Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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青の世界
第一話: 転移した矢先


…災厄とは常に、特定していない誰かに降り注ぐ理不尽な不安要素の一つだ。

対象は一人とは限らず寧ろ多人数一気に襲い掛かる事が頻繁である。

人ーー生物と不幸、そして幸せは何時も隣合わせ。

その不幸が全人類に対して牙を剥く日が来る事等、誰にも予測は出来なかった。

 

何の前触れも無く、突如として現れた災厄の元凶「ブラックポイント」。

其処から常に放出されている目には見えない謎の粒子『リソース』。

そしてブラックポイント発生と同時に生まれた生物【Z/X】。

この三大害悪要素は人々を苦しめ、容赦無く死へと追い詰めていった。

 

更にはZ/X同士の争いも勃発、それに巻き込まれる形で人類は滅びの淵に立たされる事となってしまった。

そして世界は5つの勢力に別れ、其々が常に敵対勢力を滅ぼそうと戦争を続ける。

人に抗う術等何処にも無い。

唯只管に、死なない道を選ぶのに必死だからだ。

 

残酷で無秩序…そんな世界に1人、不運にも転移してしまった少年。

彼も又、この世界の犠牲者と呼べるであろう。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

…意識が回復し目を開けると、そこには廃墟が拡がっていた。

 広大な廃墟、そんな所に一人ポツンと置かれている意味が分からない。

 一体何がどうしてこうなったのか。

 何で何も思い出せない。

 

 いや、記憶はしっかりと残っている。

ㅤだが偏頭痛で倒れてしまってから記憶が丸で無いのだ。

 意識を失っていたとでも言えばその通りだが――。

 

 あの時倒れて、周りの人達が駆け寄ってくれて…気付いた時には廃墟に一人?

 訳が分からないよ。

 ほんとだよ。

 今はそういう言葉しか思い付かない。

 

 それに何だこの周りにある建物の壊れっぷりは?

 こんな廃墟見た事ない…的な。

 一遍黙ろうか、俺。

 何処かに頭でもぶつけて可笑しくなっちゃったんじゃないのか?

 そんな冗談、御免だぞ。

 脳に関わる事故なら今さっき起きたばかりだが。

 

…本当に今さっきの出来事だったのか?

 

「痛っつ…」

 

 俺はズキズキと痛む頭に手を当てながら、ゆっくりと体を起こす。

 あぁ、今さっきと言われても違和感が無い位に新鮮な痛みだ。

 という事は偏頭痛を起こしてからそんなに時間は経っていない…って思って良いのか?

 取り敢えず体に負担の無い様、慎重に立つ。

 

 そして周囲を見渡すが、何度見ても一面廃墟に変わりは無い。

 何だか寂しくなってくる風景だな。

 少し風が吹くだけで壊れかけの建物を通し、大きな音が周りに響く。

 割とホラーゲームとかに出てきそうで怖い気もする。

 無造作に破壊された建物に、草木等何処にも見当たらない荒野。

 現代の日本じゃ先ずもって有り得ない風景だ。

 

「ふむ…」

 

 そんな場所に一人佇み、俺は顎に手を当て、傷む頭に手を当て考える。

 ここが何処なのか、今からどうするか。

 それが決まり次第に動きたいが、俺の頭の中は一つの言葉と偏頭痛の痛みで一杯だ。

 

 その一つの言葉というのは。

 

[異世界転移]

 

…その言葉を頭に思い浮かべるだけで、ワクワクしてしょうがない。

 何の世界に転生したのか、今からどんな物語が始まるのか。

 まさか勇者として転移させられ、夢のまた夢であった国の統治や将来的にはハーレム。

 チート能力なんかを使って敵をばすばす倒したりとか………。

 

 まてまてまてまて。

 逆もまた考えられるな。

 この異世界のモブとして召喚され、チート能力なんかも無しにそれでも過酷な人生を生き抜いて…。

 最終的には一人の女性としっぽり平和に暮らして、なんてのも想像できる。

 しかしそれも悪くない。

 一途な想いはどんな壁も壊せるからな。

 

 あ、後一つあった。

 序盤に出てくる何かしらのモンスターに殺されて、そのモンスターが人殺しとして有名になるとか。

 どこぞの某有名ゲームにもあるじゃんか、○鬼って奴が。

 あぁ、男のケツを狙いに来る男食家じゃあないぞ。

 青い奴だからな、其処ら辺間違えないように。

 次の予習テストに出るからなー、なんて言ってみたくなるのは俺だけかな?

