Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
バチィィィッッ!!!
「リゲルさん…!直ぐにあづみさん達3人を、蜂兵達に乗せてヴェスパローゼさんの元へ!!!」
「…っ!わ、分かったわ!!」
「其れ迄は何とかします…!!」
ㅤ『あづみさん達3人』を。
ㅤその言葉だけで、リゲルさんは直ぐに察した様だ。
ㅤ『あづみさん』『きさらちゃん』『A–zちゃん』。
ㅤリゲルさんという4人目を、数には含めなかった。
ㅤ要するに…俺は彼女に背中を預けたという事だ。
ㅤ2人だけでオリジナルXIII5人を相手に出来るかなんて、そんな心配は必要無い。
「…リゲル、行かせはしないっ…!」
「百目木きさら、各務原あづみ、type,I A–zが蜂形のZ/Xに接触まであと少し……逃しは…」
「やらせるか…っ!!!」
ㅤ一度戦線離脱を試みるリゲルさんの後を追うべく、type,II、type,XIが接近戦を仕掛けに掛かる。
ㅤ当たり前だが、俺がそれを許す筈が無い。
ㅤその場でアロンダイトを大きく振り、オリジナルXIIIの2人を吹き飛ばす。
ㅤ案の定、力任せに変わりは無い。
ㅤだが然し。
「…やはり、九条大祐を何とかしなければ」
「埒があかないわね」
ㅤ2人のヘイトを集める事には成功した。
ㅤ然し問題はその他の3人。
ㅤtype,Vが既に狙撃態勢に入り、type,IXはタービンビットを展開。
ㅤtype,Xに関してはバトルドレスを失い、他4人に比べれば警戒する必要は無に等しいが…そうもいかないだろう。
ㅤ彼女の『力』の根源を破壊したとはいえ、頭のキレや情報伝達能力まで皆無になる訳は無い。
ㅤ一番厄介なのは、これ以上増援を増やされる事だ。
ㅤ現状は、此方に割く人数を最小限にしているのだろうが…それでもオリジナルXIII5人だ。
ㅤ余程、俺が邪魔で仕方ないのだろう。
ㅤ加えて、あづみさんとリゲルさん、この2人を手の届く範囲捕らえて置きたいという企みが見え見えだ。
ㅤ意地でも謀反者を許さないのか、2人を利用するだけ利用する気なのか…。
ㅤいや、両方だろう。
ㅤ謀反者を許さず、罰として最大限に利用し、使えなくなるまでこき使う。
ㅤ考えただけでも腑が煮え繰り返りそうだ。
ㅤそんな事、やらせはしない。
ㅤこの極限状態で応えてくれたデスティニーの為にも。
ㅤ守りたいという思いを、口だけで無く。
ㅤ自らの力で実行するんだ。
「俺が相手をしてやる…全てっ…!!」
「良い度胸ね…けれど、それは無謀だと知りなさい?」
ㅤデスティニーの特殊武装『光の翼』を展開すると同時に、type,IXが、俺の周囲にタービンビットを展開。
ㅤ加えてtype,XIの切り込み、type,Vの狙撃。
ㅤtype,IIに至っては、隙あらばリゲルさんの元へ仕掛ける態勢でいる。
ㅤ然しそれは、type,Vも同じであり、何時でもリゲルさんや蜂達を狙い撃とうとライフルを構えていた。
ㅤ先ずこの連携を崩さねば、勝ち目は無いだろう。
ㅤ深く考えている時間も余裕も無い。
ㅤ此処は無鉄砲に、ゴリ押す他選択肢は有り得ない。
ㅤデスティニーなら。
「やってみせる…!!」
ㅤタービンビットの弾幕を掻い潜り、最初に仕掛けるのはtype,II。
ㅤ彼女に対してアロンダイトを構え、光の翼により加速した勢いを乗せ、斬りかかる。
「強引に突破するつもり…?」
「なら…」
