Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第五十五話: 自らの意思

「…それは…どういうーー」

 

ㅤ俺はバトルドレスを、サバーニャへと換装。

ㅤtype,Xに切り裂かれた腹部には、相変わらず大きな傷口が顔を覗かせている。

 

ㅤ俺はそれを気にもせず、先ずはtype,Xにシールドビットを張る。

ㅤ出来るだけ彼女に密着する様に、至近距離へと。

 

「な、なに…を…」

 

ㅤ戸惑いを隠せない彼女に、俺は目もくれず、type,Xの『リソース限界解放』を使用したバトルドレス…そのファングで形成されている両翼を、アヴァランチエクシアのGNソードにて断ち切る。

 

ㅤ鋼と鋼のぶつかり合う音が、周囲に響き渡った。

 

「…!?」

「もう少し、我慢してくれ」

 

ㅤ早めに事を片付けなければ、大量出血により、type,Xが死んでしまう。

ㅤ他に武器となる物が無いか、彼女のバトルドレスを隅々まで確認する。

ㅤすると、意外な武器が隠されていた事に気付く。

 

ㅤtype,Xのバトルドレス…その両腕と両足に、隠し刀として実体剣が組み込まれていた。

ㅤ俺と戦闘していた時は一度も使っていなかったな…其処に疑問点が浮かぶ。

 

「…まぁ、良い」

 

ㅤ取り敢えずそれも除去し、ブースターも壊し、目に見える全ての武器となる物を彼女から取り除いた。

 

「…生身にしてから、確実に殺す…流石は…抜け目が有りません、ね」

「残念だけど、それが抜け目だらけなんだよね」

「…?」

 

ㅤtype,Xの言葉に、俺は苦笑い染みた微笑みを返した。

ㅤ俺自身、何をしているのか分からない。

ㅤ此処で彼女を亡き者にすれば、オリジナルXIIIの戦力低下、加えてベガにも相当な精神的負担を掛けられる。

ㅤそんな最大のチャンスを手放しても、俺が手にしようとした物…それは。

 

「バトルドレスが全壊した以上、もう君は戦えない。要は……殺す必要が無くなった、という事です」

「…!?な、何を……」

「後は特殊な液体を、傷口に晒すだけでーー」

「大祐!!」

 

ㅤ戦えない者を、態々殺す必要は無い。

ㅤ例え相手がそれを望んでいなくとも、俺は生かすと決めたから。

ㅤ殺し…殺され…それじゃあ、あづみさんとリゲルさんの為に築き上げる幸せな世界なんて、到底、手に掴める筈が無い。

ㅤ誰かが死に、誰かが悲しみ、傷付き、敵討ちに戦場へと赴く。

ㅤその無限ループという連鎖を、誰かが断ち切らなければならない。

ㅤ今はまだ、悪夢の連鎖が出来上がっていないから良いものの…何れ必ず、そうなる事は予測出来る。

ㅤ人がこうも簡単に死ぬ、殺される世界で、そうならない事は先ず無いだろう。

 

ㅤなら、予め「連鎖」を生み出さなければ良いだけの話だ。

 

ㅤそう気付いた俺が、人を殺しては…いけない。

 

「大祐、此方は終わっ……な、何をして…!?」

「リゲルさん…許して下さい。これが俺の望む世界に、貴女達が幸せに暮らせる世界を創る為に、必要な『愚行』です」

「………はぁ」

「リゲルさん…?」

 

ㅤ俺の言動を目の前で見聞きした彼女は、両手を腰に当て、呆れ顔で深い溜息を吐く。

ㅤ「やれやれ」といった表情だ。

ㅤだが、リゲルさんから悪意は感じない。

ㅤ本当、只に呆れているだけの様子だ。

 

「…type,Xを救って、それを愚行と言っている時点で…自分でも気付いているのね」

「はい。この行為が間違った事だと…それでもやらねばならないと」

「大祐はもう少し、時と場所を見極めた方が良いわよ?…まぁ、今回は特別に許ーーって、大祐!貴方は自分の怪我から治してっ」

「え?…あぁ、ですね」

「全くもう…大祐と居ると、何処でも気が緩んでしまうわね。困ったものだわ?本当に…」

「…ん、疑問形で返されても、此方が困るのですが…」

「ふふっ、相変わらず…ね」

 

