Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
日記。
きょうは、るくすりあさんのつよさをまのあたりにしました。
とってもすごかったです。
あと、ぐろくてこわかったです。
――――以上―――――
‐‐‐
「んん〜、久し振りにリソース使ったわね♪」
「…え?いや…はい?」
俺は、ルクスリアさんの絶大な力を目の前に呆気に取られていた。
先程まで劣勢だった筈の此方側が勝利してしまうとは。
…いや、ルクスリアさんが味方なだけで劣勢では無いのか。
寧ろ優勢だ。
だって彼女、黒の世界のトップに君臨する「七大罪」なのだから。
…しかしだなぁ。
少しエグ過ぎやしませんかぁねぇ。
ねぇ?
「ほんっと、大祐くんが傍に居てくれると大助かりね。」
「…え?いや、はい?」
ルクスリアさんの謎発言により、先程と同じ反応を示してしまった。
俺は先の戦闘で何も出来ず、どちらかと言えば足手まとい。
最低限の仕事はしただけ。
それでも、ルクスリアさんは俺がいるだけで大助かりと言ってくれた。
…彼女は黒の世界のトップ。
少なくとも、下位種族を葬る力位は持っている筈。
その絶大な力を持つ彼女から貰えた発言「いるだけで大助かり」。
俺はついつい嬉しくなってしまった。
「…でも、ルクスリアさん、俺は何も――」
「どうしたの?」
「先の戦闘、俺は何も出来なかったんですよ…?」
「……何か壮大な勘違いをしてるかも知れないけど、私は貴方の能力を評価しているの。戦闘力じゃ無いわ。」
評価したのは戦闘力では無い。
その言葉に疑問を抱いた俺は、兎に角質問を投げ掛ける。
「じゃあ、俺の何を評価してくれたんですか?」
「えっ?大祐くん、自分の力を把握してないの!?」
「一体全体何の話です?」
自分の力なんて、有ってもバトルドレス位だ。
俺自身は何の取り柄も無い只の人間。
能力なんて持っていない。
という事は、このバトルドレスに、まだ何かしらの能力が秘められていると。
寧ろそれしか考えられない。
それに、ルクスリアさんが大助かりするなんて素晴らしい力。
その力を自分で把握仕切れないのは怖い。
知れるなら、今の内に知っておかないと。
「俺はバトルドレス以外に力なんて…」
「それは間違いね。大祐くんは凄い力を有しているのに。」
「何ですか?それ。」
「…大祐くんの味方で、リソース切れを起こしたZ/Xはいる?」
リソース切れを起こしたZ/X?
果てさせ、そんなZ/Xさんはいたかなぁ…。
リゲルさんは起こしてないし、A-Zちゃんもそう。
びんがさんも違うし、一瞬だけ味方になってくれたアームドさんも違う。
誰も。
「いませんね。」
「…まぁ、それが当たり前なんだけど。」
「当たり前?俺はしょっちゅうリソースを切らしますけど。」
「あのね、良いかしら。大祐くんの能力は「大祐くんの近くにいる味方と認識されたZ/Xのリソースを回復させる」力なの。」
「…えっ?いや、はい?」
二度ある事は三度ある〜。
俺はこの言葉を信じるよ。
これからの生活で何回使用するか分からないけど。
…それは一旦置いといて。
先程ルクスリアさんが教えてくれた力が本当なら、それはある意味チートだぞ。
自身の近くに存在するZ/Xはリソース切れを起こさないて…。
要するに、力の源となるリソースが無限って話だよな。
わぉ、俺すごーい。
「でも、今はまだその力を制御仕切れていないみたい。常に自らリソースを放ち続けているもの。」
「…って事は、さっきのプレデター達。」
「えぇ。大祐くんのリソースに反応して、寄ってきたみたい。」
「なるほど…。」
そうなると、何と無く分かって来たぞ。
アレキサンダー達が、俺を即急に見つけられたのが。
しかし、これではチートと呼べない。
