Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第一九話: 秘められし能力

 日記。

 きょうは、るくすりあさんのつよさをまのあたりにしました。

 とってもすごかったです。

 あと、ぐろくてこわかったです。

 

――――以上―――――

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

「んん〜、久し振りにリソース使ったわね♪」

「…え?いや…はい?」

 

 俺は、ルクスリアさんの絶大な力を目の前に呆気に取られていた。

 先程まで劣勢だった筈の此方側が勝利してしまうとは。

 

…いや、ルクスリアさんが味方なだけで劣勢では無いのか。

 寧ろ優勢だ。

 だって彼女、黒の世界のトップに君臨する「七大罪」なのだから。

 

…しかしだなぁ。

 少しエグ過ぎやしませんかぁねぇ。

 ねぇ?

 

「ほんっと、大祐くんが傍に居てくれると大助かりね。」

「…え?いや、はい?」

 

 ルクスリアさんの謎発言により、先程と同じ反応を示してしまった。

 

 俺は先の戦闘で何も出来ず、どちらかと言えば足手まとい。

 最低限の仕事はしただけ。

 それでも、ルクスリアさんは俺がいるだけで大助かりと言ってくれた。

 

…彼女は黒の世界のトップ。

 少なくとも、下位種族を葬る力位は持っている筈。

 その絶大な力を持つ彼女から貰えた発言「いるだけで大助かり」。

 俺はついつい嬉しくなってしまった。

 

「…でも、ルクスリアさん、俺は何も――」

「どうしたの?」

「先の戦闘、俺は何も出来なかったんですよ…?」

「……何か壮大な勘違いをしてるかも知れないけど、私は貴方の能力を評価しているの。戦闘力じゃ無いわ。」

 

 評価したのは戦闘力では無い。

 その言葉に疑問を抱いた俺は、兎に角質問を投げ掛ける。

 

「じゃあ、俺の何を評価してくれたんですか?」

「えっ?大祐くん、自分の力を把握してないの!?」

「一体全体何の話です?」

 

 自分の力なんて、有ってもバトルドレス位だ。

 俺自身は何の取り柄も無い只の人間。

 能力なんて持っていない。

 

 という事は、このバトルドレスに、まだ何かしらの能力が秘められていると。

 寧ろそれしか考えられない。

 

 それに、ルクスリアさんが大助かりするなんて素晴らしい力。

 その力を自分で把握仕切れないのは怖い。

 知れるなら、今の内に知っておかないと。

 

「俺はバトルドレス以外に力なんて…」

「それは間違いね。大祐くんは凄い力を有しているのに。」

「何ですか?それ。」

「…大祐くんの味方で、リソース切れを起こしたZ/Xはいる?」

 

 リソース切れを起こしたZ/X?

 果てさせ、そんなZ/Xさんはいたかなぁ…。

 

 リゲルさんは起こしてないし、A-Zちゃんもそう。

 びんがさんも違うし、一瞬だけ味方になってくれたアームドさんも違う。

 誰も。

 

「いませんね。」

「…まぁ、それが当たり前なんだけど。」

「当たり前?俺はしょっちゅうリソースを切らしますけど。」

「あのね、良いかしら。大祐くんの能力は「大祐くんの近くにいる味方と認識されたZ/Xのリソースを回復させる」力なの。」

「…えっ?いや、はい?」

 

 二度ある事は三度ある〜。

 俺はこの言葉を信じるよ。

 これからの生活で何回使用するか分からないけど。

…それは一旦置いといて。

 先程ルクスリアさんが教えてくれた力が本当なら、それはある意味チートだぞ。

 自身の近くに存在するZ/Xはリソース切れを起こさないて…。

 

 要するに、力の源となるリソースが無限って話だよな。

 

 わぉ、俺すごーい。

 

「でも、今はまだその力を制御仕切れていないみたい。常に自らリソースを放ち続けているもの。」

「…って事は、さっきのプレデター達。」

「えぇ。大祐くんのリソースに反応して、寄ってきたみたい。」

「なるほど…。」

 

 そうなると、何と無く分かって来たぞ。

 アレキサンダー達が、俺を即急に見つけられたのが。

 

