墓守達に幸福を   作:虎馬

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 鮮血帝が戦っていたかもしれないリ・エスティーゼ王国軍+α。そのαの解説がメインです。

 え、おまけが本体だって? 食玩みたいなものですよ。



 12/29 23:40
 誰の視点が解りにくいとの御指摘を受け、少々修正しました。少しは解りやすくなったかと思いますが、腕不足です申し訳ない。
 ついでにブレイン道場の門下生を追加しました。


38.軍備

 ナザリック第6階層。

 一般メイドの一人コンストラクタは今日も一人、剣を振り続けている。

 

 かつてはもう二人の同僚達と共に鍛練を積んでいたが、多くの人間達が武技を習得できる方法では上手くいかなかった為、今は彼女が一人でシモベ達の武技習得の可能性を探っている。

 

 余人であれば彼女の境遇を憐れんだ事だろう。低い可能性を試し続けるだけの日々を送る哀れなシモベであると。

 しかしそれは違う。武技の習得は困難であると中断を決定した至高の御方々に直訴し、彼女は自ら志願して今の境遇にいるという。

 

「まだほんの数カ月の成果でございます。結論を下すにはあまりにも時期尚早かと」

 

 武技習得の計画を一時凍結し、薬品製作等の仕事に配置変更を申し渡された際に彼女が至高の御方々にこう言い放ったという。

 

「これまでの方法が私達に合わなかった、それが判明したにすぎません。何より、人間達は早くても武技の習得まで1年はかかると聞きました。ならば、ナザリックのシモベに出来ないと判断するには早すぎましょう!

そもそも出来ないという言葉はうそつきの言葉なのです!! 100回試してダメなら1000回! 1000回でダメならば10000回試すのです!! 出来るまで! 何度でも!!」

 

 至高の御方々の決定に異を唱えるなどシモベの分を超えた嘆願であったが、彼女からすれば全てのシモベの価値を下げる結果を残す事がどうしても我慢ならなかったのだろう。

 御方々はその熱意を認め、ネクロロリコン様もかつての御盟友の姿を見ておられたのか、

 

「よく言った! その意気やよしッ!! ならばお前にナザリックの武技習得、その可能性を賭ける。お前が必要と思う事を、存分に試すがいい! その果てに武技の習得が不可能であると、お前が判断したならば。俺はお前の言葉を信じよう!!」

 

 と送り出されたという。

 

 それから、彼女はひたすら剣を振り続けていた。

 正確には「剣」ではなく「棒」にカテゴライズされるほぼ全ての種族・クラスが使用できる武器ではあるが、そんなことは瑣末事である。

 

 腕が上がらなくなるまでひたすら剣を振り、腕が動くようになるまで休憩の後また振り続けた。そんな過酷な日々を暫く続けた頃、一人の人間が見かねて声をかけた。

 

「ただ我武者羅に振ったってダメだ、型が崩れちまうぜ? 〈斬撃〉の武技なら何度撃っても同じ軌道、同じ速さ、同じ威力になるもんだ。そんなバラバラじゃあ上手くいきっこねえぜ」

 

 ネクロロリコン様が地上で拾ってこられた武技を扱う人間だった。

 ナザリックの人員を使いにくい地上での戦闘における切り札、その予定であると言われている。

 

「申し出は大変ありがたく思いますが、御自分の鍛練は宜しいのでしょうか、ブレイン・アングラウス様」

「俺ももう一度武技の基礎からやり直したいと思っていたところでな。お邪魔じゃ無けりゃ、ちょっと付き合ってくれないか? それから俺はブレインで結構、ここじゃあ俺は最底辺だと自覚してるからな」

 

 基礎からやり直したい、その人間の言葉に偽りは無かったのだろう。剣の型を繰り返す様は真剣そのものであり、コンストラクタにも同様に無駄な力を込めず最適な振り方を指南していた。

 しかし二人きりの修行風景はあまり長くは続かなかった。

 

「武技って奴はさー、全身の力を必要な場所に集める技術な訳よ。あたしの国ではそう教わったし、あたしも全身に力を張り巡らせて〈能力向上〉を使ってる感じだしー? れべりんぐが出来ないってんなら、ひたすら体を鍛えるしかない訳よー」

 