 あ、因みに一番最初の序盤に死ぬモブだけは絶対に嫌だからな。

 誰だってそうだろうけど。

 

 そんな感じで妄想はどんどん膨らんでいった…が、ハッと我に返る。

 普通こういう転移物の主人公って、帰りたいなんて思うんだっけか?

 

…帰りたい、ねぇ。

 

…だが。

…しかし。

…でも。

 

 俺は不思議と帰りたいなんて気にはならない。

 

 どうせ、物語の終盤まで帰れないのがオチだ。

 それならいっそこの世界で暮らす事を前提に考えた方が良い。

…帰ってもどうせ独りなのだから。

 孤独で生きる事なんか…全然楽しくないんだ。

 誰かが側に居てくれてこそ、初めて笑顔になれるんだ。

 

 って、あの方の事を考えて無かった。

 唯一の親友を。

 危ない危ない…危うく親友の事を忘れる、最低クズ野郎になるところだった。

 

…正直半分忘れていたが。

 まあ、大丈夫でしょ。

 多分、恐らく、きっと。

 

 取り敢えずその事は置いといて。

 今は自分の事を第一に考えねば。

 豪邸を置いてきた事だけは、少々心残りがあるなぁ。

 そう、言うてそれだけな。

 うーむ。

 

…そうだな。

 悩んでいても仕方ないのは重々承知済みだ。

 兎に角行動に移さねば。

 何事も動いてからが大事。

 先ずはその一歩を踏み出す事が大事。

 動いてからなのか動き始める所なのか、どっちが大事なんて聞かないでね。

 どっちも大事に決まってるのだから。

 

 兎に角、心機一転頑張ろうじゃないか。

 画面外で死んで行くモブにはならないように。

 よし、第一の目標決定!

 自分で言っておいて何だが、随分としょうもない目標だな。

 

「取り敢えず、隠れられる場所の確保かな」

 

 そう言いながら、もう一度周囲を見渡す。

 何も無い…じゃなくて朽ちた建物ばかりだ。

 つい最近まで戦争でもしていたのか…?

 と、思って良い程荒々しい。

 

 一見隠れられる場所は多そうだが、今にも崩れそうな建物ばかりだ。

 内部に入った瞬間床に穴が開いて、高度から落下してユーアーデッドなんて言われたらモブどころの話では無い。

…一つ言わせて貰えるなら、ダサい。

 

 転移してまでそんな死に方したくないに決まっている。

 かと言ってここで悩んでいてもなぁ。

 

 なんて悩んでいる内に、黒く大きな影が俺の影を包み込んだ。

 

「…ん?」

 

 疑問に思った俺は即座に後ろを振り向く。

 そこには少し大きな丸い球体があった。

 

「へぇ〜…これはアカンパターンかな」

 

 一見、球体の様に見えた物。

 だが、見るべきは球体では無い。

 その両脇に生えている鎌の様な物体だ。

 

 球体は俺を識別、確認すると同時にその鎌を振りかざして来た。

 

「いや、ちょっ、待っ…」

 

 俺は地面を蹴って後退、ギリギリでその鎌を回避………出来なかった。

 球体の振りかざした鎌は俺の左足を見事に裂いた。

 スパッと。

 まるでカッターに切られた紙の様に。

 

「ぐ…あ…!」

 

 あまりの痛さに言葉も出てこない。

 太股から脛にかけてまで、縦に裂けた左足を見て絶句するしか無かった。

 避けるうんたらとは正にこの事。

 

