Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

60 / 69
第五十九話: 見えてきた光

バチィィィッッ!!!

 

「リゲルさん…!直ぐにあづみさん達3人を、蜂兵達に乗せてヴェスパローゼさんの元へ!!!」

「…っ!わ、分かったわ!!」

「其れ迄は何とかします…!!」

 

ㅤ『あづみさん達3人』を。

ㅤその言葉だけで、リゲルさんは直ぐに察した様だ。

ㅤ『あづみさん』『きさらちゃん』『A–zちゃん』。

ㅤリゲルさんという4人目を、数には含めなかった。

ㅤ要するに…俺は彼女に背中を預けたという事だ。

 

ㅤ2人だけでオリジナルXIII5人を相手に出来るかなんて、そんな心配は必要無い。

 

「…リゲル、行かせはしないっ…!」

「百目木きさら、各務原あづみ、type,I A–zが蜂形のZ/Xに接触まであと少し……逃しは…」

「やらせるか…っ!!!」

 

ㅤ一度戦線離脱を試みるリゲルさんの後を追うべく、type,II、type,XIが接近戦を仕掛けに掛かる。

ㅤ当たり前だが、俺がそれを許す筈が無い。

ㅤその場でアロンダイトを大きく振り、オリジナルXIIIの2人を吹き飛ばす。

ㅤ案の定、力任せに変わりは無い。

 

ㅤだが然し。

 

「…やはり、九条大祐を何とかしなければ」

「埒があかないわね」

 

ㅤ2人のヘイトを集める事には成功した。

ㅤ然し問題はその他の3人。

ㅤtype,Vが既に狙撃態勢に入り、type,IXはタービンビットを展開。

ㅤtype,Xに関してはバトルドレスを失い、他4人に比べれば警戒する必要は無に等しいが…そうもいかないだろう。

ㅤ彼女の『力』の根源を破壊したとはいえ、頭のキレや情報伝達能力まで皆無になる訳は無い。

 

ㅤ一番厄介なのは、これ以上増援を増やされる事だ。

 

ㅤ現状は、此方に割く人数を最小限にしているのだろうが…それでもオリジナルXIII5人だ。

ㅤ余程、俺が邪魔で仕方ないのだろう。

ㅤ加えて、あづみさんとリゲルさん、この2人を手の届く範囲捕らえて置きたいという企みが見え見えだ。

ㅤ意地でも謀反者を許さないのか、2人を利用するだけ利用する気なのか…。

 

ㅤいや、両方だろう。

ㅤ謀反者を許さず、罰として最大限に利用し、使えなくなるまでこき使う。

ㅤ考えただけでも腑が煮え繰り返りそうだ。

ㅤそんな事、やらせはしない。

ㅤこの極限状態で応えてくれたデスティニーの為にも。

ㅤ守りたいという思いを、口だけで無く。

ㅤ自らの力で実行するんだ。

 

「俺が相手をしてやる…全てっ…!!」

「良い度胸ね…けれど、それは無謀だと知りなさい?」

 

ㅤデスティニーの特殊武装『光の翼』を展開すると同時に、type,IXが、俺の周囲にタービンビットを展開。

ㅤ加えてtype,XIの切り込み、type,Vの狙撃。

ㅤtype,IIに至っては、隙あらばリゲルさんの元へ仕掛ける態勢でいる。

ㅤ然しそれは、type,Vも同じであり、何時でもリゲルさんや蜂達を狙い撃とうとライフルを構えていた。

 

ㅤ先ずこの連携を崩さねば、勝ち目は無いだろう。

ㅤ深く考えている時間も余裕も無い。

ㅤ此処は無鉄砲に、ゴリ押す他選択肢は有り得ない。

ㅤデスティニーなら。

 

「やってみせる…!!」

 

ㅤタービンビットの弾幕を掻い潜り、最初に仕掛けるのはtype,II。

ㅤ彼女に対してアロンダイトを構え、光の翼により加速した勢いを乗せ、斬りかかる。

 

「強引に突破するつもり…?」

「なら…」

 

