墓守達に幸福を   作:虎馬

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色々書いていたら過去最長です。

ギルメン至上主義    過準備     御方マンセー
  モモンガ   ×  ネクロ   ×  守護者達   = ?



23.軽挙さの代償

 ナザリック地下大墳墓に使えるシモベの1人鋼の執事セバス・チャンは、現在未曽有の窮地に立たされていた。

 そのきっかけは路地裏で拾った死にかけの女性、ツアレである。

 正確に言うなら困っている人を助ける事を是とする彼の思考がそもそもの原因であり、もっと言えば彼の創造主にしてギルド:アインズ・ウール・ゴウン最強の男たっち・みーへの憧れが引き起こした悲劇と言うべきだろう。

 何にせよ絶対の支配者から目立ち過ぎない程度に宝石を売り込み金銀やマジックアイテムを買い集める事を命ぜられた彼が、独断により不要な問題を抱え込んでしまった事は厳然たる事実として受け止めなくてはならない。

 

 支配者の片割れ、吸血貴族『ネクロロリコン』様の供としてエ・ランテルで活動しているときは何も問題は無かった。むしろ高い評価を得ていたのではないだろうか。

 主人の手足として日々仕える傍ら、その名声を高めるべく市井の民と交流を深め、時に酔漢に襲われる若者を助け、時に重荷を背負う老人に手を貸し、細やかな気配りで名声を高めるお手伝いをしていた。その働きぶりを高く評価されたからこそソリュシャンと僅かな【影の悪魔】、【影狼】達を供にして王都への潜入を命ぜられたものと自負している。

 だというのに、単独で行動を取るようになった途端この有様である。

 

 明らかに虐待を受けた形跡のある女性をまるでゴミのように扱い廃棄しようとしていた現場に出くわし、本能の命ずるままに助けたセバスに後悔はなかった。ただ厄種になるだろうという推測はあったが、速やかに治療して寒村に送れば良いだろうという楽観もあった。

 しかし、その結果奴隷売買を行ったという事にされてしまい、王国の法を利用した強請を相手に許すという結果に至ってしまった。

 ツアレを最後まで守ろうとした己の愚かさにより更に相手に足元を見られるという不覚まで取ってしまっている。王都で最も強力な地下組織である『八本指』がバックに付いた連中による強請とあっては簡単には解決できまい。

 それこそ骨までしゃぶられる様子が目に浮かぶようだ。

 

 現状の再確認を終え、大きく息を吐く。

 先ほど偶々であった少年騎士との出会いの御蔭で幾許かの精神的余裕が出来たセバスは、屋敷に戻り次第至高の御方へ洗いざらい報告する覚悟を決めた。口惜しいが既に自分1人で解決できる領域を超えている。自分の勝手な行動によりこれ以上御方々の崇高なる計画に支障が出る事は許されないのだ。

 

 

 恥を忍んで助力を請う覚悟を決めたセバスであったが、屋敷に到着した瞬間全てが手遅れである事を悟る。

 彼の鋭敏な感覚が捉えてしまったのだ、拠点として使用している屋敷に蠢く中位アンデッドの軍勢を。

 この気配は恐らく吸血鬼、そしてまとまった数の中位レベルの吸血鬼の集団となると、

 

「ネクロロリコン様直轄の精鋭騎士団『紅薔薇騎士団』……!」

 

 屋敷の内部に散開させるようにして布陣している事が気配で解ってしまう。

 勝手な行動を取ってしまったセバスへ詰問するためだけにしてはあまりにも過剰戦力であろう。

 その上でこれほどの陣を敷いている事は、セバスがツアレを守るために反旗を翻す可能性を考慮しているという事に他ならない。

 

 全身が氷水で浸されたような寒気に襲われる。

 

 至高の方々に忠誠を誓い御役に立つ事こそが生きる意味と言っても過言ではないナザリックのシモベにとって、己の忠誠を疑われるという事がどれほどの衝撃か。

 

 震える手足を鋼の意思で捻じ伏せ、屋敷の扉を開く。

 

「おかえりなさいませ、セバス様」

 

 正装であるメイド服を纏ったソリュシャンの出迎え、この時点で屋敷に御方がお越しになっている事が確定した。

 ガチガチと無様に震える奥歯を噛み締め全身に活を入れる。

 これ以上の醜態をネクロロリコン様にお見せする訳にはいかないと奮起するセバスの心は、

 

