Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第二十九話: 最悪の告白

 今更ながら気付く。

 何故急に「貴方を守る」なんて発言をしてきたのか。

 Xちゃんは俺に対し、どういう想いで言ってきたのか。

 死なれたら困る事でもあるのか。

 

「…そんな事を急に聞かれても困ります。」

「ですよねー。」

 

 Xちゃん、俺、リゲルさんの順で横に並びなから会話を繰り広げる。

 

「でも、彼奴を倒さなければまずいんでしょ?」

「リゲルさんの言う通りです。下手すれば此方側が全滅ですからね。」

「へぇー…全滅、ね。」

 

 リゲルさんは何だか、若干の余裕を醸し出していた。

 顔には少しの笑顔、それこそ余裕の表情とでも言えば良いのか。

 気持ちが軽そうに見える。

 左に居るXちゃんも、余裕とまでは行かないが落ち着いた表情を見せてくれる。

 

 唯一、焦っているのは俺だけか。

 相手の持つ短剣…あれが恐ろしくてならない。

 何故あの時、アヴァランチエクシアのリソースが全消費したのか。

 原因は一つしかない。

 

 あのまま行けば、『TRANS-AM』の限界時間に至る前に先手を取る事が出来た筈。

 だが、彼奴の短剣に触れた瞬間に俺のリソースは無くなった。

 

 確かにリソース残量は元から少なかったが、根本的に激しく動かなければリソースは激減しない。

 それにも関わらずリソース全消費。

 あの短剣に特殊能力が付与されているのは、目に見えて分かっている。

 恐らく「短剣に触れた者のリソースを消費させる」能力だ。

 しかし、俺が知りたいのは其処じゃない。

 短剣に触れて失うリソース量は持ち主の全てのリソース。

 消費なんて物では無い。

 

「…という訳で、気を付けて下さいね。」

「私は心配要らないわ。あづみからのリソース供給が有るから。…そりゃあ、限界も有るけど。」

「私に限っては貴方との戦闘で、持ち得ているリソースの大半を失いました。このまま戦うのは死ぬ様な物です。」

「んで、ここで俺の出番です!」

 

 Xちゃんとリゲルさんは、俺を見ながら首を傾げた。

 お前、何かあんの?みたいな顔だ。

 頭の上には?マークを浮かべているのが見える。

 実際には見えないが。

 

…まぁそれは一旦置いて。

 寧ろここで俺が活躍しなくてどうする。

 こんなに素晴らしい能力を持っているのに。

 使わないなんて勿体無い。

 

 制御出来てない時点で勿体無い使わないと、なんて言えないが。

 

「対象はXちゃんとリゲルさんの二人。」

 

 俺が味方だと想っていれば良いもんね。

 

「少しの制御を可能になったとはいえ…押さえ付けるのは大変だな。」

「大祐?さっきから何の独り言を――」

 

「[リソース放出能力]、解放。」

 

 リソース放出能力。

 俺が味方と認識した者にリソースを与える能力。

 何と無くだが、押さえ付けるのに成功。

 無闇矢鱈に放出し続ける事は無くなり、制御の一歩を踏み出した。

 今更感が半端無いけど。

 

 だが、一度解放すると再度押さえ付けるのは難しい。

 何日間か掛けて落ち着かせなければならない。

 そこも完璧に制御しなければ。

 

「何…これ。リソースが凄い勢いで回復してる。」

「確かに凄いですね。殆ど消費した筈ですが、全部回復するまで増え続けて…。」

 

 二人共、至極驚きのご様子だ。

 

「これが俺の[リソース放出能力]です。名前は雑に決めました。」

「これならリソース限界を保てそうです。感謝しなければなりませんね。」

 

『リゲル、このリソースは誰の…?』

 

「どうやら、あづみにも届いているらしいわね。このリソース、大祐の物だって。」

 

『大祐くんの……リソースって、不思議な感じだね。何だかポワポワするよ?』

 

「だって?」

「いや…俺に聞かれても…兎に角、敵さんを待たせるのも悪いですし。」

「そうですね。早いとこ此方から仕掛けましょう。」

 

