墓守達に幸福を   作:虎馬

6 / 48
本日二度目の投稿、次は短いGWが終わってしまったので数日空くと思われます。

今回は再びシモベ目線、と言うか会議をネクロ達目線にすると進まない病気に罹ってしまったのです。
多分これからも「御方々すげえ!」するために会議等のシーンはシモベ目線で心中を語って貰うことになると思います。

第三者目線は・・・最初書いてたんだけど膝に〈トゥルーダーク〉を受けてしまってな。


6.出撃準備

 ナザリック時間2日午後8時、転移から44時間が経過した段階で都合3度目の会議を執り行う事となりました。

 勿論主な議題は昨日ネクロロリコン様が発見なされた人間の村の戦力分析と送りだす使者の選定であります。

 

 送り込まれた我等エイトエッジアサシン隊はネクロロリコン様の眷族【影狼】の皆さまと交代する形でナザリックに帰還しており、守護者統括アルベド様に報告して報告書を作成して頂きました。更にそれだけでなく会議の場に私めも参加するという念の入れようであります。

 ナザリックの今後を占う重要な会議に直々に作られた守護者の皆様以外が参加することは憚られましたが、

 

「何を憚る事があるのです、貴方は我等ナザリックの仲間の一人として至高の御方々に作られし者。何より直接現場を見て来た貴重な人材なのですから、参加に異を唱える者などいるはずがありません。大丈夫、何かあってもわたくしがフォローしてみせますわ」

 

 との御言葉を頼りに出席する事となりました。

 

 あの偉大なる支配者ネクロロリコン様の眷族の方々と交代で戻っている事を申し訳なく思いつつも、この不肖の身が直接御方々にご報告出来る事を大変誇らしく思っていた事はシモベとして否定できません。

 

 

 

「以上で報告を終了いたします」

「大儀であったエイトエッジアサシン隊隊長殿。未開の地への潜入任務、この危険な任務を無事にやり遂げた君達エイトエッジアサシン隊の皆の事を私は誇りに思う」

「こ、光栄であります! 我等エイトエッジアサシン隊、今後とも御方々の御役に立つべく鋭意努力させていただきます」

「ああ、私もお前達の働きに満足している。感謝するぞ」

「感謝など! 勿体なきお言葉、我等を今後とも御使いいただければこれに勝る喜びはございません「では! エイトエッジアサシン隊の皆の情報を精査し今後の方針を決定してまいりましょう」」

 

 至高の御方々直々のお褒めの言葉に感激し混乱しかけていた私に対し、割り込ませるようにして守護者統括様が次の話題を促して下さいました。

 あのまま話していては無様にこれからもどうぞ御使い下さいと他の守護者の皆様を押し退けるような発言に至っていた事でしょう。危ないところでありました。

 

「要点を整理しますと。この村はカルネ村という名称で総人口は120人ほど。日中は主に農作業をしておりこれが主産業と思われます」

「派遣した部隊が察知され偽装工作を行っている可能性は?」

「可能性は限りなく低いかと思われます。理由といたしましてはエイトエッジアサシンに気付いた者は無く、また農作業などの様子から非常に脆弱な肉体をしている事も確認されております。更にニグレドの調査により村人のレベルはやはり5にも満たないとの報告も上がっております」

「ふむ、ご苦労だったアルベド君。では村に使者を派遣するにあたって危険性はほぼないと考えても?」

「はっ、カルネ村及びその近辺に我等を害するだけの力を持つ者は見られませんので危険性は限りなく低いと考えられます」

 

 ここまでの会議でカルネ村の危険性が低い事が解り、後は誰を使者として送るかが今後の議題となるのでしょうか。

 

「ならば使者は私だな。盟主殿、構いませんな?」

「お、お待ちください! 何ゆえ脆弱な人間ども如きとの交渉を至高の御身がなさるのでしょうか」

「そうでありんす! レベル5程度の者と言えど至高の御身に万が一の事があっては!」

「コノヨウナ些事ハ我等シモベ達ニオ任セ下サイマセ!」

「そうですネクロロリコン様! なんなら私達がひとっ走りしてきますからどうかナザリックで指示をお願い致します」

「そ、そうです! あんな奴等の所に態々至高の御方が足をお運びになるなんて!」

 

 ネクロロリコン様の御言葉に会議室は沸き立ちます。

 当然です。何故態々至高の御方々の御一人があのように寂れた村に出向かなくてはならないのでしょう。むしろ拝謁すべくあちらから挨拶に出向くのが筋というもの! 

