魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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真剣勝負は多分…、しないな~。この相手だと。


闘いの中の一芸

 

 

 

 

 

 とうとう戦闘が開始し、オドリ―親衛隊の突撃部隊がROSEに接近してくる中、ROSEの4人はふてぶてしい笑みを浮かべ、CADに手を翳し、魔法を発動した。

 

 

 前に躍り出た突撃部隊の10人が突如、空中を走り出した。

 

 突撃部隊はてっきり、攻撃魔法を仕掛けてくると思い、それに警戒していたため、自分に掛けられた飛行魔法に気づくのが遅れたのだった。

 

 無論、彼らに飛行魔法を仕掛けたのは、もちろん、ROSEの4人である。

 

 

 そして身体を宙に舞い上げられた突撃部隊に、今度は身体を丸めていき、体育座りになって、身体を脚の間に俯かせる格好になった。

 

 

 観客席から見ると、宙に浮かぶ丸くなった突撃部隊の光景は異様に思うだろう。同じ志を持つ仲間が何とも嘆かわしい姿になっているのを見た観衆は戸惑いを見せる。しかし、次の瞬間には、そんな事は一切忘れ、大爆笑の嵐が観客席から沸き起こる。

 

 

 

 

 …それは、宙で丸くなった突撃部隊たちがROSEの曲芸の道具となって、観客席に披露していたからだ。

 

 くろちゃんとちゃにゃんはボール化した突撃部隊を転がして、その上で玉乗りならぬ、人間乗りをしてダンスしていた。

 そして、ホームズと御神は半径3Mほどある巨大な傘の上に人間玉を乗せて、器用に回転させた。

 

 玉役として披露されている突撃部隊は逃れられない状況に目を回しながら、悲鳴を上げていく。

 

 それが却って、観衆の笑いを誘っていた。

 

 しかし、突撃部隊がなぜこうもされるがままなのかっというと…

 

 

 ホームズが曲芸のために編み出していた魔法の所為である。

 

 

 

 収束系魔法で対象を何重にも分厚くした空気の層の中に圧縮し、身体を縮ませ、ボール化する魔法だ。

 練習中、どうしてもバランスが崩れてしまい、上手く回転できなかったため、手足がぶれずにいられるこの魔法を編み出したのだ。

 しかし、作ってみたはいいが、やはりデメリットがある訳で…

 

 

 「ねぇ~!!ほーちゃん!! そろそろやっちゃわないと、持たないんだじゃない?」

 

 

 「…そうだね、若干、顔色悪くなっているよ?」

 

 

 「え~~~!!観衆が盛り上がってきたところなのに~~!!根性ないな~~!!」

 

 

 「…いや、さすがにこれは生きている限り、厳しいでしょ?」

 

 

 …と曲芸を披露しながら会話するROSEがそう話すのも当然で…。

 

 

 何重にも重ねた空気の層を収束系魔法で圧縮しているから、身体がビシビシと密着し、長時間していると、骨を痛める結果になる。それに、圧縮された空気の層の中でだと呼吸できる酸素の量も元々そんなに多くはない。酸欠になり、息キレになるのは当然の結果だ。

 現に、顔色を悪くしている突撃部隊はぐったりとしていた。…中には、ずっと回転させられて、三半規管が麻痺し、縮こまった身体のまま、ピ――を吐露する者もいた。

 

 

 そんな仲間の姿を見せられたオドリ―を厳重にガードしている親衛隊たちは遊ばれている仲間のようにはなりたくないという拒絶を見せながらも、あたかも挑発するような曲芸ばかりをするROSEに憤りを感じていた。

 (ROSEは叶わなくなった曲芸でのデビューのため、練習成果を披露していただけだが。もちろん潜入組ではなかったくろちゃん、ちゃにゃん、御神も実はひそかに練習していたのだった。)

 

 

 

 『ア~~~カッカカッカ!!

  なんと愉快な曲芸なんだ~~~~~!!!

  腹が痛くなるぞ~~~~!!!

 

  しか~~し!!

  今は、闘いの最中!! のんきにしている場合では~~~~!!お~~~~~~~っと!!

  オドリ―ちゃ~~~あんが親衛隊に前に出るように指示したぞ~~~!!!

  玉にされている突撃部隊の哀れな姿に心を痛め、救助するように進言した~~~!!

 

  なんと~~~、心優しい我らのアイドル~~~~ゥゥゥ!!

 

  どうか俺と付き合ってくれ~~~!!』

 

 

 「「「「「お前なんかにわたさねぇ~~~~~~~~~~~!!!!!」」」」」

 

 

 アックルの実況に観衆は寵愛と怒りを向ける。

 

 寵愛は彼らのアイドル、オドリ―に…。

 

 怒りは熱血野郎のアックルに…。

 

 

 

 観衆の怒りを買ったアックルは観衆たちからゴミやオドリ―への花束やレンガを投げられる始末。しかしアックルは

 

 

 (みんな…、そんなに俺の事が好きなのか~~。 悪いな。俺はオドリ―への一途な愛をしているのさ。だから…、みんなの俺への愛は…受けとれねぇ…。)

 

 

 …と心の中でそう解釈していた。

 

 

 これがもし、露見されていれば、ブーイングどころではなかっただろう。全員が吹雪の中で凍え死にするくらいのさぶい思いをする事は目に見える…。

 

 

 

 

 

 アックルのお蔭で、話は逸れたが、前に出るように指差して指示したオドリ―に親衛隊は答え、オドリ―の完璧防御姿勢を取っていた一番前の親衛隊が両側から挟み込む形で走ってくる。そして、遅れてから今度は真正面から侵攻してきた。

 

 

 完全に逃げ道を塞いで、袋の鼠状態でリンチするつもりだ。

 

 

 それを相手の動きで察したホームズは未だずっと回転させていた突撃部隊の人間玉転がしを中断し、くろちゃん達にアイコンタクトで次の指示を出す。

 

 

 

 頷き、近づいてくる親衛隊を引き付けるため待っている中、ROSEの笑途切れていなかった…。

 

 

 「さあ、まだまだこれからだぜ~~!!

  この人数を逆転させる秘策を見せてやる~~!!」

 

 




秘策…。それが、”ポロリ”?


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