 試行錯誤を繰り返す二人に声をかける事が出来るのは、やはり独自の武技を有する女くらいのものであった。ネクロロリコン様扮するブラム・ストーカーに脅威を感じることが出来るその才覚を買われ、このナザリックに招かれたと聞いている。

 こちらは後ろ暗い過去がある為表立った活動には使えないそうだが、それでも暗部に関わる仕事を任せる可能性があるという。

 

 岩を持ち上げては下ろす。岩を背負って走る。あるいは岩を背負ったまま屈伸を繰り返す。

 傍目には愚かしい儀式にしか見えないが、武技の習得には有用なのだろう。男の剣士もコンストラクタも真剣な面持ちで繰り返している。

 汗を流し、荒い息を吐きつつひたすら繰り返す。

 その頃には、【骸骨の戦士】達も同じ鍛練を行うようになっていた。

 

 その光景を愚かと断ずることは容易い。

 意味の無い行為に違いないと、徒労であると。

 

 しかし、恐らくナザリックのシモベにそのような思考をする者はいないだろう。御方の御命令であるという事もある。彼女が自らが志願した事でもある。だが最も重要な事は、『シモベ全ての可能性を背負っている』という事実であろう。

 

 コンストラクタが武技を習得したところで、はっきり言って戦力として数える事は出来まい。所詮はレベル1のホムンクルス、多少鋭く速い斬撃を放とうともプレアデス程度の相手にすら通じまい。階層守護者や御方々と同格のプレイヤーからすれば誤差にも感じない事だろう。

 

 しかし、それはあくまで彼女一人が武技を習得したときの話である。

 

 彼女以外、それこそ最強のシモベたる第1~3階層守護者シャルティア・ブラッドフォールンが武技を習得したならば大幅な戦力の向上を齎す事だろう。これは御方々により一層御奉仕する事が出来るという事に繋がる。シモベの価値を更に高める事が出来るのだ。その可能性を摘みとる事など、シモベたるもの到底看過できる事ではない。

 

 

 

 そこまで思考して、コンストラクタの護衛と監視を行っていたエントマは改めて自らの罪の重さを思い知る。

 

 シモベの価値を、可能性を御方々に示す。

 それを目的とした作戦を台無しにしかけた愚昧極まる失態。それを演じたという事実が胸を抉る。

 

 更には、御方々の御友誼に罅を入れかねない事態を引き起こしながらも無様に震えるしか無かったという醜態までも演じている。

 

 守護者統括たるアルベド様からは、硬い口調で「次はありません。もしも次があるならば、御方々の御命令を待つことなくこの手で不和の種は排除いたします」と釘を刺されている。言われるまでも無い、むしろその場で排除して欲しかったとすら思ってしまう。

 迷惑をかけてしまったデミウルゴス様にも謝罪をしたが、「御方々が赦されたのだから、私から言う事は何もないよ」と突き放されてしまった。

 

 現状は他のシモベ達からも腫れものを触るように扱われているし、一部のものからは嫌悪感すら含まれた眼差しを送られる日々を送っている。

 勿論これについては異論など無い。自分も同じ対応をする事だろう。これは仕方ないし当然だ。

 

 耐えがたい事は、自身ほどではないにせよ、他のプレアデスメンバーが僅かとはいえ同じ視線を送られている事だ。

 自身の失態によって、優秀な仲間達が無能扱いを受けかねないこの状況が、たまらなく悔しいのだ。

 

 第6階層における人間達の監視役。

 それが外部に赴く事の出来なくなったエントマの主な任務である。

 

 勿論コキュートス様やマーレ様が常駐するこの階層においては、貧弱な人間達が反乱を起こそうとものの数分で鎮圧される事だろう。ならば優先すべきは何かと考えた結果、コンストラクタの護衛の為に鍛練の様子を眺めているのが現状だった。これ以上の失態はとてもではないが赦されるものではない。

 何より、自分で自分が許せない。

 

「コキュートス様にお願いして金を加工していただいたこの輪っか。この輪っかを紐で通して腰に巻いてやることで、体に負荷をかける事ができるわけ。首輪や腕輪も作っていただいたから、取敢えず使ってみましょうかねー?」