 

「まあ落ち着きたまえ。私とて、何も無用な危険を冒したい訳ではない」

 

 落ち着きを払った様子で片手を上げ守護者の皆様を宥めるネクロロリコン様。我等には考えもつかぬ崇高な御考えがあるのでしょう。皆様も一時口を閉じて発言を待たれます。

 

「まず、この交渉は我等ナザリックとしての初の外交だ。その発言には多大な責任が伴う。たとえ寒村の村人が相手であっても発言を反故にするような事は出来ない以上それなりの立場の者が行かなくてはならない」

「でしたら守護者統括であるわたくしか軍事総括のデミウルゴスであれば」

「君達の能力に疑問は無い。しかしよく考えてほしい、この村に住むのは全て人間種であり、それ以外の種族は今のところ確認されていない。人間種というのは困ったことに異種族というモノを極端に恐れ排斥する傾向があるのだよ」

「それで私やアルベドが候補から外れる、と?」

「そうせざるを得ない。単に異種族であるというだけで交渉が成り立たない可能性が、困ったことに非常に高いのだよ」

「鎧を纏って村に出向くというのは如何でしょう?」

「君は全身フル装備の客人を素直に客間に通すのかね?」

「それは、仰る通りでございます」

「ではわたしは如何でしょう? 見た目は人間と変わりませんえ?」

「……守護者の身分であり人型である君は確かに最低限の条件を満たしてはいる。だが、君に細かい交渉が出来そうかね?幼子と侮られたとき威圧する以外に話を続けさせる手段があるのなら構わないが?」

「それは、その」

「ナザリックの未来を決しかねない大事な第一歩、君に託しても「ネクロさん、そこまでです」」

「! すまなかったシャルティア君。私も少々気が急いていたものでね」

「いえ! 至高の御方が謝られる必要などございません。何も考えず発言したわたしに問題が」

「そうであっても! 自発的な行動に水を差すなど上に立つ者として恥ずべき行為であったと私は考える」

「ですが、「シャルティア? 至高の御方が不問に付すと仰って下さるのです。この度は軽挙な発言であったと反省し次に生かすべきではなくて?」」

「……はいで、ありんす」

 

 あのシャルティア様が竦み上がるとは、軍を預かる将であらせられるネクロロリコン様の眼光はやはり凄まじい。しかし反対なさる御様子が妙に必死でありましたが、いえ私の気のせいでありましょう。ナザリックの未来を真摯に御考えの上で万全を期すべきとの御判断でありましょう。ありがたい事でございます。

 

「私が行くべきという理由は立場や姿だけではない。まず私は姿形をある程度操作できる「シェイプシフター」のクラスを極めている。このクラスのスキルである〈完全人化〉により人間種の土地にも問題なく忍びこむ事が出来るのだ」

「御言葉ですがネクロロリコン様。〈完全人化〉のスキルは御身の吸血鬼としての御力が全て」

「うむ、その通りだデミウルゴス君。しかしあくまで吸血鬼として種族スキルやアンデッド等の異形種専用クラスのスキルが使えなくなるだけの事。それ以外のクラスは全て使用可能でありステータスも、まあこの人間的な状態は著しく劣化しているとはいえ、最上位異形種レベル100のものだ。レベル一桁の村人に後れを取る事は無いし、億に一つの可能性に備えて部隊を配置するつもりだとも」

 

 最悪の場合即座に〈完全人化〉を解いて〈時間逆行〉や〈肉体再生〉のスキルを使えば、たとえたっち・みー様やウルベルト様相手と言えど致命傷を貰う事などない、と語るネクロロリコン様にこれ以上反対の声を上げる者はおりませんでした。

 

「それに私の習得したクラスには「カリスマ」というものがある。これは交渉や対話の判定にボーナスが出るクラスだ。これを使い幾度となく人里に潜りこんで様々なクエストをこなしたものだよ」

