魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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さぁて、ショウリンははたしてROSEで頑張っていけるのか!?


感謝の言葉

 

 

 

 

 

 あのままショウリンの歓迎パーティーが夜まで続いて、まだ子供のショウリンはミナホに二階に案内されて、ショウリンの私室に宛がわれた部屋へと手をつないで連れて行ってあげた。

 

 昨日の夜からずっとショウリンの傍にいるミナホにすっかりと懐いているショウリンは私室に連れて行ってもらった後、部屋を出ていこうとするミナホを呼び止める。

 

 

 「…ミナホさん、一緒にいてくれませんか?」

 

 

 「……いいよ。じゃ、ショウリンが眠れるように手を繋いでいてあげる。」

 

 

 ベッドに横になるショウリンにミナホは布団を掛けてあげ、枕元近くに腰を落とし、ショウリンのまん丸い手を優しく包み込むように繋いだ。

 その暖かさにショウリンはほっとする。そして自分を受け入れてくれたみんなに言えなかった事をミナホに眠げに襲われるのを必死に堪えながら話す。

 

 

 「僕ね…。この町に住んでいるから色んなギルドの話を聞いてきたんだ…。ギルドの活躍を見る度に魔法師ってすごいなって…。僕も早く魔法師になりたいなって…。そして一番好きなギルドに入るんだってずっと前から決めてたんだ…。

  僕はね…、ROSEが好きで、憧れてたんだ…。だから…、その夢がかなってうれしい…!」

 

 

 もう目が開けられなくなったのか、瞼が閉じかかっていく。それでも、まだ言いたい事があるらしく、眠げで言葉に力が乗っていない状態で続きを話す。

 

 

 「それでね…?僕、みんなに言わないといけない事があるんだ…。だから明日、話すね…。今日は…、仲間に入れて……くれて………ありがとう…………。スゥ~」

 

 

 とうとう眠げに勝てずにそのまま眠りについてしまったショウリンの頬には閉じた目から流れ落ちる涙が筋を作り、ベッドへと落ちていった。

 

 寝落ちしたショウリンの頭をミナホは優しく撫でてあげた。

 

 父親を亡くしたばかりで辛いし、悲しいし、本当は泣きたいはずなのに、必死に抑えて、元気そうに見せていたショウリンが昔の自分に重なったミナホは夢の世界に入っているショウリンに話しかける。

 

 

 「大丈夫だよ、ショウリン。もう君は家族同然の大事な仲間だから。ここが新しい君の家だよ。」

 

 

 寝顔が可愛らしいショウリンを見て、含み笑いをするミナホも眠げに誘われて、ショウリンの手を繋いだまま、ベッド脇で眠りについた。

 

 

 

 誰も知らない二人だけの話だと安心して眠ったミナホはROSEギルドに設置された秘密のシステムについて完全に忘れ、失念していた。

 

 

 

 

 

 なぜなら、この二人の話は下の階でレッツパーティー中のみんなにも届いていた。届いていたというよりは盗撮………、温かな瞳で見守っていたという事にしておこう。

 

 

 ホールのモニターにはショウリンの私室に設置している隠しカメラの映像が今まさに映し出されていた。

 そう、ギルドの隠された秘密のシステムとはこの隠しカメラの事だったのだ。

 

 しかもこの隠しカメラはどこにでも移動可能のため、操作すれば自分達が見たい場所の映像がリアル映像で手に入るのだ。ただし、操作できる人は限定的である上、カメラ自体も制限を掛けている。なぜそんなに徹底しているのかと聞かれてももう察しが付くと思うが、この隠しカメラを私的に使用する者がいる為である。誰かは言わなくても分かるとは思う。

 

 

 まぁ、そんなわけで、この隠しカメラをそんな私的使用は絶対にしないだろうというルーちゃんが操作する事で二人の今までの会話を聞いていたのだった。

 

 

 「本当に、あの子は泣かせてくれるね~。うわぁっううう。」

 

 

 「強がっていないと自分ではなくなる感じ…、分かるな。」

 

 

 「明日、私達に話したい事っていうのが気になるけど、あのこの言葉はちゃんと受け止めないとだね。」

 

 

 「そうだな、よし!今日はもう解散して、明日に備えよう!!」

 

 

 「うん。」

 

 

 年上なのにみっともない姿を見せるのはいけないと張り切ってこの日はみんなは早めに就寝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 そして翌日、朝食をみんなで食べて、新聞やニュースのチェックをし、急ぎの仕事依頼が入っている事を確認したみんなにくろちゃんがリーダーらしく「夜に報告会を設けるので、その時に言いたい事があれば、報告するように。」と伝える。もちろんこれはショウリンが話せる環境を整えるためだ。

 

 

 そして各自、仕事を終わらせ、夕食を食べ、報告会を開く時間になった時、みんな一応今日の仕事の内容を報告する。そして全員言い終わった後、くろちゃんはショウリンに話しかけた。

 

 

 「ショウリンも何か言いたい事があれば何でも言っていいよ。もう私たちは仲間だからね!」

 

 

 「あ、あい!あっ、いえ、はいっ!! あのですね…、皆さんに言いたい事があって…。」

 

 

 指を絡ませながらどもるショウリンを可愛いと内心で思うみんなはさておき、ショウリンは意を決して話す。

 

 

 「あの!改めてあの時は僕を助けてくれてありがとうございます!そして、僕をROSEの一員に入れてくれたありがとうございます!ずっと憧れていたギルドに入れてうれしいです!!それにさっきも言ってくれたように仲間だと言ってくれて感激です!!」

 

 

 目を輝かせて熱烈に感謝の言葉を述べるショウリン。しかし子供でありながらにして真剣な表情に変わる。

 

 

 「だから仲間だと言ってくれる皆さんに僕は言わなければいけない事があります!!

  ずっとこのままにしてほしくはないから!!」

 

 

 拳に力を入れて力説するショウリン。

 

 

 

 果たして何を話そうとしているのか…?

 

 

 




確かに何かを言いたそうだけど、こんなにROSEが好きならきっとみんなにとっても悪い事ではないだろう…!多分…?

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