ㅤと、type,IIは完全に受け身の態勢を取り、type,Vがライフルの銃口をリゲルさんへと構える。

ㅤそして、アロンダイトとtype,IIのビームサーベルがぶつかり合う音が鳴り響いた瞬間。

ㅤtype,XIが俺の背中に回り込み、type,Vの指が引き金に触れる。

ㅤ更にはタービンビットが周囲を取り囲み…。

 

ㅤ八方塞がり、四面楚歌。

 

ㅤだが、俺はそのまま光の翼の出力を上げ、受け身を取ったtype,IIを文字通り『ゴリ押す』。

 

「なっ…!?こんな力…!!」

 

ㅤtype,IIの体如、押し進み、type,Vの射線と重ねる。

 

「…っ!邪魔です…!」

 

ㅤすると、誤射をしない様にとtype,Vは、冷静に立ち位置を変えて狙撃を試みていた。

ㅤ刹那。

ㅤ彼女の瞳には、翼を広げたデスティニーの姿が映る。

 

「沈めっ…!」

 

ㅤ俺は手にしているアロンダイトを、大きく振りかぶり、type,Vへと振り下ろす。

ㅤ彼女に近接武器は無い筈だ。

ㅤなら自衛手段は限られる。

ㅤ接近戦を得意とするデスティニーでなら、早めに潰す事が可能だろう。

ㅤこの位、考えずとも判断出来る。

 

ㅤ加えてtype,Vを遠距離に放置していれば、好き放題されるだけだ。

ㅤ何れにせよ、潰す必要優先度は頭一つ抜けている。

 

「くっ…!」

 

ㅤ然し、彼女は自身の持つ大きなライフルを盾にし、俺がアロンダイトでそれを破壊した瞬間。

ㅤ直ぐ様武器を変え、両手に、一度破壊した筈のハンドガンらしき銃を構えて此方に乱射する。

ㅤライフルが破壊された時に上がる黒煙を、青いビームが搔き消すかの如く。

ㅤ近接自衛手段も、最低限は用意されている様だ。

ㅤが。

 

「捉えられると思うなよ」

「…!?何時からーー」

 

ㅤ俺は既に、type,Vの背後を取っていた。

ㅤそのガラ空きの背中にパルマフィオキーナを放とうと、光らせた左手を伸ばす。

 

…ふと、視界の隅に小さな影が映った。

 

ㅤ加えて、強引に弾き飛ばしたtype,IIが起き上がり、リゲルさんへと接近しようとブースターを吹かしていた。

ㅤそして相変わらずのタービンビット。

 

「チッ…!」

 

ㅤ俺はその小さな影に、パルマフィオキーナを牽制程度に放つ。

ㅤそして光の翼を利用して離脱。

ㅤ同時にライフルを何発か放ち、type,Vやタービンビットを狙ったものの。

ㅤ効果は薄いばかりだった。

 

ㅤ本来ならばtype,Vにフラッシュエッジを投げ付け、傷を負わせる筈だったが…フラッシュエッジは手元に無い。

ㅤまさかアロンダイトを失う訳にもいかなく。

ㅤそれならtype,IIを追うべくと、俺は即座に移動。

ㅤこのまま地道に戦っていくのは、埒が明かないな…。

ㅤ何か一手、大きく動ければ…というのは先ず置いて。

 

ㅤリゲルさんへと接近中の彼女を背後から斬り込む。

 

ㅤと、又もやギリギリで回避。

ㅤ背後から攻め込まれるのを読んでたのか、エグナーウィップを射出してくるとは。

ㅤそのエグナーウィップを回避した後、横に体を一回転させ、ライフルを何発か乱射する。

ㅤ通称『バレルロール』。

 

ㅤこの行動は効果を発揮してくれた。

ㅤエグナーウィップを破壊しつつ、足止め程度の牽制にはなるだろう。

ㅤ案の定、type,IIはデスティニーを振り切れずに一度引き下がる。

 

「本当に…欲を見過ぎだわね。あの時殺しておけば良かったわ」

「俺は…死なない。信頼してくれる2人の為にも。それが俺の選んだ選択だ」

 

ーーー


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。