果たして、恐怖の肝試しをクリアする事が出来るのか!!?
tokoの悲鳴を聞いて、駆けつけたホムラ一行が見た光景とは…
”さぁ~…、飲めや!!”
”グイグイやれっ!!”
”俺達の誘いを断る訳ないよな~? …ひっく!!”
「や、止めて……く……」
tokoが豪傑な男の幽霊達に取り囲まれて、無理やり酒を飲まされそうになっている光景だった。
(……なんだ? この状況…!?)
ホムラ達一行はツッコミがありすぎて、どう突っ込めばいいか分からなかった。
呆気にとられていると、もう魂が抜けかけた瀕死状態のtokoは最後の力を振り絞って、最終奥義を繰り出す。
最終奥義…『徹底影薄の術』!!
この奥義は自らの持つオーラを徹底的に消し、ピクリとも動かず、自然に溶け込む事で自身を相手に認識させず、やり過ごす術である!!
日頃からこれを修行しているtokoならではの秘策中の秘策なのだ!!
ま、これを出している時点で、tokoが身の危険を感じるほどの精神状態という証なのだが。
とにかく…、その奥義によって、しつこい幽霊たちの酒の誘いから脱したtoko。そのtokoの姿を見失い、幽霊たちは慌てて、激昂する。
”あいつめ!!どこに行った!!”
”俺らの酒を断るたぁ~いい度胸じゃねぇ~か!!”
”出てこい!!”
剣を持ち出して、tokoを探し始めた幽霊たちは様子を窺っていたホムラ達一行に気づき、にやりと笑みを浮かべ、一斉に襲い掛かる。
”わりぃ~が、俺らの鬱憤晴らしに付き合えや!!”
「「「「「断るっ!!」」」」」
くろちゃんとちゃにゃんが火龍人から塩を取り上げ、思い切り投げた。そして、御神とサガットが収束系魔法で風を巻き上げ、幽霊達を閉じ込め、その中に塩を混ぜ込む。すると、幽霊たちは苦しみだし、奥へと逃げて行った。しかし逃げ際に負け犬の遠吠えを放つ。
”お前達…、魔法師だったのか…。なら、この先は地獄を味わうだろうぜ…!”
意味深な負け口を叩いて、去っていく幽霊を見て、一安心と溜めていた息を吐き出し、みんなは安堵する。その中には、姿を消し、今は震えあがっているtokoの姿があった。
「何だったんだよ~。今のは…!」
「幽霊が襲ってきた~!!もう、出よう!!」
「そうだよね!!今からでも遅くはないよ!!引き返して…」
「でも引き返したら、ば、罰ゲームが…!!」
「「「あっ!!」」」
「……幽霊より、罰ゲームの方が気になって怖くなりそう…。」
「ま、幽霊も作りもんだし~!!? 大丈夫だよ!!」
「よし!!最後までやったるぞ!!」
「も、もう怖いのは勘弁してほしい…。」
ホムラ一行は心が折れそうになるが、得体の知れない罰ゲームの方を恐れ、先に進む事にする。
その間に、huka、暁彰、ホームズ、さっちゃん、RDC…と全員集合した。
最後に剣崎兵庫と合流した時はあまりにも衝撃的な場面に遭遇し、みんなの悲鳴で洞窟が崩れかけるという事態になったりした。
その時に遡って話すと…、
あまりの緊張感から、洞窟の冷気をカキ氷にして、持ってきていたいちごシロップをかけて歩いていた剣崎兵庫はみんなと合流し、進行役のミナホ以外がそろっている事を確認した。その時に、みんな酷く疲れ切って、怖さからか顔を青白くなっていた事に気づき、ムードメーカーの剣崎兵庫が甘い物を食べて、生気を取り戻してあげようとみんなにカキ氷を食べようと進言したのだ。それを聞いて、悲鳴や絶叫を休みなく出していたみんなは喉がガラガラしてきていたので、有難くその申し出を受ける事にした。
しかし、それがみんなの一番の悲鳴をもたらす事になるのだった。
「ちょっと待ってね…。………っと、よし!! 綺麗にできた、と!!これでシロップをかければ、完成っ!!はい、みんなどうぞ!! 美味しいよ!!」
我ながら、綺麗に山を作って、いい感じのカキ氷ができたとドヤ顔をする剣崎兵庫だが、みんなの分を一気に作る際の光景を見て、みんなは肝を冷やした。
なぜなら、剣崎兵庫が洞窟の冷気で作った氷が……
辺りを漂う幽霊達だったから………だ。
それに気づかず、幽霊を収束魔法で集め、氷にし、細かく刻む。それを器に入れて、いちごシロップを掛けて、渡してきたのだ。
そのいちごシロップも綺麗な薄い赤という感じではなくて、血のような真っ赤で、さらさらとしたシロップ…。しかも、だんだん色が赤黒くなっていっている気が…。
こ、こ、これを目のあたりにして、かき氷を食べれるほど、無神経なみんなではなく、更なる恐怖にしかならなかったのは言うまでもない。