 本音を言わせて貰うと、先手を仕掛けなければ相手からの先手が怖い。

 行き成りピンク色のぶっ太い照射ビームを放たれても困るし。

 変形して赤いのに乗って、そこから細い照射ビーム&誘導の強いミサイルを出されるのも嫌だし。

 うわ、すっげー害悪。

(※最早害悪ではありません。一月前に比べれば。)

 

 なんてのは良いとして、此方はリソースが無限なのだ。

 俺が死ななければの話だが、そりゃ俺も前線に立ちますよ。

 女性だけ突貫させるなんて、男として何と情けない。

 黙って前出て死んでこいよ、男は。

 

…あ、死んじゃ駄目か。

 俺まで死ぬ事になるやん。

 それは駄目だね。(自己中の頭)

 

 それこそ、へっきーが自己中の典型的な例だけど。

 親友…というか腐れ縁さんが一緒に来てくれれば、少しは楽になってただろうに。

 こう考えている時点で俺も自己中認定だな。

 

「…何で彼方から攻めて来ないんでしょうか。」

「さぁね。少なくとも、オリジナルXIII達みたいに策も無しに突っ込んでくる奴じゃ無いだけでしょう?」

「…リゲル、共闘は今日限りです。明日からは更に攻め立てますよ。」

「良い度胸だこと。此方には大祐が居るんだから。」

「リゲルさんも十分お強いですよ。唯、俺が上手く連携してあげれてないだけで…。」

「そんな事無いわ!だって現に、私は何回も助けて貰ってばかりで――」

「…どうでも良いです。先に行かせて貰いますね。」

 

 俺とリゲルさんが話し合いをしていると、Xちゃんが単独で相手に突っ走った。

 こういう時は焦らずゆっくりの方が良かったりするんだが…。

 仕方ない。

 Xちゃんを一人で戦わせるのは論外だ。

 俺もさっさと前線張りますか。

 

「リゲルさん、援護をお願いしますね。」

「OK!大祐の背中は私が守るから!」

「Xちゃん、初めてだけど連携を忘れなくね。」

「当たり前です。兎に角、あの短剣に触れないように立ち回らなければ…。」

「面倒臭いよね。」

 

 だが、策としては出来上がっている。

 俺とXちゃんが敵の注意を引き付け、リゲルさんがでかいのを一撃噛ます。

 完璧だ。

 

 問題は、どうやって彼奴の反応速度を越せるかだ。

 幾ら正面突破だったとはいえ、『TRANS-AM』を見切る程の反射神経。

 ブースト解放を使っていなかったのもあるが、それでも余裕で受けきる程。

 『TRANS-AM』とブースト解放を重ねがけに使用していたとしても、結果は変わらなかっただろう。

 しかし、欲を言ってしまえば。

 リソースが全て無くなる前に解放を使い切りたかった。

 何故だか勿体無い気がして。

 使える物は使うというのは、正にこの事。

 後悔するには遅過ぎるけど。

 

「そこです!」

「もらった!」

 

 俺とXちゃんは、黒い布を被っている中二病に急接近。

 Xちゃんは左斜め上から、俺は右斜め上から。

 二人での同時攻撃を仕掛ける。

 互いに刃を当てる先は同じだが、それぞれタイミングをずらして攻撃。

 一刀目にXちゃん、ニ刀目に俺。

 順番に、ファングで形成された剣とアロンダイトで切り掛かる。

 

「…」

 

 しかし、黒布(敵の略称)は俺達を無視。

 素早く攻撃を躱し、真っ先にリゲルさんの元へ向かう。

 

「なっ…速いなおいっ!」

「私達に目もくれず…策は読まれてますね。」

 

 Xちゃんと会話を交わせつつも、此方も即座にリゲルさんの元へ向かう。

 策の通じない相手はこれだから困る。

 リゲルさんを襲わせなんかさせない。

 

「GNライフルビット、GNピストルビット、シールドビットを一斉に展開!」

「行きなさい、リゲルを援護するのです!」

 

 自分達が速さで間に合わないのであれば、飛び道具で相手の邪魔をすれば良い。

 どうやら、Xちゃんも同じ事を考えていたようだ。

 

