Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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シリアスな展開を表現するのは難しいですね。

どうしても違う方向に向かってしまいがちな気が…。


第十三話: 紅を纏いしバトルドレス

 勝負は一時の奪い合い。

 さっさと終わらせて、あづみさんを連れ戻さなければ。

 リゲルさんにも頼まれる大事だしな。

 

 初めての戦闘運用で戦い方が分からないが、大体は勘と知識でどうにかなる。

成るように成せってね。

 

 今直ぐにでも戦闘を開始したいが、一度リゲルさんの安全を確保しなければ。

 幾らリゲルさんとはいえ、寝ていては只の美しい女性だ。

 そこに強さなど一つも無い。

 誘惑という甘い言葉だけが存在する。

 

 取り敢えずは…抱えて戦うか。

 

「おい…彼奴、まさかアレで戦う気かよ。」

「はははっ!隙だらけじゃねぇか!」

 

 あぁ、そうさ。

 今の俺は隙しか無いぞ。

 何故って、リゲルさんをお姫様抱っこしながら戦おうとしているからな。

 

 自分で思うが、あまりにも無謀じゃないか。

 分かっているんだったら止めろって話だが。

 このままリゲルさんを地面で寝かせながら戦う方が無謀だ。

…何よりも、リゲルさんをお姫様抱っこしたかった――

 

おっと、つい本音が。

 

 今はふざけている場合では無い。

 幸い、エクシアは[足]を使うガンダムだ。

 足だけで何とかなる相手では無い事位は自覚済みだが。

 

 況してや10対1――10対1?

 

あれ?一人何処行った?

 

「今だ!全員でかかれ!」

「…!」

 

 まずった。

 居なくなった一人が何処に行ったのか気になっていたら、不意をつかれてしまった。

 

 しかし、検討はついている。

 恐らく、あづみさんを連れ去ったのだろう。

 場所が分からないから無意味だが。

 

「ははっ!お前だけ殺してやるよ!」

「…」

 

 何だかさっきから煩い奴が、やっと突っ込んできた。

 手には槍、体には鎧と、中々に面倒臭い。

 

 ならば、鎧の無い頭を狙うまで。

 

 男ブレイバーが槍を突いた瞬間に地面を蹴る。

横ではなく、上に。

 そのまま相手の槍の上に着地。

 片足で体を支えながら無言で頭を蹴り飛ばす。

 

ドゴォン!

 

 勢い良く飛んでいった男ブレイバーは、建物に直撃。

 完全に意識を失っていた。

 

これで一人。

 

 さっきから男ブレイバーと呼ぶのは、鎧を蹴る事よりも更に面倒臭いので、ABCと名付けよう。

…という事は、今の建物に直撃した奴は「男A」だな。

 リゲルさんに近付くからこうなる。

 

…とは言いつつ.逃げた奴を含めてあと10人、結構なハードスケジュールだ。

 早く終わらせる為に次狙う奴を決定したいが、ほぼ確定気味。

 A-Zちゃんを担いでいる「男B」だ。

 

 狙いを定めた俺は男Bに向かってブーストを飛ばす。

 エクシアは二つのバトルドレスとは違い小型で軽量。

 機動力、瞬発力は信頼に値する。

 

 それに任せての移動方法だったが速さは中々の物。

 瞬時に男Bの目の前まで到達した。

 

「その子を離せ…!」

「くっ、くそ――」

 

 喋らせる間もなく男Bの腹部に横から蹴りを入れる。

 更に腕を蹴りあげ、男BからA-Zちゃんを解放。

 しかし、このままではA-Zちゃんが地面へ落下してしまう。

 かといって俺の両手は塞がっている。

 

 考えている時間は無い。

ㅤ足でキャッチするしか――

 

「ますた、おはよう。」

「…え?」

 

 どうしようか必死に考えていると、A-Zちゃんがパチッと目を覚ました。

 そして片手を地面に着き、くるっと一回転。

 そのまま華麗に体勢を立て直した。

 

 なにいまの、凄くカッコイイ。

 

「ますた、命令…守れなくてすみません。」

「いや、気にしないで。それよりもリゲルさんを頼めるかい?」

「了解、ますた。」

 

 もう…ますた、ますた言ってくれるA-Zちゃんが凄い可愛い。

 何時もは凛としているのに、マスターと呼んでくれる時だけ間違っている感じがして。

 可愛いったらありゃしない。

 

 しかも、あづみさんに言われている気持ちに…

 

――はっ!そんな事はどうでも良いから、早く相手を殺してあづみさんを連れ戻さねば。

 取り敢えずA-Zちゃんにリゲルさんを託し、解放された両手にビームサーベルを構える。

 

 敵の数は9。

 如何に早く殲滅出来るかが勝負の鍵だ。

 遅ければ遅い程、あづみさんを連れ戻せる確率が低くなる。

 

 それだけは避けなければならない。

 

 だが、幸いにもエクシアはOO(ダブルオー)系列のガンダム。

 『SEED』と同じく、OOのガンダムでしか使えない特殊能力がある。

 上手く発動させられるか…不安ばかりが積もるが、やってみなければ始まらない。

 

 兎に角、今は普通に戦いを進めよう。

 求めれば掴めるなんて物でもないし。

 

「怯むな!たかが一人のバトルドレスに、8人掛かりで挑めば余裕の勝利だ!」

 