ㅤこんな状況だというのに、リゲルさんと話しているだけ…それだけで、心が安らぐ。

ㅤなんかこう…例えようの無い雰囲気に包まれるというか、リゲルさんの包容力が高いというか。

ㅤ彼女の意外な一面に気付かされた瞬間だった。

ㅤいやまぁ、以前から何と無くは感じていたが。

ㅤリゲルさんは自分の認めた人物にしか、心を開かないし相手の話すら聞いてはくれない、らしいからな…。

ㅤ何時も彼女の側に居るあづみさんが話していた事だ、間違いは無いだろう。

 

ㅤ取り敢えず、その話は後にするとして、俺はtype,Xに切り裂かれた腹部に回復薬をかける。

ㅤするとまぁ、何という事でしょう。

ㅤ傷は瞬く間に消えていくではありませんか。

ㅤ確かに、Beforeafterにでも出られそうだ。

 

ㅤその後直ぐ、type,Xの体を仰向けにし、全体に満遍なく回復薬をかける。

ㅤ体に刻まれた傷も、彼女の表情も、虚ろだった瞳も、徐々に回復していく様子だ。

ㅤ一方、屈辱的な表情になって…は無く、何だか一安心しているような表情を浮かべている。

ㅤ恐らく彼女にとって、もう二度とベガの顔が見れなくなる事が、最大の絶望だったのかもしれない。

ㅤ何れだけ愛して止まないのか…。

 

「だ、大祐くんっ…大丈夫…?」

 

ㅤこの可愛らしい声の主を愛して止まない、そんな俺が言えた事ではないか。

 

ㅤあづみさんは、傷一つ無い俺とtype,Xを交互に見つめながら、おどおどとした様子で此方に歩み寄って来る。

ㅤ流石に状況が掴めない、といった感じだ。

ㅤずっと木の陰に隠れて、リゲルさんのサポートに徹してくれたあづみさん。

ㅤ何だか、しっかりと彼女の顔を見たのが久々に感じた。

 

「…大祐、くん?」

「…ん、あぁ…ごめんね。あづみさんは大丈夫?怪我一つ無い?」

「…///」

「どうかした?」

 

ㅤ彼女の瞳をじっと見つめる様な形で話していると、あづみさんの頬が赤く染まった。

 

「…ん、んん…違うの、何でも無いよ…?」

 

ㅤあづみさんはそう言いながら、俺から顔を背ける。

ㅤ然し、その視線は再度俺を捉えようと此方に目を向け。

 

「はわっ…!」

 

ㅤ何かに気付いて、又もや視線を逸らす。

 

「…?」

「さぁ…?」

 

ㅤ全く以って可愛いのだが、視線を逸らす理由が分からないと、リゲルさんと顔を合わせたが。

ㅤ腕を曲げ、両手を広げて、『?』を浮かべられただけで終わった。

ㅤどうやらリゲルさんにも分からないらしい。

 

「…あ、きさらちゃんは?」

「え、えっと…彼方でtype,IXってバトルドレスを見張ってるよ…?」

「ありがとね、ちょっと呼んでくる」

「う、うんっ」

 

ㅤ相変わらず。

ㅤあづみさんが照れている理由が。

ㅤ分からずじまいだ。

 

ㅤ取り敢えずその事は置いておき、きさらちゃんを此方に連れて来るべく、彼女に近付いて行く。

ㅤ俺がその場を離れようとした時、type,Xの口から何か聞こえたのは確かだろう。

ㅤ恐らく、二人から俺が離れ、自分がその二人の至近距離に居るのにも関わらず何も出来ない事に、不満を覚えているのか。

ㅤそんな感じの事を口にしていた。

 

…様な気がする。

 

ㅤしっかりと聞き取れなかったのは少々不安だ。

ㅤが然し、今気にする事でも無いだろう。

 

「きさらちゃん、大丈夫ーー」

 

ㅤきさらちゃんとの距離は然程遠くは無い。

ㅤtype,Xの口から放たれた言葉に少しばかり気を取られながらも、きさらちゃんの元へと足を運ぶ。

ㅤまぁ、ちょっと走っただけで直ぐに着く様な距離だ。

ㅤそして声を掛けながら、彼女に近寄ったその時。

 