 俺はデスティニーからサバーニャに換装。

 自分達の放ったビット/ファングは瞬く間にリゲルさんの元へ。

 シールドビット、GNライフルビット/GNピストルビットは彼女の周りに展開。

 リゲルさんから敵を遠ざける様にビームを乱射する。

 Xちゃんのファングは黒布の周りを包囲。

 自ら突撃させる訳ではなく、罠の様な設置をさせる。

 

 リゲルさんはそのまま、力の充填を行う。

 限界まで溜めた一発を放つ準備中だ。

 

 一方で黒布は、GNライフルビット/GNピストルビットのビームを最低限の動きで全て躱し、ファングを地道に短剣で壊していく。

 

「この距離なら…!」

 

 俺は自分が使う為に残していたGNライフルビットを構え、狙い撃ちを試す。

 目的は、黒布の手から短剣を弾く為。

 何発か連続で撃ち続け、何としても短剣を狙う。

 

「くそっ…当たらねぇ…!」

 

 だが、黒布は俺の狙撃すらもするすると躱し、Xちゃんのファングを順調に破壊する。

 一撃に一つ、一撃に一つというのを見る限り爆発的な範囲攻撃は持っていないと見える。

 まだ確定的では無いが、黒布の剣捌きは中々の物。

 落ち着き、丁寧なスタイルだ。

 恐らく戦闘スタイルは、最初は速さで敵を翻弄。

 敵に隙があれば一気に攻め込み、短剣で連続攻撃を仕掛けて短期決戦で止めを刺す感じか?

 もしそうなら、もたもたしてらんない。

 遠距離で早めに仕留めねば。

 

「それを壊しても無駄です。何時までも再生し続けますから。」

「………」

 

 あの無言な感じが怖いな。

 何か企んでいるような…。

 

 それにしても、そうか。

 Xちゃんの使うファングは再生可能なのか。

 素材は何で作っているのか気になるが、今は関係無い。

 俺はどうにかして、あの短剣を――じゃなかった。

 黒布の注意を引かなければ。

 

「貴方は何者なんですか!」

「………」

「何が目的で私達を――」

「…黙れ。」

 

 ん?

 一体何があったんだ?

 さっきまで接近戦でビームダガーの連激を噛ましていたXちゃんの動きが、急に止まった。

 ここからじゃ何も分からない。

 兎に角、俺も黒布に近接を仕掛けに行くか。

 このままじゃサバーニャのリソースも切れてしまうし。

 一旦GNライフルビット/GNピストルビットを回収。

 シールドビットはリゲルさんに展開したままにしよう。

 

「デスティニー…行くぞ!」

 

 再度デスティニーに換装。

 直ぐ様、Xちゃんと黒布の状況を確認しに行く。

 

 すると、Xちゃんの展開していた全てのファングが次々に地面へ落ちていく。

 そして黒布は、動けないXちゃんへと短剣を構える。

 

「…死ね。」

「やらせるかぁ!」

 

 アロンダイトを右手に持ち、左手で重点を支えながら突きのポーズで黒布を襲いに掛かる。

 それに気付いた黒布はXちゃんから離れ、俺のアロンダイトをスッと避けながら短剣を振り払う。

 

「ぐっ…!」

 

 背後を取られてしまった俺は、体を即座に半回転。

 同時にアロンダイトを右手から左手に持ち変え。

 振り向き、黒布を視界に入れた途端に横から斬り掛かってくる短剣に対して、空いている右手を構える。

 デスティニーに与えられた特権、パルマフィオキーナを掌から放つ。

 

…が、黒布は危険を察して俺から距離を取った。

 

「何なんだよ、あの反応速度は…!」

「うぐっ…」

 

 ふと、直ぐ側からXちゃんの声が耳に入る。

 

 そうだった。

 俺はXちゃんの救援を兼ねて黒布に突撃したのに、何本気になってんだ…。

 目的は彼奴の注意を引き付ける事。

 態々戦闘を交える為に戦っている訳ではない。

 

「…Xちゃん、急に動きが止まったけど一体何が?」

「リソースを…全て失いました。御蔭で限界解放が解除されてしまい…。」

「与える速さよりも――」

「失う速さの方が圧倒的です。」

 

 マジかよ。

 これじゃ戦いにならないじゃないか。

 しかも、Xちゃんはあの短剣に触れてすらいないのに…。

 どういう事だよ。

 完璧に手詰まりだ。

 黒布の「相手のリソースを失わせる」原理が分からなければ、此方は迂闊に手が出せない。

 

 どうすりゃ良いんだよ…!