「おっ、これは中々」

「はい! これなら同じメニューでもより効率的に負荷をかける事が可能かと。感謝いたします、クレマンティーヌ様!!」

「まああたし用に作っていただくついで? みたいなもんだからー、あんま気にしないで頂戴。まあ、でも? もし感謝の気持ちがあるならー。武技を習得できた最大の功績はクレマンティーヌ様でした、とかって至高の御方々に説明して頂ければと思う訳よ。解るー?」

 

 浅ましい。

 醜く浅ましいが、そんな彼女は自身よりも遥かに御方々の御役に立てているという事実が一層重くのしかかる。

 少なくとも体系的に武技の習得を説明できる唯一の存在なのだ。至高の御方々に作られながらも御役に立つどころが仲間の足を引く事しか出来ない自分よりも遥かに価値がある。

 

―――お前の様なモンスターを傍において喜ぶものが居るとは思えないが。

 

 ふと、あの忌々しい日に言われた言葉を思い出し背筋が凍りつく。

 腸が煮えくりかえる以上に、背筋が、指の先が、頭の先が冷たくなっていくように感じる。

 

―――貴様ァ! デミウルゴス達が必死になって準備したこの作戦を! そんな下らん理由で台無しにしようとしたのかァッ!!

 

 連鎖的に脳裏に蘇る叱責のお言葉。

 

 ふとした拍子に脳裏に鳴り響き、その度に思考は停止し体が硬直する。

 恐怖からではない。勿論恐怖もあるが、それ以上に申し訳無さと情けなさ、そして己の不甲斐なさに目眩がするのだ。

 もしも過去を変える事が出来るならば己の存在ごと抹消したいとすら思うほどに。

 

 そんな思いを振り切るように、エントマもまた重しを持ち上げる。

 戯れに人間達のまねをしているつもりはない。手慰みのつもりもだ。

 武技の習得の可能性を追求するものがもう一人位いても良いだろうという判断である。

 

 勿論任務に支障が出ない様にある程度の加減はしている。心底歯がゆいが、そこは取り違えたりしない。

 

 

 

 ナザリック第6階層「ジャングル」。

 今日も武技の可能性を探る者達は汗を流す。

 

 

 

 

 

 正式にブラム・ストーカーの領地となったカルネ村では、遂に本格的な軍事調練が始まっていた。

 

「エ・ランテルでカルネ村の地位向上の為に活動しているエモット嬢に代わり、本日より諸君等の調練を手伝う事となった、そうだな、レオ教官と呼ぶが良い! 余にかかれば農兵とて正規兵以上の戦果を叩きださせて見せよう!!」

 

 レオ教官が着任してから、農作業をブラムが手配した作業員に任せた村人たちはひたすら弓を番える日々を送っていた。腕力のある男集は身長以上の大きさをした長弓の扱いを、腕力の無い他の者達はクロスボウを素早く正確に扱う技術をひたすら磨いていた。

 

 彼等の仮想敵はかつて村を襲った帝国騎士団である。

 

「諸君等は村を野獣から護る程度の武力を得れば満足か? ならば堀を深く、塀を硬く高くすれば事足りよう。本来農民である諸君が弓の腕を鍛える必要などないのだ。しかしリ・エスティーゼ王国の一都市であるエ・ランテルの一部にすぎないこのカルネ村は、ともすれば別の支配者の統治下に置かれる可能性がある」

 

 レオ教官が最初に語ったのはカルネ村の未来の姿であった。

 

「君達は選ぶ事が出来る。リ・エスティーゼ王国の国民としてランテア伯爵の領民として生きるか、この地を武力支配した別の誰かの領民として生きるかを」

 

 つまりは誰の支配下で生きていきたいか、という問いかけである。

 言いかえれば、ランテア伯爵の領民でいる為に必要なものは何か? という話でもあった。

 

「諸君等は己が武力を以て未来を勝ち取ると選択した。つまりは己が支配者を自ら選ぶ事を選択したと言える。ランテア伯爵を選ぶも良し、王国国王の統治に戻すも良し、帝国に内応するも良し、自ら武装蜂起して独立するもよしだ! 無論主君は諸君等の選択を尊重したいとの仰せである。皆が良いようにして欲しいと、承っている!」

 

 自らの身を護る為に力を求める村人達に、レオは本当の意味で村を護る方法を伝える。

 ただ村を襲う存在を打ち払うだけでは不足だと、村の発展を保障してくれるブラム・ストーカーを領主たらしめる武力こそが必要であると。

 