ㅤきさらちゃんは俺を目掛けて、勢い良く飛び込んで来た。

 

「…おっと…?」

 

ㅤ彼女の唐突な行動に、疑問を抱きながらも抵抗無く受け入れ、両手を背中に当ててやる。

 

「きさらちゃんまで、どうしたの…?」

 

ㅤそう声を掛けると、一拍置いて可愛らしい声が耳に入って来た。

 

「…………きぃ」

 

ㅤだが、何故か細々とした声だ。

 

「ん?」

「………きぃ」

「うん」

「…ゃくに…った…?」

 

ㅤ何時もの…元気を与えてくれる様な、幼さ全開の声とは違う。

ㅤ彼女は小さな声で、「役に立った」かと聞いて来た。

ㅤどうしてそんな事を聞いてくるのか、どうしてそんなに気落ちしているのか、気になる所は色々有る。

ㅤだが、俺は先ず、こう答えた。

 

「…うん、充分過ぎる位に、ね」

「…!!」

ㅤきさらちゃんは今回、本当に頑張ってくれていた。

ㅤ彼女の存在に助けられたと言っても過言では無いだろう。

ㅤ頑張った、の一言では足りない位に、きさらちゃんが健闘してくれたのは事実。

ㅤ勿論あづみさんやリゲルさん、A–zちゃんだって、誰か一人欠けていれば勝てなかった可能性が高い。

ㅤ要は、彼女達の御蔭で勝てた様な物だ。

ㅤ何時も、という言葉を否定するつもりは無いし、寧ろ肯定する程だ。

 

ㅤ彼女達が側に居てくれるだけで、それだけで力になるのも事実。

ㅤ俺の意識が其方に向き過ぎているのも、否定はしないが。

 

「きぃ、ぁく、たった。ろーぜ、ほめてくぇゆ…?」

「まぁ…驚くだろうなぁ。きさらちゃんの力無くして勝てなかったのは確かだし…ヴェスパローゼさん、きっと褒めてくれるよ」

「だいすけ、は…?」

「俺は褒めるも何も………今回は本当に、きさらちゃんに助けられた。だから、褒めるとかいうレベルの話じゃないよ。…ありがとね、きさらちゃんの御蔭。これ位しか頭に思い浮かばないのが、もどかしいよ」

「もおかしぃ…?だいすけ、きぃ、ほめてくえた?」

「うん、存分に」

「ぅゅゅ〜♪♪」

 

ㅤきさらちゃんは、俺の腕の中で、満面の笑顔を見せていた。

ㅤ其処までヴェスパローゼさんの役に立ちたいと願う…その思い。

ㅤやはり二人を、パートナー同士、と呼ぶには違う気がする。

ㅤもっとこう、深いというかーー

 

ㅤ兎に角、今考えるべき事でも有る気はするが、別の事の方が重要か。

 

ㅤそれに、言葉にするのは簡単、とは良く言う。

ㅤ今この場で、限られた言葉しか頭に浮かばない。

ㅤ有難う、感謝する、君の御蔭だ、そんな事は言わなくたって当たり前だ。

ㅤ態々俺が口にする必要等無い。

ㅤ相手が望めば、という、受け身の精神は変わらずだが。

 

「なんか擽ったいな…ん…?ああ…」

 

ㅤ話が変わるが、少し背を低くしてきさらちゃんを受け止めた為、彼女の顔や髪の毛が、腹部に当たっている訳なのだが…。

ㅤなんかさわさわする。

 

ㅤそう疑問に感じたが、直ぐに理由が分かった。

ㅤtype,Xに切り裂かれた傷は回復薬で治ったが、流石に衣服までは駄目だと。

ㅤ直に、きさらちゃんの肌や髪の毛の感触が伝わるなと思えば、そういう事か。

ㅤ俺のこの『割れてはいるが最低限の筋肉しか無い』、完全に痩せている御蔭で出来た腹筋に、きさらちゃんが自分の顔を当てて………熟、痩せていて良かったと思う。

ㅤバトルドレスを装着した時は、衣服も何もかも復活した…やはりバトルドレス、謎である。

 