 

 人里に潜りこむノウハウ、ナザリックでの立場、「カリスマ」によって齎される交渉の有意性に〈完全人化〉のスキル。ここまで揃っては守護者の皆様も否やを申す者はありませんでした。

 

「では続いてカルネ村に赴く際の護衛について詰めていこうか」

 

 次なる議題に進むよう促すネクロロリコン様の御言葉を受け即座に挙手する者がおりました。

 

「恐れながら申し上げます。その大任、是非ともこのデミウルゴスにお任せ頂きたく」

「ナザリックにおける軍事部門のトップである君以外に任せられる者等いる筈あるまい? 勿論君にお願いするつもりだったとも」

「出過ぎたまねを致しました。申し訳ありません」

「いや、私は先走り過ぎるきらいがあるからね。君の自発的な行動は嬉しく思うよ」

「ありがとうございます。このデミウルゴス、偉大なる将帥にあらせられるネクロロリコン様には程遠い不肖の身ではございますが、全霊を以てこの大任を全う致します! どうかお任せを」

「そ、そうかね?私はあくまで眷族の扱いが上手いだけで軍事の才覚とはまた別問題だと思うのだが……?」

 

 謙遜を仰るネクロロリコン様の御言葉に「また御冗談を」と恐縮するデミウルゴス様。あるいは同じく至高の御方にして盟友であらせられるぷにっと萌え様やベルリバー様を引き合いに出しておられるのでしょうか。私ごときでは想像もつかぬ神々の領域であります。

 

「では具体的な方針だが、君には盟主殿の傍らで全体の指揮を執ってもらいたい。私は盟主殿と常に〈伝言〉で連絡を取り合える状態を維持する予定だ。つまり君は」

「連絡の取れぬモモンガ様に代わり全体への指示を出す役割、という事ですね」

「セバス君も同じく盟主殿の脇に控えて貰ってメッセンジャー兼遊兵として待機となる」

「畏まりました」

「後は私の後方支援に徹する盟主殿に代わり全体を俯瞰し細かな指示出しもデミウルゴス君に頼みたいと思う。一歩引いた位置から見る立場というのは意外と重要なのだよ」

「仰る通りかと」

「待機場所は氷結牢獄でニグレドと共に私の監視を頼みたいと思うのだがどうだろうか?」

「よろしいかと思われます。ではわたくしはナザリックの警備を担当という事でよろしいでしょうか?」

「そうだね、地味な仕事ではあるが」

「同時に重要な御役目であると心得ております」

「最悪の事態に備えて完全装備で待機しておけ。ただし【真なる無】の携行は許可しない」

「畏まりましたモモンガ様」

「次にコキュートス君」

「ハッ!」

「君は遊兵としてデミウルゴス君の指揮下に入り何時でも出撃できるように待機していてくれるかね?」

「オ任セ下サイ、ネクロロリコン様」

「瞬間火力としては君が最強だ。いざ戦いとなった場合戦いを決する物はやはり火力だからね。私はあまり戦いが得意ではないので期待させて貰うよ?」

「畏マリマシタ。至高ノ御方の剣トシテ全テヲ切リ伏セテ御覧ニ入レマショウ!」

 

 瞬く間に陣容を揃えていかれます。眷族の操作が上手いだけだなどとんでもない事です。

 戦力の配分を次々と決めていかれるネクロロリコン様に全幅の信頼をおかれておられるのでしょう、モモンガ様は時折口を挟まれるのみで後は会議の進行を御覧になっておられます。まさに鋼の信頼関係と申せましょう。

 

「それから転移が阻害されている可能性も想定すべきだ。そこでシャルティア」

「はいでありんす!」

「君に私の精鋭騎士団を預ける。カルネ村の北に広がる森に潜み万一の場合はこれらを率いて村に突入、私の救援に来てもらいたい」

「精鋭騎士団と言えば、あの?」

「私の血族の中でも《吸血鬼》として生み出し「騎士」や「戦士」の職を取らせて育て上げた私の主力達の事だ」

「『紅薔薇騎士団』の指揮をお任せ頂けるとは! このシャルティア、この身に代えましても至高の御身をお守りいたします!!」

 

