Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第二十一話: 黒のZ/X使い

 あれから彼此、四日程が経過した。

 ウイングゼロの戦い方のコツを掴み、自身のリソース放出能力はルクスリアさんと二人で試行錯誤を繰り返し。

 未だに放出し続けているが、抑え方は判明した。

 今は抑えるまでには到達していないが、弱める事は可能に。

 まぁ、まだ全然駄目だが。

 しかし、これを熟知してしまえば後は此方の物。

 リソース放出能力は後々制御していく方針として。

 

 問題は『ゼロシステム』だ。

 

 俺が学んだのは飽くまで、非『ゼロシステム』を想像した戦闘訓練。

 特訓最中は一回も発動する事が出来なかった。

 

 それが原因で一度死にかけもしたが、そこはルクスリアさんが何とか収めてくれた。

 彼女には、助けられてばかりだな。

 

…そう言えば、丁度四日前の出来事。

 俺がルクスリアさんに膝枕をして貰った日から、彼女の態度が変わった。

 丸で俺を守る様な、気遣ってくれる様な。

 この頃、ずっとそんな態度を示されて来た。

 傷を負えば直ぐに戦闘を中断し、疲れた日は癒しと呼べる様々な行為を施してくれて。

 色欲なのに変わりは無いが。

 

 でも、何でか俺を庇ってくれている気がするな。

 あの日、何か口を滑らしたか?

 寝言で口を滑らすなんて芸当、俺は出来ないけど。

 

 それに、ずっとこのまま彼女に頼ったり、甘えてばかりではいられない。

 しっかり自分を制御し、どうにかして『ゼロシステム』を使い熟さなければ。

 

「ふぅ…ようやっとゼロを使える様になってきたな。物覚えが良いのか、悪いのか。」

「しょうがないじゃない。逆に、何匹ものプレデターを相手に良くやってると感じるけど。」

「そうですかねぇ。…あ、で、話って何ですか?」

「うん。大祐くんがそのバトルドレスを運用出来る所まで来たから、そろそろこれからの事を話し合おうと思って。」

 

 そうだ。

 俺は別に強くなりたいから此所にいる訳ではないのだ。

 あづみさん達を探す為の布石として、訓練していた訳であって。

 捜索しに行けるのであればそりゃあ行きたい。

 だが、強くならなければ彼女達を守れないという理由で訓練をしていたのだ。

 

 欲を言ってしまえば、この四日間で『ゼロシステム』を制御したかったのだが。

 無理をして体を壊しては意味が無いと、ルクスリアさんからの忠告で焦る事を止めにした。

 生き急いでも仕方無いからな。

 

 『ゼロシステム』の件は、地道に解決していこう。

 焦っても良い事は無い。

 なんかこんな事、前にも言ったような気がする。

 

「それで、ルクスリアさんは行きたい場所とかあるんですか?」

「そうなの。少し緑の世界に――」

 

 ルクスリアさんが今後の目的を話そうとした、その瞬間。

 

「…っ!危ない!」

「えっ…?」

 

 黒い物体が彼女に襲い掛かる。

 

 それにいち早く気付けた俺は、ルクスリアさんを守るべくバトルドレス「デスティニー」を起動。

 背部のウェポンラックからアロンダイトを抜き出し、物体の攻撃を受け止める。

 

バチィッ

 

 構えたアロンダイトに物体の攻撃が届いた瞬間、俺は勢い良く後ろに飛ばされた。

 意外過ぎる展開にびっくりしつつも空中で体勢を立て直し、状況を――

 

「大祐くんっ!」

「何っ…!?」

 

 把握する時間など無かった。

 ルクスリアさんを狙っていた黒い物体は、既に俺の目の前まで接近していた。

 

 だが、ここは冷静沈着に。

 

 俺は黒い物体の攻撃を見切り、横っ腹にアロンダイトを突き刺そうと試みる。

 しかし、ギリギリの所で上手く回避をされてしまった。

 