 あのブレイバーも嘗(な)めてくれる。

 エクシアの一番の特徴も知らずに。

 

…次は、此方から仕掛けさせて貰おう。

 

「目標数8…一気に殲滅する。」

「多勢に無勢、さよならだなぁ!」

 

 先程から指揮をとり、尚且つ煩いブレイバー(男C)を崩せば一気に戦線崩壊を起こすだろう。

ならば話は早い。

 

 俺は「男C」に対してエクシアのブーストを一気に上に吹かし、即座に解除。

 落下の速度を活かしながらな攻撃を開始する。

 その時のポーズはエクシア恒例、片手を掲げて片足を上げるポーズ。

 

通称「マリオジャンプ」

 

 ヤッフーとか言いたくなるが、カッコイイエクシアでそれをやるのは気が引ける。

ダサ過ぎてなぁ。

 

 ま、それは置いといて。

 落下の法則を利用し、男Cの頭上から攻めいる。

 

 急な出来事に反応仕切れない男Cは、俺のビームサーベルが振りかざされるまでその場に立ち尽くしていた。

 そしてビームサーベルが当たるギリギリの所で…。

 

「…なにっ!?」

 

 気付くのおせぇよ。

 幾ら俺がマリオジャンプとか言うダサい行為をしているからって、それは無いだろうに。

 地味に恥ずかしいんだぞ、このポーズ。

 

 なんて男Cに勝手な言い掛かりを付けながらも、両手のGNビームサーベルをクロスさせ、男Cの体を斬り抜ける。

 

 後ろからは叫び声なんてのは聞こえなく、血が飛び散った。

 死ぬ方が早かったのだろう。

これで一人脱落。

 

 このまま順調に撃破出来れば…なんて想ったが、これでは遅過ぎる。

 やはり、OO系列ガンダム特有のシステムが解放されなければ、あづみさんを助けれない。

 

 まだ14歳の少女を攫って、何をするつもりだ。

 目的が分からないせいで余計に不安になってくる。

 

…そして、俺は頼まれたんだ。

 リゲルさんに。

 「お願い」って。

 

 それに対して俺は約束した。

 「必ず、あづみさんを連れ戻します」と。

 

 取り付けた約束を破るなんて人情の無い真似が、出来る筈がない。

 

 何よりも、そんなのを関係なしにあづみさんを助けねば。

 好きな女性を救わなくてどうする。

 ここは華麗にあづみさんを奪い返す所だろ。

 

 あづみさんを一番に想っているリゲルさんにも…。

 

「俺は…託されたんだ!」

 

[限界経験値を突破。特殊能力『TRANS-AM(トランザム)』を解放します。]

 

 Xちゃん戦のデスティニーと同じく、特殊能力が解放。

 

…この瞬間を待っていたんだ!

 

 バトルドレスが体ごと赤く輝く。

 全てが紅に染まりし時、初めて『TRANS-AM』の完成を迎える。

 OO系列ガンダムしか扱えない、一番特徴的な特殊武装。

 

「何だ!?彼奴の体が赤く――」

「目標を…破壊する!」

 

 自身の掛け声と共に、移動を開始。

 一瞬の間に敵の背後へと回り込む。

 

 先程まで其所にいた俺の姿が急に無くなり、動揺しまくる男Dを背後から襲う。

 両腰の武装ラッチに装備される大小2振りの実体剣、GNロングブレイド、GNショートブレイドで何度も切り刻む。

 

 因みに、『TRANS-AM』システムは至って単純。

 自身の基本コンセプトが三倍まで跳ね上がる。

それだけ。

 あとは体全体が赤く光り、デスティニーの光の翼同様、動く度に残像が発生する。

 

 但し、デスティニーみたいに「相手の認識を誤らせる」事は出来ない。

 その代わり、移動速度は光の翼展開時のデスティニーを上回る程。

 

 この速さを活かして戦う事が、エクシア、OO系列ガンダムの最大特徴。

 

「GNビームダガー…!」

 

 次はどれを標的にするか、一瞬足を止めた瞬間に男Eが迫っていた。

 それを情報演算処理能力で瞬時に察知し、腰背部に装備されているGNビームダガーを1本、2本と投げ付ける。

 

「何だこれは…!体が痺れて…くそっ!」

「おい、其処から早く動な――」

 

ザシュッ

 

 丸で、重い刀が人を切り裂く様な擬音が、痺れて動けない男Eを助けに来た男Fから響いた。

 『TRANS-AM』システムの恩恵で動く速さが三倍になった俺が、目の前に移動。

 同時に折り畳んでいた「斬撃用兵装」GNソードを展開し、男Fを横から斬り込む。

 先の音は男Fが切り裂かれた擬音。

 周りに響く程にえげつない音だった。

 

 切り裂かれた男Fは力なく崩れ落ちる。

 

「おい…マジかよ。俺、まだ動けな――」

 

 男Fを始末した後、GNビームダガーが直撃した男EにGNソードを突き刺す。

勿論、心臓部分に。

 

 そのまま左下まで一気に切り下ろす。

 途中肋骨に当たったが、それごと切り裂く。

 例え用の無い音が目の前から鳴り響く。

 

 完全な死を迎えたな。

 

 あとはこの場にいる4人を片付けて――

 

グシャッ

 

