の時以外に発現したことは無いで?」
「はい、大丈夫です!もし【精癒】と同じような感じならすごい助かりますし・・・もし違っても、取らないといけないような気がして」
これまでも
その時、模擬戦の後にダンジョン外でアイズに膝枕してもらえたことを思い出して若干考えがぶれたが必死に押し殺すベルだった。
「じゃあ、【聖癒】に決めるで・・・っと、よし!これで更新完了やな。そうや、前言ってた精霊の加護のスキルやけど、効果増えとるから確認しといてな!」
暫くしてロキそんな言葉とともにが背中から降り、『ステイタス』を写した紙を手渡される。
(・・・効果が増える?)
そんな疑問と共に紙を覗きこめば、確かに欄が前よりも埋まっていることが確認できた。
ベル・クラネル
LV.2
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
聖癒:I
《魔法》
【ホーリー】
・付与魔法
・詠唱式【輝け】
《スキル》
(【
・早熟する
・懸想が続く限り効果持続
・懸想の丈により効果向上)
【
・戦闘中、魔力のアビリティ上昇
・精神力の消費減少
・ーーーーーーーー
・ーーーーーーーー
一瞬全ての『ステイタス』が0になっていて軽く焦ったベルだが、Lvが更新される度に全ての『ステイタス』がリセットされることを思い出してほっとする。
Lv.1時点でのアビリティは見えない数値となって加算され、その数字が大きいほど例えるなら貯金として後の『ステイタス』に影響してくる。
一般的に言えばAに行ければ上々、Sはごく稀にしかいないと考えて計算すればベルはLv.3成り立ての冒険者と同じ『ステイタス』をしている訳ではあるが、それでもやはりLv.3の冒険者と戦い、勝つのは難しいだろう。
戦闘経験の量というのも理由にあがってくるが、やはり一番はLvの差である。
たった1の差であっても、受けられる『恩恵』は明確に違ってくる。
そう考えるとLv.3になる直前くらいの冒険者とならいい勝負ができるだろう。
基本アビリティの下に現れた聖癒の文字。
発展アビリティの表記を見るのが初めてなベルは何度も嬉しそうにその文字を眺めていたが、暫くするとロキのドアがノックされた。
「おー?誰や?」
「私です。更新をして欲しくて来ました」
「アイズたんか!了解や、とりあえず入って入って!」
「失礼します」
そうして入ってきたアイズの服装は、ダンジョン帰りなのか装備を付けたままだった。
それだけなら問題はなかったのだが、ベルが部屋の中にいたことと、アイズの装備の胸当てで守られていない布部分が際どい所まで破れてしまっていることが小さな事件の原因だった。
「あ、アイズさん!?」
「ベル。どうしたの?あっ・・・み、見ないで」
初めこそベルが何に驚いているか理解出来ておらず首を傾げるだけだったが視線に気づいたのか自分の服装を認識したアイズは羞恥で顔を赤くし、腕を組んで胸元を隠すようにしていた。
「す、すみません!すぐ出ていきます!神様、ありがとうございましたぁぁ・・・」
この場合、特に誰が悪いというわけでは無いのだが視線を向けていたのは事実なので負い目があるのかそう叫びながら部屋を飛び出していった。
それを見てロキは笑っているのかと思いきや、アイズを驚いたような目で見ていた。
「あ、行っちゃった。・・・?どうしたの?」
「・・・は」
「?」
「恥ずかしがるアイズたん萌えー!」
そう言ってアイズの胸元めがけて飛び込んでくるロキを軽く受け流して後ろの壁へと叩きつける。
いくら神とはいえ下界にいる間は身体能力は人とそう変わらない、げふっと声がしてロキの身体から力が抜ける。
やってしまった、と今度は顔を気まずそうに顰めてアイズは回収へと向かう。
そして、壁に叩き付けられたロキはまた別のことを考えていた。
(あの装備、割とあんな感じに破けてるけど皆の前じゃ恥ずかしがったことなんてあらへんのにな・・・にひひ、ベルもやるやん!)
うつ伏せに倒れてアイズには見えていないが、地面と密着しているロキの顔には、
そして起き上がった後、ロキは口を開いた。
「んで、アイズたん。どうやったんや?」
「はい。ウダイオス、撃破完了してきました」
ウダイオスとは、三十七階層に
準ベテラン級の冒険者がパーティーを組んで討伐するレベルのモンスターであるが、それを撃破してきたとアイズは言ったのだった。
それも、
実際、【ロキ・ファミリア】の精鋭でパーティーを組めばよほどのことがない限り装備が破れるほど苦戦することは無いだろう。
アイズの服を捲りながらロキはふと思う。
(そういや、アイズたんがベルの『ステイタス』見たってリヴェリアが言っとったな・・・、今回のこれもそれが原因か・・・っと!)
「Lv.6来たぁぁあ!」
そんなロキの叫び声が黄昏の館内に響き渡り、真下にいたアイズは予期していたとはいえ、身体をビクッと震わせるのだった。