 次に来る反撃を警戒し防衛に回ろうとするが。

 

「…あれ?」

 

 黒い物体の存在は消えていた。

 どうやら、ここから逃げたようだ。

 逃げた、というか撤退の方が合っているかも知れないが。

 

 最初の不意打ちに失敗したら即座に身を退く。

 中々聡い戦略をしてくれる。

 生憎相手の正体は掴めなかったが、次からは警戒を高めておいて損は無さそうだ。

 

「ルクスリアさん、無事ですか?」

「えぇ、私は大丈夫。…大祐くん、ありがとね。」

「気にしないで下さい。でも、アロンダイトを弾くなんて……ん?」

 

 ふと、軽くアロンダイトを上に向けると、一つの傷が俺の意識を奪った。

 アロンダイトに付けられたこの傷……恐らく先の戦闘での物だろう。

 黒い物体の攻撃を何回か受け取めた時に生まれた傷。

 

 だが、それには不可思議な事が起こっていた。

 爪の形の傷痕が付けられている。

 

 先の黒い物体が何かは分からないが、爪を使うZ/Xという事実は発覚した。

 しかも、其処らにいる野生のプレデターやら何やらでは無い。

 しっかりと躾をされているZ/Xだ。

 

…って事は、あの近くにパートナーがいたと。

 飽くまでもしかしたらの話だが。

 可能性が無い訳ではない。

 

 まぁ、頭の隅にでも入れておこう。

 また何時襲ってくるか分からないからな。

 

「…まぁ、さっきの奴は置いといて。取り敢えずは目的を決めましょうか。」

「そうね。……目的なら私は、緑の世界に足を運びたいのだけれど。」

「緑の世界には僕も行きたいです。…決まった様なもんですね。」

「やった♪流石大祐くんっ、話が早いわ♪」

 

 兎に角、今はあの黒い物体の事は放置と。

 目的地を決めてさっさと移動しなければ。

 幸いルクスリアさんと考えが一致し、もう決定したが。

 何故緑の世界なのか。

 あづみさんとリゲルさん、A-Zちゃんを探すのであれば青の世界じゃないのか。

 

 確かにそうだ。

 それが一番最善手――とは言えない。

 思い出した記憶の一部を信じるのであれば、彼女達は緑の世界に向かった筈だ。

 「モウギ」を探しに。

 

 それが確かなのかどうかは確信を持てないが、恐らくは合っているだろう。

 あづみさんのリソース症候群を治す為に。

 

 もしそうなら、態々青の世界に赴く必要は無い。

 それに、あづみさんもリゲルさんも、青の世界に行く方が危険と分かっているだろう。

 赤の世界で俺を探すなんて事もしないだろうし。

 白の世界は状況が把握出来ない時点で選択肢は無し。

 此処…黒の世界はリゲルさん自身が危険と言うだけ近付きはしないだろう。

 唯一、緑の世界が大幅な可能性を持っている。

 リソース症候群を治す「モウギ」の存在が何よりも大きい。

 

 そしてその存在を知れば、彼女達は緑の世界に向かう一択だけ。

 それが無くても、緑の世界は元から治癒関連専門の世界。

 「モウギ」の存在を知らなくても其方に向かうしか考えられない。

 

 となると、俺自身も緑の世界に向かうのが最善手。

 運良く三人と会えれば万々歳だ。

 ルクスリアさんの事はどうにかして説明しなきゃならないけど。

 

…そう言えば、ルクスリアさんはどうして緑の世界に行きたいんだ?