「…がっ…はっ」

「ははっ!残念だったな!ここで終わりだ!」

 

 斬り裂き切れなかった男Eか、GNソードを抜き取ろうとした瞬間、近くに身を隠していたブレイバー「男G、H、I、J」全員に槍で突かれてしまった。

 腹部からはダラダラと血が流れている。

 

 男G、H、I、Jは一斉に槍を抜き取り、もう一度刺しに来ようとする。

 

だが。

 

「俺のバトルドレスは…!」

 

 迫って来る槍の、僅かな隙を見つけてスラスターを吹かす。

 何とか抜ける事に成功し男Gの背後をとる。

 

「なっ!いつの間に…!」

「俺に…触れるな!」

 

 再度GNソードを展開し、男Gを切り抜け、直ぐ様男Hを切り抜け、日和った男Iを左手のGNビームサーベルで斬り、近付いて来た男JをGNソードとGNビームサーベルをクロスさせ、×印を描くように切り抜ける。

…それは、一瞬の出来事だった。

 

 気付けばあっという間に、あづみさんを連れ去った男K以外は殲滅完了していた。

 

 過剰に動いたせいか、腹部からは未だに血が流れ続けている。

 今思い返せば、転移してから出血の量が凄まじい事に。

 

 それでも早くあづみさんを助けなければ。

 

 なんて想っていると、体から徐々に赤みが消え、普通の青白で色付いたエクシアに戻ってしまった。

 所謂、『TRANS-AM』の限界時間――タイムアップだ。

 

「うぐっ…」

 

 激痛の走る腹部を手で押さえ、どうするか考える。

 このままではリゲルさんに申し訳が立たない。

 どうにかしてこの体に鞭を打ち、あづみさんを連れ去った男Kを追いたいが…。

 何処に行ったかも分からない。

 

…そう言えば、さっきからA-Zちゃんを見ないな。

 

一体何処に――

 

[ますた、今動ける?]

[A-Zちゃん…今、何処にいるんだい…?]

 

 唐突にA-Zちゃんからの通信が入った。

 

 自分でも分かるが、応答の声がかなり弱々しい。

 腹部の傷が中々に響いている。

 

…だが、こんな所で弱音を吐いている場合ではない。

 兎に角男Kを即刻見つけ出し…。

 

[今、各務原あづみ様を連れ去ったブレイバーを追跡中。リゲル様はまだ深い眠りの中。]

[本当…!?場所は――がっ…!]

[ますた、大丈夫…?]

 

 しまったしまった。

 我慢ならなくて思わず吐血してしまったよ。

 

[俺は…大丈夫。…それよりも、場所は…?]

[ますたのいる場所から5Km程離れた所。詳しい情報は今から送る。]

 

 と、脳内に何かの映像が飛び込んで来た。

 映っているのは一人の少女を担いだ男。

 

 こいつがあづみさんを攫った張本人。

 早く潰してあづみさんの笑顔が見たいものだ。

 

[…分かった。今直ぐに…そっちに合流するよ…。]

[無理は禁物。…ますたが良いなら、私は止めない。]

[あぁ…直ぐ行くよ。]

 

 もう何も聞こえなくなり、A-Zちゃんとの連絡が切れた。

 極力体に負担をかけないように動きたいが…。

 どうやって移動しようか考えていると、一人の女性が近付いて来た。

 

 つい何十分か前、見た事のある女性だ。

 

 その女性は俺を見て、周りを見てギョッとしている。

 

「遅いと思って来てみたら…一体何があったの?」

「アームドさん…ちょっと、手を貸してくれますか?」

「良いけど――って…九条、その傷は!?」

 

 腹部に深い傷を負った俺を見て、アームドさんは驚愕した。

 今も尚、溢れんばかりの血が流れている。

 流石にこれ以上の出血はまずい。

 

 それはアームドさんも思ったらしく、肩を貸してくれた。

…しかし今ここで休んでいる暇はない。

 

 無理をしてでもあづみさんを助けに行かなければ。

 俺が遅れたから間に合わなかった、なんて状況にはしたくない。

 どんな手を使ってでも…彼女を救出せねば。

 

 例えこの身が滅びようと…!

 

「アームドさん…やっぱり、大丈夫です。…また、待っててくれますかね?」

「待って!九条、その体で何処に行くつもりなの!?」

「…」

 

 俺は無言でスラスターを起動し、宙に浮く。

 そしてそのままA-Zちゃんが見せてくれた場所へと移動を開始。

 無論、血を滴ながらふらふらと。

 

「…女性のブレイバー、どうすれば良いのかしら。」

 

 その場には、呆然としたアームドさんだけが取り残された。

 

 

‐‐‐

 

「あのバトルドレスの少年…中々面白いですの。」

「ほのめはさっさと研究するし。じゃなきゃ、次の会議に間に合わないし。」

「分かってますの。…あのバトルドレス、研究しがいがありますわ。」

「早くするし。」

「…びんがはもうちょっとマイペースな方が良いですの。研究とは、地道な努力で結ばれるものですの!」

「ふ〜ん…。」

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

「ぐっ…はぁ…はぁ…」

 

 俺は息切れを起こしながら地味にブーストを飛ばしていた。

 全力でスラスターを吹かして速くA-Zちゃんに合流したいのは山々だが、これ以上飛ばすと命に関わる。

 