…さっきの攻撃、反応する事自体は間に合った。

 だが、相手の方が早かったのだ。

 やはりゲーム感覚で攻撃を回避するのは駄目らしい。

 反応速度に体がついて行けてない。

 

 左足を犠牲に生き残った、とでも思えば良いのだろうか。

 

…否、球体は既に鎌を振り上げていた。

 対して俺は、左足を失った事により満足に動く事が出来ない状態。

ㅤそれは、死を表していた。

 

「画面外で死んでいくモブよりも、酷い死に方だな…」

 

 俺はもう諦めていた。

 どんなに足掻いたって、物語やストーリーの最初に出てくる奴には勝てないのだ。

 後々、こいつがラスボスだった、なんて言われても信じれないが。

 だって如何にも、最初に出てくる唯の敵っぽそうな立ち位置だから。

ㅤが、生身と言う名の初期装備でこんな奴倒せる筈が無い。

 この後はどうせ、切り裂き○ャックに出会ったしまった人みたいに肢体をバラバラにされて終了だ。

 

…こいつに会った時点で、俺の物語は詰んでいたらしい。

 一番嫌な死に方のフラグを立たせてしまうとは。

 熟運の無い男だ。

 

「…終わったな」

 

 戦闘終了直後に言うと死亡フラグが立ってしまう言葉が、思わず口から漏れてしまう。

 俺は目を瞑り、一瞬の痛みに備える。

 

(大丈夫だ。痛いのは、一瞬だから)

 

…心ではそう思いつつも、全身は小刻みに震え、 閉じていた目からは涙が流れていた。

 最早諦めるしか無い。

 その涙が目から頬。

 頬から地面へと零れ落ちた時、球体の構えていた鎌は振りかざされた。

 

…………………………………………………………。

 

「…あれ?」

 

 だが、何時になっても体に衝撃や痛みが伴わないので恐る恐る瞑っていた目を開ける。

ㅤそこには細い何かに貫かれ、真ん中に小さな穴が空いている球体が残っていた。

 

「うっ…」

 

 俺はその球体がまだ動ける物だと思い込み、再度目を瞑る。

 

 しかし目の前からは、ズシンと音を立てて何かが崩れる様な音がしただけ。

 それだけなのに、何故か目は開けたく無かった。

 理由?こいつが既にトラウマ認定になってるからだよ。

 俺がそうしてずーっと目を閉じていると、今度は遠くから声が聞こえて来る。

 こんな物騒な場所にはそぐわない、何とも可愛らしい声が。

 その声は段段と俺に近付き、俺がやっと聞き取れる位にまで近くなっていた。

 

「あの…大丈夫ですか…!?」

 

(…まさか、こんなに可愛らしい声が先程の球体から発せられていたりして)

 

 とか冗談めいた事を想像しながら、ゆっくりと目を開ける。

 その際に思う事が一つ。

 この癒される感じの声、何処かで聞いたような…?

 

 目を完全に開き、目の前の人物を捉えた瞬間、俺の心は「今までに無い」感覚に支配された。

 

「リゲル、この人の足…!」

 

…何も言えなくなってしまった。

 それは何故か。

 理由なんて誰だって分かる。

 

[リゲル]

 

 この名前には聞き覚えがあるからだ。

 というか聞き間違える筈が無い。

 今まで自分が異常なまでに感情移入してきた相手の名前なのだから。

 

「あづみ、その人から離れて。血が付いちゃう」

 

 二つ目の名前、そしてその名前の人物。

 この名前も間違えるなんて出来ない。

 

[あづみ]

 

 恐らく、俺に声を掛けてくれた少女の名前。

 薄く、青い色素の入ったツインテールに結ばれている髪の毛。

 全体的に青や水色で統一された衣装。

 大きなスカートに、腰辺りには…これまた大きな青色のリボン。

 白く、もふもふしてそうなニーソ。

 瞳は綺麗な赤。

 黄色い薔薇の髪飾り。

 腕には可愛らしい兎の飾り物を付けている。

 

