魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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前回は誰も見たくはない…、男達のポロリだったな~…。


驚愕と怒りの結末

 

 

 

 

 オドリーを残し、全滅した親衛隊たちの屍と化した有様に、観衆達は口を開いたまま、傍観する。

 

 それもそのはず。

 

 あの絶対防御を誇る障壁魔法の唯一の解除方法を、なぜか敵が知っていて、今まで無敵を貫いてきた障壁魔法が破られたのだから。

 

 

 まぐれだと思いたい…。

 

 これは何かの幻なんだ…。

 

 そ、そうだ…。 あいつらの仲間が俺達に精神干渉魔法でそう見せているだけなんだ…!

 

 

 …観衆達は目の前のこの状況を信じられずに、そんな思いを抱き、居もしないROSEメンバーの不参戦者がいると思い込んで、辺りをきょろきょろして探し始めた。

 

 その動揺が闘技場内に広まっていき、だんだんと小声の話し声が騒ぎ出し、大きくなる。

 

 観衆の気持ちを代弁するかのように、実況のアックルが取り乱して、くろちゃん達に激しく問いかけた。

 

 

 『な! なぜなんだ~~~~~~!!

 

  どうして! 障壁魔法の解除方法を知っているのだ~~~~~!!

 

  それは!! 我々だけしか知らない…、親衛隊のみ知る、我々の神の言葉なるぞ~~~~~!!』

 

 

 声を荒げて、びしっと指先をくろちゃんとホームズに向けながら、問いかけるアックルにくろちゃん達は首を傾げ、不思議そうな表情を見せる。

 

 

 「それは心外だな~。 さっきも言ったじゃん。『仲間でしょ?』って。」

 

 

 「そうそう! 仲間なら、知っていて当たり前でしょ?ねぇ~。」

 

 

 くろちゃんとホームズのやり取りを聞いた親衛隊全員が意味が分からないと首を傾げる。仲間ではない。敵だ。っと脳裏ではそう訴えていた。しかし、自分達しか知らないあのセリフを言った事が気になる…。いったい、どうやって知り得たというのか…。

 

 その答えは、本人達から告げられる…。

 

 

 「だから~、闘う前に教えてくれたじゃん。この親衛隊の信念。」

 

 

 「今はこうして敵になってしまったけど、少しでも君達と一緒にいた仲間を忘れるなんて酷いな~。」

 

 

 この言葉で、闘技場内の親衛隊全員が闘いが始まる前の出来事を思い出していく。

 

 

 確かに、くろちゃんとホームズはオドリ―に惚れ込んで、親衛隊に入会していた。そしてその時、親衛隊の心得を入会した新入りへの恒例行事として徹底的に教え込んでいた事を思いだしたのだった。

 

 

 「ま、まさか…!! お前ら、情報を集めるために、わざと親衛隊に潜入してきたのか!?」

 

 

 「何だって!! お前ら、そうなのか!!?」

 

 

 「俺達を騙してやがったのか!? 一度ならず二度までも…!!」

 

 

 …と観衆達は怒りをぶちまいて、ブーイングを投げる。

 

 

 

 しかし、そのブーイングは意外な人物によって、収まる。

 

 

 その意外な人物こそ、この場合一番の被害者ともいえるオドリー自身だった。

 

 

 オドリ―は今までずっと噤んでいた口を開き、場内の全ての親衛隊に告げる。

 

 

 「”みなさん…、おやめなさい。

 

  これは闘いなのです。闘いには様々な直面での対応として、秘策がもたらされるのは当たり前。彼らのした事は、闘いには当然の策。

  それに、これはルール違反ではありませんよ。

 

  ルールは『復活』することを禁じた以外は、何でもありだったはず…。そうでしたわよね、アックル?”」

 

 

 『はっ!はい……?』

 

 

 「”…なら、彼らの行いに対して、非難する事は何もないでしょ?

 

  それに、私はこの二方を信じますわ。だって、彼らの眼差しに偽りで私に近づいたわけではない…、その想いで満ち溢れていますもの。”」

 

 

 「オ、オドリ―さ…ん。」

 

 

 「”…では、ここからはわたくし一人で貴方たちを相手に闘いましょう。

 

  私の愛しい守護者達の仇は取らせてもらいますわ…!