 只でさえ意識が朦朧とする中、必死に移動しているって言うのに。

 

…しかし、このままでは遅い。

 しょうがなくブースターの可動領域を上げるが、バランスを崩して地面に落下してしまった。

 

「おっとっと…危ない危ない。」

 

 頭から地面に突っ込みそうになり、慌てて体勢を立て直す。

 しっかりと両足で踏みとどまったのを確認し、少しその場に腰を下ろす。

 

 一度落ち着かなければ…駄目だ。

 

 というか、こうして改めて全体を見渡すと真っ暗だな。

 もう夜になっていたのか。

 

 あづみさんが望んでもいない男と夜を一緒に――

 

…止めよう。

 そう思うと、何だか無性にイライラしてくる。

 今直ぐにでもぶち殺してあづみさんを助けに…。

 

 よーし!

 復讐の怒りが動力の源になって、体が軽くなったぞ。

 これ絶対に反動が凄まじい奴だ。

 絶対に後悔して絶対に三人…二人から心配されるパターンだ。

 その後にあづみさんからお礼として「膝枕」をして貰って…。

 

 よーし!よーし!!よーし!!!

 頑張るぞ!お兄さん頑張っちゃうぞ!

 ロリコンとか言われても気にしないもんね!

 だって、あづみさんと俺は年齢が一つしか違わないから!

 

 ふぅ…満足した。

 言いたい事を好きなだけ言って発散すると、気持ちいいな。

相変わらず傷は痛いが。

 

 痛いで済んでいるだけ良いとしよう。

 絶命しなければ、後はどうとでもなる。

 ほぼ、死にかけ状態だが。

 

 痛む体に鞭を打ち、再度スラスターを起動。

 先程よりは、気持ち痛みが減っているような…ただただ感覚が麻痺しているような…?

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 結構な距離を移動していると、前方にA-Zちゃんが見えてきた。

 量腕には未だ眠りに就いているリゲルさんを抱えている。

 やはりいつ見ても可愛らしい。

 

「A-Zちゃん…間に合って良かった。」

「ますた、何だか久し振り。リゲル様はまだ眠ってる。…その傷は?」

「あぁ…これはね、ちょっとやらかして。…あづみさんは?」

「彼処。」

 

 A-Zちゃんの見つめる先には、一つの小さな小屋があった。

 

 ポツンと佇むその小屋は、赤の世界の建物とは比べ物にならない程にボロボロだ。

…この中に、あづみさんと男Kが。

 

「待って、ますた。」

 

 我先にと小屋への侵入を試みるも、A-Zちゃんに止められてしまった。

 俺としては一刻も早く小屋をぶち壊してあづみさんを救出したいのだが。

 

「…あづみ様と一緒にいるブレイバーが、あづみ様を人質にしました。「この少女を殺されたくなければ、即刻に立ち去れ」…との事です。」

「OK。直ぐにそいつを殺してくる。」

「ま、ますた?」

 

 俺はA-Zちゃんにそう告げ、小屋の扉を思いっきり蹴り壊した。

 

 中では、男Kがあづみさんを襲おうとしている真っ最中だった。

 あそこで躊躇しなくて良かったと心から思う。

 

「あ!?てめえ、立ち去らなければ此奴は殺すと――」

「死ねよ。」

 

 男Kに対して一言だけを言い放ち、胸元を掴んで外へ放り出す。

 直ぐ様エクシアからデスティニーに換装し、ウェポンラックからアロンダイトを取り出す。

 

 この工程を一瞬で済ませ、後はアロンダイトを刺すだけ。

 男Kに、遠慮なく、思いっきり、怒りを籠めて、アロンダイトを心臓部分に突き刺す。

 

 返り血が飛んでくるが、そんなのは関係ない。

 自分が満足するまで男Kを斬りまくる。

 

 斬って、斬って、斬って斬って斬りまくる。

 

 周りに血飛沫が飛び散る毎に、俺の心が喜びで満たされていく。

 そこに善悪などは存在しない。

 

 あづみさんやリゲルさん、更にはA-Zちゃんに手を出した報復だ。

 せいぜいあの世でも苦しむがいいさ。

 一時の猶予も許されない無限の苦しみに。

 

「…ますた、もうそのブレイバーは原形が無くなってる。」

「………はっ。…有り難う、A-Zちゃん。」

 

 自分でも知らず知らずの内に、男Kを滅多斬りにしていた。

 その姿はよもや人形(ひとがた)ではない。

ㅤ只の肉塊だ。

 

 俺とA-Zちゃんはそれを無視し、小屋の中へと入室する。

 先の肉塊はあづみさんやリゲルさんには見せられない光景…。

 後で処理をしておかなければ――

 

「大祐くんっ!」

「おわっと……あづみさん…?」

 

 どうやって処理をしようか、なんて考えていると、あづみさんが急に抱き付いて来た。

 思わず彼女の体を抱きしめそうになる。

 

 何事かとあづみさんの顔を伺おうとすると、彼女の瞳からは大粒の雫が溢れていた。

 

…恐らく、恐怖という感情が彼女を包み込んでいるのだろう。

 あのまま事が進んでしまったら、あづみさんは…。

 

「…大祐くんっ…怖かったよ…」

「あづみさん……もう、大丈夫です。そして、ごめんなさい。」

「謝らないで…大祐くんは私を助けに来てくれたのに、何で謝るの…?」

 