 しかし、これではチートと呼べない。

 周囲の味方にも迷惑が掛かってしまうからだ。

 

 此方のリソース回復量よりも大きい、或いは大多数の敵に囲まれたら、それはそれで終了だ。

 しかも、俺は自分で気付いていないまま、そのリソースを放出し続けているって訳だ。

 

 制御出来るまでは大変な事態になりかね――

 

…そう言えば、あづみさんはリソース症候群。

 多大なリソースを体内に取り込んで患う病気。

 

 更に、リソース放出量が多い場所などに近付くと、リソース症候群を起こしてしまう。

 

 それに加え、彼女、あづみさんの場合は重度のリソース症候群だ。

 最悪、死に至る事だってあるのだろう。

 更に更に、俺が二人に出会った時には既に、二人は青の世界に裏切りを行動済み。

 

 リゲルさんからの話によれば、リソース症候群を抑える薬は青の世界の上司から渡されているとの事。

 そうとなれば、薬が切れるのも時間の問題。

 薬が無くなってしまうと、あづみさんの体は徐々にリソース症候群に蝕まれ、最終的には――

 

――あづみさんの体は壊れる。

 

 それが俺の力と何の関係があるのか。

 

 リソース放出量が多い場所で発症する確率が高いリソース症候群に対し、常にリソースを放ち続けている俺。

 リソース症候群を患っているあづみさんに対し、多大なリソースを放出している俺。

 

…二人は互いに、傍にいては駄目なのだ。

 

 今までの旅の中で、俺はあづみさんに負担を掛けまくっていた事になる。

 一緒に旅をしている間は、リソース症候群を発症していなかったが恐らく、今まで以上の薬を飲んでいたから。

 彼女が実際に薬を飲む所を見たのは、たったの一回のみ。

 そこからは見ていない。

 

…だが、それは逆に可笑しい。

 いや、可笑しくは無いのだ。

 

 あの薬は「リソース症候群を起こした時に抑える」薬であって、予防薬などでは無い。

 寧ろ健康そのものなのだ。

 

 ん?じゃあ何で、リソース症候群を一回しか発症しなかったんだ?

 常にリソースを放出し続ける俺の傍にいたのに。

 

「…俺の力は、リソース症候群を患っている人には災厄以外の何物でもありませんね。」

「私も最初はそう思ったの。…けど、大祐くんのその力は違う。」

「…どういう事ですか?」

「貴方の力は、逆にリソース症候群を抑える作用もあるみたい。…なんだろ、近くにいると暖かい感じ。」

「暖かい?」

「そう、暖かい。実際にリソース症候群を抑えるかは分からないけど、Z/Xである私がそう感じたの。味方には悪い影響を与えない筈よ。」

 

 今のルクスリアさんが言った事が本当なら、俺自身がリソース症候群を抑える薬って話になる。

 味方には悪い影響を与えない……それだけでは信用に足りはしない。

 

 だが、あづみさんは俺の傍にいてリソース症候群を起こしたのはたったの一回。

 その事実が俺の中にある何かを突き動かした。

 

…が、それと同時に迷いも生まれる。

 

 あづみさんが目の前でリソース症候群を起こしたその日は、俺が初めてバトルドレスを手に入れた時だ。

 もしかすると、それが原因で発症したのかも…。

 

 いやけど、それ以降はあづみさんがリソース症候群を起こした事は…。

 

 一体、どっちが真実なのか。

 丸で見当も付かない。

 

 悩み、葛藤しながらも出した答えは。

 彼女の傍にいる事だ。

 

 ルクスリアさんが口にした言葉を信用…とは別に、俺は自分自身で決めたんだ。

 改めて自分の心に誓う。

 彼女達二人を守ると。

 

「あ、因みに…私も大祐くんのリソースに惹かれて来たの。」

「…え。」

 

 ん?

 という事はアレか?

 ルクスリアさんは俺のリソースに惹かれて来て、その場で死にかけていた俺に応急措置を施してくれた、と。

 

 そう…なんだ。

 じゃあ、俺は一体どうやって黒の世界に飛んで来たんだ?

 自分で来た訳でも無く、ルクスリアさんに連れてこられた訳でも無く。

 

…あああぁぁ!!

