おお!!ショウリン、えらいね~!!もうそんな言葉を覚えているんだ。凄い!!
「…これくらい僕も言えますよ。」
あれ?少し拗ねた?
…ではどうぞ!!
「言わなければいけない事?」
くろちゃんが聞き返すと、ショウリンは大きく頷く。
「実は…ぼく…、皆さんがパパを殺した事を知っています。そしてそれが唯一の手段だったことも知っています。」
まさかの事実を知っていた事を暴露され、ショウリン以外のこの場の全員が驚愕し、衝撃が走る。
そして一斉にみんなはミナホに顔を集中して視線で問いただす。
”もしかして話したのか!?”…と。
正確にみんなの言いたい事を視線で読み取ったミナホは顔と手を横に激しく振って否定を表す。
ショウリンはみんなに疑われていると焦って、訳を話す。
「違うんです!! ミナホさんは僕に一度も話していません!!僕が知っているだけです!!」
「わかったよ。じゃあ、なんでその事を知っているのかな?確かあの時、ショウリンはミナホと一緒に警魔隊の駐屯所に行っていたと思うけど。」
「それは…現場に行った警魔隊の人達が駐屯所に帰ってきた時、僕の顔を見て哀れそうに見てきたから…。お菓子や飲み物までくれたから…。それで死んじゃって、パパとはもう会えないんだって思って…。」
「……そうか、でもさ。それだけでパパともう会えないって考えたのはどうしてなんだ?」
「そうだよ?もしかしたら補導されてしばらく会えないって思うのが普通だと思うけど?」
ホームズとるーじゅちゃんが引っかかった疑問をショウリンにぶつける。確かにあの状況ではまだ死んでるなんて思えなかったはずだ。自分達だって暁彰が『精霊の眼』で視なかったらそうとは分からず、錯乱状態だと思っていただろう。つまり、それだけの見分けがつかないほど、あの魔法は精巧に仕組まれた卑劣な魔法だったのだ。
二人の疑問は最もでみんなはショウリンが何故現場にいなかったはずの出来事を知っているのか?と考えた。
ショウリンはみんなが無意識に目を細めて見つめる視線に怯えつつも、その理由を答えた。それは、ショウリンが今まで隠してきた秘密に関係する事だったから。
「………僕は魔法はまだ全然未熟ですけど…、生まれ持って異能を持ってます。それでパパが死んでいるってわかったんです…。」
「……まさか!?」
ショウリンの告白の一部を聞いた暁彰は何かに気づき、椅子から勢いよく立ち上がる。そしてショウリンに視線を集中し、疑念から納得の表情へと変わる。
「なるほどな…。お前もか…。」
「え?……………………………暁彰さんも?そういえば、同じだ…!」
無言で暁彰を凝視したかと思うと仲間を見つけたように笑顔になった。二人だけで納得する雰囲気にみんなが首を傾げると、ミナホが嬉しそうに喜ぶショウリンに尋ねてみる。
「ねぇ?ショウリンはなにを持っているのかな?もしよかったら教えてくれる?」
「えっと実は…」
「ショウリンも俺と同じ『精霊の眼』を持っている…。だから、父親が死んでいる事に気づいた。そうだろう?」
その理由は暁彰が代弁した。それを聞いてミナホが確認のために尋ねると、ショウリンはごくりと頷いた。
「昔から僕はこの眼を持っていて、色んな人や物を見てきたんだ。でもちゃんと扱えなくて…。この前何とか自分で視たい時に視えるように制御できるようになってきたんだ。…それでも感情が高ぶると、無意識に視てしまうんだけど…。」
「『精霊の眼』は膨大な情報が入ってくるからな。その年である程度扱えているのは大したものだと思うがな。」
『精霊の眼』はこの世に存在するエイドスを認識する。幼い頃で、慣れない内から情報を読み取ろうとすると処理に手間取り、脳にダメージを負う可能性がある。しかし、ショウリンにはそのような傾向はみられない。暁彰はショウリンの将来に興味を覚えた。それと同時に危機感も芽生える。
「ショウリン、その眼の事は誰か知っている?後、なぜそれを持っているんだ?」
尋問するかのように瞳を細め、問い詰める。暁彰がこの異能ともいえるこの眼をギルドの中で一番知っているからこそ確かめる必要があるからだ。
暁彰の質問の意味を理解するショウリンもまた、これは秘密性が高い事を知っているという事だ。そして本来は隠さないといけない事だが、暁彰の眼の事を知っているみんなだから、信頼できると判断し、全てを話す。