「…うわぉ…!?」

「うゅ?」

 

ㅤそうして彼女と戯れていると、目の前に凄まじい光景が映っていた。

ㅤ先程迄活き活きと戦闘していたtype,IIとtype,IXが、蜂達に囲まれ、手足を拘束されているでは無いか。

 

ㅤ恐らくtype,IIは、リゲルさんに敗れて、更に身動きの取れないよう蜂達に捕縛されたのだろう。

ㅤ二人共意識を失っているのか、目を開けてもいなければピクリとも動かない。

ㅤtype,Xに至っては、蜂達に刺された箇所がもろ見えだ…大人が見ても泣くぞ。

ㅤ今蜂達が拘束を外せば、顔面から地面に落下するのだろう。

ㅤそんな事を考えてしまう俺はゲスだな。

 

「………という事は、勝った、のか」

「実感が湧かないのも仕方無いわ」

 

ㅤ今更ながら気付く。

ㅤ此方は全員生存、相手は全員機能停止。

ㅤ俺達は勝利を手にしたのだと。

ㅤだが、何故かパッとしない。

 

ㅤ背後からリゲルさんの声が聞こえ、彼女とあづみさん、二人に連れられたtype,Xが、此方に近寄って来た事に気が付く。

 

「リゲルさんも?」

「えぇ…序盤はあんなに押されていたのに、type,IIったらリソース切れで呆気なく。大祐が居てくれる事の有難みが、嫌という程実感出来たわ」

「要は只のタンク…この能力が無ければーー」

「そ、そんなつもりで言ったんじゃなくてっ………大祐には、何時も側に…えっと…居て欲しい…わ?」

「えへへ…私も、リゲルと同じ」

「目の前で惚気話を聞かされる身にもなって下さい」

「ますた、相変わらずですね」

 

ㅤ待て、惚気話を展開したのは俺じゃ無いぞ。

ㅤそう突っ込もうとしたが、まさかtype,Xに突っ込まれるとは。

ㅤA–zちゃんの『相変わらずですね』という言葉の意味も気になるーー

 

「…A–zちゃん…ごめん、何処に居た?」

「ますたからの指示が無い為、ずっと木陰にて様子を伺ってました」

「一瞬でもA–zちゃんを忘れた俺を、誰かぶん殴ってくれ」

「…酷いです、ますた」

「…!!」

 

ㅤ俺の言葉に、少し不貞腐れた表情を浮かべるA–zちゃん。

ㅤ彼女を放っておいてしまった罪悪感に苛まれるが…何より、A–zちゃんが感情を露わにするとは。

ㅤ明らかに動揺する自分が居る。

ㅤお詫びに何かしてあげるのが礼儀か、此れからはもっと、彼女に意識を向けてあげるのが一番か。

 

「はぁ……………」

「ますた、関係の無い話はやめにしましょう」

「…一瞬でも必死に悩んだ俺の苦悩とは」

 

ㅤ悩みはA–zちゃん本人に、瞬時にして潰された。

 

「丸で、コント…?」

「あづみと瓜二つの少女が大祐とコント…じゃなくて、私達は何でこんなにまったりしてるの…」

「えへへ…何だか、気が緩んじゃったね」

 

ㅤそう言いながら、あづみさんは此方に視線を送る。

ㅤ何だか照れ照れと、落ち着きの無い様子だ。

ㅤその理由を是非教えて欲しいものだ。

ㅤ気が緩みきっているのは、全員一緒だが。

 

「兎に角、どうします?一度戻ってヴェスパローゼさんの所で休む、加えてオリジナルXIIIの3人を任せるか、このまま旅染みた事を続けるかーーー」

 

ㅤと、全ての物事が順調に進んでいると思われた。

ㅤ今からどう行動するか、オリジナルXIIIを抜いた全員で、話し合おうとしたその時。

 

ㅤ未だ俺の腹部に蹲っているきさらちゃん、彼女に異変が起きた。

 

ㅤ先程から口数が少ない…確かに、元からあまり喋る方では無いが、違和感が有った。

ㅤついさっきまで元気良く喋っていた、のにも関わらず、急激に何も言わなくなる。

ㅤ不自然極まりない。

 