「―――セバス様、モモンガ様とネクロロリコン様が奥でお待ちになっておられます」

 

 早速へし折られかける事となる。

 

 

 屋敷の奥へと案内するソリュシャンに付き従いセバスも屋敷を歩く。

 屋敷の内部に配備されているのは間違いなくレベル60程度の吸血鬼達、即ちネクロロリコン様手製の『紅薔薇騎士団』に相違ない。

 そして時折部屋の内部に感じる一回り強力なアンデッドの気配はネクロロリコン様から契約と共に特別な力を与えられた《真祖》達であろう。

 

 ナザリックの偉大なる支配者2人が同時に外部へ出向くと言うならば、万に一つの危険にも対処できるよう万全の陣を敷くのは当然である。

 用心深いネクロロリコン様であればある程度安全の確保がなされた土地であっても、盟主であるモモンガ様の身を案じて精鋭騎士団を動かす事も辞さないはずだ。

 ましてや打撃と気功を主武器とするレベル100の龍人が仮想敵であるならば、と震える体を押さえつつセバスは思考する。

 

 やはり助けた人間の娘に情が移った結果ナザリックに反旗を翻すに至ったと想定しているのだろう。

 つまり自分は今現在反逆者とみなされているのだと、忸怩たる思いで結論付ける。

 

 ナザリックの為に命を使い潰す事はこれ以上ない誉である。

 そして同時に、反逆者として処されるなどナザリックのシモベにとっては考えうる限り最悪の最期だと言って良い。

 

 

 しかし支配者達の下に辿り着いたとき、自分で思い描ける最悪など現実は容易く凌駕する物なのだとセバスは知る事となる。

 

 

 応接間の扉を開いてまず飛び込んできたのは部屋の奥で椅子に座るナザリックの最高責任者モモンガ、そしてその傍らに立つ現ナザリックのナンバー2ネクロロリコンであった。

 しかもネクロロリコンは普段の老人然とした姿では無く、生気に満ち溢れた青年風の姿、所謂第2形態でその場にたたずんでいたのだ。

 普段の第1形態では大幅に弱体化している筋力・魔力・敏捷が本来のステータスに戻ったこの状態は紛う事なきネクロロリコンの戦闘態勢であり、その姿を取っているという事だけでも彼の本気度合いを如実に物語っている。無防備に座る事すら避けている念の入れようだ。

 2人の支配者の脇を固めるのはネクロロリコンがただ2人のみ作り出した《始祖》達、その背後に更に2人の近接戦闘用の《真祖》達が控える。

 またネクロロリコンの足元の影にも何者かの気配を感じるが、おそらく彼女はわざと気配を悟らせているのだろう。何が起ころうとも主人を守り切るという絶対の自負を以て。

 

 無論それだけでは無い、セバスの両脇からも殺気が放たれている。

 

 1人は守護者最強の座に君臨するシャルティア・ブラッドフォールン。

 完全武装の彼女は自慢の神器級装備『スポイトランス』を砕かんばかりに握りしめ、隠す気のない剥き出しの殺意をセバスに叩きつける。

 

 1人はナザリック随一の知恵者デミウルゴス。

 憤怒を含む幾つかの感情を押し殺すようにして、しかし殺意を隠す事のないそのあり方は普段のいがみ合いは所詮お遊びでしかなかったという事を如実に示す。

 

 1人はデミウルゴスの腕に抱かれるヴィクティム。

 万に一つの事態に備え、自らの命を使いその忠誠を示さんとセバスの一挙手一投足に意識を配る。

 

 この状況に比べたならば、針の筵はさぞかし居心地の良い事だろうと思わず嘆く。

 

 本当に恐れるべき事態とは、忠を疑われた先にある本当の恐怖とは、セバス1人が究極の侮蔑を以て死を賜る程度では済まないのだと今更ながらに気がついてしまったのだ。

 

 忠誠を捧げる主人に疑惑の目を向けられる事も、まだやむを得ない事とあきらめがつく。

 いっそ自分が不忠者として処刑されるだけで済むならどれだけ気楽であったかと己の不明を恥じ入る思いにすらなった。

 

 

 至高の方々は、ナザリックのシモベ達、その全ての忠誠に対して疑惑を持ってしまわれたのだ。

 

 

