Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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かなり久し振りの更新となってしまいましたね…。
去年は【本編2:番外8】みたいな事になってしまいましたので、今年はせめて五分五分…本編6:番外4にしていきたいと思っております。
相変わらず短い文字数ですけど、その分毎週安定更新を目指しております。

加えて10000UA突破、本当に感謝致します(*´꒳`*)
書き始めた頃は夢物語と思っていましたけど…この作品を見て下さった、見て下さっている皆様方の御蔭で叶える事が出来ました。
今年も、こんな作者が書く作品で良ければ…何卒宜しくお願い致します。


第五十六話: 新手

「っ…!これをっ…!」

 

ㅤ暗中模索。

ㅤというのは間違いかも知れない。

ㅤ手がかりのないままあれこれとやってみること。

ㅤ暗闇の中で、手探りをして求める意から生まれた四字熟語だ。

ㅤだが、物理的な意味合いでは、当たっているやも分からない。

 

ㅤ俺は兎に角、目の前で苦しんでいる少女を、只助けようと必死になっていた。

 

ㅤ僅かに残っている意識を集中させ、何とかBBから回復薬を取り出す事に成功。

ㅤガタガタと、痙攣を繰り返す自身の手を無理矢理押さえつける。

ㅤ後は目の前の少女に…きさらちゃんに、この回復薬を流し込んであげさせれば…!!

 

…最早気を失っても可笑しくない、そんな状態で有りながらも、俺は自分の体に持ち堪えるよう訴える。

ㅤ右手に握り締めた回復薬を、左手で右腕を握り締めながら、彼女の口元へと近付けていく。

ㅤ後少し…この万能薬を服用させれば、きさらちゃんは助かるんだ。

ㅤ震える手、朦朧とする意識、真っ暗になっていく目の前。

ㅤその全てを彼女に集中させる。

 

ㅤそして…回復薬の瓶が、きさらちゃんの口元に触れた。

 

「これでっ…!」

 

ㅤその時ーー

 

パシッ

 

ㅤ誰かから誰かへ、丸で手渡しをするかの様な音が、俺の脳内に響き渡った。

ㅤ然しそれは、手渡し等では無い。

ㅤ先程まで俺の手の中に有った回復薬は、何時の間にか消えていた。

ㅤ俺はイマイチ、状況が理解出来ずにいた。

 

ㅤだが…顔を上げた視線の先に立つ女性、その女性が手にしている物を目にした俺は、瞬時にして気が付いた。

ㅤ回復薬は消えて等いない、奪われたのだと。

 

「これが…例の薬ですか」

「…っ!それを…返せっ…!!今直ぐに!!」

 

ㅤ自分の中に残る、ほんの少しの力を振り絞り、その女性に対して怒鳴りを放つ。

ㅤ其れだけで激しい息切れを起こし、ぐらぐらと視界が定まらなくなる。

 

「返す…?こんな貴重な物を?返す訳無いじゃないですか」

「いいや…意地でも、渡して貰うぞっ…!」

「type,X…!えぇ…返されなくたって結構よっ!貴様から力付くで奪ってーー」

「リゲル様っ…だめ、です…」

 

ㅤ俺の頭は、type,Xのちらつかせる回復薬にしか向いていなかった。

ㅤそれも当たり前だろう。

ㅤ気付けば、きさらちゃんだけでなく、あづみさん…A−zちゃんまでもが苦しそうに倒れ込んでいた。

 

ㅤそんな彼女達を救う事が出来るのは、例え可能性の話であろうと、現状あの回復薬しか無い。

ㅤ今の俺からすれば、いや…彼女達からしても、喉から手が出る程に大切な代物だ。

ㅤそれを奪われたのでは、話にならない。

ㅤ一刻も早く取り戻さないと。

 

…そうして、冷静な思考は丸で何処かへ飛んでいた。

 