 

 いや、落ち着いて考えろ。

 唯、黒布の注意を引けば良いだけの話。

 態々戦う事なんて――

 

 また同じ事を繰り返し考えるだけか?

 戦わなければ相手の意識を向けて貰う事なんて出来ないんだぞ?

 戦う前提で考えなければ。

 

 どうすれば良い。

 どうすれば彼奴と張り合える。

 一体何をすれば――

 

「…お前も、死ね。」

「…っ!」

 

 此奴、いつの間にっ…!

 

 どうする。

 黒布は既に短剣を斜めに振り翳している。

 受け止めるか?

 いや、それじゃ本末転倒だ。

 それとも躱すか?

 その選択肢もない。

 黒布の反応速度が異常なせいで[情報演算処理能力]が間に合っていない。

 どうするんだ。

 このままじゃ攻撃を正面に喰らうぞ。

 何をすれば、何をどうすれば最善手なんだ…!

 

「…」

「…!まずっ――」

 

 悩み。

 それでも分からなくて。

 それでもどうにかしなければならなくて。

 そんな事を考えている内に、俺は黒布の短剣に左斜め上から切り裂かれた。

 

「が…はっ…」

「…弱いな、お前。」

「大祐!!」

 

 遠くから、リゲルさんの声が聞こえてくる。

 だが、実際にはそう遠くないのかも知れない。

 彼女の方を向くと、重鎮を中断。

 此方に向かおうとしていた。

 

…体が徐々に重たくなっていく。

 デスティニーも、リソースを全て失ったようだ。

 更に俺が致命傷を負った事により、シールドビットが強制回収。

 リゲルさんを守ってくれる物は無くなった。

 

 本当に、救いようの無い馬鹿だな俺は。

 頭で考えるわりには行動に移さず。

 それの結果がこの様だ。

 何でも良いから行動すれば良かったんだよ。

 ただ突っ立ってないでさ。

 

「…お前等も、此奴の後を追わせてやる。」

「それは無理な話ね。第一、大祐はまだ死んでないから!」

「…じゃあ、お前等から先に逝かせてやるよ。」

「このっ…!」

 

 あぁ、意識が朦朧とする。

 結構ざっくり斬られたな。

 傷口の深さが、俺の死を物語ってるよ。

 ギリギリ心臓までは届いてない…か。

 でも、辛いな。

 痛いな。

…このまま、死ぬのかな。

 

 俺が死んだらどうなるんだろうか。

 

『…しぶといな。』

『こんなところで…!』

『リゲル、九条大祐の回収を――』

『…邪魔。』

『くっ…はっ』

『typeX!』

 

 リゲルさん?

 の、声だよな。

 そう言えばあづみさんの声、全然聞けなかったな。

 二人に…自分の気持ちすら伝えれなかった。

 

 そうだ。

 ソトゥ子さんに注意されたのに、ここまで来たのに。

 何時も何時も心の中で「可愛い」だの「美しい」だの、想っているばかりで。

 何一つ、自分の気持ちすら打ち明けられないで。

 二人の想いも聞けないまま。

 

 俺は…死ぬのか?

 

『…此奴等。』

『何…蜂?プラセクトの大群?』

『…お前達も邪魔だ。』

『リゲル、敵の注意が逸れた今の内に…!』

『分かってるわ!…typeX、有り難う。』

 

 暗くなっていく意識の中で、俺の視界には何匹もの蜂の姿が目に映った。

 

 何だ此奴等。

 さっきからブンブン煩いな。

 かなり大量の蜂が周りを飛んで――

 

 すると、一匹のデカイ蜂が俺の体を足で掴んだ。

 何が目的かは知らんが、まぁこのままで良いだろう。

 俺はどうせ死ぬからな。

 投げ遣りになっているが、もう無理だ。

 俺の役目は終わった。

 自分の使命なんてものも………。

 

 使命…?