…少し唐突な話になるが、俺はこの少女に恋を抱いていた。

 何年前からだろうか。

 少なくとも、二年位前って事は覚えている。

 

 叶わぬ恋をしていた事は承知済みだ。

 それでも、声を聞くだけで癒されて姿を見るだけで心の奥底にある[好意]という感情は抑えられなかった。

 現実の女性になんか、振り向きもしなかった俺が。

 いや、現実の女性に興味すら無いから二次元に恋をしていたのだろう。

 

「酷い傷…これは、治りそうに無いわね…」

「リゲル、何とか出来ない?」

「うーん…取り敢えず、貴方の名前を教えて貰おうかしら」

 

…んっと?

 俺の裂かれて治りそうに無い足よりも、俺の事を気にすると?

 そうかそうか。

 リゲルさんはそんなに俺の事が…。

 嘘ですごめんなさい。

 

 まぁ、良く良く考えれば当たり前か。

 初めて会った人の事を聞くのは常識だしな。

 ただ、少しは心配して欲しかったかな。

 一言「治りそうに無いわね…」だけじゃなくて。

 俺の心の傷が治りそうに無い。

 

 けどですね。

 さっすがリゲルさんって言いたい。

 俺の知っているリゲルさんは、あづみさん一筋。

 心の何処かでは、俺なんか死んでも構わないとでも思っているんじゃ…。

 そりゃあそうだろうね!

 俺は全然構わないけど!

 傷付いてなんか無いから!

 それ位あづみさんが好きなのは知ってますから!

 

…自分で思って悲しくなって来た。

 だが、兎に角俺の事を教えれば助けて…くれる筈が無いのは承知の上で名乗ろうではないか。

 その前にお別れしそうだけど。

 俺は倒れていた体を起こし、二人に向き合う。

 

「えーと…、あづみさん、リゲルさん。僕が…名前を教えるのは…構いませんが…早々にいなくなった方が安全かと……」

「無理に動いちゃ…え?」

「…貴様、何処の世界の住人だ」

 

 俺の異様な返答に対し、驚きを隠せないあづみさん。

 そんなあづみさんとは正反対に、リゲルさんは大きなスナイパーガンを俺に突き付ける。

 

 綺麗な長い金髪に、露出の高い衣装。

 その衣装のお陰で、大きな胸、無駄な脂肪が無く、括れているお腹回り、綺麗な足が露になっている。

 瞳は碧眼に近い蒼。

 それに、気持ちの切り替えが早い性格。

 

 こちらも間違い無いだろう。

 俺が、異常なまでの感情移入をしているもう一人。

 リゲルさん。

 いつ見ても美しい。

 あづみさんはいつ見ても可愛い。

 

 凄いよね。

 こんなに可愛い、美しいがマッチしている二人にその二つで勝る物は無いだろう。

 二人が好きな人達は、この気持ちを絶対に分かってくれる。

 

 話が逸れた。

 今はリゲルさんを説得する事が先決だ。

ㅤどうやって?

 知りませんね。

 

「答えなさい。でなければ貴様の命は無い」

「駄目だよ、リゲル!」

「私達はこんな人間に構っている暇は無いの。あづみも分かってるでしょ?」

「でも…」

 

 あ、ヤバい。

 左足の大量出血で意識が飛びそうだ。

 そろそろ心の余裕も無くなって…。

 いや駄目だ。

 折角二人に会えたんだ。

 せめて倒れる前に伝えねば。

 

「僕に…構っている暇が無いのであれば…早くここから…」

「部外者は黙りなさい」

「リゲル!」

 

…泣いても、良いですか?

 今まで愛していたキャラにここまで言われると流石の俺でも精神的に辛いんだ。

 だが、こんな事で折れては俺のプライドが許さない。

 二人への愛は伊達じゃ無い!