互いに抱きしめ合って、固まって全然動かないみんなを不自然に思いながら、かき氷を進めるが、思い切り!!盛大に!!首を振り、(もちろん断固として横に!!)頑なに食べようとしないみんなに、もしかして、かき氷の安全性…衛生を疑っているのかと思い、安心させようと自分で作ったカキ氷をみんなの前で食べて見せた。
「「「「「あああああああ~~~~~~~~~!!!だめ~~~~~~~~!!!」」」」」
みんなの嘆きながらも必死に止めようとした叫びは霧散にも届かず、とうとう幽霊かき氷を食べてしまった剣崎兵庫…。
「…ふんふん。あ~~、美味しい!! ほら、大丈夫だよ!!みんなも食べてみたら?」
「「「「「きゃあああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」」」」」
みんなは目の前の衝撃的な恐怖を目の当たりにし、洞窟が崩れんばかりの絶叫を放った。
(((((大丈夫じゃないから~~~!!!怖い~~~~~!!!)))))
恐怖の涙を流し、一目散に奥へと逃げ走るみんな。その後を、飛んで後を追う剣崎兵庫のような者…。
飛行魔法を使っていないのに、飛んでいて、その剣崎兵庫の顔は血まみれの青白く、綺麗な髪がワカメのような黒髪に変わり、まるで生きているかのように長髪がくねくねと動く。変わり果てた剣崎兵庫はみんなの後を追いながら、こう話しかける…。
「”ふっふっふ…! 一緒に…遊びましょう~~…?”」
…という恐怖体験をした訳で、とうとう幽霊達は本物だと思い知ったROSE一行は極限状態の緊張感と恐怖を持って、ついに祠が祀られている神秘的な空間に辿り着いた。
開けた空間の壁や天井には氷でできた多数の結晶山が僅かな光を受け、反射し合い、暗闇の洞窟の中を照らしていた。その空間の真ん中には大きな池とも呼べる水…、海水が溜まっており、その先の奥に祠があった。
いよいよ目的地に着いたと安堵し、みんなは喜び合う。そして、洞窟に入る前にミナホに渡されたガラスの欠片を取り出し、一気に祠へと向かおうとした。
(余談だが、あれから憑りつかれた剣崎兵庫はさっちゃんとるーじゅちゃん達の除霊御札によって、元にもどった。だから、心配はない。…多分。)
しかし、その一番乗りとして、『水蜘蛛』で表面張力を増幅させ、池を渡ろうとしたワイズさんは池に一歩踏み出した瞬間、瞬間移動したかという感じでいきなり池の中へと沈んでいった。
「「わああ~~~!! ワイズ~~~!!」」
「魔法失敗したの!!?」
「そんなはずは…!しっかりとできていたよ!!? ………わわわ、わわあああ~~~~~!!!」
ワイズの無事を確認しようと池を覗き込んだサガットは思わず、叫ぶ。
池の中は決勝に反射された光で透き通るように見える。そのため、とんでもない光景を見てしまったのだ。
――――――――――ワイズが池の中で幽霊達に抑え付けられているのを!!そして、それを覗き込んでみたサガットを狂気的な視線と笑みで見つめる幽霊達の群れを…!!
「わ、ワイズさんが~~!! 池の中でワイズさんが…、幽霊達の餌食に~~!!」
「えええ~~~~~~~~!!!」
「池は安全じゃないよ!!水面上で既に幽霊達がスタンバッて足を付けた途端に引き摺りこむ気だよっ!!」
「ちょ、ワイズさんは!!?」
「わ、分からない!!い、一瞬で目を逸らしたから…!!」
あと一歩という所で、最悪のピンチに陥ったROSE一行…。
そこに、幽霊達が息絶え絶えのサガットを池から上がらせ、人質にして、こう話す。
”この仲間を…、生かしたいなら…、すぐにここから引き返せ……。”
背筋が凍るような声色で脅迫する幽霊…。みんなはゆっくりと暁彰に顔を向け、助けを求める。何を隠そう、幽霊だと思い知ったきっかけは暁彰の『精霊の眼』のお蔭でもあったからだった。暁彰なら何とか打開してくれると思い、暁彰の背中を押して、交渉人とさせる…。もし、交渉失敗し、襲ってきた場合は幽霊に全力で暁彰を投げ込み、逃げる算段を必死にイメトレして…。
こうして、暁彰の幽霊相手の交渉が開始した。
しかし、結局は上手くいかず、祠に祀られている水龍様を守るためだという熱弁を聞かされるだけで終わった。
そこで、ようやく意識を取り戻したサガットの様子を確認した暁彰は交渉していた幽霊に決め台詞を放ち、サガットを見事取り返してそのまま、飛行魔法で祠に辿り着く。
「悪いけど、こっちにも譲れないものがある…。
罰ゲームを回避しないといけないからな!!」
散々幽霊の恐怖に遭ったのに、いまだにそれを上回るほどに罰ゲームを恐れる…。
きっとこの状況にミナホが遭遇したら、どんな気分だろうな~。
「そんな決め台詞は入らんわ~~!!」って突っ込むのか…?