 どうやら俺とあづみさんは、それぞれ違う観点から喋っているようだ。

 

 あづみさんは、俺に助けられたと思っている。

 

…だが、それは違う。

 

 少なくとも、俺は自分が元凶でこうなったと感じている。

 抑(そもそも)が赤の世界に着いてから何時も一緒に行動していれば良かったのだ。

 あの時一人で突っ走らないで。

 

 俺のその愚行が今回の元凶だ。

 

 幾ら三人を疲れさせたくないからって、こうなってしまっては元も子もない。

 疲れさせるどころか、あづみさんを怖がらせ、泣かせてしまい、リゲルさんはまだ眠り、A-Zちゃんには多大な迷惑を掛けてしまった。

 

 この罪は、償っても償いきれない。

 

「…でも、良かった。あづみさんが無事で。」

「そう言う大祐くんは………!?」

 

 あづみさんが至極驚いている。

 恐らくだが、俺の腹部を見ての事だろう。

 正直自分自身でもすっかり忘れていた。

 

 駄目だなぁ。

 あづみさんやリゲルさんの事になると、何もかも直ぐに忘れる。

 少しは考えてから行動しなければ。

 

…この傷も、今はバトルドレスを装着中だから良いものの、これを解除したら絶対死ぬ。

 

 というか、バトルドレスには延命処置能力も備わっているらしい。

ㅤほんと、助かるな。

 

――そう言えば、リゲルさんは?

 

「ますた、あづみ様とイチャイチャするのは構わないけど、此方の事も少しは…。」

「先ず、俺はあづみさんとイチャイチャしてない。彼女が怖がっているから抱きしめてあげただけで。」

「い、イチャイチャなんか、してない///」

 

 そう言いつつも、あづみさんの頬が赤く染まっている。

ㅤ一体何を想像したのか。

 返答次第では現実になるのでご注意を。

 

「…で、リゲルさんは?」

「寝てる。」

「まだ!?」

 

 あまりにも起きないリゲルさんの近くに寄り、顔に触れる。

 いや、ただ触りたいとかそう言うんじゃなくて。

 

 人差し指で頬をなぞり、それを見つめる。

 何故か粉らしき粉末が付着していた。

 

 多分だが、リゲルさんはこれを吸い込んで体内に取り込んでしまい、深い眠りに就いてしまったと考えられる。

 これが何の薬なのかは特定出来ないが眠り薬なのは確実だ。

 あと一つ、この薬には何かしらの効力が含まれている。

 

 大体の見当はついているが。

 

「…ふぅ、漸く傷が回復した。原理は知らないが流石デスティニー。」

「…ん…んぅ……」

「大祐くん、リゲルが起きたよ!」

「おっ、此方も漸くお目覚めですか。…御早う、じゃなくて今晩は、リゲルさん。」

「ふあ…んっ!?何…これ…?」

 

 リゲルさんがまだ眠そうな目で俺を見た途端、驚愕し過剰な反応を見せる。

 彼女の反応からしてあの薬のもう一つの効力が何か、予想はあっていると思う。

 

「リゲル、どうかしたの?」

「あづみ…大祐を見た途端に…何だか感情が高ぶって来て…。」

「恐らくですが、あの薬には媚薬が含まれていたと思われます。リゲル様はそれを大量に吸ってしまわれたと…。」

「びやく?」

 

 び・や・く☆

 あづみさんが首を傾げ、慣れない感じで惚れ薬の名称を口にする。

 

 やっぱり、というか知ってはいたが、あづみさんは媚薬を知らないんだな。

 俺も詳しくは分からないが多少の知識は頭に残っている。

 

…しかし、媚薬か。

 もしそうだとしたら、俺はこの小屋から出ていった方が良いよな。

 A-Zちゃんが媚薬と断言した時点でそうなのだろうけど。

 

 にしても赤の世界で薬なんて珍しいな。

 そういう事に関しては緑の世界だと思っていたけど。

 まさか裏繋がりな訳無いよな。

 どちらかと言えば両世界共、仲悪いし。

 

「うぅ〜…大祐、これ、何とかならないの?」

 

…なんて、他世界の事を考える暇があるなら今目の前で起こっている問題を解決しろってね。

 俺にはどうしようもないけど。

 

「取り敢えず、俺は外に出ていきます。でなければリゲルさんがずっと興奮状態になってしまうので。」

「えっ…大祐くん、また居なくなっちゃうの…?」

「い、いや、居なくなるとかじゃなくて…。」

 

 上目遣い+寂しそうなあづみさんの表情が、俺の心をストライクで貫いてくる。

 何故こうもあづみさんは可愛いのか。

ㅤ哲学的なあれですかね。

 

 ま、それは置いといて取り敢えずはバトルドレスを解除しておこう。

 ずっと装着し続けるのにもまだ慣れてないし――

 

「ん〜…もう無理!」

「おわっ!リゲルさん!?」

「リゲル!?」

「駄目…耐えられない…。」

 

 びびった。

 急にリゲルさんが抱き付いて来たから、そのまま後ろに倒れてしまった。

 俺が下で仰向け、リゲルさんが上でうつ伏せの状態になっている。

 

…何これ。

 俺は一体どうすれば良いの?