「話し合えば物々交換、若しくは取引きが出来たものを…残念です」

「するつもり等……っ…更々無いだろっ……!!」

「覚悟しなさい…type,Xっ!!」

「…もう少しは、考える頭を持つ事をお勧めします」

 

ㅤ小言でボソボソと呟くtype,Xに、容赦無く斬り掛かるリゲルさん。

ㅤその瞬間、彼女は回復薬を後方へと放り投げた。

 

「取って来なさい…?」

「貴様っ…!」

 

ㅤ完全に揶揄う様な口調で、リゲルさんを挑発するtype,X。

ㅤ然し乍ら、この状況を打開するには回復薬が必要不可欠。

 

ㅤそして何より、苦しむあづみさんを見過ごす事等出来はしない彼女…リゲルさんの瞳には、放られた回復薬しか映っていなかった。

 

「…相変わらず、一途ですね」

「駄目だ……リゲル、さん…っ!!」

 

ㅤ口元に笑みを浮かべ、type,Xはまた何かを呟く。

ㅤ嫌な予感も良いところ。

ㅤリゲルさんは完全に、type,Xの罠に引っ掛かる事となった。

 

「…っ!?」

 

ㅤ突如として、リゲルさんの前方何百m先から、青く細い閃光か彼女目掛けて放たれた。

ㅤそれを間一髪で横に回避するリゲルさん。

ㅤ然しその弾道が捉えた物は、彼女では無く、放られた回復薬。

ㅤ瓶の割れる音と共に、回復薬の中身が溢れ落ちていく。

 

ㅤそしてその液体が溢れ落ちた先には、蜂兵達に身を拘束されているtype,IXの体。

ㅤ彼女の体全体に回復薬が溢れ、少しの沈黙、そして時が経過。

ㅤtype,IXの腕がピクッと動いたかと思うと、粗末な形で地面に放置されていたタービンビットが、彼女の周りを取り囲む蜂兵達を電撃により蝕んでいく。

 

…完全に、息を吹き返してしまった。

 

ㅤ俺はそう直感し、生き残りの蜂兵達を下げる様、辛うじてきさらちゃんに伝える。

ㅤ然し、死に物狂いなのは彼女も同じ。

ㅤ残された力を用いて彼女を後ろから支えてあげるが、きさらちゃんは既に意識が飛び掛けていた。

 

ㅤだが、何とか蜂兵達を下げる事に成功。

ㅤきさらちゃんは最早、喋る事も、ほんの僅かな力ですら、体に力を入れる事もままならない様子だ。

ㅤ力無く俺に寄り掛かり、完全に身を委ねている。

ㅤそれでも、彼女を抱き締める俺の腕を、ぎゅっと握って離さない。

ㅤもうそんな力すら残されていない筈だ、然し彼女が俺の腕を握っているのは事実。

ㅤこうしてきさらちゃんを抱いていると、彼女の感じている『死に対する恐怖』が俺にもひしひしと伝わってくる。

 

ㅤ彼女を…彼女達を、こんな所で死なせる訳にはいかない。

 

ㅤそう思った直後だった。

 

ㅤ眩い閃光が、視界をまっさらな白へと塗り替える。

ㅤこの光は…先のリゲルさんを襲ったものと同じ。

ㅤという事は、又何処からか狙撃が飛んでくる。

 

ㅤ何処からだ…誰に対してだ、予測してからじゃ、あの刹那の閃光には間に合わない。

 

ㅤと、俺の体は咄嗟の判断で、既に動いていた。

ㅤきさらちゃんをその場に寝かせ、有るか無いかの狭間に立たされている自らの力を振り絞り。

ㅤ頭の中なんて、真っ白な状態で。

 

バチィッッッ!!

 

ーーー




来週水曜日安定更新、もしかしたら今週日曜日も更新出来る…かも分かりません(苦笑)
不確定要素満載ですので、更新出来たらな、という気持ちです(*´꒳`*)

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