 至高の御身の御力の一部を譲渡する事で生み出された精鋭騎士団『紅薔薇騎士団』。格式高い彼の騎士団の指揮を任されたとあってはシャルティア様の喜びようも致し方ない事でしょう。

 

「アウラ君。君は索敵や隠密能力に長けたシモベ達を連れて森に潜伏しシャルティア君の援護を頼む。良いかい? 森の中は君が本領を発揮する環境だ、シャルティア君も君の指揮下に入れるのでデミウルゴス君の指示に従い確実に任務を遂行してくれたまえ。君の陣地こそが私の避難先であり、君こそが私の命綱なのだと覚えておいてほしい」

「はいっ! 森の中でならあたし達に敵う守護者はいません。お任せ下さい」

「シャルティア君、君はあくまでアウラ君の指示で動くようにね? 独断は許されないという事を肝に銘じたまえよ?」

「は、はいでありんす」

「マーレ君はアウラ君と共に私の避難場所の防衛をお願いするよ。出来れば君達の世話にならなくても済む事を祈っておいてくれたまえ」

「は、はいっ! ぼ、僕達の所に逃げ込むような事態になんてならない方が良いに決まってます! 僕達のことなどお気になさらず、どうか御身の安全を第一にお考えください」

「ありがとう、マーレ君。最後に、あー、パンドラズ・アクター君?」

「ゥ私にもこの大計における出番を! 頂けるのでございますね?」

「お、おう。君には……モモンガさんの所について最終兵器として待機して貰いたい、「ぅえ?!」41人のギルメン全員になれる君ならばどんな状況にも柔軟な対応が可能だからね!」「ちょ!」

「くぁしこまりました! このプァンドラズ・アクター! 如何なる状況であろうとも 万 全 な対応をして御覧に入れましょう!!」「「ふぉお!!」」

 

 パンドラズ・アクター様のやや大仰過ぎる対応を御覧になり至高の御方々も気力が充溢されたご様子。これは我々ナザリックのシモベ達は皆が参考にするべき行いなのでしょう。そうに違いありません。

 

 かくして守護者の皆様総出の作戦の概要がついに完成いたしました。

 私も先遣隊として日の出とともに【影狼】の皆様と交代して村の最終チェックを行う作業に入る事が決まっております。更に明後日の作戦当日は村に潜みネクロロリコン様の直近で近衛としてお守りする事も仰せつかっております。なんという大役でしょう。全体の指揮を執るデミウルゴス様にも劣らぬ大任と自負しております。

 

「では作戦決行は明後日の朝方。皆はそれまでに部下の選別や地勢の把握等の準備を十分に行っておくように。これは我が盟友ネクロロリコンさんの命にかかわる事だ。油断も慢心も妥協も一切許さぬ! 良いな?」

「「「畏まりました!」」」

 

「では私達は作戦の細かい打ち合わせを行うので先に行く。お前達の働きに期待している」

「この世界における最初の第一歩だ。皆で栄光へと歩みだすとしよう」

 

 最後に激励の御言葉をかけて転移される至高の御方々を見送り皆様慌ただしく作戦に必要な物資や人員の整理を開始されました。

 私もデミウルゴス様やアウラ様へ挨拶を行うと同時に当日の打ち合わせを行い、少し早めにカルネ村へと出発、【影狼】の皆様と当日の警備担当箇所などの打ち合わせをしなくてはなりません。

 至高の御方々の御期待を裏切る事だけは死んでも許されない事なのですから。

 

 




という訳で漸くカルネ村に行けます。
7話でカルネ村とかちょっとどころじゃないスローペースですね・・・でも会議シーンを挿んでやらないと情報をかき集める上に慎重すぎる二人組は行動が取れないのです。

某守護者の扱いについては、ネクロロリコンが同士と呼び特に親交のあったギルメンが作ったキャラと言う事もあって設定もよく知っています。そしておそらく作り手に似るのではという疑惑もあるのでやや扱いが慎重です。

さて、次はついに戦闘です!
漸く書けます、どうぞお楽しみに!

あ、いや、やっぱり程ほどでお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。