 

  この、私の蹴りでね♡”」

 

 

 

 

 話口調も繊細で、優しい心を持って微笑むオドリーのROSEへの対応に全員涙を流す…になれば、感動の名場面にもなりそうなものなのだが、一つ、決定的に違ったものがあった…。それは…

 

 

 

 「あ、あの…。オドリーさん?

 

  あの…、声が物凄く低くて、男すぎるんですけど…?」

 

 

 ちゃにゃんが笑顔を引き攣ったような顔をしながら、恐る恐るオドリーに話しかける。多分、腹話術か何かだという事を証明してほしくて…。

 

 しかし、それは叶わなかった…。

 

 

 「………これだから、話したくなかったのよ…。

 

  でもしょうがないわよね。 話した以上は…。

 

  今の声は…、私よ。意外でしたでしょ?」

 

 

 いやいや!!意外すぎるから!!

 

 

 オドリーはセクシーなボンッ、シュッ、ボンッ!!のスリムで胸とお尻は盛り上げている体型で、肌も煌めきに満ちている。まさに、女性が憧れて、嫉妬するような体型で、異性を射止めるような視線も見せるのだ!!

 

 そんな彼女の声が実は、その外見とは似ても似つかない、ものすごく声が低くて男すぎる声色に場内中が目を飛び出して顎を外すくらいに口を開け、驚愕したのだった。

 

 

 

 この事は、親衛隊も知らなかったようだが、ROSEとしては、どう答えたらいいかと目をぐるぐるにして動揺する。今まで戦って勝利してきたが、こんな展開はなかったため、(こんなこと普通は遭遇しないよ!)固まる。

 

 

 「…もういいかしら? 早く終わらせて、カバルレに勝利の報告をしないといけないから。

  悪いけど、ここら辺で終わりっ!!………に……?」

 

 

 驚愕する場内の雰囲気に辛いのを必死に堪えて、平然を装って、ROSEに攻撃しようと一歩踏み出したところ、突如、オドリーに大剣を背後から突き刺した者が現れた。

 

 

 「オドリ~~~~~~~~!!」

 

 

 敵だけど、あまりにもいきなりすぎて、ちゃにゃんがオドリーの名を叫ぶ。

 

 

 くろちゃんとホームズがオドリーの背後で更に力を入れて、オドリーに見を突き刺す男を殴り飛ばし、オドリーから引き離す。

 

 

 その男は、さっき、オドリーの防御部隊として障壁魔法を張っていた、先程倒した親衛隊の男だった。

 

 

 急いで、ちゃにゃんが近寄ってオドリーの応急手当てを始める。

 

 しかし、腹部を思い切り刺されていて、傷口が大きく、傷口からどんどん血が溢れ出てくる。このままだと、出血多量で死んでしまう…。それでなくても、オドリーは今、ショック死する手前にある。助けるなら、一刻の猶予もない。

 

 ちゃにゃんは持てる知識をフル活用して、止血剤を打ち、傷を消毒していく。

 

 ちゃにゃんの補佐として、御神もオドリーの治療に携わる中、くろちゃんとホームズはオドリーを刺した男を厳重に縛り上げ、鋭い視線で見下ろす。その眼光にはその身を食いちぎらんとする鬼の姿が垣間見えるほどの勢いがあった。

 

 

 「なぜ、オドリーを刺した…?答えなさい…!」

 

 

 「答えないと、まず足を粉々にするけど、いいよね?次は、お前の大事な部分を潰すよ…?」

 

 

 否を言わせないオーラを背後に展開する二人はその怖さで震える男を威圧する。くろちゃんは男の足に足裏を置いて、力を徐々に込めていく。

 そして…、ホームズは男の股の間にある、大事な物を握り締める…。それはもう…、強く…!!

 

 

 

 

 男は悲鳴を上げ、刺した理由を答える。

 

 

 それは、何とも自己本願で、腹立たしい理由だった…。

 

 

 

 …こうして、この闘いは苦肉にもオドリー親衛隊の反則負けとなり、ROSEの勝利となり、次への道が開いたのだった…。

 

 

 

 

 この結果は、ROSEにとっては心の深く突き刺さるくらいの衝撃の結末となったのだ。

 

 

 




こんな勝利なんて…。物凄く気分が悪い!!

あの~~~~くそ男が!! 内も一発殴ってやりたいもんだ!!

ふんっ!!

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