 

「大祐に…近寄るな!」

 

 と、先程からブンブンと煩い音に紛れてビームサーベルを振る音が頭に響く。

 まだギリギリで保っている意識を、そちらへと向ける。

 

 いつの間にか目の前に居たのは、デカイ蜂でなく金髪の美しい女性だった。

 

「大祐っ!」

「…リゲル…さん。」

 

 俺はなけなしの力を振り絞り、言葉を口にする。

 彼女と喋るのも、これで最後か。

 あづみさんとも――いいや、二人と……

 

「折角再会出来たのに…また、離れていくの?何で大祐は、一人で行っちゃうの…?」

「…リゲル、さん…俺は――」

 

 今更かも知れないけど。

 後悔ばかりが積もるけど。

 自分の気持ちは、二人に対する想いはしっかりと伝えよう。

 此方が一方的になってしまうが、許してくれるかな。

 

『リゲル、どうしたの?何で泣いてるの…?』

「…あづみ。大祐が今、命に関わる程の致命傷を負ってしまったの。でも、あづみは其処にいて。私が大祐を連れて――」

『―――』

「あづみっ!あづみっ!?」

 

 あぁ、使命か。

 オリジナルXIIIを解放する事だっけ。

 

 違うな。

 

 この世界で幸せを見つける事だっけっか。

 

 それも二の次だ。

 

 これだけは絶対に投げ遣りになっちゃいけない使命が、俺には有る筈だ。

…二人を、守り抜くという使命が。

 

「リゲルっ!大祐くんっ!!」

「何で来ちゃったの、あづみ!此処は危ないから逃げて――」

「嫌だっ。大祐くんともリゲルとも離れているのは、もう辛いのっ!」

「……分かったわ。早く大祐を連れて、此処から逃げましょ!」

「大祐くん…また一緒に、リゲルと三人で楽しく旅をしよ…?」

 

 そうだ。

 俺がいなくなったら、二人を守ってくれる者達はいるのか?

 彼女達を狙う奴等が多い中で、挫けずに守り抜く事が出来る者は存在するのか?

 

 いや、違う。

 求めてばかりじゃ駄目なんだ。

 俺があづみさんとリゲルさんを守り抜くんだ。

 

「…二人共、聞いて…くれますか…?」

「大祐くんっ!」

「大祐!」

「…これが恐らく、最後の会話に…なります。…俺の想いを、遅かったかも知れませんが…伝えさせて、貰いますね。」

「最後の会話…そんな物は存在しないわ。ずっと三人で、仲良く話して…。」

「…すみま…せん…でも、今回限りは…まずいです、ね…。なので、二人に俺の…気持ちを…伝えます。」

「大祐くん…」

 

 もう、後戻りなんか出来ない。

 最後の会話がこれだなんて、嫌だけど。

 望んでもいない形で告白する事になるけど。

 

「…ずっと二人が――あづみとリゲルの事が…好きでした。…何時までも三人で居たかった。俺の勝手な…恋心、ですけど…ね。」

「大祐…」

 

 伝えた。

 自分の気持ちをはっきりと。

 二人の返答がどうであれ、何だかすっきりした気分だ。

 自分の中でのもやが取り除かれた。

 後は二人の想いを聞くまで意識を保っていれれば――

 

「…私も、ずっと好きでした。大祐くんの事が。けど、言えなかった。いつか伝えようと想ってた。でも、怖かった。…大祐くんが私をどう想ってくれているか、分からなくて。」

「…あづみさん。」

「だからね、大祐くんから…その…告白して貰って、凄く嬉しかったの。両想いだったんだ、私も大祐くんに想いを伝えなきゃって。…貴方にしっかりと、自分の本心を。」

「…」

「大祐くん……私は、貴方の事が好きです。もし…大祐くんが良いなら、これからも一緒に色んな事を………」

 

 そう言い掛けて、あづみさんは頬を真っ赤に染めながら言葉を止めた。

 可愛いな。

 というか、あづみさんが俺を好きでいてくれたなんて。

 丸で夢の様な気分だ。

 これからも、ずっと一緒に居たかったなぁ…。

 

