もっと話を広げよう~。
秘密組織”SAMA”の片鱗を僅かに感じ取ったみんなはショウリンを覗き見る。
「…ショウリンはもちろん…?」
「うん…。僕も知らなかった…。ママ何で言ってくれなかったんだろう…?」
「言えなかったんだろうね。もしそれを親しい人に言えば、その人達が人質に取られたり、狙われたりするから…。徹底した悪掃除するんだもん。彼らに復讐したい闇ギルドたちも多いんじゃない?」
「その通りだ、ショウリン。そうなれば、お前や父親が危険な目に遭うのは確実。自らの素性は家族でさえ秘密にする…。まぁ、これは彼らの任務を遂行するためでのルール内でもあるからな。」
ショウリンの疑問にルーちゃんと暁彰が答える。
その回答を聞いて、くろちゃんは暁彰の彼らの詳しい所まで知っている事に不思議を感じ、聞いてみた。
「暁彰、どうしてそこまでSAMAの事、知っているの?」
くろちゃんの指摘を受け、しばらく考え込んだ後、ため息を吐いて、真剣な眼差しを向け、答える。
「いつまでも隠しておくのはよくないか…。この事はマサヤンだけ知っている事なんだが、俺はこのギルドに入る前は…、SAMAで諜報員をしていた…。」
「「「「「「「「「「「えええええええ~~~~~~~~~~!!!!!」」」」」」」」」」
暁彰の独白を聞いて、ギルドみんなが一斉に飛び上がり、驚愕の表情をする。
「…まぁ、細かい事は省くが、任務中にマサヤンと親しくなって、こういうのも悪くないと思って、ギルドに入ったんだよ。安心しろ、もうSAMAのメンバーじゃないから。」
「それにしても、驚いたな~。そんなに凄い所にいたとは。あ、じゃあショウリンのママがメンバーって事気付かなかったの?」
「気づくとか気づかないとかの問題じゃないんだ。
基本、任務中はお互い仮面被っているし、連携取る時も、コードネームで呼び合う感じだからな。それに、恐らくだが、ショウリンの母親は俺の後釜で入ったと思うぞ。」
「そっか~。」
もし、二人が知り合いなら、他に手がかりを置いてそうな場所等が分かるかなと期待していたから、少しショックを受ける。しかし、それはまだ早すぎた。
「しかし、ショウリンの母親が何をしていたのかはわかるだろう。くろちゃん、ちゃにゃん!!あの部屋から伝言カードらしいものはあったか?」
「あ、う、うん!!部屋に置かれていた机の上に日記と同じく置いてあったよ。」
突然聞かれたため、どもったが、バッグから部屋で手に入れた伝言カードを取り出し、頷く。
それを確認して、暁彰はみんなに向き直り、説明し出す。
「まず、犯罪に手を染める者を見つけたら、SAMAを統括するリーダーに報告し、リーダーが捜査必要と判断すれば、伝言カードによって、指令を送る。それを元に行動するんだ。だから、その伝言カードを見れば、ショウリンの母親が何の指令を受けていたか分かる。………すでに、くろちゃんとちゃにゃんは見たようだけどな。」
「ごめん…。つい好奇心で…。」
「私もにゃ!!」
「いいさ。トラップに引っかかってなくてよかった。」
「「へ?トラップ??」」
「もしも、伝言カードが何者かに渡ってしまう場合を想定し、伝言カードにトラップを仕込んで、自分以外が見たら、発動するようになっていたりする。…不発でよかったな。」
「「ひひいいぃぃ~~~~!!」」
何か起こるか分からないから余計怖くなり、くろちゃんとちゃにゃんは抱きしめ合った。その間、暁彰が伝言カードをモニターの読み込み機能に差し込み、指令を再生する。画面が変わり、真っ暗になった状態の画面から声が聞こえる。
『君の報告とおり、……Kが動き出した。既にKの毒牙にかかり、犠牲が出ている。……コードネーム、アニテは次に告げる場所へ行ってくれ。場所は…”カバレル・サマダ大サーカス”だ。次なる標的は今までより大物だ。慎重に行動しろ。君の調査報告が届き次第、次なる指令を出す。…健闘を祈る。』