 何かしら大発見でもしたのか、面白そうな噂でも聞いたのか。

 嫌な予感がしないと言えば嘘になる。

 絶対に重要な目的で向かうに決まっている。

 

 ま、一番は本人に聞く事だろうけど。

 

「ルクスリアさんは、何故緑の世界に?」

「ん〜?内緒っ♪」

 

 やっぱりね。

 ルクスリアさんに理由を聞いたら、内緒と言われるのが当たり前だ。

 本当は教えて欲しいのだが。

 そんな簡単に暴露しないと。

 流石、ガードが脆そうに見えても中々堅いな。

 

「まぁ、大祐くんも行きたいって言ったからね。それで決まりで良いんじゃない?」

「何と大雑把な…」

「私の目的は明日教えるからっ。今日は休みましょ?」

「…それもそうですね。」

 

 何だか腑に落ちないな。

 本人は明日教えてくれるらしいけど。

 それが本当かどうかは分からない。

 保証人が欲しくなってくるな。

 

…取り敢えずは明日か。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 駄目だ、全然眠れない。

 あの黒い物体が気になって気になって仕様が無い。

 何時襲ってくるのか、何故襲ってくるのか。

 その謎が解けなければずっとこの状態が続いてしまう。

 睡眠は日常生活にも関わる大事な行いだ。

 不足するだけで、色んな物事を失敗する原因となる。

 

…のは分かってるんだけどなぁ。

 寝付けが悪いとか、そういうレベルじゃない。

 完全にお目目がパッチリだ。

 こればっかりは仕方がない。

 

 それに、不思議な出来事が一つ。

 現在進行形でルクスリアさんが行方不明に。

 

 いや、毎晩だけど、夜な夜なルクスリアさんが行方不明になる。

 何処に行っているのか、凄く気になるな。

…どうせこのままでも眠れなくて暇だろうし、探してみようか。

 面白そうな探索になるだろう。

 

「とは想ったものの…夜でもZ/X達はうようよしているし、危なさ過ぎる。さてどうしたものか。」

 

 なんて事を口にしたが、やってみなければ分からない。

 考えるよりも行動した方が得だ。

 それで死んだら元も子も無いが。

 要するに、死なない程度で頑張るって話だな。

 

…それじゃ、捜索開始しま――。

 

「…!」

 

 横にしていた体を起き上がらせた。

 

 その時。

 

 大きな爪の形をした衝撃波が、俺を目掛けて飛んで来る。

 その衝撃波は、黒く禍々しい殺気を放っていた。

 それを横に回避し、即座にバトルドレスを装着する。

 

…しっかし攻撃其の物から殺気って、どんだけ目標を殺したいんだよ。

 殺人鬼か何かか?

 

 なんて想いながら臨戦体勢状態になっていると、後ろからかなり低い声が頭に響いてきた。

 

「あ〜あ…ミスっちまったじゃねえか。」

「…これで二回目。ズィーガー、貴方はもうちょっと的確に狙いなさい。」

「っるせぇな。それ位分かってるっつーの。」

「分かってるなら行動に移す事ね。あの七大罪が不在の今、こいつを消すのには好都合な場面なんだから。」

 

 その低い声と言い合いを起こしているのは、女性の声。

 二つの声の主がいる方向を見ると、そこには金髪ロングヘアーの女性と黒い――

 

「…猫?」

「ああん!?てめぇ、俺様が猫だって言いてぇのか!」

「ズィーガー、少し煩いわ。あの七大罪に気付かれちゃう。」

「関係ねぇ!その前に…殺しちまえばなぁ!」

 

 黒い猫…「ズィーガー」は俺に向かって、高速で突っ込んでくる。

 反応仕切れる速度ではあるのだが、問題は躱すか受け止めるか。

 しかし、アロンダイトで受け止めてしまうと、恐らくもう片方の爪で隙を突かれる。

 

…躱す選択肢、一択か。

 

「よっと。」

 

 右斜め後ろにバックステップを踏み、振りかざされた左爪を回避する。

 すると、ズィーガーとやらが一瞬で右爪を前に突き出して来た。

 だが、此方には[情報演算処理能力]がある。

 相手の行動は先読み済みだ。

 

 俺は両肩のフラッシュエッジ2を抜き出し、それをクロスさせ受け止める。

 爪とフラッシュエッジが触れ合った瞬間、周囲にバチバチッと音が鳴り響いた。

 