周囲の味方にも迷惑が掛かってしまうからだ。
此方のリソース回復量よりも大きい、或いは大多数の敵に囲まれたら、それはそれで終了だ。
しかも、俺は自分で気付いていないまま、そのリソースを放出し続けているって訳だ。
制御出来るまでは大変な事態になりかね――
…そう言えば、あづみさんはリソース症候群。
多大なリソースを体内に取り込んで患う病気。
更に、リソース放出量が多い場所などに近付くと、リソース症候群を起こしてしまう。
それに加え、彼女、あづみさんの場合は重度のリソース症候群だ。
最悪、死に至る事だってあるのだろう。
更に更に、俺が二人に出会った時には既に、二人は青の世界に裏切りを行動済み。
リゲルさんからの話によれば、リソース症候群を抑える薬は青の世界の上司から渡されているとの事。
そうとなれば、薬が切れるのも時間の問題。
薬が無くなってしまうと、あづみさんの体は徐々にリソース症候群に蝕まれ、最終的には――
――あづみさんの体は壊れる。
それが俺の力と何の関係があるのか。
リソース放出量が多い場所で発症する確率が高いリソース症候群に対し、常にリソースを放ち続けている俺。
リソース症候群を患っているあづみさんに対し、多大なリソースを放出している俺。
…二人は互いに、傍にいては駄目なのだ。
今までの旅の中で、俺はあづみさんに負担を掛けまくっていた事になる。
一緒に旅をしている間は、リソース症候群を発症していなかったが恐らく、今まで以上の薬を飲んでいたから。
彼女が実際に薬を飲む所を見たのは、たったの一回のみ。
そこからは見ていない。
…だが、それは逆に可笑しい。
いや、可笑しくは無いのだ。
あの薬は「リソース症候群を起こした時に抑える」薬であって、予防薬などでは無い。
寧ろ健康そのものなのだ。
ん?じゃあ何で、リソース症候群を一回しか発症しなかったんだ?
常にリソースを放出し続ける俺の傍にいたのに。
「…俺の力は、リソース症候群を患っている人には災厄以外の何物でもありませんね。」
「私も最初はそう思ったの。…けど、大祐くんのその力は違う。」
「…どういう事ですか?」
「貴方の力は、逆にリソース症候群を抑える作用もあるみたい。…なんだろ、近くにいると暖かい感じ。」
「暖かい?」
「そう、暖かい。実際にリソース症候群を抑えるかは分からないけど、Z/Xである私がそう感じたの。味方には悪い影響を与えない筈よ。」
今のルクスリアさんが言った事が本当なら、俺自身がリソース症候群を抑える薬って話になる。
味方には悪い影響を与えない……それだけでは信用に足りはしない。
だが、あづみさんは俺の傍にいてリソース症候群を起こしたのはたったの一回。
その事実が俺の中にある何かを突き動かした。
…が、それと同時に迷いも生まれる。
あづみさんが目の前でリソース症候群を起こしたその日は、俺が初めてバトルドレスを手に入れた時だ。
もしかすると、それが原因で発症したのかも…。
いやけど、それ以降はあづみさんがリソース症候群を起こした事は…。
一体、どっちが真実なのか。
丸で見当も付かない。
悩み、葛藤しながらも出した答えは。
彼女の傍にいる事だ。
ルクスリアさんが口にした言葉を信用…とは別に、俺は自分自身で決めたんだ。
改めて自分の心に誓う。
彼女達二人を守ると。
「あ、因みに…私も大祐くんのリソースに惹かれて来たの。」
「…え。」
ん?
という事はアレか?
ルクスリアさんは俺のリソースに惹かれて来て、その場で死にかけていた俺に応急措置を施してくれた、と。
そう…なんだ。
じゃあ、俺は一体どうやって黒の世界に飛んで来たんだ?
自分で来た訳でも無く、ルクスリアさんに連れてこられた訳でも無く。
…あああぁぁ!!
また一つ謎が生まれた!
