魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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昔話が入ります。

国の誕生秘話…。


古の予言

 

 地底人との遭遇という大発見ではなかったが、曲芸一座の裏の顔ともいえる秘密基地に落ちてきたホームズ達。

 

 そこで出会った地底人ならぬ誘拐されてきた女性と出会う。

 

 

 「私は、リテラ。ここで収容されている奴隷達のリーダーをしているわ!!」

 

 

 気品溢れる容姿には想像できない堂々としたした態度で自己紹介するリテラは確かに何か引き込まれるような雰囲気を持っていた。ホームズ達も自己紹介をし、リテラに詳しく事情を聞くことにする。

 

 リテラはそれに応じ、リテラが率いる奴隷達の収容所の地下壕へと連れて行かれる。

 

 

 そこには、多くの奴隷達が息をひそめ、穴を掘り続けていた。

 

 

 「みんな!!手を休めて聞いて!!今日はいい知らせだ!!この者達が私達を助けに来てくれたよ!!」

 

 

 「何だって!!?本当かよ!!? やった!!これで俺達は助かるんだ~~!!」

 

 

 「家に帰れるのか!?」

 

 

 「外に出られる~~!! ありがとう!!」

 

 

 「……………あ、はあぁ…。」

 

 

 意気揚々と紹介されたホームズ達はリテラの呼びかけによって、奴隷達に神格化されてしまう。

 

 

 ホームズ達はここに来るまでにも奴隷達を見てきたが、遥かに人口密度が高い奴隷の数に驚きが止まらず、まだ詳しい所まで知らないため、助けに来たと言われても、手段もない状況では不可能に近い。返事に渋るのも無理はなかった。

 

 

 しかし、この流れを変えてくれたのは、ポテチを食べ続けている火龍人だった。

 

 

 「ごめん…。私達、ついさっきここに落ちてきたばっかりだから、まだここの事よく知らないんだよね…。ボリボリ…。詳しく教えてくれる?」

 

 

 「ああ、そうだったわね。 …さっきも言ったとおり、ここは奴隷収容所兼研究実験場。私達は無理やり連れてこられた者達ばかりの集まり。

 

  …話は長くなるから、座って。」

 

 

 

 リテラに言われたとおり座ると、リテラや穴掘りをしていた奴隷達も周りを囲むように座る。

 

 

 「これは…、今から私が話す事は全て目の前で起きた事実で、ここの先人たちに聞いた話でもあるわ。ある時……」

 

 

 そう前置きして、リテラはここの地下都市の話を語りだす。

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 今から300年程前のこと……

 

 

 まだここに帝国が誕生する遥か昔、ここには緑豊かで、花々が咲き誇り、民の笑顔が絶えない穏やかな国があった。国王も穏健なお人で、民と共に働き、協力し合って、決して財力に豊かではなくても、民は不満を言わず、国を愛していた…。

 

 

 そんな国にある時、自らの力を強固とするため、その国の隣国達に言葉巧みに操り人形にし、取り囲むようにして、国に侵攻してきた大国があった。大国は大陸制覇を目論見、次々に国々を滅ぼしにかかり、容赦のない殺戮を繰り返してきた。そして大国は更なる力を求め、侵略を進めていき、この国に目を付けた。緑豊かなこの国には普通の人々が手にする事が出来ないような潜在的な力を持っていた。

 

 

 ―――――それが”魔法”だった。

 

 

 人外なる魔法を使う彼らの存在を知った大国は我が物とするために、侵攻してきたのだった。

 大国と操られた隣国との大戦でこの国は襲われた。しかし魔法を用いた戦術で兵力に大差がありながらもまったく大国の侵攻を寄せつかせなかった。

 

 しかし、ますます”魔法”に興味を持った大国の国王が何としても我が物とするために、卑劣な方法を取った。

 

 

 

 それは、偽人質公開処刑だった…。

 

 

あろうことか、大国の国王は自国の兵をこの国の兵に偽装し、縄で縛って口を塞いだ上で、戦いの戦線に連れて行き、公開処刑にした。そして、まだ捕えた兵がいると宣言した。もちろん、それは嘘だ。

 

 しかし、そんな自国の兵をそのためだけに殺すとは思えず、自国の民が目の前で殺されたと思い込んだ国王はその兵を助けるために、要求を呑んだ。

 

 慈悲深い国王の判断に民達も快く受け入れ、国の中に敵を迎え入れた。

 

 そして、互いの主張を話すため、会議が行われ、国王は民達にこれ以上手を出すなと強く抗議した。それに対し、大国の国王はその要望に応じた。

 

 盟約にも結び、再び平和が戻ると思ったその夜、事件が起きた。

 

 

 

 夜、寝静まる国の中、愛する国の兵たちが押し寄せ、無差別に惨殺されていった。民達はなぜ彼らが襲ってくるのか分からず、ただ燃え広がる国の中を必死に逃げ回る。

 

 緑豊かな土地は火の海となって焼け広がり、綺麗に咲いていた花々は民の血で赤く染まっていった。

 

 

 『国王様~~~!!なぜですか~~!!』

 

 

 『お助けを~~!!』

 

 