 至高の方々の脇を固めるのも、背中を守るのも、更に言えばこの屋敷で防衛を任されているのも全てがネクロロリコン様の力を分け与えられた血族であり、仮に今ここにいるナザリックのシモベ達が一斉に蜂起したとしても十分に対処できるだけの戦力が動員されている。

 つまりその可能性を考慮する程にナザリックそのものの信頼が失墜しているという事になる。

 

 シャルティアの殺意は、つまるところナザリックの汚点を今すぐ抹消する事で己の曇りなき忠誠を示したいという渇望の表れであり。

 デミウルゴスの抱く憤怒以外の感情とは、支配者達に不要とみなされた結果辿る支配者無きナザリックの未来に対する恐怖に他ならない。

 

 普段は絶対の忠誠を示しているナザリックのシモベの一角であるセバスも命令に反する事があるという悪しき前例が、今出来上がりつつある。

 そしてその結果ナザリックの全てに対する信頼が無に帰そうとしている。

 

 本当の意味で今の立場を理解したセバスは全身が凍て付いたかのような寒気に襲われる。

 全身から汗が吹き出し、呼吸もままならない。

 しかし、落ち着きを取り戻す時間は与えられない。

 

「セバス君、我々が何故ここにいるか、説明した方が良いかね?」

 

 平坦な声色で訊ねるのは慈悲深くも敵対者への苛烈さを持ち合わせたネクロロリコン様。

 半ば恐慌状態にまで陥りかけたセバスの全身に御方への忠誠からくる活力が蘇る。

 これまでの失態は未だ取り返しがつく。御方々への不忠では断じてないと、今ここで示さなければ本当の最悪が襲いかかってくる。

 裏切り者として処される以上の最悪、即ち『見捨てられる』だ。

 何もせず、ただナザリックを去られるという、これ以上ないほどの地獄だけは何としてでも回避しなくてはならない。

 

「いえ、必要ございません。全ては私の愚かさにより引き起こされたものでございます」

 

 まず表明すべきは愚かさによって引き起こされたという事だ。

 断じて至高の方々へ異を唱える気は無いと。

 

「愚かさ、か。では何を為したのか、順を追って説明して貰えるかね。如何なる理由・心境から来たものか。君の口からも聞いておきたい」

「畏まりました」

 

 普段から王都の地理を把握すべく独自の判断で散策をしていた事。

 その最中にゴミのように打ち捨てられる人間を見つけ、助けを求められた事。

 自身の創造主であるたっち・みー様への憧れから、面倒事になる事を承知で助ける事を決めたが、発覚する前に寒村に逃がしてしまえば良いと甘い考えを持っていた事。

 助ける際に高額を渡してしまったため、背後の組織に目を付けられた事。

 金銭を以て人手を回収した事で王国の法の下に罰金をせしめられそうになっている事。

 交渉の際に、この期に及んで人間を守ろうとしてしまい、足元を見られてしまった事。

 即座に報告しなかったのは状況の変化に付いていけなかったからであり、何より報告する事で叱責を受ける事を恐れたからである事。

 全ては甘い認識と愚かな発想によるものであり、決して至高の方々への翻意は無かったと切々に語った。

 

 時折左右から突き刺さるような殺気が放たれたが、最後まで止められることなく聞いて貰う事が出来た事を一先ず喜ぶべきだろう。

 

「なるほど、つまりセバス君はたっちさんに憧れ、そのように生きる事が第一であり我々の命令は二の次という事か」

「い、いえ、断じてそのような事は! あくまで命令を遵守する上で可能な範囲で行いたいというだけでございます!」

「しかし現状を顧みればそう取られてもおかしくはないだろう? それとも私が疑い深い見方をしているのかな。盟主殿、私はそれほどおかしな物言いをしているのかね?」

「いいや、ネクロロリコンさん。私もセバスの意見を聞いた上で同じ結論に至っている」

「デミウルゴス君」

「私も、己の主義主張を第一義としているように見受けられます」

「シャルティア君」

「シモベにあるまじき思考でありんす! 与えられた仕事を十全にこなす事以上に重要な事などわっち達には有る訳ないでありんしょうに」

「ヴィクティム君」

「(おんかたがたからのごかめいをはたすさなかに、ほかのことをかんがえるよちなどないかと)」

「ふむ、実際どうなのかね? 我々ナザリックの利益の為に己の主義主張を捨てざるを得ない状況というものは時折出くわす事だろうと思うのだが、君は私達の命令及びナザリックの利益の為に私情を捨てられるのかね? 出来ないと言うのならそのように理解してこれからの指示を出させて貰おうと思うの、だが?」