いっらいらするね、ほんと。
もうどうにかしてくんないかな、マジ。
「…で、大祐くんに質問。」
「はい?何でしょう。」
「どうやって黒の世界に入り込んだのか、何であんなに重傷だったのか、教えてくれるかしら。」
「1、分かりません。2、戦闘でボロクソに。」
「…えっ、まさか大祐くん、どうやって此所に来たのか分からないの!?」
えっ、まさかルクスリアさん、俺の傷なんてどうでも良いんですか?
…まぁね、どうやって黒の世界に立ち寄ったのかの方が気になるもんね。
知ってたよ。
それに、俺自身もそっちの方が気になるし。
ルクスリアさんが関わっていないという事は、要するに俺一人の問題だ。
やはり自分の足で此処まで来たのか…。
それとも、ルクスリアさんでない誰かが助けてくれたのか。
しかし、黒の世界に連れてこられた時点でその考えは切り捨てよう。
態々赤の世界から黒の世界に、更に危なっかしい場所に連れて来るなんて、寧ろ虐めだろ。
一体誰がそんな事を。
…まぁ、飽くまでの推測論でしか無いから、確信に至るまでには届かない。
だからといって、自分で移動して此所に…なんてのも信じ難い。
頭で想像出来るのはこの二つのみ。
違う観点から見れば、他の想像が思い浮かぶかも知れない。
が、今はこの二つに絞っておこう。
変な方向にだけは、進みたく無いからな。
「あ、そうそう。その怪我の事なんだけどね。もう治ってると思う。」
「…本当だ。そう言えばルクスリアさん、俺に何をしたんですか?」
「ふふっ、内緒♪」
そうか、内緒か。
なら嫌でも吐き出させてやろうか。
今直ぐに貴女の衣服を全部脱がして、拘束でもすれば――
いや、止めとこう。
ルクスリアさんにはそれが効かない。
恥ずかしがるより恍惚な笑みを浮かべそうで…。
止めだ、止め。
そんな妄想したくもない。
色欲ってのは随分と厄介だなぁ。
「…で、この傷の事ですが。」
「凄く深い傷だったわ。右肺の傷は、丸で槍に突かれた様な感じ。」
「御名答です。流石ルクスリアさ―――傷を負った箇所を撫でるの止めません?」
「ちゃんと治ってるかのかくにんっ。別に触りたくて触ってる訳じゃないからねっ。」
「俺、ツンデレにはあまり興味無いんですよ。」
「あら、残念。」
ツンデレ、何それ興味無い。
そう断言すると、ルクスリアさんは遠慮せずに触って――
「…そのまま俺で遊んで良いですから、話を戻しましょう。」
「ほんとっ!?やった〜♪」
駄目だ、この人聞いてない。
一旦強引に話を戻したが、ある意味無意味だと思い知らされた。
ルクスリアさんに対して、この手は封印安定だな。
「貴女の言った通り、この傷は槍で貫かれた物です。…赤の世界のアレキサンダーとやらに。」
「へぇ〜…。でも、良く生きていられたわね。」
「これには、この傷と同じ位に深い理由がありまして。」
「聞かせて、聞かせてっ。」
そう言いながら顔を近付けて来るルクスリアさんから距離を取る。
だが、又直ぐにゼロ距離まで詰められてしまい。
今度は思いっきり抱き付かれた。
…もう、面倒臭いからこれで良いや。
先ずは話を進めないといけないな。
「…赤の世界に行きました。相手のZ/Xに槍で突き抜かれました。とある事情により、自身の制御が効かなくなり、気付けばここに。」
「ね〜え〜…ちょっとざっくりし過ぎじゃない?」
「最初はこんな感じで説明して、細かい事情はストーリーとして説明した方が良いじゃないですか?」
「あっ、なるほど♪」
そこから小一時間、血や液体で塗れた地面の上――から移動し、空気の落ち着いた場所でルクスリアさんに説明解説をした。
青の世界の一部始終に、赤の世界から黒の世界へと転移するに至るまで。
話して改めて思ったが、中々内容の濃いストーリーだったな。
……たぶん。
‐‐‐
「――と、言う訳です。」
話が終えると、ルクスリアさんは何も言わずに笑みを浮かべた。
その笑みにどういう意味が含まれているのか、想像もつかないが良しとしよう。
…待て、宜しくない。
ルクスリアさんが笑顔なんて、嫌な予感しかしない。
それも、俺の話を聞いて不敵な笑みなんて。
いや、不敵かどうかは分からないけど。
「もう…凄く大変だったのね。どう?私の胸に飛び込んで癒される?」
「ぜぇーーーったいしませんから。嫌でもしませんから!」
「ぶ〜…つれないなぁ…。」
おぉ?