機械で声を変えた指令を聞き終えたみんなは自分達の耳を疑った。
「今、『カバルレ・サマダ大サーカス』の名が出てなかった?」
「あの大人気曲芸一座の事だよな?」
「どういう事だ?何であそこを調べる必要が…」
し~ちゃん、toko、にょきにょきが頭に疑問符をつけて、首を傾げる。
「理由はまだ断定できないが、彼らが動くのは、そこに”闇”がある時だけだ。つまりは…、その曲芸一座には何か人にばれたらいけない秘密があるという事だ。」
暁彰が顎に手を置きながら、鋭い視線をモニターの方に投げる。
そこに暁彰の言葉を聞いて、思い出したかのようにさっちゃんとルーちゃんが「「あっ!!」」と叫ぶ。その声に二人を見つめるみんな。
「二人ともどうしたんだ?」
「そういえば、私達、警魔隊で情報を集めてきたんだ。」
「ああ~!!確か、そうだったよね!!それで頼んでいた事は調べてくれた?」
さっちゃんにくろちゃんがここに戻る前に連絡し、告げていた事を確認するため、尋ねる。幸ちゃんとルーちゃんはそれに頷きを見せる。
「くろちゃんの連絡で、曲芸一座に関して、警魔隊に不審な情報が寄せられた形跡はあるかって聞いてみたけど、「そんなものはない」って一喝されたよ。寧ろ「あんな素晴らしいパフォーマンスする彼らに不敬な言動を行うとは、捕まりたいのか!?」って追い出されちゃったよ~。」
「うん、うん!首根っこ掴まれて、ポイッだよ!?あの警魔隊員…、相当曲芸一座の大ファンだね。駐屯所に大量の曲芸一座のポスターを壁びっしり飾ってたし。
まぁ、そう思うのを無理はないかな。私達もあのショーを見て、感動しちゃったし。」
「それは…難儀だったね…。…なんかごめん。」
さっちゃんとルーちゃんの遠くを見る目で言った出来事に頼みごとをしたくろちゃんは申し訳なさそうに謝る。
「いいよ。で、ここから本題だけど、警魔隊の駐屯所から追い出される前に今彼らが手を拱いている事件を聞いてきたんだ。(正確にはくろちゃんからの連絡で頼みごとをする前だが。)ショウリンにも関係しているから。」
「僕にも?」
突然自分の名前を言われて、きょとんとしながら聞き返すショウリンにルーちゃんは頷いて、その時に仕入れた事件内容をモニターに新聞記事を映して話す。
「この記事にある事件でどうやら警魔隊は捜査本部を設置して、捜査しているみたい。この事件は墓地や病院の霊安室に置かれている死体が何故か消えるという死体運搬事件なんだ。どういった方法で運ばれているのかわからず、警魔隊が徹底して捜査をしているし、死体が置いてある施設等には注意するように呼び掛けているけど、人の目を甲斐潜っているみたいで、未だ手がかりが見つからないらしい。」
「その事件とショウリンがどう関わっているの?」
「どうやら、ショウリンの父親の死体も…、消えたようなんだ。」
「え!!?」
「しかもここ最近亡くなった人ばかりの死体が狙われているらしいよ。」
「…もしかして、それが曲芸一座と関係しているってこと?」
「そこまで入ってないけど、これほどの事件なら、SAMAが動いているのもおかしくないし、彼らが正義の名のもとに曲芸一座を標的にする理由としても考えられるかなって。」
これまでの情報とさっちゃんとルーちゃんの持ち帰った情報によって、どんどんと明らかになる全貌…。
今まで、人の汚れた魂が巣食う闇と戦ってきたROSEだったが、彼らはその闇よりもっと深く、底が計り知れない陰謀の闇に足を踏み込みつつある事をこの時はまだ知らない…。
次々とつながっていく陰謀のピース…。
果たして、ROSEは陰謀の底なし沼から脱出できるのか…!?