 

「…くー…すー…」

「へ?」

「…リゲル、また寝たの?」

 

 何かもう、良く分からない。

 リゲルさんの行動が一切読めないな。

 

…というか、このまま俺の上で寝続けられても困るのだが。

 間近で寝息が聞こえるのはもう慣れたが、直接的に肌と肌がくっつくのはアレだなぁ。

 しかも触れ合っている面積が中々に大きい。

 

 俺の肋骨部分に、リゲルさんの大きな二つの物体が…。

 おい、止せ、理性を失うな。

 今、理性を、失ったら、リゲルさんを、悲しませる結果に、なってしまう。

 

…自分自身が信用ならないって、どうなんだろうな。

 まあ、如何にも挙動不審な奴を信じる事は出来ないよな。

ㅤ知ってた知ってた。

 

 取り敢えずこの状態を維持されると俺がまずいのでリゲルさんを退かそう。

 勿論、二人に手伝って貰いながら。

 

「A-Zちゃん、手伝って――」

「ZZZ」

 

…いや、眠ってるがな!

 

 しょうがない、あづみさんに手伝って貰うとしよう。

 

「あづみさん、あづみさん?」

「…リゲル…羨ましいな…」

「あづみさん。」

「はっはい!…えーと、大祐くん、どうかしたの?」

「リゲルさんを退かすの手伝ってくれますか?」

「…大祐くん、それってリゲルを横にずらせば…。」

「――あ、そうでしたね。」

 

 流石あづみさん。

 リゲルさんを横にずらすという考えは俺に一切無かった考えだ。

 いやはや、助かりました。

 

 俺はリゲルさんの腰辺りに左手を回し、右手で頭を支える。

…丸で恋人同士が抱き合う姿みたいになってしまった。

 

 などと余計な事は頭の隅から消し去り、リゲルさんと一緒に体を横に傾ける。

 頭が地面にぶつからないようにしっかり支えて――

 

「…」

「…」

 

 途中でリゲルさんの可愛らしいお顔を見せて貰おうと覗くと、綺麗な碧眼に近い蒼色の瞳が、此方を見つめていた。

 

…ほら、こういう事があるからこの方法悩んだんだよ。

 俺、殺されて終了のお知らせが聞こえる。

 

 リゲルさんがバトルドレスを装着し、額を撃ち抜かれるところまでは情報演算処理能力がなくても分かる。

 

 しかし、分かってはいるが回避などしない。

ㅤ悪いのは俺だから。

 

「………」

「………」

「……」

「…!?」

「リゲルが…!」

 

 うん、そうだな。

 今日はエイプリルフールだっけか。

 俺絶対騙されてるよね、これ。

 

 まさかリゲルさんが、俺に抱かれたまま自ら身を寄せてくるなんて。

 あづみさんも、凄い物を見てしまった的な表情をしている。

 

…と、ととと兎に角。

 予想外の展開過ぎて、又してもどうすれば良いか分からなくなる。

 

 一体、何をして上げれば…。

 

「…少し」

「リゲルさん…?」

「…少しこのままでいさせてくれるかしら。」

 

 そう言う彼女の体は、小刻みに震えていた。

 

 彼女も彼女で、恐かったのだろう。

 連れ去られて何をされるのか、そして何よりも、あづみさんが心配で。

 万が一の場合は自分を犠牲にしてまであづみさんを逃がそうとしたのだろう。

 自分よりも大切なあづみさんを。

 

 そう想いを巡らせた瞬間、俺は震える彼女の体を強く抱きしめた。

 

「…大祐…?」

「…ごめんなさい…俺が、勝手な行動をしなければ…!」

「それは違うわ。大祐は私達の事を想って――」

「違くありませんよ。…今回の元凶は、俺です。」

「大祐くん…。」

 

 後ろからあづみさんが近寄り、小さな可愛らしい手で、俺の頭を撫で始めた。

 

 上から下へ、上から下へ、何回も撫でてくれる。

 不思議と心地好い感覚に包まれる。

 

…生きていて良かった。

 

 少しの時間こうして欲しいのは山々だが、それではあづみさんだけ放置となってしまう。

 A-Zちゃんは自ら寝に就いたので、良しとしよう。

 

 一度リゲルさんを抱いていた手を離し、あづみさんの方を向く。

 するときょとんとした表情をされた。

 

「…あ、ごめんなさい…嫌だった…かな。」

「嫌な筈無いじゃないですか。…ほら、あづみさんも横になって下さい。」

「えっ……こうで良いの?」

 

 隣にあづみさんが寝転び、リゲルさん、俺、あづみさんの川の字が完成する。

 

 右腕であづみさんの体を抱き寄せ、左腕でリゲルさんの体を抱き寄せる。

…こんな事が出来るとは、もう一度言わせて貰おう。

ㅤ生きていて良かった。

 

 そんな想いが心を支配する中、一つ気が付く。

 あづみさんが物凄く動揺している。

 リゲルさんは顔を背け、表情を悟られないようにしている。

 

 要するに駄目なパターン展開だったかな。

 又やらかしてしまったのか、俺は。

 

「…嫌、でしたかね。」

「ちっ違うの!急過ぎてびっくりしちゃっただけ。」

「…素直に、恥ずかしいわ。……その…嬉しいけど。」

 

 あー良かった。

 てっきり嫌がられたのかと思ったよ。

 寧ろ、喜んでくれた二人に感謝せねば。

 喜びというか…嬉しがってくれた、が正しいけど。

 

 二人を量腕に、これこそ正に「両手に花」だな。

 折角だし膝枕ならぬ腕枕をして上げたい。

 俺自身の勝手な欲望だが。

 

 しかしその欲望を抑えられる筈も無く。

 二人に少し頭を上げて貰い、その間に腕を伸ばす。

 

 今度は逆に、二人に頭を下げて貰い腕枕が完成する。

…何だこの素晴らしい状況は。

 

 このまま無知な二人に色々と――

 俺にそんな勇気は無いから、絶対に。

 

…ええい、積極性に欠けるとこんなものか!