「てめぇ…中々やるじゃねえか。」

「ぐぅっ…!」

 

 受け止めたまでは良いが、たった片手で押しきられている。

 それに対して、俺は両手が塞がっている。

 こんなに多大な隙を、相手は逃さない。

 ズィーガーは残った左爪を使い、横から弾く様に俺を吹き飛ばす。

 

 勢い良く弾かれた俺の体は地面に打ち付けられてしまったが、転がる寸前で体勢の立て直しを計る。

 右手で地面と接触、一度体を空中へ浮かせる。

 その後直ぐに一回転し、間隔の間に両手のフラッシュエッジ2をズィーガーに投げ飛ばす。

 慣性の法則を利用し、此方はどんどん後ろに下がっていく。

 

 こうする事によってズィーガーと俺の距離は離れ、相手の追撃を難しくさせる。

 即急に考えた方法だったが、割りと上手く出来た。

 さて、次は――

 

「逃がすかよぉぉ!」

 

 どうやって攻め込もうか。

 そう考えていると、ズィーガーは投擲したフラッシュエッジ2を片手で弾き、首のもふもふしてそうな毛から大量の細かい衝撃波を繰り出す。

 一つ一つは小さいが、その量はえげつない。

 そう言えば、最近「ライゼンテ」とかいう鴉と戦った時もこんな技を使ってきたな。

 

 しかし、あの時の羽アタックと比べれば此方の方が圧倒的物量。

 一見しただけで直ぐに分かる。

 

 俺はあの鴉戦の様な過ちを起こさない為、防衛するよりも回避する事を選んだ。

 横へ横へと小刻みにブースターを吹かし、次々と衝撃波を躱していく。

 確かに物量は凄まじいが、追尾性能は丸で皆無。

 後ろから教われる気配など微塵も感じられない。

 ならば此方は油断せず、堅実に立ち回ろう。

 

「ゼロ…今度こそは…!」

 

 デスティニーからウイングゼロへと換装し、ビームサーベルを構えながら前進する。

 飛んでくる細かい衝撃波を、ひらりひらりと躱しながらゼロの間合いに進入成功。

 ツインバスターライフルをウイングから取り出し、両手にしっかりと持つ。

 そのまま回避を続行し、チャンスがあればライフルを撃つを繰り返し。

 その度にズィーガーの苛立ちは積もっていく。

 

「おいおい!逃げてるだけじゃ詰まらねぇぞ!」

「だからってお前の攻撃に当たりたくもない。」

「ズィーガー、さっさと終わらせなさい。」

「チッ…んだよ、ちょっとは楽しめるかと思ったが見当違いだったな。」

 

 ズィーガーが一度攻撃を中断し、大人しくなる。

 それに違和感を感じた俺は、素直に相手との距離を取る事に。

 あのまま攻め込んでも良かったが、相手が何をしてくるか分からない以上、不要な手出しは禁物だ。

 こういう時は、臆病な方が丁度良いってね。

 

 ある程度の距離を取り、敵さんの様子を伺う。

 すると、ズィーガーの隣にいる金髪の女性が何かを胸に当て始めた。

 

 次の瞬間。

 

「リブート。」

 

 金髪の女性が一言、何かを口にする。

 遠くてあまり聞こえなかったが、リから始まる言葉なのは分かった。

…ちょっと雑把過ぎるな。

 

 心中ではふざけつつも、相手の行動に警戒を高める。

 すると、女性の胸に当てた何かが紫色に光り始めた。

 それに合わせてズィーガーの体全体も、紫色のオーラに包まれる。

 

「サンキューお嬢ちゃん。これで決めれるぜ。」

「言ったからには絶対に殺りなさい。外したら許さないわよ。」

「へいへい。」

 

 何だか危ない言葉が多々聞こえて来たような…?