 

「…早々に立ち去れば…こんな事には…ならなかったのに」

「貴様…何の話を」

「囲まれています…あづみさんを逃がした方が…良いかと…」

「…?」

 

 俺の言葉に疑問を持ったのか、リゲルさんが目を瞑って何かを始めた。

 

 十秒程すると、リゲルさんが目を開ける。

 その表情は曇っていた。

 

「リソース反応20…少し多いわね。あづみ、隠れてーー」

 

 リゲルさんはあづみさんに、「隠れていて」とでも伝えたかったのだろう。

 その言葉は最後まで響かず、誰かの声で遮られた。

ㅤあぁ、俺の声によって。

 

「…っ!危ない…!」

「えっ…?」

 

 三人で会話している内に、あづみさんの背後に先程の球体が迫っていた。

 

 いつの間に…!

 俺は動かせる右足で跳躍し、あづみさんを突き飛ばした。

 

「きゃっ!」

「あづみ!」

 

 一歩遅れてリゲルさんが反応するが、球体の降り下ろした鎌には間に合わない。

 だが、俺があづみさんを突き飛ばすという行動を取った事により、鎌の被害を受けるのはあづみさんではなく俺になった。

 今回もまた、スパッという切れの良い音が脳内に響く。

 

「ぐあぁぁぁ!!」

 

 球体が完全に鎌を降り下ろすと同時に、背後からボトッという擬音が脳内に残る。

 俺の左足は完全に切断された。

 断面からは血が噴き出している。

…俺の左足が一体何をしたんだよ。

 

「あっ…はは。こりゃあ…大量出血じゃ済まされんかね…」

「そん…な…」

「あづみ!早く安全な場所に!」

 

 リゲルさんの声に、はっと我を取り戻したあづみさんは俺の腕を自分の肩に置き、安全な場所まで歩くのを手伝ってくれた。

 その間にも左足の切断面からは、ドクドクと血が流れ続けている。

 極力あづみさんに負担を掛けない様にするが、大量出血のせいで意識が朦朧としてしまう。

 

…その間にリゲルさんが敵の注意を引き付けてくれたお陰で、敵のいない場所へと無事に避難成功。

 だが、リゲルさんは1対20という苦戦を強いられる事になってしまった。

 

『パーミッション、リソース開放!』

 

 朦朧とする意識の中、遠くからリゲルさんの声が聞こえて来る。

 同時に、戦っている音も。

 

…情けないな。

 女性だけを戦わせて、自分は安全な場所で観戦。

 実に情けない。

 

『くっ…!流石に20体は辛いわね…』

『リゲル!』

『あづみ!?来ちゃ駄目!』

 

 リゲルさんの焦っている声がする。

 微かに残る意識をその方向に向けると、球体の群れと戦っているリゲルさんの元にあづみさんが走りながら近付いていた。

 

 自殺行為、とでも言った所か。

 

 あづみさんが何故そんな事をしたのか。

ㅤ考えるまでも無い。

 リゲルさんが大切だからだ。

 が、あづみさんが前に出ても出来る事は無い。

 寧ろカンジュラーに捕まえられている。

 それでもあづみさんは、リゲルさんの近くに居たかったのだろう。

 

(あの二人を助けねば…!)

 

 そう思い、なけなしの意識を振り絞って周りを見渡すと一つの物体が視界に入った。

…一見、唯の瓦礫だ。

 

(何だ、あれ…?)

 

 だが、俺には見えていた。

 瓦礫の中の仄かな光を。

ㅤ確かに、調べてみれば唯の光の反射かもしれない。

 けど、こうやって何もしないでいるよりは調べに行った方が良い。

 

(くそっ…左足が…)

 

 俺は這いずりながら、その瓦礫に辿り着く。

ㅤ首を動かすのがやっとな程に辛い状態だが、そうも言っていられない。

ㅤ目を凝らしながら見てみると、確かに中心部から、今にも消えそうな程の小さな光が発せられていた。

 

 周りの瓦礫を無作為にどかし、その小さな光に手を近付ける。

ㅤそして、その光に触れた瞬間。

 小さな光は大きくなり、俺を包み込んだ。

 

‐‐‐




一話を見て下さった方々、ありがとうございます!
マイペースですが、確実に書いていきたいと思います。

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