リテラと一悶着はあったが、無事に本部棟に潜り込めたホームズ達。
入った本部棟内は薄暗く、道は左右に分かれ、少し進んだ先には大きな扉が見える。
リテラは入り込んだ際に作った地図を広げ、道案内する。
「左右に分かれている道はそれぞれ上の階の階段に続いているわ。そして、この奥の扉には、大きな会場があるのよ。」
「会場?何でそんな場所があるの?」
「さぁ?私が忍び込む時はいつもがら空きだから、どんな用途で使われているかは分からないわ。ただ、一度気づかれずに忍び込んだ時、この奥の扉の先から迫力ある歓声が聞こえてきたことがあるわ。ま、入ろうとしてロックが厳重にされていたから解除しようとした時に警報が鳴って気づかれたから、そのまま逃げたんだけどね。」
「ってことは、リテラが言っていた大きなイベントがあるかもっって言う情報ともしかしたら関係あるかもだね。」
「よし、まずは真っ直ぐ奥の扉の会場とやらに行ってみるか!」
ホームズの合図で一行は扉に向かって歩き出す。
そして扉の前に着くと、確かに厳重なロックがされていて、簡単には開きそうになかった。
「どうしようか…。このロック。」
し~ちゃんが視界に入る限りのロックシステムを見て、呻き声を上げている間、ホームズは一つ一つロックシステムをまじまじと観察し、何やら呟き始めた。
ホームズのつぶやきがだんだん声のトーンが落ちてきたので、リテラが大丈夫なの?と火龍人に話しかけると、火龍人は心配ないとポテチを頬張りながら答える。
「あれは、ホームズが考えている時にする、一種のルーディンだから。心配はいらないよ。もうそろそろ、中に入れそうだね…。ボリボリ…。」
火龍人が説明し終わったその時、ホームズのつぶやきは終わり、手を大きな音を立てて、合わせる。
「よし!!謎は…このホームズ様が解いた!!」
そのホームズの名台詞と共に、ポーズを決めるホームズ。
「え、謎!!」
「そうだぜ!!ここにある無数のロックスシステムはある一つを除いてすべてダミーだ!!いや~、巧妙に作られているから本物と見分けるのに少し時間がかかってしまった。」
「本物と偽物があるって事は、偽物の方にはもしかして…」
「そうだ、偽物には警報装置と監視カメラ機能が内蔵されているようだぜ。間違ったロックシステムを操作すると、警報を鳴らし、それと同時に監視カメラが起動して、侵入者を特定できるって寸法だろう。」
「そもそもこんなに必要でもないしね。(。-∀-)」
「リテラに侵入される度にどうやらそれを逆手にとって、罠を張ったんだと思うけどな。さてと………。みんな、ここに一列に並んでほしいんだけど。」
そう言ってるーじゅちゃん達を扉の前に並ばせたホームズは横一列になったみんなの隣に自分も並んで、扉の中央のロックシステムの赤いボタンを押した。
『手下番号承認中…………。5名確認。入室ヲ認メル…。』
ロックシステムから声が聞こえてきたと思ったら、赤外線レーザーをホームズ達に照射し、緑色のランプが光ると、大きな扉が自動で開いた。
「な!!ホームズさん!!一体何をしたの!!?」
こんなに簡単に入り込めた驚きでリテラがホームズに尋ねると、鼻高々で説明し出した。
「この扉のロックは監視員の制服にそれぞれに割り当てられた番号がバーコード化されていて、それを認識する事で味方だと判別し、ロックシステムを通過できるっていう仕掛けなんだよ。」
きらっと歯が光り、ウィンクするホームズ。
「そうなのね…!だから、この服に着替えたんだ…!!」
リテラは自分が来ている服の裾を持ち、まじまじと観察する。
リテラ達は今、監視員の制服を着ていたのだ。
事の発端は、この本部に入る前。
るーじゅちゃん達が巡回中の監視員を捕まえ、パンツ一丁にして、監視員の制服を5人分拝借し、それを着て、本部棟に堂々と正面から侵入したのだ。相子が回復するまでの間、魔法を使わずに侵入する方法として、ホームズが提案した事だった。
ま、そのホームズは監視員をパンツ一丁にしたとき、鞭を取り出して、縛り上げる縄をこだわって縛り、甚振っていたが…。
「まさか、ここまで見抜いていたいうの!!凄いわ!!ホームズさん!!」
手放しの称賛を拍手でホームズに送るリテラに、ホームズは照れる。しかし、るーじゅちゃんとし~ちゃん、火龍人は白けた目で真相を知っていた。
ホームズは調教していた監視員から情報を手に入れていたのだ。
ホームズの調教でMに目覚めた監視員が「俺様が欲しい情報を話すなら、ご褒美を上げる」というホームズの言葉を鵜呑みにして、ロックシステムの事や制服の事も話したのだ。
その結果、その監視員は人目のつかない場所で恥ずかしい体勢でのきつい縛りで吊るされている。…目隠しされて。今頃、その監視員は羞恥とときめきとエロスの間で身を焦がしている事だろう…。
どんな体勢になっているかは皆の想像に任せる事にして…。(鼻血)
その現場を見ていた三人は推理したようにリテラに尊敬のまなざしで見つめられるホームズをただ冷めた目でみていた。
しばらくして、やっと扉を潜り抜け、リテラが言う会場へと入り込む。
すると、そこには、どこから人が現れたのかというくらいの大勢の人達が仮面をつけて、隣の席の人と話していた。満席になった観客席の目の前には幕で閉められたステージがあり、観客達はまだかまだかと興奮状態を極限まで高まらせていた。
「何…?こんな人の数…見た事がないわ…!」
「サーカスの時の観客より断然多いよ!」
「何が始まろうとしているんだろうね~。」
「…………ボリボリ…。」
「………嫌な予感がするぜ。こういう時の予感はおいら、当たるんだよな~。」
みんながホームズに顔を向けると同時に開演のブザーが鳴り、ライトが消え、ステージに一点のライトが照らされる。そこには、若返りのカバルレ団長が相棒の鳥型CADロボットを肩に乗せ、現れた。その瞬間、会場全体が歓声を上げる。
カバルレは軽くお辞儀をすると、マイクを持って、会場を見渡しながら、手を大きく広げて演説を始める。
「紳士淑女の皆様~~!! 今宵の御来場、誠斗にありがとうございます!!
僭越ながら、今宵のコンパニオンも私、カバルレがお送りいたします!!
今宵も、この会場の皆様にお見せする品々も最高級・最新技術を駆使した物を取り揃えています!!
ぜひ、その眼でご覧いただき、最高の富を手にしてお帰り下さい!!」
カバルレの演説に会場が沸く。
「品々…?」
リテラが首を傾げていると、火龍人がポテチを食べる手を止め、真剣な表情で答える。るーじゅちゃんもし~ちゃんもホームズも会場に目をくぎ付けにして、瞳を細めて、カバルレを見ている。
「…見ていればわかるよ。 まったく最低なショーをね…。」
その言葉を裏付けるように、カバルレが会場中に宣言する。
「それでは、幕を開きましょう!!
カバルレ・サマダ主催の”闇オークション”の開演で~~す!!!」
こうして、会場の熱気を帯びた歓声と雰囲気の中、ステージの幕が開かれた…!!
相変わらずのホームズのドSぶり。
意外に役に立つけど、あまり使いたくない秘儀だね。でも、これがほーちゃんです!!(鼻血)