 それからの村人たちの行動は迅速であった。

 彼等はブラム・ストーカーの統治下に残るために、あらゆる手段を尽くす事を決めたのだ。

 即ち村の救世主であるブラム・ストーカーの兵として戦場に赴く為に必要な武力、弓の扱いを貪欲に吸収することを選択したのである。

 

 帝国と王国の戦争は毎年行われている。つまりブラムが自らの支配者となった今年も帝国と戦争を行うという事だ。

この戦争で万に一つでもブラムが敗北すれば領土の割譲が行われ、カルネ村が帝国領となる可能性もあるという事になる。それを避けたいなら自らが戦況を変える一助となるしかない。それが最終的に村を護るという事なのだと、村全体で認識を共有したのだ。

 

「焦って撃つな! しっかりと敵を引き付け、必殺の間合いで……〈一斉射撃〉!!」

 

 今日もカルネ村の人々は弓を構える。

 『均衡を失った』トブの大森林から溢れ出たモンスターを相手に、あるいはブラムの配下が追い立てた獲物達を相手に、ひたすら弓の腕を鍛え続ける。

 毛皮と分厚い筋肉の鎧を貫く程に強く。駆ける獣の瞳を射抜けるほど正確に。戦場で「敵」を討取るそのときの為に。

 

 

 

 

 

 帝国との戦争に備えているのは地上の人間達だけではない。

 このナザリックにおいても、やはり重要案件の一つとして扱われている。

 

 勿論脅威として扱っている訳ではない。単にどのように対処するのが最も効率的かということを議論しているにすぎない。

 

「『公爵』、パラダインとやらの印象はどうであった?」

「はっ、彼の人物はデミウルゴス殿の予想通り魔導の探求こそを第一としており、帝国における地位や肩書には頓着しておらぬ様子。彼に吾輩の魔力を見せたところ……あー、御方々への忠誠を誓っておりました」

 

 「聖騎士」等といった上位の信仰系魔法詠唱者クラスを所得している『公爵』は、能力擬態の指輪を外した後に起こった出来事を思い返し僅かに顔を顰める。

 

『吾輩は至高の御方々にお仕えするものにして、偉大なる神祖より血と力を授かりし者。ドラキュリア(竜の子)! ブラド・ツェペシュである!!』

 

 名乗りを聞いたフールーダが平伏し忠誠を誓うまではまあ良かったのだが、狂気に眼を血走らせてにじり寄り靴を舐め始めた時は反応に困ったものだ。一先ずモモンガ様達御方々が自ら出向かれなかった事に安堵するしかなかった。

 秘密裏に、かつ速やかに面会できるように連れて来ていたブレインが慌てて引き離したが、あのまま放置していたらどうなっていたか。お互いにとって不幸な未来しか浮かばない。

 

 前もって報告を聞いていたネクロロリコンも微妙な顔をしていた。

 

「その……ご苦労だったね? しかし君の御蔭で無益な戦争は回避できる可能性が高まった。正直な話、人間同士の小競り合いに時間も金もかけたくは無かったものでね」

「御用意していただいた『若返りの霊薬 Lv.30』も、大きな衝撃を与えた模様です」

「ああ、確かネクロさんが偶然思い出して指示を出したのだったか?」

「うむ、ドクターの調合が成功して良かった。同レベル帯同種族の血液を精製することで稀に調薬できるが、彼に近いだろうレベルの人間は多くいなかったのでね」

「この辺りは、日頃の行いの良さが出たのだろう。私も老化のバッドステータスについては失念していたからな」

「人間達を迎え入れ、レベリングを行わせた御方々の御采配の賜物かと」

 

 実際のところ龍種の血液なら高確率で精製出来るのだが、あいにくと現地では手に入っていないため分の悪い賭けであった。

 しかし結果として不老不死という究極の飴を手に入れたという事になる。

 

「一先ずこれで帝国の首根っこを押さえる事が出来た訳だな。それもかなり長期的に……念の為に用意していた装備は無駄になってしまったが」

「オリハルコン製の長槍と円形盾でしたか。現地の者達に与える御積りだったのでしょうか?」

「まあな。久しぶりに本領である大軍の指揮が出来るかと思っていたのだが、まあ使わなくても良いならそれに越したことは無いだろう。流石の私も数万対数万のマスコンバットを損害なしで終わらせるのは難しい。勿論、欠片も負ける気はしないがな!」