 

 少しの時間を腕枕状態にしていると一つ気が付いた。

 

「――あ、そう言えば扉をバーン!していた状態でしたね。何とかしないと。」

「…随分短い腕枕ね。べっ別にして欲しい訳じゃ…。」

「もうちょっと…して欲しいな…?」

 

 おぉ!

 二人から絶賛じゃないか!

 

 特に、あづみさんは素直だなぁ。

 純心な感じで……俺はその純心に何をしようとしていたんだ?

 

 こいつ(自分)絶対信用ならねぇ。

 自制心やら自心制やら何やらほざいている奴程信用出来ない、という事か。

 リゲルさんに関してはツンデレスキル発動中なのかな?

 全く…何時も想うが可愛いったらありゃしない。

 何回言っても足りない位だな。

 

 そんな二人を寝転ばせたまま、扉をどうするか思考を悩ませる。

 

 試行錯誤を繰り返した結果、辿り着いた結論は。

 

…どうすんのこれ。

 

 ていうか、誰だよこの扉をぶち壊したの。

 こんなに派手にやりやがって、後で覚えてろ。

 

…ん?あぁ…俺か。

 

 兎に角、外側から見て問題無ければ良いだけの話。

ㅤ重要なのは外見だ。

 俺達が見られない、且つ誰も入ってこれないような…。

 

 無理だ、無理。

 そんなの出来る訳が無い。

ㅤ外見だけは確認するけど。

 

「うわっ…暗いな…」

 

 外に出てみると辺り一面真っ暗だった。

 少しの肌寒さも感じられる。

 

 直ぐ其処には少し前に切り刻んだ肉塊が…。

ㅤ改めて見るとエグいな。

 

 早朝に起きて処理するから良いとして、問題は扉だが。

ㅤ暗くて良く見えない。

 

 よし、バトルドレスを起動させて――

 

「ちょっと…暗くて見えないですの。」

「ほのめがあのバトルドレスを見逃すのがいけないし。」

「私のせいですの!?びんがが関心すら惹かないのがいけないんですの!」

「私は関係無いし。全部ほのめが悪いし。」

「も〜…何なんですの!」

 

…こんな時間に女性二人の声が?

 詳しい時間は分からないが、真夜中だよな。

ㅤ多分、恐らく、きっと。

 

 そんな時間に女性二人だけなんて幾ら何でも危なさ過ぎじゃ…。

 

「でも、居場所が分かっただけでも良いとしますの。」

「見つからなきゃ意味無いし。」

「あの――」

「分かってますの。直ぐに見つけて研究の続きを…。」

「あの、聞こえてます?」

「「聞こえて(るし)ますの!」」

 

 おっと。

 急に大きな声を出されてしまった。

ㅤ少々びっくりだ。

 

「あ…その…私達は只の通りすがりですの。」

 

 これ絶対チャイナ服だよね、と想える衣服を見に着けている女性が、俺を見た瞬間におどおどし始めた。

ㅤこの上なく怪しい。

 

 もう一人の女性は興味無さそうに「あーあ、やっちゃった」みたいな表情をしている。

 先の会話からしても、この二人は仲が悪いのか?

 それともただ単に気が合わないだけか。

 

 どちらにせよ、同じ事だ。

ㅤあまり変わりはない。

 

「…取り敢えず、中にどうぞ。外は暗くて危険なので。」

「びんが…これは罠ですの?」

「良いからさっさと入るし。ずっと外に居たから体が冷えちゃったし。」

「ここはびんがの判断を信じますの。…有り難く、入らせて貰いますの。」

「扉をどうするか…俺も少し考えなければな…。」

 

 そう言いつつ、二人の女性と一緒に小屋に入室する。

 中ではあづみさんとリゲルさんが、起き上がりながら仲睦まじく話し合っていた。

 のほほんとする光景だな。

 

 俺が二人の女性を連れてくると、あづみさんとリゲルさんが同時に俺を見つめる。

 

「…大祐、その人達は?」

「外に出たらこの二人が言い争いをしていたので、真夜中で寒いですし…取り敢えず中に入って貰いました。」

「そう…なんだ。外は暗くて危ないもんね。」

 

 あづみさんとリゲルさんは、少しの落ち込みを見せた。

 心が居た堪れない気持ちで一杯になる。

 

 このままでは俺が俺自身を許さないので二人の傍に歩み寄る。

 扉は正直どうでも良いや。

 

 今は二人を満足させて上げる事に専念しよう。

 それが俺のしたい事だから。

 

 これが俺の夢!俺の望み!!俺の業!!!