「…ちょっとお待ちを。きさらちゃん、大丈夫…?」

「………………」

 

ㅤ俺は話を途中で切り上げ、きさらちゃんの体を抱き上げた。

ㅤすると、ある事に直ぐ意識が向く。

ㅤきさらちゃんの小さな体が、小刻みに痙攣しているのだ。

ㅤビクビクッと震え、抱き上げる俺の腕に、身を委ねている。

ㅤ要するに…体に力が入っていない。

 

「きさらちゃん!?」

「……だ…ぃ…」

 

ㅤ俺は焦りながらも、冷静に…俯いている彼女の顎に手を添え、上に上げて俺と視線を重ねる。

ㅤだが、きさらちゃんの表情は完全にぐったりしていた。

ㅤ衰弱しきった、というのは言い過ぎかもしれない。

ㅤが、後少し症状が悪化すれば、正に当て嵌まる言葉となり得る。

 

ㅤ取り敢えず俺はコートを脱ぎ、地面に敷き、きさらちゃんをその上に横にさせる。

ㅤ息が荒い…呼吸が浅い、体は常に痙攣している。

ㅤ彼女の身に一体何がーー

 

「…っ!?…これ…は…」

 

ㅤ手が震え、視界が狭まり、呼吸困難。

ㅤ現在進行形できさらちゃんに起きている症状が、同タイミングで俺にも現れる。

ㅤ全く同じ症状かどうか定かでは無いが、このタイミングを偶然と言うのも信じ難い。

ㅤ思考が、頭が、脳が機能しない…。

 

ㅤまずい…今はきさらちゃんが最優先なのに…なんでこんな…!!

 

ㅤぐらぐらする…視界が定まらない…真っ黒に染まっていく。

ㅤ逆に頭の中は真っ白に染まり、体に力が全く入らない。

ㅤまだ…まだだ、此処で倒れる訳にはいかない。

 

「大祐っ、大丈夫なの…!?」

「大祐くんっ…」

「心配無用…です…俺は何とかなります、からっ…きさらちゃんを…!」

「ますた…」

 

ㅤ一番伝えたい事は伝えた。

ㅤ兎に角、きさらちゃんの症状をどうにかしなければ…。

ㅤ俺と全く一緒の度合いで発症しているとなると…彼女の幼い体にはキツ過ぎる。

ㅤ耐えられる…訳が無い。

ㅤこのまま時間が経ってしまうと、きさらちゃんの身が持たない。

ㅤ経過してしまう前に対処しなければ…!

 

「…!!type,Xは!?」

「……居なくなってる、わね」

「全員が目を離した隙に、逃げたのかと」

「…くそっ…」

 

ㅤ何から解決すれば良い。

ㅤいや…それでもきさらちゃんが最優先だ。

ㅤまだ7歳の少女に、こんな酷い症状を耐えろ、という方が可笑しい。

ㅤ対処法が、治す方法が…絶対にある筈だ。

 

ㅤ治す…治す…?

ㅤそうか、簡単な話だ。

ㅤまだ余りに余っている回復薬を使用すれば、治る見込みは多いにある。

ㅤ問題は体内に含んでも大丈夫なのか、効果はあるのか、といったところだ。

ㅤどう使用しても、害を為す…とは考え難い。

ㅤこの症状が、治まる可能性がある、ならやるしかない。

 

「だ…ぃ…しけ…」

「少し待ってて、ね…きさらちゃん」

「う…ぃ…」

「大祐、私も手伝うわっ」

 

ㅤ今の俺には、症状に苦しんでいるきさらちゃんしか、目に映っていなかった。

ㅤこうして後ろから支えてくれるリゲルさんですら…頭から消えていた。

ㅤもう…一杯一杯で、自分の事等どうでも良くて。

 

「…はぁっ…はぁっ………リゲ…ルっ……」

「ますた、リゲル様!あづみ様まで…!」

「あづみっ!」

 

ㅤあづみさんまで…!

 

ㅤ先ずは二人の回復が最優先だ。

ㅤ一刻も早く回復薬をーー

 

ーーー




来週の更新は怪しいかもです。
精一杯頑張りますが、更新出来ない場合は活動報告にてお知らせ致します。
良ければ来週の月曜日、目を通して頂けると幸いです。

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