 決めるだの殺るだの外したら許さないだの。

…あっ、最後のは俺関係無いか。

 全然緊張感無い――

 

「よぉ、サヨナラだ。」

「…は?」

 

 気付かぬ間に。

 いつの間にか。

 奴は目の前に存在していた。

 しっかりとこの目で目視している。

 正直、訳が分からなかった。

 

 先程まで奴は、女性の隣に存在していた。

 それが何故、今、俺の目の前に存在している?

 距離は十分に取った筈だ。

 気を抜かず、警戒し、油断なんてしていなかった筈だ。

 確かに一瞬の気の緩みは有ったかもしれない。

 だが、その一瞬でゼロ距離まで近付かれた。

 殺風景だった景色が、一瞬にして黒い獣で覆われた。

 

「月影…」

「…この―――」

 

 奴は黒く煌めく大きな右爪を、遠慮なく降り下ろす。

 標的は…勿論俺だ。

 

「葬送牙!!」

 

 間一髪でウイングシールドを構えるも、奴はそれ如俺を切り裂く。

 上から下へ降り下ろされたその爪は、俺の体を紙の様にスライスした。

 バキバキッと壊れるウイングシールドに、綺麗に引き裂かれた俺の左半分の体。

 致命傷にも程がある。

 

 しかし、不幸中の幸い。

 すれすれで心臓はセーフだった。

 即死だけは免れた。

 

 だが、これでは死に掛けも同然。

 次を食らえば確実なる死。

 それ位分かってはいるが、傷が深過ぎて思うように体が動かない。

 

「ふん…おい嬢ちゃん。もう一回リソース供給を頼む。今度は確実に仕留めてやる。」

「…はぁ。今度からは一撃で殺りなさい。リソースもタダじゃ無いの。」

「了解、了解。さぁ、早くしてくれ。」

「…リブート。」

 

 何でだ。

 何故動かない。

 頭では動けと命令しているのに、どうして動いてくれない。

 このままじゃ殺されてしまう。

 だが、まだ死ぬ訳にはいかない。

 二人と離れ離れのまま死ぬなど、俺が俺自身を許さない。

 それに、先ず死にたくない。

 

 なんて心ではそう思いながらも、体は一切動かない。

 動いてくれない。

 幾ら致命傷だからと言えど、反応すら見せてくれない自分の体に情けなさを感じる。

 

「まだ…死んで堪るかぁ…!」

「いいや、お前は此処で死ぬ。俺様が直々にあの世へ送ってやるよ!」

「くそっ…!」

 

 俺は何回死に掛ければ良いんだ。

 何時も何時も傷みに絶え、その度に傷付き。

 それだけならまだしも、殺される寸前で何時も誰かに助けられ。

 今回はルクスリアさんが助けにでも来てくれるのか?

 そんな筈は無い。

 

 大体、ルクスリアさんはお出掛けの真っ最中だ。

 即座に気付いて救援に来てくれるなんて話、ある訳が無い。

 じゃあどうするか。

 

 足掻こうにも体が言う事を聞かず、助けを呼ぼうにも此処は黒の世界。

 集まって来るのは大小様々なプレデターだけだ。

 

…今回こそ、本当の終わりか?

 

「月影葬送牙ァ!」

 

 リソースを供給し力を満たしたズィーガーは、黒く光る大きな爪を降り翳す。

 食らえば即死、そんな匂いを出しまくるその爪の標的は無論俺だ。

 

 ズィーガーは、俺が抵抗出来ない事を好い事に、目一杯力を溜め込む。

 

 そして下された。

 

 ズィーガーの爪が俺を頭から引き裂こうとした瞬間――

 

「俺のディナータイムを邪魔するなぁぁぁ!!!」

 

 何処からともなく、男性の声が周囲に響き渡った。

 その声の主は徐々に此方へと近付き、ズィーガーの月影葬送牙とやらを難なく受け止める。

 

 それも、片手で。

 

 俺とズィーガーの真ん中に素早く入り込んできたその後ろ姿に、俺は目を疑った。

 

‐‐‐

 


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