暁彰のサガット救出によって、控えていたROSEのみんなは一斉に飛行魔法で祠に辿り着く。すると、幽霊達の様子が一変した。
”ま、魔法師…だと…!”
”魔法師だ…!”
”おのれ……謀りおったな~…!!”
瞳孔が開ききって、充血させた鋭い目に変わり、口も裂け、髪が逆立ち、一斉に襲い掛かってきた。
急いで御神が障壁魔法を展開するが、怨霊と化した元幽霊達に効果があるとは言えず、擦り抜けて、手が入り込んでくる。万死窮すかと思われたその時…、さっちゃんとリュージュちゃん、火龍人達が持ちうるすべての除霊御札を障壁魔法に貼って行く。
すると、怨霊たちは障壁魔法の外へと押し出され、触れると、電撃で反撃されたのだ。思わぬ効果を目の当たりにしたくろちゃんはるーじゅちゃん達にお礼を言いながら、尋ねる。
「ありがとう!!ところで、あの御札…、どこで手に入れたの?」
「ああ、あれは、タスカリ―マスからおすそ分けでもらったんだよね…。海に行くなら、これを持って行ったらいいって渡されたんだけど、まさかこんなに役に立つとは…。」
(…ありがとう…!タスカリ―マス!! 我らの母よ!!)
それを聞いたみんなはここにはいない、タスカリ―マスに感謝を念で送った。
だが、そんな気持ちが長く続かなかった。
”ああ…、怨めしや~~!!”
”怨めしや~~!!こっちにも札が貼っておるよ~…!”
”ああ~、怨めしや…!! 呪い殺したい!! 魔法師共め~!!”
”われらの恨み…、ここで晴らしてくれるわ~~!!”
怨念ただ漏れで障壁の周りを囲う怨霊達と自分達の現状に感謝が消え、慌てる。
そして、そんなみんなが持っている欠片を見て、更に怨霊達から発せられる怨みのオーラが強くなり、顔もどんどん巨大化していく。
”あいつら…、あれを持っているぞ!!”
”もしや、憎きあいつらの仲間か…!! ”
”おのれ~…、許さんぞ~~!!”
それを聞いて、ガラスの欠片を凝視する。
意味が分からずにいると、ホームズがようやく分かったという顔で話し出した。
「そうか…。分かったよ、みんな。
この怨霊達はおそらく、水龍様がその身を封じた後、跡目争いに巻き込まれた村人たちの霊なんだ!
もし、悪意の持った魔法師ギルドが宝玉を盗まなかったら、自分達や水龍様が悲惨な最期を遂げずに済んだ。だから、魔法師を憎んでいるんだ。そして、どうやらおいら達が持っているこのガラスの欠片は怨霊達の様子を見ると、その盗まれて、壊された宝玉みたいなんだ。だから、おいら達をその盗んだ魔法師達だと勘違いしている…!!」
「…ホームズの言うとおりだとしたら、確かに彼らの反応や言葉にも納得できるわ…!!」
「でも、どうすればその誤解を解いて、怒りを鎮める事が出来るんだよ!!?」
「この欠片をくっつけて、復元し、祠に埋蔵すればいいんじゃないか?」
「「それだよ!!」」
ホームズの推理で一連の流れを理解したみんなは暁彰の提案に賛同し、急いで実行に移る。
ちょうど、障壁魔法の中に入っていた祠にみんなはガラスの欠片を置いていく。
それを暁彰が『再成』魔法をフラッシュキャストで何度もかけていき、長年、壊れていた宝玉が少しずつ引き付けられるように復元されていく。
そしてついに!!