 

 心でそう思いつつ、二人のゼロ距離まで近付く。

ㅤそして一言。

 

「二人共、眠くないですか?」

「…随分と唐突ね。私は凄く眠いわ。」

「睡眠薬の効果が続いているかもしれませんね。あづみさんは?」

「ふぁ…んっ、んぅ…。」

 

 答えを聞くまでも無かった。

 あづみさんは目を擦りながら虚ろ虚ろとしている。

ㅤ至極眠そうだ。

 

 リゲルさんも眠いと言っていたし、これなら完璧。

 

 俺は二人の近くに座り、手招きをする。

 

 あづみさんもリゲルさんも分からずじまいな感じで、俺に近寄ってくる。

 そのまま二人の頭を自身の膝の上に置いて。

 

「ダブル膝枕の完成。」

「ちょっちょっと、人前でこんな///」

「恥ずかしい…けど、嬉しい…けど恥ずかしい…。」

「なっ何をしているんですの!?」

「膝枕、ほのめは分からないの?」

「それ位分かりますの!びんがは何も想わないんですの?」

「目の前で男女がイチャついているだけで、ほのめは動揺し過ぎだし。」

「イチャっ…!それがアレな――」

「「「イチャついて(ません)ない(から)!」」」

 

 勝手にイチャイチャしていると認証され、三人同時に猛反発を繰り出した。

 

 全く…。

 あづみさんとリゲルさんとイチャつくなんて、色々と問題が生じてしまうじゃないか。

ㅤ事実、今がその状況だが。

 

 良いじゃんか。

 好きな人が目の前に居て、尚且つ自分の行為に頬を赤らめてくれるなんて…とても感情を抑えられたものじゃない。

 

 寧ろ今直ぐ襲いたいレベルなのだが。

 

「…ふぁ〜…ん、眠たいわ……ね………ZZZ」

「リゲルも寝ちゃったし、私も寝ようかな。…今日も宜しくお願いします、大祐くん。」

「勿論です!二人共、ゆっくりお休みを。」

 

 リゲルさんが目を瞑った後、あづみさんがにっこり笑顔を向けてくれた。

 そのまま彼女は目を瞑り、静かに眠りに就いた。

 

 俺は二人の頭の上に手を置き、撫で撫でを開始する。

 リゲルさんの表情からも笑みが溢れていた。

 見ている此方が笑顔になれる。

 相変わらず可愛い笑顔をしてくれるな。

 

「……眠いな。寝るか。」

「お休みですの。」

「うん、お休み。」

「私も寝るし。」

「…お休み。」

 

 いつの間にか場に馴染んでいる二人にもお休みの挨拶をする。

 あの二人も中々な美人な…。

 

 いやいやいやいや、待て待て。

 俺にはあづみさんとリゲルさんという可愛い彼女達が――。

ㅤまたこの乗りかよ。

 

…何時までもこんな事してないで、さっさと寝るか。

 無限ループって、怖いな!

ㅤ反省反省。

 

 これからは二人が笑ってくれるようなネタを考えておこう。

 話上手の人は羨ましいな。

 

 ん?それって只のネタ要員か?

ㅤま、良いか。

 

 今日も生き残れた事に感謝だな。

 問題は明日からだが…さて、あの女性二人を含めてどう動こうか。

悩み所だな。

 

………取り敢えず、寝るか。

 

‐‐‐




新バトルドレスの各機能

エクシア

・外見
デスティニー、サバーニャなどの他の二機とは違い、小型で軽量。
基本的に青と白で色付けされている。
武装があまりごちゃごちゃしていなく、外見で目立つ物があまり無い。

・武装
エクシアの別名は「セブンソード」と言い、名の通り七つの剣を駆使して戦闘する。(5種7本で「セブンソード」)

・GNソード
右前腕に装備される斬撃兵装。ソードとしての機能の他に、ビームライフルとしての機能が追加されており、刀身を折り畳むことで銃身を展開するライフルモードになる。
グリップの角度変更によって、固定式と手持ち式に切り替えることができる。
長大な刀身と高い攻撃力を持つ反面デスティニーのアロンダイトと同様、取り回しが他の武装よりも劣る。

・GNロングブレイド・GNショートブレイド
両腰の武装ラッチに装備される大小2振りの実体剣。
装備箇所やサイズによりGNソードよりも取り回しに優れており、厚い鉄の板ですらたやすく切断するほどの切れ味を誇る。
ラッチに固定された状態で刀身を前方に回転させることも可能、近付く敵の対処に活躍する。

・GNビームサーベル・GNビームダガー
自信の好きなように投擲用に刀身を短く調節することで、ビームダガーとしても使用可能。
両肩後部に装備された2基をサーベル、腰背部に装備された2基をダガーとして使用。

・GNバルカン
両手首付近に1門ずつを内蔵する牽制射撃武装。

・GNシールド
接近戦用にようになっており、先端部が打突に適した鋭い形状となっている。

・特殊能力

『T-RANZAM』
自信のスラスター出力を限界まで上げて得る事の出来る特殊能力。
身体全身が紅く染まり、効力は「通常の三倍の能力」
但し、効果時間自体は短い。
そのわりにリソース消費量は大きい、解除されると性能が落ちるなど、問題も多々存在する。

ハイリスクハイリターンな特殊能力。

移動時にはデスティニーの光の翼と同じく残像が発生するが、意味は無い。

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