「…大祐。私も、貴方の事が好き。「恋」なんて感情が芽生えたのは初めてで。怖くなって、けど、抑える事も出来なくて。」

「…リゲルさん、まで。」

「何時から大祐が好きになっていたのか、私自身にも分からない。…でもね、貴方が好きなのは事実なの。それだけは分かっていたから。…大祐と離れ離れになった時、私とあづみは凄く寂しかった。それが今、一度じゃなく…二度も起きようとしている。お願いだから、もう、離れないで。私達が先に行くのも、大祐が後を追うのも嫌っ。その逆なんて以ての外…私の望みは三人でずっと一緒に…!」

「…二人から愛されてる、なんて…俺はこの世界の誰よりも、幸せ者…ですね。」

 

 朦朧とする意識の中、あづみさんとリゲルさんの泣いている声だけがはっきり聞こえてくる。

…女性を泣かすなんて、男失格だな。

 何が守り抜くだよ。

 実際には守れず、自分だけが先に昇天寸前じゃないか。

 二人を泣かせてしまいもした。

 寂しいとも想わせてしまった。

 迷惑を何回掛けたかも分からない。

 

…でも。

 それでも。

 

 

 

 俺は二人と一緒にいたい。

 

 

 

 誰から何を言われようが構わない。

 俺は、自分の意思で二人を守りたい。

 そこに他人の意見など、存在しない。

 

 例え否定されようが、俺はずっと二人と一緒に生きて…明日を掴む。

 

 そう感じながらも、思い残しながらも。

 

「大祐くん…?大祐くんっ!!」

「………」

「う…そ…、大祐…目を開けなさい…どうして何も喋らないの?」

「大祐くんっ…嫌だよぉ…大祐くんがいなきゃ、私とリゲルは――」

 

 俺の意識は暗闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

こうなった元凶?

誰のせいだっけ。

…嗚呼、二人から自由を奪った奴等だ。

アドミニストレータやらオリジナルXIIIやら。

もう救うだの解放するだの関係無い。

アドミニストレータもオリジナルXIIIも、二人の居場所を無くしていく奴等は。

 

容赦無く潰す…!

 

二人を守り。

それに歯向かう者共は俺が力で捩じ伏せる。

そして、俺が彼女達の居場所になってあげれば良いだけの話。

誰が相手だろうと、最早そこに善悪は発生しない。

天使だろうが悪魔だろうが、二人の未来を阻むものは許さない。

 

それでも二人を邪魔する、そんな奴等は――

 

(オレガ…コロシテヤルヨ。)

 

[限界経験値を突破。特殊能力『EXAM(エグザム)システム』を解放します。]

 

‐‐‐

 




‐‐‐

「…ふぅん。あの男、使えそうね。死ぬ寸前なのが惜しいけど。」
「ろーぜ?」
「きさら、彼処にいる死に掛けを連れて行くわよ。様子見として僕達(蜂)を偵察に出してみるから。駄目そうなら、きさらの出番。」
「きぃの?」
「そう。私があれを連れて来るから、きさらはリソースの供給を頼むわよ。」
「うぃ。」
「…できれば戦闘とかしたくないけど、まぁそうなったら仕方無いわね。最低限、あの男を拐えば良いだけだから。」
「………」
「きさら、どうかしたの?」
「…ろーぜ、だいすけ、さらぅ?」
「――だいすけ?…もしかして、彼処にいる男の名?」
「うぃ!」
「…へぇ、きさらがしっかりと名前を覚えるなんて初めてね。どうでも良いけど。」





‐‐‐





「あの黒い布を被った誰かさん…邪魔で仕様が無いわ。私の僕達もどんどん殺られてっちゃうし。本当に使えないわね。」
「ろーぜ…だぃすけ、こあい……。」
「あら?だいすけ、じゃなかったのかしら。相変わらず言語回路が謎ね。……それにしても、怖いってどういう意味?」
「ぃやっ…こあいっ」
「はぁ…もう良いわ。私が直々に出迎えに行くから、きさらはリソース供給を頼んだわよ。」
「…うぃ。」

(取り敢えず、きさらは後で問い詰めなきゃならないわね。一体何処で、だいすけって男と会っていたのか。そんな話は一度も聞いた事無いけれど。)

‐‐‐

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