というので、書きました…ではなく、
オリジナルを書こうとして一切筆が進まないので、
思うがままに滑らせたら出来ました
同一視されている神様が出ているような気がしますが…
違う神話なので、ノーカンということで
俺の選択は正しかったのだろうか。そう自問自答した。
霧に覆われた都を救うため、がむしゃらに走り続けた。様々な王国を巡り、蔓延る者どもを打ち払い、デーモンよりソウルを回収し尽くした。
そうした中で、ふと己を顧みた。
自らの手は夥しいほどの血を浴びて、黒く染まった。犠牲にした者たちへの罪悪感が、己を縛る鎖となった。
ああ、罪深い。
救うため、その言葉を免罪符に殺しをしていただけだ。まだ、血に酔った殺人者の方がまともだと思えた。だが、何よりも罪深いのは彼女を見捨てたことだ。
黒衣の火防女。黒い何かで両目を塞がれた女。
彼女が俺を神殿へと導き、使命への道標を示してくれた。俺にとって彼女は掛け替えのない人だった。
それを俺は見捨てた。
世界が霧に覆われ、消え去るのを防ぐために。獣の中に彼女を置いて行った。
それはきっと必要な犠牲だった。
それでも、許容できるかと言われれば明白だった。
その上、世界を救い、体の良い人柱となった俺に待ち受けていたのは惨い現実だった。
霧に覆われることがなくなり、消失から免れた世界は変わらず回り続けた。
人が人を生み、村を作り、街を作り、やがて国を作る。繁栄と衰退を繰り返す様は見ている分には良かった。彼女の犠牲がそれを作り上げたのだと思うと。
だが、ある街に神と名乗る存在が降り立った。神々は一部の人々に恩恵を与え、あることに従事させ、その街を栄えさせた。
何故、今頃になって現れる。俺の時は何もしてはくれなかったと言うのに。
何よりも、何故彼女を救わなかった!何故、神は彼女を見捨てた!
だから、俺は自身の選択に疑問を抱かずにいられない。
「悩んでおられるのですか?」
不意に声を掛けられた。そちらに目を向けると、少年とも少女とも言える神秘的な人がいた。
「要人か」
要人と呼ばれた、この人との付き合いも長い。俺に道標を与えてくれたのが火防女なら、具体的な案内をしてくれた。
「あなたの気持ちは良く分かりますよ。
私も同じ気持ちです」
俺はそうか、とだけ言った。要人は俺より前から世界を繋ぎとめる人柱となっていたからだ。聞かずとも、俺以上に思うところがあるのだろう。
「一つ、あなたに提案をしましょう」
「提案?」
聞き返す俺に、要人はたおやかな微笑を携えて言った。
「神を、神だと名乗るあの者たちを、見極めるのですよ。
己の目を、耳を使って」
「どうやって?」
俺は人柱となり、あの時のように神殿に縛られているわけではない。ただ、それは簡単にここを出られることを意味しているわけではない。
「俺は要人となったから、離れるわけにはいかない」
「いつあの獣が目を覚ましても対応するために、ですか」
「そうだ」
命を賭して世界を救った彼女を信じていないわけではない。だが、あの獣がいつ目覚めるかは誰にも分からないのだ。用心に越したことはない。
「一つだけ、あるのでは無いですか?」
俺はその言葉で勘付いたが、静かに首を横に振った。それは危険な行為だからだ。
「ソウル体になることか?
確かに、ソウル体であれば異変が起こっても直ぐに戻ってこられるだろう。
悪いが、それは拒否させてもらおう」
「何故、と聞くのは野暮ですか?」
「そうだな」
獣が目覚めた理由は定かではない。
ソウルの探求の結果、目覚めたというのがこの要人の見解であるが、それ以外が原因であるかもしれない。それに神々がこの業に手を出さないとは限らない。
「もうソウルの担い手は居ない、と言っても、ですか?」
「何?」
俺は首を傾げた。ソウルの担い手がいない?どういう事だ。
「あなたが獣を封じた頃から、ソウルという概念が徐々に消え行き、現在ではもう残っていないようです。
故に、昔と違い今では死者を埋葬するようです」
俺は静かに息を飲んだ。
「死者を埋葬だと?」
「ええ、不思議なものです。
我々の時はソウルが抜き取られると、時間が経てば塵一つ残らない。
それが当たり前だったというのに」
死者が亡者となり、襲い掛かってくるのは終わったらしい。ある意味、感慨深かった。
「とは言っても、奇跡や魔法の類は形を変えて残っているようですが。
つまり、あなたが思っているようなことには多分ならないと思いますよ」
俺は静かに唸る他なかった。そんな俺の姿に要人はため息を吐いた。
「さっさと行ってきなさい。
そもそも、あなたはそんなに小難しいことを考えるたちではないでしょう?」
そうして、俺は要人に追い出されるようにソウル体となって楔の神殿を出た。
「あなたは、彼女の死を引きずり過ぎている。
貴方に新しい出会いがあることを祈ります」
ソウル体となっても、感覚器が訴えることは全部本物だ。
風が辺りを通り抜け、草木が揺れる。太陽が辺りを照らす。
俺は一人、感動に打ち震えていた。
俺は、彼女をここに連れてきたかった。そして、彼女に感じさせたかった。お前が命を懸けて守った世界はこんなにも温かいのだと。
なぁ火防女よ、お前は知っているのか?風が吹き抜けて涼ませることを。太陽の日差しは体だけではなく心も温めることを。
