Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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本編と同時に、番外編も更新致しました。
詳細は其方を見て頂けると幸いです(*´꒳`*)


第六十一話: 矛盾した力

「type,XI、このまま押し切りますよっ!!」

「分かってます」

 

ㅤオリジナルXIIIの二刀を、一刀で受け止めたリゲルさん。

ㅤtype,II、type XIの刀を同時に受け切るのは、確かに…バトルドレスとして頭一つ抜けているという事だろう。

 

「っ…!リゲル1人に、力負けするだなんて…!?」

「何処からこんな力が…不思議ですね」

 

ㅤリゲルさん…今までに見た事の無い表情を浮かべている。

ㅤ大切な人を、あづみさんを傷付けた事を許さないと言った、怒り。

ㅤ今度は絶対に守るという、決意。

ㅤそんな彼女の感情が、一瞬にして見て取れた。

 

ㅤ然し…この乱戦状態を鎮圧するかの如く、タービンビットが周りを取り囲んでいた。

ㅤ浮遊するその物体からは、バチバチと嫌な音を鳴らしている。

ㅤだが、そう易々とタービンビットを飛び交わす事は出来ないだろう。

ㅤリゲルさんがオリジナルXIII2人とゼロ距離、という、間違い無く見方を巻き込む様な事態になり兼ねないから。

 

ㅤtype,IXは、やらないとは限らない…が。

 

「好い加減…沈みなさいっ!!」

「まだ…私はまだ、落ちはしないわっ…!」

「蜂型のZ/X、一体何処から出てきたと言うのですか…っ」

 

ㅤもう、目に映る光景がぐちゃぐちゃだ。

ㅤ蜂達が飛び交い、タービンビットが飛び交い、リゲルさんとオリジナルXIII2人がぶつかり合って。

ㅤ意識が朦朧とする中で、視界は悪くて。

 

ㅤふと、『蜂』という単語に意識が移る。

ㅤ今更ながら、何故蜂達がこの場に羽ばたいている。

ㅤきさらちゃんはとっくに、リゲルさんが逃してくれた筈じゃあ…。

 

ㅤパッとそう思った俺は、顔を上げ、あづみさん達を逃した方向を見つめる。

ㅤすると其処には、フラフラと体を左右に揺らし、覚束ない足取りで此方に近付いてくる少女が1人。

 

「………………っ!きさらちゃん………何で…まだ、此処に…」

「………きぃ………はなれゆの、やっ…………ぃっしょ…」

 

ㅤ何で、どうして戻って来てしまったんだ。

ㅤ自ら死地に踏み込んでいる様な物だと言うのに。

ㅤそれでもきさらちゃんは、徐々に徐々にと此方へ近付く。

 

ㅤ彼女の周りには、数体のロイヤルブリゲイド、スカウトシーク達が飛び交い、彼女を守る様な形を作っていた。

ㅤ蜂達も…お疲れ様だ。

ㅤきさらちゃんも、如何して戻って来たんだ。

ㅤ離れるのが…嫌だから?

ㅤ一緒に居たいから?

ㅤ本当…彼女と俺の過去には、一体何が有ったと言うんだ。

 

ㅤそう、拭い切れない疑問なんて未だに多々有る。

ㅤだが…正直どうだって良い。

ㅤ彼女達さえ守れれば、それで満足だ。

 

ㅤ俺は、最早うんともすんとも応えてくれなくなったデスティニーを解除し、生身の体へと姿を戻す。

ㅤ当然、デスティニーのブースターで支えられていた体だ。

ㅤ解除した瞬間、地面へと落下するのは当たり前だろう。

 

ㅤドサッという音と共に響く、体全体を支配する激痛。

ㅤ然し…もう痛みすら感じなくなっていた俺の体。

ㅤそんなズタボロの体で這い蹲り、きさらちゃんの元へと近寄って行く。

 

ㅤ直ぐ真上の上空では、リゲルさんと蜂達、そしてオリジナルXIIIが戦っている。

ㅤそして少し距離を置いた目の前には、瞳の光が消え掛けているきさらちゃんが、必死に此方へと近付いていた。

 

「後………少しなんだっ……!!」

 

ㅤきさらちゃんに手を伸ばし、残された僅かな力を振り絞って這いずる。

ㅤ本当に、後少しなんだ。

ㅤ頼むから…届いてくれ。

ㅤ彼女を守るって言ったんだ、この手で、絶対に。

 

「だい…すけ…」

 

ㅤお互いに後一歩、二歩といった距離まで近付いた。

ㅤその時だ。

 

ㅤきさらちゃんと俺を取り囲む様に、タービンビットが周囲に展開されていた。

ㅤ既に攻撃態勢と入っているのか、パチパチと嫌な音を鳴らしている。

ㅤこのままでは、俺は兎も角きさらちゃんがっ…!