 そんな無差別殺戮から自国の民達を救ったのが、大国の国王が率いる兵たちだった。

 

 そして、大国の国王は国民たちに言った。

 

 

 『私達は君達を騙し続けてきた愚王を倒すため、遠路はるばるこの国にやってきた。彼ら王族は国の富を我が物とし、贅沢をしていた。

  そんな愚王はこの私が首を刎ねてやった。

  安心しろ。私がこの国に繁栄を築いてやる!』

 

 

 その言葉と栄光に心打たれた民達は歓声を上げ、大国の国王を讃え、新たな国が誕生した。その国こそがこの”イレギュラー国”。

 

 初代国王はその言葉とおりにこの国を栄えさせた。民達は今までに手に入らなかった富と力を手にするようになった。

 

 

 

 

 しかし、国が崩壊し、大国が治めるようになった民の殺戮は大国の国王の仕掛けた罠だった。

 

 

 大国の兵にまた敵国の兵のふりをするように指示し、寝静まった夜、彼らが殺戮をしたのだった。そしてその後、自国の兵だというのに、敵国の兵として倒した。

 

 国王や王族はその時、応急の地下牢に騙されて幽閉されていた。民の悲鳴が聞こえ、国王の助けを求める民を助けようと牢から出ようとしたが、牢には魔法を阻害するように設計されていたため、自力での脱出を志したが、敵に知られ、抑え付けられた。

 

 

 こうして、国を奪われた国王と王族は大国の国王が命じて掘られた地中牢に閉じ込められた。

 

 初代国王が何故、国を奪われた国王や王族を生かしたかというと、この国における魔法の源を創造し、民に、大地にサイオンを通じて広げていたからだ。

 

 それを知った初代国王はせっかく”魔法”を我が物にしようとして、国を手に入れたのに、彼らを殺してしまえば、その”魔法”が手に入らず、全てが無駄になってしまう。善王の真似までして民からの信頼を得て、”魔法”に関する情報を集めてきた。それを無にすることを恐れ、初代国王は国王たちを生かし、なおかつ民から隠すため、幽閉したのだった。

 

 

 しかし、初代国王は魔法をまだ理解していなかった事で甘く見ていた。

 

 

 国王たちは魔法阻害の牢から出され、地中牢に入れられた時、その場にいた初代国王や配下に精神干渉系魔法を施していた。

 

 それにより、国王たちの監視を不要とし、時間がたてば、国王たちの事を忘れさせるように仕込んだ。

 

 初代国王は目に見える”魔法”に目を光らせていたため、気づく事はなかった。

 

 

 

 

 こうして、地中牢に幽閉されながらも手錠等はされずに、また監視もいなかったため、工作をする事ができ、脱出はできた。

 

 

 しかし、国王達に待っていたのは、初代国王が広めた忌まわしき嘘からできた現実だった。

 

 

 民からは心底憎まれていた国王達はすでにこの国に居場所はなく、かといって、ほかの国に亡命などすれば、自分達の持つ魔法が知られた場合、刺客が襲ってくるかもしれない。

 

 

 

 

 そう考えた国王は再び、地下へと潜った。そして国王たちの子孫達がさらに大きくしていき、そこには大きな地下都市が誕生したのだった…。

 

 

 そして国王は地下で生き続けながらも民を守り続けてきた無理がたたって、病に陥った。

 

 

 

 

 国王は息を引き取る前に予言を残す。

 

 

 

 

 『再び、悪しき魂が作り出した闇によって窮地に落とされるだろう…。

  人を喰らいつづける化け物は我が力を欲し、暴れだす…。

  その時、この国に心強き勇者たちが現れ、化け物を真の心で撃ち抜くだろう…。

  

  その心でこの世界に平和が訪れる…。』

 

 

 予言を残した後、国王は深い眠りについた。その表情にはその予言に向けてなのか、確信めいた微笑みが浮かんでいたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 「これが、この国に伝わる、真の誕生秘話よ。そしてこの場所こそが、その濡れ衣を負わされ、息をひそめ、暮らしてきた真の王族達が築いてきた聖地よ!!」

 

 

 熱く語るリテラの瞳には底知れない信念が宿っていた。

 

 

 「そんな聖地にあいつらが目を付け、こんな場所にしてしまった…。私はここで負ける訳にはいかない!!ここから出て、ご先祖様の無念を晴らさないと!!」

 

 

 地面に拳を撃ちつけ、憤るリテラに今まで話を聞いていた火龍人は仮説を問うてみる。

 

 

 「ねぇ…?リテラはもしかして、その国王に関係ある人だったりする?」

 

 

 火龍人の指摘に一瞬跳ねるリテラ。

 

 

 しばらくして、姿勢を正し、ホームズ達にまっすぐ視線を向ける。

 

 

 「そうよ。

  改めて、自己紹介するわ。

  私は濡れ衣を着せられたこの国の真の国王の末裔、リテラ・ピュアン。

  そして、この国を取り戻すため、立ち上げた革命軍のリーダーよ。」

 

 

 

 

 

 地下深くで息をひそめていた命が今、地上に芽を出した瞬間だった。

 




スケールがでかくなった~~!!

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