宝玉が復元され、凄まじい光を放ち、辺りを包み込む…。
その宝玉と連動して祠も光り出し、中から一つの相子の塊が舞い上がる。
その相子の塊は徐々に大きくなっていき、姿を変えていく。
そして光り輝く透き通った青い海の色をした膝まで伸びた長髪に絹のような滑らかな白い着物を着た青年が神々しく現れた。
閉じていた瞼が開かれ、ガラスのような水色の瞳がROSEのみんなに向けられる。
いきなり現れた青年に言葉を失うみんな。同じく言葉を失っている怨霊達は元の幽霊に戻り、涙を流して、頭を下げる。
この状況に理解が追い付かないみんなに青年が微笑みかける。
「ありがとう…。人間たちよ。あなた達が宝玉を元通りにしてくれたおかげで、私はまたこの世に舞い戻る事が出来ました…。
感謝いたします…。本当にありがとう。」
穏やかな波を想像させるような落ち着いた口調に和まされ、この青年が水龍様だと聞かずとも分かった…。
「そこで、そのお礼として、見せたいものがあります…。」
そういうと、水龍様の腕が池に差し伸べられ、渦巻き始めた池の水が持ち上がって、竜巻となって、天井に穴を空けた。そして、水で作った膜をみんなに施した後、その竜巻の中に飛び込み、それを伝って、外に出た。
もう夜が終わり掛け、タイミングよく、日の出を見る事が出来た。しかも、竜巻でかなり高く上がった即席展望台で水平線から上がってくる日の出で海に浮かぶ龍のような地底の模様が見れ、感動に浸るROSEのみんな…。
こうして、水龍様はみんなに改めて礼を述べると、長年恋焦がれていた海を満喫するかのように海へと戻っていった。
海辺でそれを手を振って見送ったみんなはいろんな経験をして、感動の余韻に浸っていた。
そこへ…
「みんな~~!!こんなところにいた~~!!」
と、手を振って、みんなに駆け寄るミナホの姿が見えた。
「あ、お~~い!!みなっち、今凄いも、ぼべばぶ~~~~!!」
くろちゃんがみんなを代表して、肝試し、楽しかったと言おうとしたところ、ミナホからの鉄拳を受けたのだった。
驚きで口を開きっぱなしにするみんなに、息を切らしながらミナホが怒りの言葉をぶつける。
「みんな、何で誰も来なかったんだよ!!こっちはずっと待ってたんだよ!!
出口でずっと待っててさ!! おかげで寒い夜風の中で待たされての風だよ!!へっくション!!」
「ご、ごめん!!でも、おいら達、ちゃんと祠に欠片を置いてきたし…!」
「そ、そうだ!! 私達、水龍様に有ったんだよ!!かっこよかったな~!」
口々で肝試しの内容を話し出したみんなにミナホは顰めた表情で首を傾げる。
「……みんな、さっきから何言っているの?そんな仕掛けした覚えないけど?」
「大丈夫…。分かっているよ、本物の幽霊を目撃したし…。迫力満点だった…。」
「?? だからさっきから何を言っているの?私、仕掛けとか一切していないし、みんなにその欠片?渡した覚えはないけど?}
「…え?」
「大体…、待ち合わせ時間にみんな来なくて、待ってたら、親切な女性の人が現れて、事情を説明したら、「その人達なら、既に洞窟に入っていきましたよ?」って教えてくれて、それならって出口でず~~~~~~~~~~~っと待ってたんだよ!? みんなには結局今、ここで再開したばかりだから!!くしゅんっ!!」
頬を膨らませて、プンスカと怒るミナホの言葉でみんなは一斉に血の気を引いていく。
じゃ、みんなが肝試しを始める前に会ったミナホは一体誰だったんだ?
そんな考えがみんなの脳裏に浮かびあがり、忘れていた恐怖が身体全身に震えを広げさせていく。
だが、みんなが幽霊よりも恐ろしいと思っていたあれが訪れつつあるのをみんなはきづかずにいた…。
「だから!!よって…、全員に罰ゲーム受けてもらうからね!!はい、どうぞ!!」
ミナホが取り出したのは、ぐつぐつと泡が噴き出した真っ赤な炭酸ドリンクだった。
そう、肝試しの罰ゲームだ…。
創造とは違って、意外にちゃんとした物が出た!だと思ったホームズとくろちゃんが喉も乾いていたため、ドリンクを受け取り、口にする。
「「ブヘ~~~~~!!ぼえぇっ…」」
バアター―――ン!!