 また一つ謎が生まれた!

 いっらいらするね、ほんと。

 もうどうにかしてくんないかな、マジ。

 

「…で、大祐くんに質問。」

「はい?何でしょう。」

「どうやって黒の世界に入り込んだのか、何であんなに重傷だったのか、教えてくれるかしら。」

「1、分かりません。2、戦闘でボロクソに。」

「…えっ、まさか大祐くん、どうやって此所に来たのか分からないの!?」

 

 えっ、まさかルクスリアさん、俺の傷なんてどうでも良いんですか?

 

…まぁね、どうやって黒の世界に立ち寄ったのかの方が気になるもんね。

 知ってたよ。

 

 それに、俺自身もそっちの方が気になるし。

 ルクスリアさんが関わっていないという事は、要するに俺一人の問題だ。

 やはり自分の足で此処まで来たのか…。

 

 それとも、ルクスリアさんでない誰かが助けてくれたのか。

 しかし、黒の世界に連れてこられた時点でその考えは切り捨てよう。

 態々赤の世界から黒の世界に、更に危なっかしい場所に連れて来るなんて、寧ろ虐めだろ。

 

 一体誰がそんな事を。

 

…まぁ、飽くまでの推測論でしか無いから、確信に至るまでには届かない。

 だからといって、自分で移動して此所に…なんてのも信じ難い。

 頭で想像出来るのはこの二つのみ。

 

 違う観点から見れば、他の想像が思い浮かぶかも知れない。

 が、今はこの二つに絞っておこう。

 変な方向にだけは、進みたく無いからな。

 

「あ、そうそう。その怪我の事なんだけどね。もう治ってると思う。」

「…本当だ。そう言えばルクスリアさん、俺に何をしたんですか?」

「ふふっ、内緒♪」

 

 そうか、内緒か。

 なら嫌でも吐き出させてやろうか。

 今直ぐに貴女の衣服を全部脱がして、拘束でもすれば――

 

 いや、止めとこう。

 ルクスリアさんにはそれが効かない。

 恥ずかしがるより恍惚な笑みを浮かべそうで…。

 止めだ、止め。

 そんな妄想したくもない。

 色欲ってのは随分と厄介だなぁ。

 

「…で、この傷の事ですが。」

「凄く深い傷だったわ。右肺の傷は、丸で槍に突かれた様な感じ。」

「御名答です。流石ルクスリアさ―――傷を負った箇所を撫でるの止めません?」

「ちゃんと治ってるかのかくにんっ。別に触りたくて触ってる訳じゃないからねっ。」

「俺、ツンデレにはあまり興味無いんですよ。」

「あら、残念。」

 

 ツンデレ、何それ興味無い。

 そう断言すると、ルクスリアさんは遠慮せずに触って――

 

「…そのまま俺で遊んで良いですから、話を戻しましょう。」

「ほんとっ!?やった〜♪」

 

 駄目だ、この人聞いてない。

 一旦強引に話を戻したが、ある意味無意味だと思い知らされた。

 ルクスリアさんに対して、この手は封印安定だな。

 

「貴女の言った通り、この傷は槍で貫かれた物です。…赤の世界のアレキサンダーとやらに。」

「へぇ〜…。でも、良く生きていられたわね。」

「これには、この傷と同じ位に深い理由がありまして。」

「聞かせて、聞かせてっ。」

 

 そう言いながら顔を近付けて来るルクスリアさんから距離を取る。

 だが、又直ぐにゼロ距離まで詰められてしまい。

 今度は思いっきり抱き付かれた。

…もう、面倒臭いからこれで良いや。

 先ずは話を進めないといけないな。

 

「…赤の世界に行きました。相手のZ/Xに槍で突き抜かれました。とある事情により、自身の制御が効かなくなり、気付けばここに。」

「ね〜え〜…ちょっとざっくりし過ぎじゃない?」

「最初はこんな感じで説明して、細かい事情はストーリーとして説明した方が良いじゃないですか?」

「あっ、なるほど♪」

 

 そこから小一時間、血や液体で塗れた地面の上――から移動し、空気の落ち着いた場所でルクスリアさんに説明解説をした。

 青の世界の一部始終に、赤の世界から黒の世界へと転移するに至るまで。

 話して改めて思ったが、中々内容の濃いストーリーだったな。

 