ㅤと、type,IIは完全に受け身の態勢を取り、type,Vがライフルの銃口をリゲルさんへと構える。
ㅤそして、アロンダイトとtype,IIのビームサーベルがぶつかり合う音が鳴り響いた瞬間。
ㅤtype,XIが俺の背中に回り込み、type,Vの指が引き金に触れる。
ㅤ更にはタービンビットが周囲を取り囲み…。
ㅤ八方塞がり、四面楚歌。
ㅤだが、俺はそのまま光の翼の出力を上げ、受け身を取ったtype,IIを文字通り『ゴリ押す』。
「なっ…!?こんな力…!!」
ㅤtype,IIの体如、押し進み、type,Vの射線と重ねる。
「…っ!邪魔です…!」
ㅤすると、誤射をしない様にとtype,Vは、冷静に立ち位置を変えて狙撃を試みていた。
ㅤ刹那。
ㅤ彼女の瞳には、翼を広げたデスティニーの姿が映る。
「沈めっ…!」
ㅤ俺は手にしているアロンダイトを、大きく振りかぶり、type,Vへと振り下ろす。
ㅤ彼女に近接武器は無い筈だ。
ㅤなら自衛手段は限られる。
ㅤ接近戦を得意とするデスティニーでなら、早めに潰す事が可能だろう。
ㅤこの位、考えずとも判断出来る。
ㅤ加えてtype,Vを遠距離に放置していれば、好き放題されるだけだ。
ㅤ何れにせよ、潰す必要優先度は頭一つ抜けている。
「くっ…!」
ㅤ然し、彼女は自身の持つ大きなライフルを盾にし、俺がアロンダイトでそれを破壊した瞬間。
ㅤ直ぐ様武器を変え、両手に、一度破壊した筈のハンドガンらしき銃を構えて此方に乱射する。
ㅤライフルが破壊された時に上がる黒煙を、青いビームが搔き消すかの如く。
ㅤ近接自衛手段も、最低限は用意されている様だ。
ㅤが。
「捉えられると思うなよ」
「…!?何時からーー」
ㅤ俺は既に、type,Vの背後を取っていた。
ㅤそのガラ空きの背中にパルマフィオキーナを放とうと、光らせた左手を伸ばす。
…ふと、視界の隅に小さな影が映った。
ㅤ加えて、強引に弾き飛ばしたtype,IIが起き上がり、リゲルさんへと接近しようとブースターを吹かしていた。
ㅤそして相変わらずのタービンビット。
「チッ…!」
ㅤ俺はその小さな影に、パルマフィオキーナを牽制程度に放つ。
ㅤそして光の翼を利用して離脱。
ㅤ同時にライフルを何発か放ち、type,Vやタービンビットを狙ったものの。
ㅤ効果は薄いばかりだった。
ㅤ本来ならばtype,Vにフラッシュエッジを投げ付け、傷を負わせる筈だったが…フラッシュエッジは手元に無い。
ㅤまさかアロンダイトを失う訳にもいかなく。
ㅤそれならtype,IIを追うべくと、俺は即座に移動。
ㅤこのまま地道に戦っていくのは、埒が明かないな…。
ㅤ何か一手、大きく動ければ…というのは先ず置いて。
ㅤリゲルさんへと接近中の彼女を背後から斬り込む。
ㅤと、又もやギリギリで回避。
ㅤ背後から攻め込まれるのを読んでたのか、エグナーウィップを射出してくるとは。
ㅤそのエグナーウィップを回避した後、横に体を一回転させ、ライフルを何発か乱射する。
ㅤ通称『バレルロール』。
ㅤこの行動は効果を発揮してくれた。
ㅤエグナーウィップを破壊しつつ、足止め程度の牽制にはなるだろう。
ㅤ案の定、type,IIはデスティニーを振り切れずに一度引き下がる。
「本当に…欲を見過ぎだわね。あの時殺しておけば良かったわ」
「俺は…死なない。信頼してくれる2人の為にも。それが俺の選んだ選択だ」
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