 

 命令を聞く気が無いのなら、そうと弁えた上で今後は扱う。

 これはいうなれば最終勧告である。今後とも御方々からの命令を受け、無私の奉仕を続ける気があるのかと聞かれている。

 セバスの答えは無論唯一つ。

 

「捨てます! ナザリックの利益と私ごときの私情とでは比較になりえません。勿論御方々の御命令と私の考えも決して同列に扱ってよいものではありません、今回はあくまで任務中の余暇に行っているつもりでおりましたが、認識が甘かったと反省しております」

「では、私が人間を惨たらしく殺せと命じたなら」

「殺します。私の保有する各種スキルを用いて、可能な限りの苦痛を与えた上で、必ずやお気に召していただけますよう惨殺して御覧に入れます」

 

 一切の迷いなく断言する。

 元より御方々に仕え御役に立つために作られたこの身にとって、本来であれば今更聞く必要のない問いかけなのだ。

 それを問われている事すら本来は恥ずべきことであると、全てのシモベは断ずるだろう。

 

「その言葉に。いや、ここで私達に対して発した言葉に嘘偽りはないのだな?」

「ありません。至高の御方々並びに、我が創造主たっち・みー様に誓います」

 

 多くのシモベ達が最大の敬愛を向ける『自らの創造主』への誓い、その重みを知る周囲の者達もそれならばと殺意を収めていく。

 

「そうか、ならばその言葉を信じよう」

「ありがとうございます」

「ではソリュシャン君、件の娘をここに。次の話に移るとしようか」

「畏まりました」

 

 鋼の自制心で動揺を抑える。

 もはや次に起こる事は予想が付く、己の愚かさの象徴をこの手で刈り取るのだ。

 この身がもう少し上手く立ち回っていたなら、などという無駄な思考をしてはならないと言い聞かせる。

 

 そして落ち着こうとした結果、ネクロロリコン様がシャルティアに視線を送っている事に気付いてしまう。

 彼女がジッとネクロロリコン様へと視線を向け、軽く頷いた事にも。

 

 

 

「連れて参りました」

「ひっ」

 

 背後から聞こえる怯えのこもった声に、もはやセバスは応える事は出来ない。

 当然だ、今からこの手で殺さなくてはならないのだから。

 

「入りたまえ、娘」

 

 1歩、また1歩と異形の巣窟へと足を踏み入れるツアレに、セバス以外全ての視線が突き刺さる。

 そのまま彼女は震えながらも部屋に入り、セバスの隣にまで辿り着き並び立った。

 そんな2人の背後には今尚剣呑な雰囲気のシャルティアが移動している。

 

 泣き出さない事はもはや奇跡であろう、それほどの重圧を彼女は受け続けている。人間の世界では決して味わう事のない人外の化け物達からの純然たる殺意を四方から向けられているのだ、到底耐えられるはずが無い。それに耐えているのはただそこにセバスがいるという一事に尽きる。

 

〈跪き―――〉

「―――デミウルゴス君、必要無いよ。この重圧の中、脱兎のごとく逃げ出す事も、恐怖に押し潰され蹲る事も無く歩んで見せた彼女の勇気に、私は敬意を表したい」

「出過ぎたまねを致しました、申し訳ございません」

「良いとも、私達への敬意と忠誠から出た行動だと理解している。とがめる気も理由も無い。他の諸君も、少しは落ち着きたまえ」

 

 穏やかに周囲を見渡すネクロロリコンによって空気がやや緩和される。

 セバスの裾を握りしめるツアレも、重圧が収まった事で初めて呼吸が出来たかのように錯覚してしまう。

 

「まずは挨拶からだな。私は偉大なるギルド:アインズ・ウール・ゴウンの1人ネクロロリコンだ」

「同じく、アインズ・ウール・ゴウンの盟主モモンガだ。我々がそこにいるセバスの支配者だ」

「あ、……わ、わたし……」

「不要だ、ツアレとやら。ある程度君の事を聞いてはいるが、ハッキリ言って君が何処の何者かなど今我々は興味が無いのだ。暫くそこで黙って待っていたまえ、呼ばれた意味は直ぐに解る」