……たぶん。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

「――と、言う訳です。」

 

 話が終えると、ルクスリアさんは何も言わずに笑みを浮かべた。

 その笑みにどういう意味が含まれているのか、想像もつかないが良しとしよう。

 

…待て、宜しくない。

 

 ルクスリアさんが笑顔なんて、嫌な予感しかしない。

 それも、俺の話を聞いて不敵な笑みなんて。

 いや、不敵かどうかは分からないけど。

 

「もう…凄く大変だったのね。どう?私の胸に飛び込んで癒される?」

「ぜぇーーーったいしませんから。嫌でもしませんから!」

「ぶ〜…つれないなぁ…。」

 

 おぉ?

 御姉様系から行き成り幼くなったな。

 ルクスリアさんの精神年齢は高いのか低いのか、理解出来ない時が多々ある。

 元から理解しようとしてないのが元凶だろうが。

 

…んで、それはそうと、これからどうしようかね。

 ルクスリアさんと二人で決めたくもあるが、彼女に任せると駄目な方向にしか進まない気がする。

 やはりここは、俺が目処を立てるしか。

 

…一応彼女の選択も聞いてみるか。

 

「これからどうします?」

「う〜ん………そうだ!さっきの話からして大祐くんは、そのバトルドレスを制御仕切れなかったんだよね。」

「えっと…バトルドレスというか、バトルドレスの能力というか…」

「細かい事は良・い・の!…で、これからの課題は、その能力を自分で制御出来るようになる事…とか。」

「それは特訓になりますよね?僕には探さなきゃいけない大切な人達が――」

「力を制御出来なければその人達も守れないけど、それでも構わないの?」

「…!!!」

 

 ルクスリアさんの放った言葉は、俺の心中を貫いた。

 大切な人達を守りたければ自分を見つめ直せって事か。

 彼女もご最もな意見を話してくるんだな。

 

 た、ま、に、は、ね。

 

 まだ出会ってから一日経ったか経ってないか位だが、ついつい偶にはと言いたくなる。

 恐らく、彼女のコミュニケーション力の高さがそう想わせるのだろう。

 

 今までずっと一緒に居たような感覚に陥ってしまう。

 

 しかしそれに惑わされては、堕ちる所まで堕ち最終的には彼女の餌食にされて。

 バッドエンドは免れないな。

 

「…にしても、どうやって特訓するんですか?」

「貴方そんな簡単な事聞く?相手はそこら辺にうじゃうじゃいるのに。」

「更に、俺のリソースに誘き寄せられて来ると。」

「そうそう♪」

 

 俺は餌ですか。

 はいはいそうですね。

 

 なんて感情は、不思議と湧かない。

 自分でも分かりきっていたからなのだろうか。

 こうなる事位。

 

 只、強くなる為には、にはこうでもしなければ。

 自身が強くなければ、何一つ…自分すら守れないから。

 

 一度捜索は置いといて、今は己の制御と洒落込もう。

 本当は三人の捜索を優先したいが、それで又こんな事になるのは嫌だ。

 

 早く自制を完璧にし、彼女達を見つけねば。

 俺からは只一つ、緑の世界には足を運んでいないと信じよう。

 

「さ、そうと決まれば早速行きたい所があるんだけど。」

「行きたい所?」

「ふふっ…♪」

 

 その瞬間、俺の背筋は凍ったかの様な感覚に見舞われた。

 

‐‐‐

 





ルクスリアのお料理クッキング♪

「…って、貴女一体何してんですか。」
「私が大祐くんにお料理を食べさせて上げようと思って♪」
「別に大丈夫ですよ。腹減って無いですし。」
「…食べてくれれば、嬉しいな…?」

ルクスリアは上目遣いを駆使し、九条大祐を魅了した。

「そっそんな…本当に大丈夫ですって!(もしかして、彼処に置いてある毒々しい料理が…!)」
「そんな事言わないで。ほら、あーん♪」
「い、いや、止めて下さ…嫌だぁぁぁ!!!」

その日、九条大祐は地獄を味わった。
(お料理もクッキングも、していないという。)

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