 

ㅤ諦めはしない、必ず守る。

ㅤその言葉を胸に、横たわっていた体を起こす。

ㅤ足を一歩踏み出し、地面を蹴る様にして彼女に飛びつく。

ㅤそのままきさらちゃんを抱き締め、俺が下になる様に地面へと落下した。

 

「この娘だけは…きさらちゃんだけは…!」

「ぅゅ…」

 

ㅤこの幼い命を、彼女の幸せと自由を、奪われて堪るかっ…!!

 

ㅤ俺は、タービンビットを展開させ此方を見下ろすtype,IXを睨み付ける。

ㅤきさらちゃんをぎゅっと抱き締めて離さない。

ㅤこの娘の命を手放してなるものか。

 

ㅤ彼女は、俺のその思いを察してくれたのか、此方に全てを預けるかの如く目を瞑る。

ㅤそして弱々しい力で、俺の手を握ってくれた。

ㅤどうして…彼女の様な幼い命ですら、守れないのか。

ㅤ今更どう足掻いたって無駄な事は知っている。

ㅤだが、諦めたくないんだ。

ㅤきさらちゃんを死なせたくないんだ。

 

ーーー

 

『大祐っ!ぐぅっ…!』

『リゲル…隙を見せるだなんて、みっともないわね』

『本当、私達の邪魔ばかり…!』

『邪魔をしているのは何方かしら。ベガ様の為に…各務原あづみも九条大祐も、そしてリゲルも…貴女達の全てを捧げなさい?』

『誰がそんな事…あづみも大祐も、絶対に私が守ってみせるわ!!』

『戯言は程々に、始末しますよ』

『分かってるわ。リゲル…諦める事も必要だって、教えてあげる』

『諦めない…2人の御蔭で此処まで来れたから…!何が有っても、諦めたりなんてしないっ!』

 

ーーー

 

…リゲルさんの声。

 

ㅤそうだ…きさらちゃんだけじゃ無い。

ㅤ使命を、忘れるな。

ㅤ俺は自分の大切な人達を守れれば、それで良い。

ㅤ周りからどう言われようと、自分がどうなろうとも、彼女達に触れた輩共には容赦しない。

ㅤこう思うのも、今ので何度目だ。

ㅤだが…守ると決めた、誓ったんだ。

 

ㅤデスティニー…いや、バトルドレス。

ㅤまだ機能不全には陥って無いのだろう。

ㅤなら、もっと俺に、力を貸せ…。

ㅤ示すべき代償は何だって構わない。

ㅤ幾らでも払ってやる。

ㅤ俺の全てを捧げてでも。

 

ㅤその代わり…彼女達の幸せ、自由、そして…笑顔で暮らせる世界。

ㅤ報酬として、頂いていくぞ…!!

 

「だい…すけ…?だ………め…」

「…ふん、こんな下等生物に睨まれるとは。もう捕縛なんてどうでも良い、死んで下さい」

 

ㅤtype,IXのその言葉と同時に、電撃を放つタービンビットが此方を目掛けて飛んで来る。

 

…死ぬ、か。

ㅤ彼女達の幸せ、その代償として死ねるなら、本望だ。

ㅤが、こんな形で死ぬ…?

ㅤそれだけは許されない。

ㅤあづみさんもリゲルさんも、『もう離れ離れになるのは嫌』だと言ってくれた。

ㅤだからこそ、どんな状況であろうと死ぬ訳にはいかない。

ㅤ生きていれば、離れ離れになったとしても何時かは又、出会えるから。

ㅤ命あっての物種、なのだから。

 

ㅤ俺の…今有る全力を持って、何としてでも彼女達と生き残ってみせる。

 

「…守る為に」

「タービンビット、行きなさい。九条大祐達を始末してーー」

「俺は…戦うっ…!!」

 

ㅤそう言葉を口にした時、不思議と体全体に力が籠もる。

ㅤ分かっている…これは一時的な物だと。

ㅤ触れてはならない領域に、土足で踏み込んだのだと。

 

「っ…!?九条大祐っ…何故!こんな事は可笑しい…!」

「大、祐…やっぱり…」

「バイタル…数値に、異常を確認」

 

ㅤ手に持つ武器はGNピストルビット。

ㅤタービンビットを迎え撃つはGNライフルビット、GNホルスタービット。

ㅤそうだ…ガンダムサバーニャ、上手く扱えずにその性能を台無しにしていた。

ㅤだが、今回は違う。

 

「射撃特化型バトルドレス…」

「それなら、近接範囲に潜り込んでしまえばーー」

「………っ!?type,II!目の前に………」

「アヴァランチエクシア…目標を、駆逐する!!」

 

ㅤ全てを使う…その代償。

 

「可笑しい…九条大祐はあれだけ動いているのにも関わらずーー」

「バイタル…」

 

ーーー


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