俺は自然と涙を流していた。頬を流れる水滴が不快ではなかった。
僅かに地面をする音が耳に入る。俺は誰かが近づいていることを察した。
「泣いておられるのですか?」
俺は息を飲んだ。ヘルムのスリット越しに見た姿は衝撃的だった。
小柄な体型を覆うように黒衣を纏い、長い黒の髪。何より、目を覆うように巻かれた一枚の布。
「火防女…?」
俺の口からはそんな言葉が漏れた。すぐに頭を振って、雑念を押しやった。彼女がここにいるはずがないのだ。
なのに、視線を外そうとしても、外せなかった。それ程までに雰囲気といい、立ち居といい、彼女を連想させた。
「火防女?誰のことか分かりかねますが、私はテミス。
先ほどこの地に降り立った、しがない神の一柱でございます」
テミス、と名乗る神に俺は疑問を投げかけた。
「…その目隠しは?」
「ああ、これでございますか。
私は何事も公平に見る様に心掛けておりまして、偏見を封じるための工夫です」
俺は彼女から漸く視線を外し、その場を去ることにした。これ以上、彼女を見ていると感傷がひどくなる。
「お待ちください、騎士様」
俺は苦笑を漏らした。鎧兜を着込む姿から、その様に連想したのだろう。
「あいにくながら、もう騎士ではない。
そもそも、使えるべき主がいて初めて騎士であろう」
俺は彼女にそう言って、再度立ち去るため歩み始めた。
「お待ちください!」
「なんだ、まだ用か?」
俺はうんざりした様な声を出した。正直言って、もうこれ以上付き合う必要もない。
「私の眷属となって下さいませんか?」
「眷属、というのが何かは分からないが、断る。
俺にはすべき事がある」
「見極めること、ですか?」
その言葉で俺は振り返った。
「何が言いたい?」
「あなた様からは生身の肉体の持つ雰囲気を感じられません。
その雰囲気を例えるなら、我々が送る分霊のようです」
「だから、どうした?」
俺は静かに長剣を取り出し、右手に構えた。場合によっては、この女を殺す覚悟を胸に刻みながら。
「私が手伝いましょう。
これも何かの縁、というものでしょうから」
「いらん」
「それは私が、火防女というに女性に似ているからですか?」
俺は長剣の切っ先を首へと向けた。
「神々如きがその名を呼ぶな。
軽々しく、その名を口にしていい道理はない。
そもそも、お前たちがもっと早く動き出していれば、彼女は…」
そこで俺は剣の切っ先を下ろした。俺が行っているのはただの八つ当たりだと気づいたからだ。
「…悪いことをした。
もう俺に声を掛けるな」
気分が悪い。今すぐにでも戻るべきか。
「よほど大事な人だったのですね。
ですが、私も引けない理由が出来ました」
俺は急に手を引かれて、たたらを踏みそうになる。
「離せ」
「あなた様が私の眷属になって下さるのなら、手を離しましょう」
「一体何だって俺に構う」
「腹が立っているのでございます」
「さっき剣を向けたのは謝る」
「それではございません。
私が腹を立てているのは一度も私を見ようとしていないことです」
「何を言っている?」
「ええ、あなた様が火防女を大事にしているのは分かりました。
火防女という方と私の容姿が似ていて、重ねてしまうのも無理はない事でしょう。
ですが、終始私を見ないとはどういうことでしょうか?
私は火防女ではありません、テミスです。
女神テミス、それが私なのです。
今ここにいるのは、火防女ではなく、私なのです」
何となく、俺は怒っている理由が分かった。だが、それと眷属にどんな繋がりがあるのか分からない。
「それが眷属とどんな関係がある?」
「それが一番早いからでありますよ。
私という存在を認めさせるのに」
「ええい、鬱陶しい!分かったから、早く手を離せ!」
「嫌でございます。
今手を離したら、すぐさま逃げる気がしますので」
そうしたやり取りを数分続け、俺は折れた。殺そうとも考えたが、毒っ気も抜かれ、そんな気すら起こらなくなってしまった。
「分かった、眷属になってやる」
「本当でございますか!」
「一つ条件がある」
「なんでございますか?」
「俺は、神というのがどういう存在かを見極めに来た。
だから、お前たちがろくでもないと判断したら容赦なく殺す」
「ああ、そんなことですか。
良いのでございますよ」
俺は面を食らった。あまりに淡々とした物言いに。
「何を驚くことがありましょう。
あなた様が一体誰かを特定することは叶いませんが、検討はつきます。
あなた様ならば、きっと我々と言えど裁く権利はあると思いますよ。
そもそも、私は法と秩序を司る神なれば、全てを公平に見ることを誓っております」
「なら良い」
そう言って踵を返す俺に、またも手を掴んで引き留めた。
「今度は何だ?」
「まだ、あなた様の名前を聞いてございません」
「名前、名前か。あいにくと捨てた」
その時の表情を俺は忘れないだろう。
―――なら、私がつけて差し上げましょう
―――エクスタイン
―――素敵な名前でございましょう?
その微笑みが、いつか見た彼女の微笑みに重なったから。
うーん、もう少し感情の動きを理解しないといけませんねぇ…
後、言葉遣いがブレてますねぇ…
反省点と課題がまだまだ残っているのが現状ですね
早く人間になりたい(願望)
続きは多分無いです