「ええ、何と言ってもネクロさんは地上の集団戦では無敵ですからね! その腕前は一部のクエストボスですら圧倒する程に!!」

「「「おお!!」」」

「いや、敵が貫通属性の飛び道具を持たなくて空も飛ばないという前提が無いと蹴散らされてしまうがな? 殆ど趣味の域というか、上手く決まった大物はホンの数体しかいないし……」

「つまり御方々をして大物と呼べるほどの相手であっても、条件次第では一方的に蹂躙してしまう事が出来るという事ですか」

「宜しければどのような手法なのか、御教授していただけますでしょうか?」

 

 用途の限られる技術ではあったが、良い機会だからと連携の一例としてモモンガは解説を始める。支配者の地位をより強固なものとするために。

 

「難しい事は無い。私が〈サモンアンデッド 10th〉で展開した【不死の重装歩兵隊/ネクロホプリテス】の大軍をネクロさんが率いて、地対地最強の陣形戦術〈密集陣形ファランクス〉を発動する、言ってしまえばそれだけの事だ。ただしネクロさんの陣形戦術は唯のファランクスではないぞ? マケドニア式ファランクスを更に改良したネクロロリコン式ファランクスだ! これでネクロさんは屍の山を築きあげたのだ!!」

「「「おおおお!!!!」」」

「いや、まあ、確かにアレは圧巻だったけども。あくまで二人の共同戦果というか、「ネクロマンサー」として優秀なモモンガさんの御蔭というかだな」

「コレが至高の連携!」

「やはり至高のゥ御方々は三千世界にて最強ォ……!!」

「向かうところ敵なしでありんす!!」

「えーと、そうだ! 周辺国家について今のところどれだけ解っているのかね?」

 

 脱線し始めた話題を強引に戻すネクロロリコンだったが、流石にデミウルゴスは素早く反応する。

 

「はい。法国につきましては御指示がありましたので手を出しておりませんが、隣接しうる聖王国と竜王国についてはある程度情報が集まって参りました」

 

 デミウルゴスは次々と各国家の内情について解説して行く。安定している聖王国と違い、ビーストマンの侵攻を受け続けている竜王国の情報がやや多い。

 

「ふぅむ、竜王国は随分と危険な状況のようだな」

「ああ、周辺国家がこの窮状を知れば派兵を考えるだろう。……まともな感性であれば、だが」

「ええ、ですので先んじて出兵をすることでランテア侯の存在感は更に増す事でしょう」

 

 竜王国に対するビーストマンの侵攻。

 帝国による王国侵略の可能性が低下した今、エ・ランテルの武力を周辺各国に示す場はここしかない。ブラム・ストーカーの武威を示す為にはやはり戦場こそが必要なのだ。

それは支配下に置いた王国の様な人間国家ではなく、他種族の国家で、更には王国にとって脅威になる様な存在であるならなおよい。

 

 こうして、エ・ランテルを敵に回す事の危険性を周辺国家に示すために、ビーストマンを蹂躙する方針が決まる。

 

 続いて竜王国との繋がりの薄いリ・エスティーゼ王国から出兵する大義名分をえる方法と、ビーストマン軍の戦力分析について会議が推移して行く。

 ゆっくりと、しかし確実に『ブラム・ストーカー』の勢力圏を広げるために。

 

 

 

 この会議が催された数日後、竜王国ではブラム・ストーカー伯爵の噂が流れ始める事となる。

 それから竜王国女王からエ・ランテルのブラム・ストーカーへ宛てた親書が届くまで、長く待つ事は無かった。

 

 こうして竜王国への救援要請の手紙をブラム・ストーカーが手に入れる。

 ビーストマンに対する『虐殺許可証』が、ナザリックに渡った瞬間であった。

 




 という訳でαの解説と次回の導入でした。

 ちなみに王国軍の兵力は
王国正規軍:ガゼフ将軍以下正規兵五万+レエブン侯私兵(元冒険者+軍師)
エ・ランテル義勇兵:ブラム伯爵以下五千(ファランクス陣形&経口薬投与)+軍狼(リーダー5+軍狼20)+レオ教官以下狩る根弓隊80(強化改造済)+炎莉混成部隊(ゴブリントループ+ゴブリン20+オーガ15+トロール8+吸血鬼+ウォートロール+ホブゴブリン)+英雄化ブレイン

これと帝国が戦った場合、某人物の毛髪と騎士団が消えます。そして主席宮廷魔法使いが正式に引き抜かれます、髪の毛と一緒に。

しかしこれだけいても原作版覇王炎莉将軍閣下には勝てないという絶望感たるや。



 次回より『竜王国編』開幕です。

 図らずもナザリックを敵に回してしまったビーストマン、彼等はこの先生きのこる事が出来るのか?!