御姉様系から行き成り幼くなったな。
ルクスリアさんの精神年齢は高いのか低いのか、理解出来ない時が多々ある。
元から理解しようとしてないのが元凶だろうが。
…んで、それはそうと、これからどうしようかね。
ルクスリアさんと二人で決めたくもあるが、彼女に任せると駄目な方向にしか進まない気がする。
やはりここは、俺が目処を立てるしか。
…一応彼女の選択も聞いてみるか。
「これからどうします?」
「う〜ん………そうだ!さっきの話からして大祐くんは、そのバトルドレスを制御仕切れなかったんだよね。」
「えっと…バトルドレスというか、バトルドレスの能力というか…」
「細かい事は良・い・の!…で、これからの課題は、その能力を自分で制御出来るようになる事…とか。」
「それは特訓になりますよね?僕には探さなきゃいけない大切な人達が――」
「力を制御出来なければその人達も守れないけど、それでも構わないの?」
「…!!!」
ルクスリアさんの放った言葉は、俺の心中を貫いた。
大切な人達を守りたければ自分を見つめ直せって事か。
彼女もご最もな意見を話してくるんだな。
た、ま、に、は、ね。
まだ出会ってから一日経ったか経ってないか位だが、ついつい偶にはと言いたくなる。
恐らく、彼女のコミュニケーション力の高さがそう想わせるのだろう。
今までずっと一緒に居たような感覚に陥ってしまう。
しかしそれに惑わされては、堕ちる所まで堕ち最終的には彼女の餌食にされて。
バッドエンドは免れないな。
「…にしても、どうやって特訓するんですか?」
「貴方そんな簡単な事聞く?相手はそこら辺にうじゃうじゃいるのに。」
「更に、俺のリソースに誘き寄せられて来ると。」
「そうそう♪」
俺は餌ですか。
はいはいそうですね。
なんて感情は、不思議と湧かない。
自分でも分かりきっていたからなのだろうか。
こうなる事位。
只、強くなる為には、にはこうでもしなければ。
自身が強くなければ、何一つ…自分すら守れないから。
一度捜索は置いといて、今は己の制御と洒落込もう。
本当は三人の捜索を優先したいが、それで又こんな事になるのは嫌だ。
早く自制を完璧にし、彼女達を見つけねば。
俺からは只一つ、緑の世界には足を運んでいないと信じよう。
「さ、そうと決まれば早速行きたい所があるんだけど。」
「行きたい所?」
「ふふっ…♪」
その瞬間、俺の背筋は凍ったかの様な感覚に見舞われた。
‐‐‐
ルクスリアのお料理クッキング♪
「…って、貴女一体何してんですか。」
「私が大祐くんにお料理を食べさせて上げようと思って♪」
「別に大丈夫ですよ。腹減って無いですし。」
「…食べてくれれば、嬉しいな…?」
ルクスリアは上目遣いを駆使し、九条大祐を魅了した。
「そっそんな…本当に大丈夫ですって!(もしかして、彼処に置いてある毒々しい料理が…!)」
「そんな事言わないで。ほら、あーん♪」
「い、いや、止めて下さ…嫌だぁぁぁ!!!」
その日、九条大祐は地獄を味わった。
(お料理もクッキングも、していないという。)