「は、はい」

 

 しばし宙空を眺め、ネクロロリコンはセバスに目を向ける。

 

「私は基本的に、無知無能による失態は1度だけ見逃す事にしている。これはその後の成長に期待しているからだ」

 

 ちらりとネクロロリコンから目を向けられたデミウルゴスは深く礼をする。

 未だ謎のベールに包まれたスレイン法国の多くの情報を逃した責任はあまりに重い。にもかかわらずあえて情報を取り扱う諜報部に抜擢したのは、その奮起に期待しての事だとデミウルゴスは理解している。

 僅か数日でデミウルゴスが引っかかった情報統制用の細工を〈誓約〉によるものと暴いたのは、正に彼の執念によるものだと言って良い。

 

「ではセバス君、君の失態だが。まず厄介事の最中にいるだろうツアレを保護した事を、きちんと正確に報告していなかった事が発端だ。デミウルゴスには、確か浮浪者の娘を拾った程度の説明だったと聞いている。その際不用意に大金を積んでしまったという判断についても一言言っておくべきだろうな。短絡的に殺してしまわなかった事は評価するが、それでも金を払えば終わるという発想はいささか愚かだと言わざるを得ない」

「申し訳ありません」

「更に、未だ供給の目処が立っていないスクロール、それも〈大治癒〉という有用な品を無許可で消費してしまった事、これも見過ごせない。任務に関わる事であれば、そして急を要する事態であれば勿論即座に使って貰わなくては困るのだが、そうではあるまい?」

「……仰るとおりです」

「裏組織からの介入についても、即座に報告していない。自力で収拾できない事態であると自覚しつつ、襲撃にもあったというのにだ」

「今にして思えば、即座にご報告を。いえ、その遥か前に、やはり拾った時点で報告すべきでした」

「そうだね、正にその通りだ。『ほうれんそう』を怠った事、これが最大のミスだった。そうだね?」

「はい」

「ツアレを拾ったという連絡を怠り、スクロールを相談無く任務外で使用し、裏組織からの接触も報告しなかった。ミスは全てその女に起因している」

「仰るとおりです」

「っ!」

 

 セバスの裾を掴む手が離れていく。

 結局自分の勝手な思いでは彼女は救えなかったのだと無力感に苛まれる。ただの自己満足だと笑われても返す言葉が無い。

 

「では、君に罰を与えよう」

 

 

 

「君の罪の象徴、ツアレを―――殺せ」

 

 

 

 無言で頭を垂れ、今にも泣き出しそうなツアレを見る。

 

 罪の象徴、正にその通りだ。

 彼女と共に、ここでたっち・みー様への憧れも、愚かな私情も、全てを断ち切る。

 この身を、真の意味でナザリックの執事とするために。

 

 向き直った時に見たツアレの顔に浮かぶ感情は、申し訳なさだった。

 そして最期を悟った瞬間の彼女の微笑みを、セバスは生涯忘れる事はないだろう。

 

 鋼の決意を以て、セバスは硬く握りしめた拳を―――――

 




ここで切るか?! って言うのを一度やってみたかったのです。
今では少し反省しています。

まあ長すぎるので一旦切ろうかと、過去最長ですし。


さて、やたら長々とセバスが苛められていましたが、実際ネクロさんがオバロ世界にいたら守護者はどう感じるんだろうと言うのが実は前々からありました。

彼の特徴としては、
原作アインズ様張りの智謀の持ち主(シモベ視点)、
各種スキルによる人手の確保が可能(これは事実)、
ナザリック外での固有の戦力を所持している(守護者には勝てないが血族がそこそこ)、
と言う感じです。

シモベ的には、「もうあの方御一人で良いのでは?」状態な訳です。
そしてモモンガさんはギルメン至上主義(周知の事実)であり、より優秀なのもギルメンのネクロさん(シモベ視点)なので、ネクロさんに見捨てられてしまったらそのまま支配者がいなくなってしまうと言うサドンデス状態の運営に感じるんじゃないかと思う訳です。
雑用程度なら血族や吸血によって作った眷族でもいい訳なのでかなり必死だと思います。

実際は二人ともそんな事を考えてはいませんが、特にミスをしてしまったデミウルゴスは強い懸念があるのではないかと思う訳です。



関係無いですけど、どうせならナーベちゃんを苛めたい(ボソッ

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