「「「「「「「「「「………………………」」」」」」」」」」
喉を抑え、苦しみながら、倒れこんだ二人を目の当たりにして、不敵な笑みを浮かべるミナホがそのドリンクを入れたジョッキを大量に取り出し、みんなに迫っていく。
「ふふふ…。うちが作ったスペシャルギルティードリング…。飲んでくれるよね…?」
怪しげに眼が光り、鼻水を垂らしながら迫ってくるミナホにみんなは生贄となったくろちゃんとホームズを見捨てて、一目散に逃げ出した。
水蜘蛛で海の上を全力疾走で走ったり、飛行魔法で飛んだり、ダミーを幻影で作り出して逃げたりと様々な方法で逃げはじめる。
tokoは既に恐怖の許容範囲をオーバーして、泡を吹いて、気絶していた。
みんなは気絶したtokoを見て、いいな~と羨ましそうな眼差しで見つめて、逃げながら思う。
そんな逃げ方があったかと!!
(もういいから…!! 早く夢から覚まさせて~~~!!)
「ダイジョウブ…ダヨ。モウサメテルヨ。」
「イッショニアソボウヨ。」
心の叫びを読まれ、テレパシーで返された片言だけど、聞き覚えのある声に一定距離を保って、見捨てたくろちゃん達の方へ視線を向けると、さっきドリンクの餌食となったくろちゃん達が地の底から這い上がるかのような起き方をし、肌の色が血色が悪くて、目が白目になってフラフラと立ち上がったのだ。
「くくく…。ズズズ…!! …っぁぁ…。
へへへ、このドリンクを飲むと、ゾンビとなって、私の忠実なゾンビとなるのだ~。本当は、疲れを吹っ飛ばし、健康体を取り戻させるという代物だったけどね…。
配合間違えちゃって…。でも、うちが味わった苦しみを存分に与えるにはちょうどいいよね~。暗~い夜の中、一人でみんなを待つうち…。寂しい思いで頑張って待ってたのに、みんな、楽しんだみたいで~…。ずるいのね~。うちも参加したかったけど、進行役だし?
だからね~、うちのみんなへの愛情…、受け取ってね?
さあ!!ゾンビくろちゃん!!ゾンビほーちゃん!!
みんなをゾンビにしておいで!!」
「「「水龍様~~~!!助けて~~~!!」」」
みんなのこの本気な願いは残念ながら叶わず、ミナホに忠実なゾンビとなったくろちゃんとホームズに徹底的に追いかけられ、全員がゾンビになるまで、悪夢は続くという第二弾ゾンビ肝試し大会が開催された。
その様子をくろちゃんのカメラで巧妙に●RECをするミナホは海に来て、一番輝いていた…。
こうして、なんだかんだで肝試し大会は全員罰ゲーム決定実行で幕を下ろしたのだった。
めでたし、めでたし。
「「「「「「「「「「もう…!! 肝試しは懲り懲り~~~!!」」」」」」」」」」
追記
ところで、ミナホに成りすまして、宝玉の欠片をみんなに渡したのは、水龍様と恋仲だった村娘の霊だった。
種族の違う恋だったが、お互い愛する人を想っていたのだ。
そして、水龍様がその身を封じた後、村娘も後を追うように、海へと身を投げて亡くなった。しかし、愛する恋人への想いで霊となり、水龍様の心を溶かし、封印を解くため、壊れた宝玉をここに訪れた人の身体を借り、集めていた。
そして、水龍様の張っている結界によって、その村娘の霊だけは入れなくなってしまっていたので、その宝玉を祠へと運んでくれる人間を待っていたのだ。
長い年月の間、待ち続けてROSEのみんなの肝試しに乗じて、託し、無事に成し遂げられたのだった。
今頃、その村娘の霊は復活した水龍様と共に大好きな海の中で、再会を喜んでいる事だろう…。
「ねぇ!!? 続きは?もう終わり?」
「何言っているのよ? すごく感動的な話だったじゃない!?」
今までの話を聞いていた子供たちは拍手をしながら、紙芝居をしてくれたじいちゃんに続きを促す。
そのじいちゃんはROSEのみんなが海に遊びに来たときにお世話になった宿屋のじいちゃんだった。
「ほっほっほ!! 続きが気になるのかい!? そんなに気に入ったか、坊主!」
「うん! ROSEのみんなが面白くて、カッコよかった!!」
「…なら、帝都に行ってみるといい。そこに、この話の主人公たち、魔法師ギルド”ROSE~薔薇の妖精~”がいるぞ!!その眼で見てくるといい!!ほっほっほ!!」
怖さもありつつ、笑いも入れてみた冒険的な肝試し大会でした!!
何とか今日投稿が間に合ってよかった~~!!