「この眼の事を知っているのは、僕ともういないママだけです。パパは一般人だったから知らない。ママが絶対に友達にもパパにも言ってはいけないって言われていたから…。」
「ショウリンとママだけ?」
「うん…。ママも同じ『精霊の眼』を持っていたんだ。僕がこの眼をコントロールできるように指導してくれたのもママなんだ。
そしてママは…、タツヤ族出身の魔法師だったんだって。」
「つまり遺伝って事?」
「ああ、タツヤ族は代々『精霊の眼』を遺伝的に受け継いでいっている。しかしこの眼の事を外部に漏らせば厄介事に巻き込まれるのは必須。だから、秘密にするようにと掟になっている。例えそれが身内でも…。」
「パパにはバレない様に地下室でママは色々教えてくれたんだ。そして、ついこの前にママがいなくなって、パパと二人で生活する事になったんだけど、その時もなんだかおかしかったんだ。でも、昨日は特に気味悪くて生気も感じられなくて…、声を掛けてみたら、パパが……………、包丁を僕に向けて言ったんだ。『ママと同じところに行くか?』って。それで怖くなって、その時に『精霊の眼』が無意識にパパを視て、死んでいるって気づいたんだ。
死んでいるのに、動いているから余計に怖くなって…。もうそこからは無我夢中で家から飛び出して逃げたんだ。」
「…そして逃げている時に私達と鉢合わせしたんだね。よかった~!!あの時、出会っていて…。」
「ああ、よく頑張ったな!!」
鳥になる日とサガットがショウリンのあの日の行動に賞賛し、ショウリンを救えた事に安堵した。
「だから、みんながパパを殺したんじゃないよ。パパを救ってくれたんだから。あのままの状態だったら、何をするか分からないし、パパもそんな事したくなかったはずだよ。だから、本当にありがとう!!」
思い切り頭を下げてお礼を言うショウリン。しかし、その勢いでテーブルに頭をぶつけてしまい、ものすごい音が響く。
「だ、大丈夫?」
「あ、あい…。ばいびょうぶだす…。」
フラフラしながら問題ないと伝えるショウリンに対してみんなは号泣して温かい眼差しで見つめる。
((((((この子…!!どんだけ強い子なの~~~~!!!))))))
ショウリンの純粋な心に感激し、ギルドみんなの庇護欲が発動し、バロメーターをぐぐぐっと上げていく。
「よし!!じゃ、ショウリンのパパに何があったか、調べるぞ!!」
「おう!!俺達が暴いてやるぜ!!」
男気が溢れ、燃え上がるホームズとtokoは姿なき者に鉄拳をお見舞いする。
その熱にみんなも浸食し、ショウリンのためにこの事件を解決するべく立ち上がるのだった。
「ショウリン!!お父さんがおかしくなる前に何か身の回りで何か起きなかった!?」
そしてくろちゃんはテーブルに身を乗り出し、ショウリンに聞く。しかし…
「すううぅぅぅぅ~~~~~…………」
「…あれ?寝ちゃった?」
ショウリンはミナホの腕の中で寝てしまっていた。
「ああ…、ほら、いつの間にかこんな時間だよ。ショウリンはまだ子供だから。さすがに眠たいよ。」
ミナホが指差した時計を見ると、確かに子供が眠っている時間を大きく超えている。もう日付も変わりそうな時間だった。
「わかった…。ショウリンもよく話してくれたもんね。また明日にでも聞こう。」
「そうだね。……それにしても~。ショウリンの寝顔可愛い!!ほっぺがぷにぷに!!」
「ホントだ~~!!なんだか癒される~~!!」
「ちょっとだけならツンツンしても~(鼻血)」
「ちょっとみんな待って!!落ち着いて~~~!!」
ショウリンの天使な寝顔に萌えたみんなは鼻血を垂らしながらミナホに接近してくる。ミナホはショウリンをおぶって、一目散に二階へと避難するため逃げる。しかし、その後をハイエナの如く、追いかけるみんな。
「もう!いい加減にして~~~!!」
二階のNST対策トラップを発動しながらミナホは逃げまどい、いつもと同じROSE恒例の追いかけっこが始まった。
ショウリンはそんな事が起きているとは露にも知らず、(寝ているんだから当たり前だけど。でも、これだけ騒がしかったら起きるんだけどね。)すやすやとミナホに背中で朝まで眠り続けた。
そしてミナホはというと…。
ショウリンが起きるまで追いかけてきたため、休む間もなく逃げていたから、ショウリンが起きると、その場で屍となったのだった…。
(ご愁傷さまでした…)
「勝手に殺すな~~~~!!!」 がくっ…!+
死体操り事件に新たな手掛かりが見つかるでしょう!!
ROSEの悪物成敗がまた始まるぞ!!