言うまでもありませんが、次回から本格的に原作にないお話になります。そのため登場人物も各種設定もオリジナルばかりになる事を予めご了承ください。
竜王国のキャラとか濃そうな割に描写が少なすぎるし、ビーストマンに至っては容姿と強さしか出ていませんので独自解釈というよりもはやオリジナルです。
 やりたい放題ですね!(オリ主入れておいて今更ですが



 以下何時ものオリジナル設定など。興味の無い人は以下略



コンストラクタ
 一般メイドの一人、ヘロヘロ製作。
 頑張りすぎて何時でも「へろへろ」だった作者の魂を引き継いで不屈の精神を持つ。スポーティーな容姿により武技習得に挑戦を命じられた。
 彼女の努力の成果は何時か幕間で・・・。

 剣と棒
 「棒」系統の装備は杖、槍、剣の性質を持つ特殊な装備であり、凡そ全てのクラスが装備する事が出来る。勿論各系統のスキルも発動可能。所得経験値にもボーナスがある。
ただし重い割に脆くて弱い。魔法詠唱者が魔法剣士になる、異形種が効率的に戦士職を取るなどの目的に使われていた、というオリ設定。

 レオ教官
 ネクロロリコンの血族の一人、下級吸血鬼の弓隊を率いて戦う際に連れて行った弓隊指揮特化型な真祖。
 弓隊は貧弱な下級吸血鬼をどうすれば使えるかを考えた結果、安全圏から強力な弓を撃たせれば良いという考えの下作られた射撃特化部隊。モモンガと二人でパーティーを組む事が多かった為、ユグドラシル末期ではあまり出番が無かった。
 弓系統の装備は使い捨ての矢を使用する場合弾数制限もあってレベルの割に威力は大きい、というオリ設定。
 多分出番はもう・・・。

 『公爵』ブラド・ツェペシュ
 地味に第2話の頃から出ていた最上位血族の聖騎士。
 上位異形種の高いステータスを生かすために魔法戦士としてのビルドになっており、主にバフ系魔法を習得している。そのため集団戦では主に彼が採用された。

 聖騎士
〈司祭/クレリック〉→〈バトルクレリック〉→〈聖騎士/パラディン〉みたいな感じで肉弾戦よりの魔法戦士ではないかと予想。逆にラキュースの〈神官/プリースト〉→〈ウォープリースト〉→〈神殿戦士/テンプラー〉が魔法中心な魔法戦士かと。
神官系は戦士職に次ぐ肉弾戦能力があり、盗賊などより強い(原作設定)とのこと。

若返りの霊薬 Lv.~~
マイナーバッドステータス「老化」を治療する為に必要なアイテム。「老化」は一部の特殊ステージに居続けるか、【死の支配者の時間王/オーバーロード・クロノスマスター】等の時間系上位モンスターと戦うか、〈成長促進〉などの経験値上昇系魔法を使い続けると陥るバッドステータスであり、普通にプレイしていたらならない。
「老化」レベル1から能力の微低下が起こり、最終的には死亡する。一度なったら生き返っても老化は回復しないという最悪のバッドステータスであり、基本的に邪神系の教会に行くか仙人に会うか秘術士に頼まないと回復できない。
転移後の世界では普通に時間経過によって老化して行く為、やってきたプレイヤーにとって最大の脅威となった。仲間割れをした八欲王も・・・というオリ設定。

 陣形戦術
 「将軍」等の指揮官型クラスが習得できるスキル。
 一定数の仲間を一つの群体ユニットとして扱い各種ボーナスを与える事が出来る。仲間のプレイヤー等を組み込めば勿論一緒に強化が可能。
 地上系の陣形は嵌れば強いが空中からの爆撃や魔法による範囲攻撃に弱い為ボーナスの高さの割に習得する者は少ない、というオリ設定。

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